「30代・40代女性が食道がんを発症する原因」はご存知ですか?初期症状も解説!
公開日:2024/03/04


監修医師:
関口 雅則(医師)
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浜松医科大学医学部を卒業後、初期臨床研修を終了。その後、大学病院や市中病院で消化器内科医としてのキャリアを積み、現在に至る。内視鏡治療、炎症性腸疾患診療、消化管がんの化学療法を専門としている。消化器病専門医、消化器内視鏡専門医、総合内科専門医。
目次 -INDEX-
「食道がん」とは?
食道とは、のどと胃の間にある管のような臓器のことです。口から入った食べ物を胃に送るという役割をしています。食道には、胃のように消化する機能は備わっていません。 食道がんは食道の内側を覆っている粘膜から発生する悪性の腫瘍です。食道がんは男性に多く、2019年の統計情報では診断される数は男性21,279例、女性4,663例と男性の方が女性より4倍以上となっています。 また、診断される年齢層は男女ともに40代以降から増加し、70代後半から80代前半の患者層が多くなっています。食道がんの代表的な症状
それではまず、食道がんの代表的な症状をみていきましょう。食べ物が喉につかえる
食道がんが大きくなり、食道が狭くなると、食物や水分が通りにくくなります。すると、飲食物が喉につかえ、だんだんやわらかい食べ物しか通らなくなります。 食べ物が飲み込みづらく、食事がとれなくなる症状を自覚した場合には、なるべく早めに消化器内科を受診するとよいでしょう。体重が減る
食道がんが大きくなり、食べ物の通過障害が起こると食事量が減って体重が減ります。また、他の臓器などに転移(遠隔転移)した場合などにみられる悪液質というもののために体重が減るということもあります。 急激な体重減少は、食道がんに限らず他のがんが進行した際や、糖尿病の増悪の際にもみられる症状であり、内科などを受診したほうが良いでしょう。胸や背中の痛み、咳、声のかすれ
がんが大きくなり、食道の壁にとどまらず、その周りの肺や背骨、大動脈にも浸潤することがあります。すると、胸の奥の方や背中に鈍い痛みが感じられるという症状が現れます。また、がんが空気の通り道である気管や気管支などに及ぶと咳がでたり、あるいは発声に関する神経に及ぶと声のかすれが生じたりすることがあります。 このような症状は肺や心臓、喉の病気などでも見られます。胸や背中の痛みを生じる他に、食べ物のつかえ感などの症状がみられる場合には、早めに医療機関を受診しましょう。まずは内科や一般内科で良いかと考えられます。食道がんの前兆となる初期症状
ここからは、食道がんの前兆となる初期症状について解説していきます。胸の違和感
食道がんの初期症状には、飲食時の胸の違和感があります。これは、物を飲み込んだ際の胸のチクチクする痛みとして感じられます。熱い物を飲み込んだ時のしみる感じ
食道がんの早期症状として、先に述べた飲食物を飲みこむ際の胸の違和感に加え、熱い物を飲み込んだ際に胸がしみる感じがあるという症状もあります。 これらの症状は一時的に消えることもありますが、こうした症状は放置せず、消化器内科を受診しましょう。飲み込む時の喉の痛み
食道がんは、その発生する部位によって頸部(けいぶ;のどのあたり)食道がん、胸部食道がんに分けられます。このうち、頸部食道がんの場合には、初期症状として嚥下時痛(えんげじつう;飲み込む時の痛み)と嚥下困難(えんげこんなん:飲み込むことが難しくなってしまう)というものが現れます。のどの痛みを感じる場合はまず耳鼻科を受診することが多いかもしれませんが、できれば内視鏡など詳しい検査ができる病院でチェックしてもらいたいものです。30代・40代女性が食道がんを発症する原因
食道がんは高齢の男性に発生しやすいがんです。一方で、日本での食道がんの発生率は女性において徐々に増えており、30代や40代女性でも食道がんを発症することもあります。以下では、30代・40代の女性が食道がんを発症する原因についてご紹介します。肥満
