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「慢性リンパ性白血病の余命」はどれくらい?治療法についても解説!【医師監修】

 更新日:2024/03/05
「慢性リンパ性白血病の余命」はどれくらい?治療法についても解説!【医師監修】

慢性リンパ性白血病(CLL)は、白血病の中でもゆっくり進行する病気です。慢性リンパ性白血病と診断されたら、気になるのが余命ではないでしょうか。

今回の記事では、慢性リンパ性白血病の基礎知識から余命・治療方法・発症までの期間について解説していきます。

ご自身や身近な方に慢性リンパ性白血病の疑いがあったり、慢性リンパ性白血病であると診断を受けた方はぜひ参考にしてみてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

慢性リンパ性白血病とは

血液のがんとして知られている白血病は、血液のもととなる細胞ががん化してしまう病気です。白血病にはがん細胞の増殖スピードによって「急性白血病」「慢性白血病」に分類でき、それぞれ骨髄性とリンパ性に分けられます。以下では、白血病のうち慢性リンパ性白血病の特徴について解説していきます。

Bリンパ球ががん化すること

血液中には赤血球や白血球、血小板などの血液細胞がありますが、慢性リンパ性白血病は白血球の一種であるBリンパ球ががん化し増殖していく病気です。通常はまず骨髄の中で未成熟の血液細胞(血液幹細胞)が作られた後、赤血球や白血球・血小板・リンパ球などの成熟した細胞になります。
Bリンパ球はヒトを感染から守る抗体を作る働きがありますが、慢性リンパ性白血病では血液幹細胞からがん化した異常なBリンパ球が過剰に作られるため、感染に十分対応できません。さらに血液や骨髄内でBリンパ球が増えることで、正常な赤血球や白血球、血小板が減ってしまいます。

自覚症状がなく偶然見つかることが多い

慢性リンパ性白血病はがん細胞がゆっくり増殖するため、初期は自覚症状がほとんどありません。そのため、健康診断や他の病気の治療中に行った血液検査で白血球数の異常を指摘され、偶然見つかるケースが多いです。
血液検査や細胞表面マーカー検査を行い、以下にあてはまる場合に慢性リンパ性白血病と診断されます。

  • 血液中のリンパ球数が5000/µL以上の状態が3ヶ月以上続く
  • 細胞質の乏しい円形〜類円形の核を持つ小型成熟リンパ球が増えている
  • 細胞表面マーカー検査結果で、Bリンパ球の表面マーカーであるCD19,20,23とCD5が見られる

診断された後はリンパ節の腫れや血球減少の程度などによって進行度を判断し、必要に応じて骨髄検査やリンパ節生検・画像検査を行います。

小児が発症することはまれ

日本ではまれな白血病で、日本人・アジア人の発症率は欧米の1/10程度と低くなっています。世界的に見れば成人では2番目に発症率の高い白血病であるものの、小児が発症することはまれです。
白血病は小児がんの中で最も発症頻度が高い病気ですが、割合は急性リンパ性白血病が約70%、急性骨髄性白血病が約25%でありほとんどが急性白血病であることが分かります。

一般的には中高年以降に多い

成人では、一般的に中高年以降に多く見られます。発症する年代は60~70代が多く、60歳以下での発症は30%程度です。また女性よりも男性の方が発症率は高く、女性の約2倍となっています。

慢性リンパ性白血病の余命は?

白血病というと、恐ろしい不治の病だというイメージをお持ちの方もいるのではないでしょうか。慢性リンパ性白血病(CLL)と診断されると、まず気になるのが余命でしょう。以下では、慢性リンパ性白血病の余命がどのくらいなのかについて解説していきます。

