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「胃がんステージ4の余命」はご存知ですか?症状・治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2024/08/05
「胃がんステージ4の余命」はご存知ですか?症状・治療法も解説!【医師監修】

ステージ4の胃がんでは、転移巣を取り切れないため根治を目指す手術は基本的にできません。その後は化学療法・放射線治療・緩和療法などの方法で治療します。

ステージ4は進行がんの最終段階ですが、治療法はまだ選択の余地があります。また、厳しい症状には緩和治療で軽減が可能です。

この記事では、ステージ4の胃がんの余命・治療方法・症状を解説していくので、参考にしてください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

胃がんとは

胃はみぞおちのあたりにある袋状の臓器です。胃壁は層状で、内側から粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜下層・漿膜の5層構造です。
胃がんは内側の粘膜上に発生し、粘膜下層から漿膜方向に進行します。漿膜の外に出ると、隣接する大腸・肝臓・膵臓・横隔膜などの臓器に浸みるように広がり、これを浸潤(しんじゅん)と呼びます。
また、漿膜に出たがん細胞がお腹の内面を覆う腹膜に散らばると、腹膜播種といわれるステージ4の状態です。リンパ液や血液に乗って離れた臓器にも移動して、そこで増殖する転移がおこってもステージ4になります。
胃がんの外見はポリープ状や潰瘍状が一般的で、X線検査や内視鏡検査によって異常な凹凸・変色部分を探すことで診断ができます。

胃がんステージ4の余命は?

ステージ4の胃がんの場合、平均余命は8~13ヵ月との数値が見うけられます。幅がありますが、余命は患者さんによって差があって、生存率のように明確な数値化はできません。
がんの余命は、生存率などを参考に医師の経験や過去の症例・患者さんの状態を考えあわせて個別に推測・告知するものです。したがって、普遍的な余命は存在しないと理解しましょう。
なお、5年生存率を見ると5.8%で、ステージ4の診断から3年以内に約90%の方が亡くなっています。平均すると1年前後になるでしょうか。

胃がんステージ4の治療方法

胃がんのステージ1~3までは手術(内視鏡または開腹手術)で根治を目指す治療が行われます。
しかし、ステージ4の胃がんに対しては、一部例外を除いて化学療法や放射線治療が原則です。それぞれの治療法を解説していきます。

化学療法

化学療法(薬物療法)が選択されるのは、ステージ4の胃がんのように転移巣が少なくない進行がんや再発がんを、手術では取り切れない場合です。
また、手術後の再発防止目的や、リンパ節の転移状況によって手術前に補助的に行う場合もあります。進行がんの治療ではあらかじめ使う薬を何とおりも決めておき、最初の薬が続けられなくなれば次の薬に代え、それが効かなくなればまた次の薬を出すような波状攻撃をかける方法が標準です。

放射線治療

進行した胃がんに対する放射線治療は、補助的な治療になります。胃がんの細胞はあまり放射線に反応しないことと、周辺臓器が放射線に弱いためです。
例えば骨転移で痛みが強い場合の緩和目的や、病巣からの出血を抑制する目的などで使われます。

免疫療法

免疫療法は、免疫細胞の中のT細胞ががん細胞を攻撃する性質を利用します。がん細胞がT細胞に自分を攻撃しないように出す指令を届かなくしたり、攻撃性を強化したりしてがん細胞を排除する仕組みです。
チェックポイント阻害薬を使う方法と、T細胞を加工して攻撃力を強化する方法があります。ただ、効果が証明された治療法はまだ少ないのが現状です。

緩和療法

緩和療法は支持・緩和医療や緩和ケアとも呼ばれ、がんの直接的な痛みや苦しみに加え、家族も含めた不安・悲しみ・ショックなどの苦しさを緩和するのが目的です。
緩和ケアは不安や心配など気持ちのつらさに対応するもので、看護師・ソーシャルワーカー・理学療法士などの専門職がチームで担当します。
支持療法は、胃がんで狭くなった食物の通路をステントで確保したり、大量の腹水を穿刺で減量したりして苦痛を和らげる治療です。

胃の切除・バイパス手術

ステージ4では本来手術は行いませんが、切除できない肝臓転移やリンパ節転移があった場合、腫瘍量を減らして延命をはかる目的で胃を切除(減量手術)する場合があります。
また、胃がんが大きくなって出血や食物の通過障害がある場合に、新たな通路を造設する手術(バイパス手術)が行われることもあります。
いずれも根治手術ではなく、患者さんの苦痛を取り除くための手術です。

