「盲腸がんの末期症状」はご存知ですか?転移しやすい臓器も解説!【医師監修】
小腸から結腸へつながる盲腸に発生する悪性腫瘍を盲腸がんといいます。盲腸がんは大腸にできるがんの中でも非常にまれで、初期には自覚症状がほとんどなく気づきにくいのが特徴です。
この記事では、盲腸がんの末期症状や検査方法、治療・予後・原因などについて詳しく解説します。
記事の後半には盲腸がんに関連する病気や見落としがちな症状の紹介もありますので、お腹に違和感のある方や気になる方はぜひこの記事を読んで参考にしてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
盲腸がんとは?
盲腸がんは大腸の一部である盲腸に発生する悪性腫瘍で、初期のうちはほとんど自覚症状がないことから気づきにくい病気です。
大腸がんの一種
盲腸がんは大腸がんの一種です。
大腸がんは肺がんや胃がんより多く、がん罹患数の第1位となっています。大腸は食べ物が最後に通る消化器官で、小腸に続いてお腹の中を大きく回って肛門につながる1.5〜2mの臓器です。
大腸がんには、がんが発生する部位によって盲腸がん・上行結腸がん・横行結腸がん・直腸がんなどの種類があります。
大腸がんの中でも頻度が低めのがん
盲腸がんは、大腸がんの中でも発生頻度が低めのがんです。
大腸がんはS字結腸がんと直腸がんで全体の過半数を占め、上行結腸・横行結腸・直腸S状部に次いで盲腸がんの発生頻度は約5%と決して高くありません。このことが、盲腸がんの発見を遅らせる要因の一つとなっています。
盲腸がんの末期症状は?
盲腸がんは症状が目立ちにくいのが特徴ですが、末期になると病変部分が大きくなるとともに周囲への広がりや転移によって症状が現れます。
腹部にしこりができる
盲腸がんが進行すると、腹部のしこりが次第に大きくなり自分でも触って気づくようになります。
盲腸は、便が水様で固まりきっていない状態で通過するため腹部症状としては目立たないことが多く、しこりから発見されることがあります。がんのしこりは硬く、押しても痛みを感じないのが一般的です。
血便
盲腸は、大腸に水分を吸収される前の便が通る部位です。水分の多い泥状の便に血液が混ざるため出血に気づかないこともありますが、出血量が多くなると便の色が暗赤色になり血便に気づきます。
盲腸がんでは、便の出口に近い肛門・直腸がんのように真っ赤な鮮血が出ることはありません。
貧血
盲腸がんの末期になると、がんからの出血やがん細胞の骨髄浸潤などにより貧血を起こしやすくなります。
また、化学療法や放射線治療が原因で血液細胞を作る力が弱くなったり、溶血や栄養障害でも貧血が生じたりします。貧血の原因や程度、心身の状態などに合わせた治療や輸血等の対応が必要です。
盲腸がんの検査方法
盲腸がんの検査では、がんを確定したり病変の状態を詳しく調べたりします。がんの転移や再発、治療効果等それぞれの目的に合わせた検査方法があります。
大腸内視鏡検査
盲腸がんの疑いがあるときは、大腸カメラと呼ばれる大腸内視鏡検査を行います。
大腸内視鏡検査は診断や病変の治療等が幅広く行えるため、第一選択肢となる検査です。肛門から内視鏡スコープを挿入して詳しく調べるとともに、検査中に病変組織の一部を採取します。
大腸内に便が残っていると病変を見逃したり再検査になったりする可能性があるため、前処置として下剤を飲んで大腸内をきれいにしておくことが重要です。
注腸検査
盲腸がんの大きさや正確な位置、形などを調べるには注腸検査が有効です。
注腸検査では、肛門からバリウムと空気を注入して盲腸のX線写真を撮影します。この検査も大腸内視鏡検査と同様、検査の前に腸内の便を除いてきれいにするために腸管洗浄液を服用します。
CT・MRI検査
CT・MRI検査は、盲腸がんの周囲への広がりや転移について調べるための検査です。
CT検査はX線、MRI検査では磁気と電波を利用して体の断面図を画像にして広い範囲の様子をみます。MRI検査はドームの中で大きな音がしますが、CT・MRI検査は患者さんにとって比較的負担の少ない検査です。
腫瘍マーカー
腫瘍マーカーは、がん治療の効果や再発の可能性を調べるために補助的に行う検査です。
