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「キス病(キスによる感染症) 」を発症すると現れる症状はご存知ですか?

公開日:2022/08/06  更新日:2022/08/05
「キス病(キスによる感染症) 」を発症すると現れる症状はご存知ですか?

キス病はキスでうつる感染症で、伝染性単核球症という病気です。思春期を過ぎてから、EBウイルスへの初めての感染で発症することが多く、発熱やのどの痛み、リンパ節の腫れなどの症状が出ます。脾臓破裂や中枢神経症状、血液の病気などの合併症を伴い、重症化することもあります。

今回はキス病の症状や原因、検査、治療法などについて、詳しく解説していきます。

小島 敬史

監修医師
小島 敬史(国立病院機構 栃木医療センター)

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慶應義塾大学医学部卒。医師、医学博士。専門は耳科、聴覚。大学病院および地域の基幹病院で耳鼻咽喉科医として15年以上勤務。2年間米国で基礎研究に従事の経験あり。耳鼻咽喉科一般の臨床に従事し、専門の耳科のみならず広く鼻科、喉頭、および頭頸部腫瘍疾患の診療を行っている。 日本耳鼻咽喉科学会専門医、指導医。日本耳科学会、日本聴覚医学会、日本耳鼻咽喉科臨床学会の各種会員。補聴器適合判定医、補聴器相談医。

キス病とは

キス病とはどのような病気でしょうか?

キス病(kissing disease)は、伝染性単核球症の別の呼び名です。EBウイルスへの初めての感染で生じる急性咽頭炎、扁桃炎です。発熱や倦怠感などの症状もみられます。
キスなどの、唾液を介する経路で感染するのでキス病という別名がつけられています。
EBウイルスに乳幼児が感染しても無症状で経過することが多いのですが、思春期を過ぎてからの感染ではキス病の症状が現れます

キス病の症状

キス病の症状とは?

キス病の症状はどのような特徴がありますか?

主な症状は発熱、のどの痛み、頸部リンパ節の腫れです。
発熱の多くは、38度以上の高熱が1~2週間続きます。のどは真っ赤になり、点状の出血もみられます。リンパ節の腫れは全身にみられ、発症から2週間頃をピークとし、とくに頸部に認められやすいのが特徴です。
そのほかにも倦怠感、まぶたの腫れ、頭痛、肝臓・脾臓の腫れ、腹痛、吐き気・嘔吐、体や腕の発疹などの症状が出ます。
乳幼児期に感染しても無症状か、軽い風邪症状程度ですみますが、思春期を過ぎてからの初めての感染では、キス病の症状が現れます。キス病を発症しても、ほとんどの場合は自然に軽快します。長引いた場合は中枢神経系や血液系の合併症を伴って、重症となるケースもみられます。

中枢神経系の合併症

中枢神経系の合併症にはどのようなものがありますか?

中枢神経系に影響が及ぶと、次のような合併症がみられます。

  • 無菌性髄膜炎
  • 脳炎
  • 急性片麻痺
  • Guillain‐Barre症候群(ギランバレー症候群)
  • 視神経炎
  • 末梢神経炎
  • 脳神経麻痺
  • 横断性脊髄炎
  • 急性小脳失調
  • 中枢神経系のリンパ腫

血液系の合併症

血液系の合併症にはどのようなものがありますか?

キス病では、次のような血液系の合併症を伴う場合があります。

  • 顆粒球減少症
  • 血小板減少症
  • 溶血性貧血(抗i特異抗体による血球破壊)
  • 再生不良性貧血

そのほかの合併症

そのほかの合併症にはどのようなものがありますか?

キス病は、中枢神経症状や血液の病気のほかにも、次のような合併症もみられます。

  • 脾臓の破裂
  • 気道の腫れによる上気道閉塞
  • 肝機能障害
  • 心筋炎・心膜炎
  • B細胞リンパ腫

キス病の原因

キス病の原因について教えてください。

ヘルペスウイルスの一種のEBウイルスへの初めての感染が、キス病を発症する主な原因です。一度感染すると抗体ができ、再感染はしにくくなりますが、EBウイルスは体内のリンパ球の中に潜み続けます。抵抗力が低下したときに発熱やリンパの腫れなどの症状が再燃します。
EBウイルスへの感染でキス病の症状をきたすのは、細胞性免疫反応の過剰反応だと考えられています。本来であれば、異物であるウイルスを排除するのみに働く免疫機能が、EBウイルスに対して過剰に反応し、自分の体まで攻撃してしまいます。
乳幼児期よりも思春期を過ぎてからの方が、細胞性免疫が発達しているため、症状が強く出やすいと考えられています。
サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型、トキソプラズマ原虫に感染したときにも伝染性単核球症と同じような症状がみられることがあります。

キス病はどのようにしてうつりますか?