進行がゆっくりなため余命は比較的長い

進行スピードは年単位とゆっくりなため、初期の段階では無症状である場合が多く余命も比較的長いとされています。ただし進行するほど予後は悪くなるので、診断が確定した後は現在どの段階なのか病期を確認しておくことが重要です。病期分類にはRai分類とBinet分類がありますが、どちらもリンパ節の腫れなどの診察所見と貧血・血小板減少で評価します。
Rai分類は低リスク〜高リスク、Binet分類はA期〜C期の3段階に病期を分類します。50%生存期間(50%の患者さんが生存できる期間)は、Rai分類の低リスク10年以上・中間リスク8年以上・高リスク6.5年です。
Binet分類ではA期10年以上、B期8年以上、C期は6.5年です。症状が悪化するスピードは個人差がありますが、一般的には進行がゆっくりで診断後も10年以上症状が悪化しない患者さんもいます。さらに症状が現れても薬物療法の効果が得られやすいため、治療しながら長年生きられる方も増えているのです。

直ちに命に関わることが少なく苦しさは感じにくい

初期の段階では自覚症状がないケースが多く、診断されてもすぐに辛い症状は感じにくいため、直ちに命に関わることは少ないでしょう。ただし進行していくと血液や骨髄だけではなくリンパ節や肝臓・脾臓などでもBリンパ球が増殖し、正常な血液細胞が減ることで以下のような症状が現れてきます。

  • 貧血や出血
  • 首や脇の下・鼠径部などの痛みのないリンパ節の腫れ
  • 原因不明の体重減少
  • 食欲不振
  • 極度の全身倦怠感
  • 発熱・感染
  • 大量の寝汗
  • 肋骨よりも下部分の膨満感

他にも、自己免疫性溶血性貧血や自己免疫性血小板減少症などの免疫異常を合併することも多くあります。確定診断後、上記のような症状が見られるようになった場合には医師の診察を受け、今後の治療方法を検討しましょう。

慢性リンパ性白血病の治療法について

慢性リンパ性白血病(CLL)は進行の遅い白血病で、何年も無症状といったケースも多くあります。しかし病気が進行し症状が出てきた場合には、治療が必要です。治療法は、病期や症状の有無などによって変わってきます。

外来での経過観察

初期でまだ症状がなく進行していない段階では、積極的な治療は行わず外来で経過観察をしていきます。これは症状が乏しい段階で治療を受けても生存率に影響しないことが分かっているためです。慢性リンパ性白血病だと診断されても、初期の段階ではほとんど症状は出ず進行もゆっくりなため、慌てて治療をする必要はありません。

長期にわたるコントロールが行われる

慢性リンパ性白血病は完治が難しい病気ですが、治療では長期にわたるコントロールを行っていきます。治療を始めるタイミングは、病気の進行スピードや症状の有無・リンパ球の数などから総合的に判断します。積極的治療を始める症状の目安は、以下の通りです。

  • 減量によらない6ヶ月で10%以上の体重減少
  • 介助が必要なほどの強い全身倦怠感
  • 感染症ではない38℃以上の発熱が2週間以上続く
  • 大量の寝汗が続く
  • 貧血や血小板減少が進行している
  • ステロイド薬や他の標準治療が効かない自己免疫性溶血性貧血や血小板減少症を合併している
  • 脾臓の腫れが進行している
  • 10cm以上のリンパ節がある・リンパ節の腫れが急速に進行している
  • リンパ球数が急速に増加している

慢性リンパ性白血病は化学療法での治癒が難しいため薬物療法によってがん化したBリンパ球を減らし、症状を長期コントロールしながら病気と付き合っていくことになります。

症状の有無により治療法が違う

治療法は症状の有無によって異なり、無症状の場合には外来で経過観察を行います。リンパ節や肝臓・脾臓の腫れ、貧血や血小板減少などの症状が現れた場合には、薬物療法を検討することになるでしょう。
治療法にはさまざまな選択肢がありますが、フルダラビン・シクロフォスファミド・リツキシマブを併用したFCR両方が標準治療です。ただし毒性が強いため、年齢や合併症などを考慮し他の療法を選択するケースもあります。
また予後不良の染色体異常がある・1年以内に再発したなどの状況によっては、同種造血幹細胞移植が行われる場合もあります。

染色体や遺伝子異常によっても違いがある

染色体や遺伝子異常によっては、通常の治療方法に抵抗性があり予後が悪くなるケースがあります。17番染色体の欠失やTP53遺伝子の変異・欠失があると、標準治療であるFCR療法が効きにくく完全寛解しても再発しやすいです。
またNOTCH1遺伝子・SF3B1遺伝子の変異がある場合も予後が悪いことが分かっています。そのため、治療方針を決めるためにも染色体や遺伝子の検査を行い患者さんに適切な治療法を選択することが重要です。

慢性リンパ性白血病は発症するまでの期間は長い?