がん細胞によって作られるタンパク質の値を見ますが、がんがあっても腫瘍マーカー値が変化しないこともあるため、腫瘍マーカー検査だけでなく画像診断の結果等と合わせて医師が総合的に判断します。
病理検査
内視鏡検査で採取した病変組織について、顕微鏡を使って詳しく調べるのが病理検査です。
病理検査でがんかどうかの確定診断を行うとともに、がんの深達度や周辺への浸潤、がん組織の種類等を明らかにします。
盲腸がんの治療について
盲腸がんの治療は、がんの進行度合いや年齢・性別・環境等を考慮し、医師が本人や家族と相談しながら進めていきます。主な治療方法は内視鏡手術・外科手術・化学療法・放射線療法で、これらを組み合わせて治療を行うのが一般的です。
例えば、がんのリンパ節への転移がなく深さが1mm程度にとどまっているような場合は、体に負担の少ない内視鏡手術で病変を切除します。切除した病変の病理検査で転移や再発の危険性が判明したときや、がんが進行して内視鏡手術では切除できない場合は外科手術を行います。
化学療法は手術不能な進行がんの増大を遅延させる目的や、手術後の再発抑制・予後の改善のために抗がん剤を投与する治療です。放射線療法は、完治や苦痛を和らげる目的でがんに放射線を照射するもので、放射線による熱や痛みを感じることはありません。
盲腸がんの末期症状についてよくある質問
ここまで腸がんの末期症状や検査方法・治療などをご紹介しました。ここでは「盲腸がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
盲腸がんの予後について教えてください。
中路 幸之助(医師)
国立がん研究センターによれば、データが少ないためか盲腸がんに絞った統計はありませんが、大腸がん全体の5年生存率は70%を超えており予後は比較的良いといえます。ただし予後は、がんがどれだけ深く入りこんでいるか(T因子)・リンパ節に転移しているか(N因子)・他の臓器に転移しているか(M因子)等進行の度合いによって異なります。肝臓や肺など離れた臓器への転移がみられるステージIVの生存率は高くありません。
盲腸がんが転移しやすい臓器について教えてください。
中路 幸之助(医師)
盲腸がんは、腹腔内に散らばったりリンパ液や血液を介してリンパ節やほかの臓器へ転移したりします。盲腸がんの転移が最も多くみられるのは肝臓です。肺や腹膜なども転移しやすい部位です。転移したがんの治療では、手術でがんを切除したり抗がん剤による化学療法を行ったりします。
盲腸がんの原因について教えてください。
中路 幸之助(医師)
盲腸がんを含む大腸がんが増加傾向にあるのは、食生活の欧米化など生活習慣によるものです。アルコールの過剰摂取や喫煙、肥満・運動不足等によってもがんが引き起こされやすいことが明らかになっています。また、高齢になると発症しやすくなり、家族の病歴など遺伝性の要因もあるとされています。
編集部まとめ
盲腸がんを含む大腸がんは40代の頃から発症率が上がっていきますが、ほかのがんより生存率が高く予後は比較的良好です。
ただし、盲腸がんは自覚症状がないことに加えて血便がわかりにくかったり、大腸がんの中でも発生がまれであったりすることから気づくのが遅れることがあります。
各自治体では国のがん対策推進基本計画に沿ってさまざまな形でがん検診事業を実施しており、こうした制度を活用して、早期発見・治療を行うことが大切です。
また、がん予防にはバランスの良い食事や節度ある飲酒、運動などが有効なことがわかっているので日々の生活習慣を整えておきたいものです。
盲腸がんと関連する病気
「盲腸がん」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
遺伝性の病気
- リンチ症候群
- 家族性大腸線腫
大腸がんと関連する病気がある場合は、定期的に検診を受診して早期発見・治療につなげていくことが大切です。
盲腸がんと関連する症状
「盲腸がん」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
盲腸がんの症状はほかの病気でもみられるものですが、少しでも気になる症状があるときは早めに医療機関で検査を受けるようにしましょう。