肥満によって逆流性食道炎が生じやすくなります。 逆流性食道炎は、食道の炎症によるバレット上皮と呼ばれる状態を引き起こす可能性があります。このバレット上皮とは、本来は扁平上皮という皮膚と同じような種類の粘膜である食道が、胃と同じ腺上皮に置き換わってしまっている状態のことです。バレット上皮から食道腺がんというタイプの食道がんが発生するリスクは高い、と言われています。栄養状態の低下
過度なダイエットなどによって栄養状態が低下することも、食道がんの危険因子とされています。30代、40代女性でも、痩せ願望が強く必要な栄養が取れていないような極端な食生活をしている場合、食道がんのリスクが高まる可能性があります。果物や野菜を摂らない
果物や野菜を摂らないことも、食道がんのリスクを高める原因になります。 これは、先ほどの栄養状態の低下と同じように、ビタミンの欠乏を招くことになります。 逆に、緑黄色野菜や果物は食道がんになりにくくなる予防的な役割があるとされています。食道アカラシアという病気にかかっている
食道アカラシアという病気があります。これは、食道の下の方、胃の近くの筋肉が緩む機能が障害されるために、胃へと食物が流れず、食道に止まってしまうのです。このために、食道は異常に拡張し、食べ物の飲み込みづらさや嘔吐などの症状が現れます。この食道アカラシアは女性に多くみられ、長期間無治療の場合には食道がん発生のリスク因子の一つとして考えられています。食道がんになりやすい遺伝子を有している
さまざまながんで、遺伝子の影響が考えられています。食道がんについても、遺伝子の解析の結果、日本人の食道がんではお酒を飲むことによる遺伝子変異が強く働き、食道がんの中でも大半を占める食道扁平上皮がんのリスクを高めるということがわかっています。 今後も遺伝子の関与については研究が待たれるところですが、女性の場合の食道がん発症の一因となっている可能性はあります。食道がんになりやすい人の特徴
たばこをよく吸う
食道がんが発生する主な原因として、たばこをよく吸うことが挙げられます。 喫煙は食道がんだけでなく、鼻や喉のがん、肺がんや肝臓がんなどのいろいろながんの原因になります。喫煙者本人のみならず、受動喫煙によって肺がんのリスクがあがることもわかっています。食道がん発生を予防するために、ガイドラインでも禁煙することが強く勧められています。お酒をよく飲む
お酒を飲むことによって、体内にアセトアルデヒドという発がん性物質が生じます。これが食道がんのリスクを上げると考えられています。喫煙者が飲酒をすると、食道がんのみならずがん全体の発症率を高めてしまうということもわかっています。お酒を飲むと顔が赤くなる人は要注意と言えるでしょう。熱い物を飲んだり食べたりすることが多い
喫煙や飲酒の他、熱い食べ物や飲み物をよく摂ることで、食道がんになる危険性を高めてしまうということも知られています。 過度に熱い飲食物は、食道の粘膜を傷つけます。この粘膜の損傷が細胞の遺伝子レベルで蓄積されると、がん細胞の発生につながる可能性があります。食道がんの治療法
食道がんは、食道粘膜に留まっているかどうか、あるいは外側に広がっているかどうかによって、T因子というものが決まります。 また、リンパ節転移によってN因子が、他の臓器に転移しているかどうかによってM因子が決まります。 これらのT、N、M因子によってがんのステージが決まります。 食道がんの治療方法は、ステージごとに決まる標準治療を基本として、本人の体力や希望などを合わせて決められていきます。内視鏡的切除
食道がんが粘膜内にとどまり、その深さも十分浅く小さい病変の場合に、内視鏡的切除術が行われます。内視鏡的切除術は食道を温存、つまり形や機能を残したままにできるというメリットがあります。具体的な内視鏡的切除術の対象は、以下のようになっています。- ・リンパ節転移のない0期の早期食道がん
- ・食道の全周、つまりぐるりとがんが覆っていない場合
- ・食道の全周を覆っていても、長さが5㎝以下
手術