患者さんの約半数は、健康診断などの血液検査がきっかけで分かります。また初期の段階で見つかることが多く、自覚症状がないことがほとんどです。病気が判明しても進行がゆっくりなため、発症するまでに長い期間を要することも少なくありません。中には10年以上無症状のままという患者さんもいます。

急性リンパ性白血病の余命についてよくある質問

慢性リンパ性白血病が疑われたり診断されたりした患者さんにとって、気になるのが余命ではないでしょうか。以下では、慢性リンパ性白血病の余命についてよくある質問に回答していきます。

慢性リンパ性白血病と慢性骨髄性白血病の余命は同じくらいでしょうか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

どちらもゆっくり進行する慢性白血病ですが、慢性リンパ性白血病は10年以上無症状・無治療で生存している患者さんも多くいます。一方で慢性骨髄性白血病は、以前は骨髄移植をしなければ治療困難とされ、病気が診断されてからの平均余命は3~5年でした。病期が急性転化になると抗がん剤が効きにくくなり、急性骨髄性白血病と同じような状態となり余命は一般的に数ヶ月となりますが、10年ほど前に新薬が開発されたことで5年生存率が90%以上に改善されています。

慢性リンパ性白血病にかかった際の注意点を教えてください

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

薬物療法を開始すると、健康な状態では影響がないような細菌やウイルスなどに感染しやすくなります。そのため、手洗い・うがいをしっかり行ったり、人が多い場所に出かける際はマスクを着用したりなど感染予防を心がけましょう。またケガをするとその傷が感染源となる可能性があるため、注意が必要です。食生活を見直し、栄養バランスが良い状態を保つことも大切でしょう。

慢性リンパ性白血病の生存率を教えてください

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

生存率は、症状が安定している期間の長さや他の病気にもかかっているかどうか、染色体異常や遺伝子変異などの予後不良因子の有無によって違ってきます。病期別の50%生存期間は、Rai分類では低リスク10年以上・中間リスク8年以上・高リスク6.5年、Binet分類ではA期10年以上・B期8年以上・C期は6.5年です。

編集部まとめ

今回は急性リンパ性白血病の原因をはじめとして、その症状・診断などについて詳しく解説いたしました。

心当たりの症状がある場合には早急な対応が必要だということがご理解いただけたかと思います。

急性リンパ性白血病は血液のがんといわれています。そのため診断による早期発見や治療方針の決定がとても重要で、さまざまな検査には大きな意味があるのです。

また二次がんについても知っておくことで、いざとなったときに冷静に医師と相談できるでしょう。

ご自身もしくはご家族やお知り合いなど身の回りで同じような症状に悩まされているという方がいらっしゃったら、早めに医療機関への受診をおすすめします。

慢性リンパ性白血病と関連する病気

慢性リンパ性白血病と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

いずれも白血病ですが、それぞれ進行スピードや症状・治療方法・予後が大きく異なり、慢性リンパ性白血病は進行スピードが遅く、初期はほとんど症状がないのが特徴です。健康診断などの血液検査で偶然分かることが多いので、検査で異常が見られた場合には早めに医療機関を受診しましょう。

慢性リンパ性白血病と関連する症状

慢性リンパ性白血病と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 原因不明の体重減少
  • 強い全身倦怠感
  • 食欲不振
  • 38℃以上の発熱
  • 大量の寝汗
  • 貧血
  • リンパ節の腫れ

慢性リンパ性白血病は初期の段階では自覚症状がないことが多く、病気が進行してくると上記のような症状が見られるのが特徴です。強い症状が長く続くなど、普段とは違う異常を感じたら早めに医療機関の受診をおすすめします。

この記事の監修医師