目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 三大疾病
  4. がん
  5. 「胃カメラで食道がんを見落とす」ことはある?初期症状やなりやすい人の特徴も解説!

「胃カメラで食道がんを見落とす」ことはある?初期症状やなりやすい人の特徴も解説!

 公開日:2024/08/01
「胃カメラで食道がんを見落とす」ことはある?初期症状やなりやすい人の特徴も解説!

食道がんは胃カメラ検査を受けても、見落とされることがあるとご存知ですか?

初期の食道がんは小さく粘膜層に隠れているため、見落とされることが少なくありません。

しかし、食道がんの見落としを防ぐ検査方法はいくつかあるため、胃カメラ検査を受ける病院選びが重要になります。

本記事では、胃カメラ検査を受ける際に知っておくべき以下のポイントを解説します。

  • 食道がんの概要と見落としリスク
  • 食道がんの検査方法
  • 食道がんの見落としを防ぐポイント

食道がんの早期発見と早期治療のために、参考になれば幸いです。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

食道がんとは

食道がんとは、咽頭と胃をつなぐ食道にできるがんです。食道の長さは約25cmで、どこにでもがんが生じる可能性はありますが、食道がんの約半数は中央付近に生じます。食道壁は分厚い粘膜で覆われており、がんが粘膜層に留まっているうちに切除すれば転移の可能性はほとんどないといわれています。
しかし、初期の食道がんは自覚症状が極めて少なく、早期発見のためには定期的な胃カメラ検査を受けることが重要です。食道がんは、進行すると気管・大動脈・肺などに浸潤していき、治療が難しくなり予後不良となります。

胃カメラで食道がんの見落としはある?

初期の食道がんは大変小さく、胃カメラでも見落とされることがあります。通常の胃カメラのみを用いた場合、粘膜層に留まっている食道がんの発見率は30〜50%と報告されています。
しかし、初期の食道がん発見率を高める方法は複数あり、一般的に用いられるのは以下の2つです。

  • ヨード染色法
  • NBI

ヨード染色法は、がん細胞がヨードに染まらないことを利用して、食道内をヨード染色してがんを目立たせる方法です。しかし、ヨード染色は胸痛や不快感などの症状がでやすいため、より負担の少ない方法としてNBIがあります。
NBIは日本語では狭帯域光観察といい、特殊な波長の光を当てて粘膜層の毛細血管を際立たせる方法です。NBI機能を持った内視鏡で食道内を観察すれば、毛細血管に集まったがん細胞を見落としにくくなります。
初期の食道がんで、ヨード染色法を用いた場合の正診率は77.8%NBIの場合は94.4%という報告もあります。
また、ヨード染色法とNBIを組み合わせると、より精度の高い検査が可能です。ヨード染色した後でNBIで観察すると、がんの部位がシルバーに見えるメタリックシルバーサインが出現し、見落としリスクを抑えることがます。

食道がんの検査方法と診断の流れ

食道がんの検査と診断方法にはどのようなものがあるでしょうか。検査の目的はがんの診断だけでなく、がんの種類や大きさを調べて治療方針を決めるためでもあります。食道がんで主に行われるのは、以下の検査方法です。

  • 上部消化管内視鏡検査
  • 上部消化管造影検査
  • 超音波内視鏡検査
  • 病理検査・病理診断
  • CT検査・MRI検査
  • 超音波検査
  • PET検査
  • 腫瘍マーカー検査(血液検査)

それぞれの検査内容を解説します。

上部消化管内視鏡検査

上部消化管内視鏡検査は、いわゆる胃カメラ検査です。口から挿入する胃カメラが一般的ですが、苦しさを軽減するために鼻から挿入するタイプの胃カメラもあります。
局所麻酔や鎮静剤を使用して可能な限り苦痛を少なくし、食道の内部をカメラで詳細に観察できるのが大きなメリットです。初期の食道がんであれば、内視鏡で切除可能です。

上部消化管造影検査

上部消化管造影検査は、消化器全体の状況を把握する検査です。検査用の造影剤を飲み、それが食道を通過する様子をX線で撮影して、食道の狭さやがんの位置を画像で確認します。

超音波内視鏡検査

超音波内視鏡検査では、内視鏡に搭載された超音波検査装置を用いて、がんの深さや周りの臓器への転移を調べます。通常の内視鏡カメラでは見えない、粘膜の深い部分の検査に適しています。

病理検査・病理診断

病理検査・病理診断は、いわゆる生検です。内視鏡で採取した細胞を顕微鏡で分析し、がん細胞であるかどうかを診断します。また、がんの種類を特定し、抗がん剤選択の参考にすることもあります。