EBウイルスに過去に感染した人の約15~20%で、EBウイルスの唾液への排出が認められ、既感染者の唾液を介して感染します。
キス病と呼ばれる所以は、伝染性単核球症がキスでうつるためです。キス以外にも、回し飲み、口移し、食器や箸・スプーン・フォークなどのカトラリーの共有、咳やくしゃみで飛んだ唾液でもうつります。
まれに輸血など、血液を介して感染する場合もあります。潜伏期間は長く、30日~60日程度です。

キス病の受診科目

キス病の受診科目とは?

キス病が疑われた場合、何科を受診すればよいでしょうか?

キス病は、のどの症状や発熱などの風邪様の症状が2週間以上認められるのが特徴で、「のどの症状がなかなか治らない」「風邪が長引いている」などの主訴で受診することになります。
キス病はウイルス性の病気であり、抗生物質は効きません。キス病と同じようにのどの症状や発熱などの風邪様の症状が認められる細菌性の扁桃炎との区別がつきにくいため、経過を追って鑑別ができる耳鼻科を受診するのが望ましいでしょう。
急性期を過ぎても症状や血液検査の値が改善しない場合は、血液内科で精査を受ける可能性があります。

キス病の検査

キス病が疑われた場合、どのような検査が行われますか?

若年層の患者で、のどの腫れ、頸部リンパ節の腫れ、腹部の触診で脾臓や肝臓の腫れなどの、キス病が疑われる所見が認められれば血液検査を実施します。
血液検査にて、白血球の増多、異形リンパ球の有無、肝機能障害の有無を確認します。
EBウイルスに関連するVCA抗体、EA抗体、EBNA抗体の抗体検査では、EBウイルス感染の確定診断と、EBウイルスへ初めて感染したのか、過去に感染したのかがわかります。
VCA-IgM抗体が発症してしばらくの間だけ陽性となり、あとからVCA-IgG抗体が陽性を示し、さらにそのあとにEBNA-IgG抗体が陽性となれば、EBウイルスへの初めての感染です。

キス病の治療

キス病はどのような治療を行いますか?

キス病に特別に効く治療法はありません。ウイルス感染症であり、抗生物質も効きません。休息と、それぞれの症状に対する対症療法が治療法です。具体的には、発熱やのどの痛みに対しては解熱鎮痛薬を使い、気道の腫れを伴う場合や重症の際はステロイドで治療します。
肝臓や脾臓の腫れに対しては、体に強い衝撃が加わると肝臓や脾臓が破裂することがあるため、打撲や転倒、外傷に注意し、体がぶつかり合ったり、ボールが当たったりする激しいスポーツは避けなければなりません。
のどの激しい痛みのために食事や水分が取れない場合は、入院して治療を行うこともあります。ペニシリン系抗生物質の使用は、皮膚に発疹が出やすいので禁忌です。
キス病は、一般的には4~6週間で自然によくなっていく病気ですが、6カ月以上症状が続く場合は重症化が考えられます。

キス病の性差・年齢差

キス病に性差・年齢差はありますか?

日本では患者の届け出の義務はないために、正確な患者発生数や性差はわかっていませんが、思春期以降の若年者に多く発症します
EBウイルスは乳幼児の時期にほとんどの人が感染するヘルペスウイルスで、先進国では1~5歳の間に約半数の人が感染するといわれています。日本では70%程度の人が2〜3歳までに感染し、20歳代では90%以上の人が抗体を保有しています。

編集部まとめ

キス病は、伝染性単核球症の別の呼び方です。キスや回し飲み、食器やカトラリーの共有など、唾液を介してうつる病気です。

主な症状は発熱やのどの痛み、リンパ節の腫れで、肝臓や脾臓の腫れ、倦怠感などもみられます。通常は4~6週間で自然に軽快します。気道の腫れ、肝機能障害、中枢神経症状、脾臓破裂、血液の病気などの合併症を伴って重症となるケースもあるため、回復するまでは注意が必要です。

乳幼児よりも思春期を過ぎた若年者の発症が多くみられます。