食道がんのステージIやII、III期で手術が行えるような体の状態の場合には、手術が行われます。ステージII、III期では事前に抗がん剤を使った化学療法を行い、手術をするのが標準的とされています。 手術をする場合には、がんを含む食道と、胃の一部、そしてリンパ節を含む周囲の組織なども一緒に切除します。そして、胃や腸を使って、飲食物が通る道を新たに作る、再建手術も同時に行います。 手術は消化器外科や一般外科などが担当します。手術の方法は、食道がんができた部位によって異なります。食道がんの手術を行う場合には、手術の数日前に入院し、手術後は2〜3週間ほどで退院できるでしょう。 食道がんができた部位がのどである頸部食道がんの場合、手術の際にはのど(喉頭、咽頭)を一緒に切除する場合があります。その場合、声を出すための声帯がなくなるので、発声ができなくなります。この場合には、発声法を学んだり、電気式人工喉頭(でんきしきじんこうこうとう)という発声を助ける器具を使用したリハビリテーションを行ったりしていくことになります。化学放射線療法
化学放射線療法は、抗がん剤をつかった治療である化学療法と、放射線治療を組み合わせた治療法です。 内視鏡的に切除することが難しい0期のがんから、進行した食道がんに対して、根治(しっかりと治すこと)を目標として行われることがあります。 あるいは、内視鏡的切除後にがんが進行していた場合に追加で行われる場合もあります。 さらに、遠隔転移つまり他の臓器にがんが転移しているときであっても、食道ががんによって狭くなり、飲み込みづらさや食事困難などの症状がある場合には、それを和らげるために化学放射線療法、あるいは放射線治療のみが行われます。 副作用は、抗がん剤による吐き気やだるさ、食欲不振など自分でわかる症状と、採血検査で白血球や血小板の減少、貧血などがわかるものがあります。白血球が減少する場合には、体の免疫力が低下するために、感染症にかかりやすくなるというリスクがあります。 放射線単独治療の場合には、治療中の副作用としては照射部位の皮膚炎など、軽い物だと考えられます。照射後数ヶ月して、放射線が当たった部位の肺炎(症状がないことも多い)などが起こることもあります。 食道がんに対する化学放射線療法は、入院して行われるケースが多いと考えられます。食道がんを根治的に治療する目的の場合には、約1ヶ月半の期間を要します。化学療法の副作用などを見ながら、途中で退院するケースもあるでしょう。担当する科は、消化器内科や薬物療法科、あるいは放射線治療科などがあります。 化学放射線療法の場合には、基本的には臓器を温存、つまりそのままにしておくので、特別なリハビリテーションなどは要しないと考えられますが、飲み込み機能が低下しているようなケースでは嚥下訓練などをおこなっていく必要が出ることもあります。「女性の食道がん」についてよくある質問
ここまで女性の食道がんなどを紹介しました。ここでは「女性の食道がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
食道がんを発症すると痛みを感じやすい部位はどこがありますか?
関口 雅則 医師
食道がんが進行すると、胸の奥や背中の痛みを感じることがあります。また、早期症状としてのどの痛みを感じる場合もあります。
女性が食道がんを発症する確率は高いのでしょうか?
関口 雅則 医師
女性は男性と比較し、食道がんを発症する確率は低いです。しかし、食道がんになるリスクはもちろん0ではないので、喫煙や過度な飲酒などは控える方が良いでしょう。
20代女性が食道がんを発症した場合、原因はどんなことが考えられますか?
関口 雅則 医師
20代女性が食道がんを発症することは極めて少ないと考えられます。しかし、食道アカラシアや逆流性食道炎、バレット食道などが基礎にあり、食道がんになることはありえるでしょう。もちろん、喫煙や飲酒、肥満といった生活習慣が食道がんの危険性を高めることは言うまでもありません。
編集部まとめ
今回の記事では、食道がんになりやすい行動や、特に30、40代女性でも食道がんになる場合に考えられる原因、そして食道がんの治療について述べました。 食道がんの原因としては、喫煙や飲酒が大きなものとして挙げられ、これらは生活習慣で改善できるものです。一方、何らかの症状があり、医療機関での検査や治療を受けなければわからないようなものも、食道がんのリスクを高める可能性があります。 今回の記事を参考に、自分でできることから食道がん予防に努めましょう。「女性の食道がん」と関連する病気
「女性の食道がん」と関連する病気は7個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。耳鼻科の病気
- 声帯炎
- 喉頭炎
- 咽頭炎