CT検査・MRI検査

CT検査・MRI検査は、身体の内部を立体的に検査できる装置です。食道がんが周辺の臓器に広がっていないか、体内の離れた部位へ転移していないかなどを検査します。CTはX線、MRIは磁気を利用し、適している検査は目的によって異なります。

超音波検査

超音波検査は、身体の表面から超音波探触子を当てて内部を調べる検査です。食道がんの場合は、頸部を超音波検査して頸部リンパ節への転移や、甲状腺など周辺器官との関係を調べます。

PET検査

PET検査は、がん細胞が全身に転移していないかを調べる検査です。がん細胞は増殖が活発で、通常の細胞よりも大量のブドウ糖を取り込みます。
これを利用して、放射性フッ素を付加したブドウ糖を注射し、身体のどこかにがん細胞があればレントゲンに写りやすくします。

腫瘍マーカー検査(血液検査)

腫瘍マーカー検査とは、血液中にがん細胞がつくる特殊なタンパク質がないかを調べる検査です。主に進行の経過や、治療効果の測定などで用いられます。
食道がん特有の腫瘍マーカーで検査を行いますが、腫瘍マーカー検査だけではがんの場所などは特定できません。ほかの検査と組み合わせて総合的に判断します。

食道がんの早期発見のポイント

食道がんは早期発見すれば内視鏡で切除できますが、進行してほかの臓器に転移すると治療は難しくなります。早期発見と早期治療が重要で、そのためにも胃カメラ検査は有効な方法です。胃カメラ検査を受ける際に、押さえておきたいポイントを解説します。

NBIを使用する

NBI(狭帯域光観察)を搭載した内視鏡によって、初期の小さな食道がんの見落としが減ることが報告されています。胃カメラ検査を受ける病院選びでは、NBIを導入しているかを重視するとよいでしょう。
ただし、NBIの使用経験が浅い医師では、ヨード染色法と正診率の有意差がないという報告もあります。胃カメラ実施件数などをチェックして、経験豊富な医師を選ぶようにしましょう。

定期的に人間ドックを受診する

食道がんを早期発見するには、定期的な検査を受けることが重要です。検査を行うことで、食道がんだけでなく胃がんの早期発見にもつながることもあります。
食道がんや胃がんは、進行すると食事の機能を失い、生活の質を大きく低下させるがんです。国立がん研究センターのガイドラインでは、50代以上は2年に1回の頻度で胃カメラ検査を受けることが推奨されています。

食道がんの胃カメラ検査での見落としについてよくある質問

ここまで食道がんの検査方法などを紹介しました。ここでは「食道がんの胃カメラ検査での見落とし」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

食道がんの初期症状について教えてください。

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

初期の食道がんでは、約60%は無症状といわれています。自覚症状がなく進行し、がんが大きくなると胸の違和感・食事のつかえ感・飲み込みにくさ・胸の痛みなどが現れます。特に胸の違和感は食道がんの重要なサインですので、早めに受診してください。

食道がんになりやすいのはどのような人ですか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

食道がんの男女比は約6:1で、男性がかかりやすいがんです。特に飲酒と喫煙の影響が大きく、毎日30本以上の喫煙と日本酒換算で1.5合以上の飲酒をしている場合、していない人と比べて食道がんの発症リスクは約40倍となります。

編集部まとめ

食道がんの胃カメラ検査における見落としのリスクについて解説してきました。

食道がんは早期発見できれば手術を必要とせず、内視鏡で切除できます。

しかし、初期の食道がんは胃カメラでも見落とすことがあるため、より正確な検査をしてもらえる病院を選ぶのが大切です。

ヨード染色法やNBIによって食道がんの見落としリスクは大幅に減少するため、病院選びの参考にしてください。

食道がんと関連する病気

「食道がん」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

食道がん症例の約20%では、別の部位に同時にがんが発生して重複がんとなります。食道がんと重複しやすいのは胃がんと喉頭がんで、食道がんが見つかった場合には詳しい検査が必要です。

食道がんと関連する症状

「食道がん」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 食べ物のつかえ感
  • 胸部の違和感
  • 胸や背中の痛み
  • 声のかすれ

食道がんが進行して大きくなると、食道が狭くなり食べ物がつかえるようになります。胸や背中が慢性的に痛くなり、声帯の神経に影響して声がかすれる場合もあります。これらの症状は逆流性食道炎などほかの病気の可能性もありますが、早期治療のためにも早めに検査を受けましょう。

この記事の監修医師