胃がんステージ4の症状

胃がんが進行してステージ4になると、胃から離れた臓器に転移が見られます。
転移巣の症状に加え、胃の原発巣も大きくなって初期には目立たなかった症状がいくつも出てくる段階です。
ステージ4で見られる主な症状を解説していきます。

転移による症状

ステージ4は遠隔臓器への転移が特徴的です。
病状が進んだ状態なので、元々の胃がんの症状が出ているうえに、転移先の臓器でもその臓器に特徴的な症状が加わります。
例えば肝臓に転移した場合は肝機能の低下や黄疸などの症状が現れるし、腰椎・骨盤に転移すると腰痛が出ます。

食欲不振・体重減少

胃がんが進行すると、食べ物を消化したり吸収したりする機能が低下します。それに脳が反応しておこるのが、食欲がなくなったり吐き気が出たりする症状です。
また、がんが大きくなって食物のとおりが悪くなることでも吐き気や食欲不振が現れます。食事が充分に取れない状態が長期間続くため、進行した胃がんでは大幅な体重減少が特徴的な症状です。

排尿障害

胃がんの進行でおこりやすいのが腹膜播種です。がん細胞が腹膜に散らばった状態で、炎症によって体液が腹膜から滲出して腹腔内に溜まり、腹水になります。
この影響で腹部の膨満感やむくみとともに、排尿障害がおこる可能性があります。

腹痛

進行した胃がんでは強い上腹部痛が特徴です。がんの影響で胃の内面がただれておこる痛みで、みぞおち周辺が痛みます
胃がんの症状ではこの上腹部痛がよく見られる代表的な症状です。痛みは胃潰瘍や逆流性食道炎の症状とよく似ており、痛みだけでは区別できません。

吐血・貧血

胃がんになると胃の粘膜はがん組織に変わります。がん組織が新しく作った血管は出血しやすい性質で、進行につれて出血が始まります。
見えてくるのが嘔吐物に血が混じる吐血や黒い便が出る下血の症状です。この状態が続くと貧血の症状が現れます。
身体に栄養を補給できなくなり、全身的な衰弱が見られることも少なくありません。

胃がんステージ4の余命についてよくある質問

ここまで胃がんステージ4の余命・治療方法・症状などを紹介しました。ここでは「胃がんステージ4の余命」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

胃がんのステージはどのように診断されますか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

内視鏡で採った検体でがんであることが確認できたら、ステージ確定を始めます。検体でがんの深さを調べ、周辺臓器への広がりやリンパ節と遠隔臓器への転移状況を確認します。使う検査機器は主にCTです。必要ならMRI・PETを使う場合もあります。必要なデータは深達度・リンパ節の転移数・周辺臓器への浸潤の有無・遠隔臓器への転移の有無です。これらを使ってステージの確定診断を行います。

ステージ4でも完治することは可能ですか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

完治可能です。ステージ4で薬物療法を行った結果転移がんが消失し(ダウンステージング)、根治手術が可能になる場合が増えてきています。近年では新しい薬物が開発され、以前のようなステージ4=緩和療法による延命だけのような状況ではなくなりました。

編集部まとめ

ここまでステージ4の胃がんの症状や治療法などを解説しました。ステージ4では厳しい症状が出るようになり、一方では根治手術ができなくなります。

しかし、治療は手術以外の多岐にわたる方法を駆使して、変わらず続けられます。気になる余命はあくまで推測で個人差が大きく、あまりこだわる必要はないでしょう。

また、薬物療法によるダウンステージングでステージ4が3になる可能性すらあります。がんのステージ4が死の宣告とされた時代は過ぎたようです。

胃がんと関連する病気

「胃がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • ヘリコバクター・ピロリ菌感染症
  • 胃炎

ピロリ菌に感染すると炎症や潰瘍ができることがあり、胃がん発症リスクへのつながりが指摘されています。胃潰瘍や胃炎は、痛み・胸やけ・胃の不快感など、胃がんと似た症状です。症状はがんの可能性もあるので、念のため受診をおすすめします。

胃がんと関連する症状

「胃がん」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 胃の痛み・不快感・違和感
  • 胸やけ
  • 食欲不振
  • 貧血

この症状は胃潰瘍や胃炎でもおこる症状です。自分は胃潰瘍や胃炎だと自己判断すると胃がんを見落とす恐れがあるので、このような症状が出たら診察を受けて確認しておきましょう。胃潰瘍や胃炎であっても、貧血や血便は重症です。

この記事の監修医師