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「大腸がんの余命」はご存知ですか?ステージ4の余命・末期症状も医師が解説!

 公開日:2024/02/14
「大腸がんの余命」はご存知ですか?ステージ4の余命・末期症状も医師が解説!

大腸がんの余命はどれくらい?Medical DOC監修医が大腸がんのステージ別の余命・末期症状・検査法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

飯田 綾子

監修医師
飯田 綾子(医師)

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2009年奈良県立医科大学卒業。大阪市立大学医学部附属病院で初期臨床研修後、大阪市立総合医療センター消化器内科レジデントを経て、大阪市立大学大学医学部附属病院肝胆膵内科で学位を取得。現在は患者さんの不安に寄り添い、何でも相談できるかかりつけ医を目指して、大阪市内のクリニックで高血圧や糖尿病など主に慢性疾患の外来や在宅診療を行っている。消化器病専門医、肝臓専門医、総合内科専門医、認定産業医の資格を有する。

「大腸がん」とは?

大腸がんは、大腸(結腸・直腸)に発生するがんで、腺腫という良性のポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものがあります。大腸の粘膜に発生した大腸がんは次第に大腸の壁に深く侵入し、やがて大腸の壁の外まで広がります。また、大腸の壁の中を流れるリンパ液に乗ってリンパ節転移をしたり、血液の流れに乗って肝臓、肺など別の臓器に転移したりします。日本人ではS状結腸と直腸にがんができやすいといわれています。2020年に発表されたデータではがんの死亡数で女性1位、男性2位の疾患です。

大腸がんのステージ別の余命・生存率

大腸がん・ステージ0の余命・生存率

ステージ0の治療に関して、5年生存率は97.6%です。このステージでは、がんは粘膜内にとどまっており、内視鏡による治療が可能です。治療方法にはいくつかの種類があります。
一つ目は、ポリペクトミーです。これは、キノコのような形をした病変に対して行われ、内視鏡の先端からスネアという輪状の細いワイヤーを使い、茎を絞めつけて高周波電流で切り取る方法です。
次に、内視鏡的粘膜切除術(EMR)があります。これは病変に茎がなく、盛り上がりがなだらかな場合に適しており、病変の下に生理食塩水を注入後、周囲の正常な粘膜と共に病変を切り取る方法です。
さらに、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)という方法もあります。これは主に大きな病変に対して行われ、病変の粘膜下層に生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウムを注入し、周りを高周波ナイフで切開してはぎ取る方法です。EMRに比べて治療時間が長く、出血や穿孔のリスクも少し高くなります。
治療後は病理検査が行われ、がんの種類や異型度などを詳しく調べます。この検査は、体の一部から採取した細胞や病変の一部を薄く切り出して顕微鏡で観察するものです。病理診断は専門の病理医が行い、がんの診断を確定します。
ステージ0の大腸がんは、内視鏡治療のみで完治する可能性が高いですが、病理検査の結果によっては再発やリンパ節転移のリスクがある場合、追加の手術が必要になることもあります。

大腸がん・ステージ1の余命・生存率

ステージ1の治療に関しては、5年生存率は93%です。ステージ1の大腸がんは、がんが大腸の壁の筋肉層(固有筋層)までにとどまっており、リンパ節転移がない状態です。これはステージ0のがんとは異なり、がんの浸潤がより深いという点で違います。
治療に関しては、大腸の壁への浸潤が浅い場合、ステージ0のがんと同様に内視鏡治療が行われます。しかし、浸潤が深い場合には、内視鏡治療だけではがんを完全に取り除くことが困難であり、リンパ節転移の可能性も考えられます。そのため、手術が必要になり、がんの部分を含む腸管と転移の可能性のあるリンパ節を切除します。
術後は病理検査と病理診断を行い、がんの種類や状態を詳しく調べます。
手術後の再発率は5.7%と報告されています。治療後3年目まで3カ月ごとの血液検査や6カ月ごとの画像検査(CT検査)が必要です。また、定期的な大腸内視鏡検査も行われ、これらの検査期間はおおよそ5年間です。これらの検査により、再発の兆候を早期に捉え、適切な対応をすることができます。

大腸がん・ステージ2の余命・生存率

ステージ2の治療に関しては、5年生存率は88.2%です。ステージ2の大腸がんは、がんが大腸の壁の筋肉の層(固有筋層)の外にまで浸潤している状態で、ステージ1との主な違いはこの浸潤の程度にあります。リンパ節転移はないものの、がんの進行はステージ1よりも進んでいます。
治療方法としては、手術が中心です。この手術では、がんの部分を含む腸管と、転移の可能性がある範囲のリンパ節を切除します。また、再発リスクが高い場合には、術後に化学療法を行うこともあります。術後は病理検査と病理診断を行い、がんの種類や状態を詳しく調べます。
再発率が15%と報告されています。治療後3年目まで3カ月ごとの血液検査や6カ月ごとの画像検査(CT検査)が必要です。また、定期的な大腸内視鏡検査も行われ、これらの検査期間はおおよそ5年間です。これらの検査により、再発の兆候を早期に捉え、適切な対応をすることができます。

大腸がん・ステージ3の余命・生存率

ステージ3の治療に関しては、5年生存率は78.5%です。このステージでは、がんの深達度に関わらずリンパ節転移が存在することが特徴です。これはステージ2との主な違いであり、がんの進行状態がより深刻であることを示しています。
治療法としては、まず手術によってがんの部分を含む腸管と、転移の可能性がある範囲のリンパ節を切除します。その後、抗がん剤を用いた治療が行われます。この抗がん剤治療は原則6ヶ月間行われますが、患者の状態に応じて3ヶ月で終了することもあります。
術後は病理検査と病理診断を行い、がんの種類や状態を詳しく調べます。
再発率は31.8%と報告されています。治療後3年目まで3カ月ごとの血液検査や6カ月ごとの画像検査(CT検査)が必要です。また、定期的な大腸内視鏡検査も行われ、これらの検査期間はおおよそ5年間です。これらの検査により、再発の兆候を早期に捉え、適切な対応をすることができます。

大腸がん・ステージ4の余命・生存率

ステージ4の治療に関して、5年生存率は33.4%です。ステージ4の大きな特徴は、他の臓器への転移や腹膜転移があることで、これはステージ3との主な違いです。このステージでは、がんが大腸だけでなく、体の他の部位にも広がっています。
治療方法に関しては、大腸にあるがんを取り除くだけでは不十分であり、他の臓器に転移したがんも残っている可能性が高いです。肝臓や肺などに転移したがんが手術で切除可能であれば、積極的に手術が行われます。場合によっては、何回かに分けて手術を行うこともあります。また、転移の場所や数、その時点での身体の状況に応じて、手術以外の治療法(薬物療法や放射線療法など)を行います。
手術後のフォローアップとしては、治療後3年間は3ヶ月ごとの血液検査や6ヶ月ごとの画像検査(CT検査)を受けることが一般的です。さらに、定期的な大腸内視鏡検査も行われ、これらの検査は約5年間必要とされています。これにより、再発や他の部位への転移の兆候を早期に検出し、適切な対応をとることが可能です。

大腸がんの末期症状

貧血

大腸がんが進行すると、がんの表面の粘膜が脆くなりじわじわ出血が起こり、貧血が進行します。貧血では立ちくらみ、息切れ、めまい、ふらつき、動悸といった症状が見られます。大腸がんで出血している場合は便に血液が付着することがあります。日頃から排便後に自分の便の色を見る習慣を身につけると良いでしょう。

腸閉塞

大腸がんの終末期には、がんがかなり大きくなることがあります。この大きくなった癌組織によって便の通り道が狭くなってしまうと腸閉塞を起こします。腸閉塞では狭くなった腸より先に便が進まないため、腹痛、便秘、嘔吐、体重減少などが起こります。腸閉塞がきっかけで大腸がんが見つかるケースもあります。

大腸がんの検査法

大腸がんが疑われた場合には、がんかどうかを確定するために、まず大腸内視鏡検査が行われます。続いて必要な場合、がんのある正確な部位や広がりを調べるため、注腸造影検査やCT検査、MRI検査などが行われます。

直腸診

直腸診は医師が指を肛門から直腸内に挿し込み、直腸内ががんで狭くなっていないかや血が出ていないかを調べる検査です。入院の必要はありません。

注腸造影検査

注腸造影検査はバリウムと空気を肛門から注入し、X線写真を撮る検査です。この検査でがんの位置や大きさ、形、腸の狭さの程度などが分かります。注腸造影検査の前には、正確で安全な検査を行うために腸管内をきれいにする必要があります。そのため検査前日から検査食や下剤を服用し、当日に腸管洗浄液を飲みます。
入院は基本的に必要ありませんが、病院によっては事前入院が必要なところもあります。

大腸内視鏡検査

大腸内視鏡検査は内視鏡を肛門から挿入して、直腸から盲腸までの大腸全体を詳しく調べる検査です。ポリープなどの病変が見つかった場合は、病変全体あるいは一部の組織を採取して、病理診断が行われます。病変部の表面の構造をより精密に検査するために、粘膜の表面の模様や血管の輪郭、色を強調する画像強調観察や拡大観察が行われることもあります。
大腸内視鏡検査の前には、注腸造影検査と同じように、腸管内をきれいにします。前日に入院して検査する病院もあります。

CT・MRI検査

CT検査はX線を、MRI検査は磁気を使用して、体の内部を描き出す検査です。治療前に、周りの臓器へのがんの広がりや転移がないかなどを調べることができます。検査で入院の必要はありません。

「大腸がんの余命」についてよくある質問

ここまで大腸がんの余命・生存率などを紹介しました。ここでは「大腸がんの余命」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

大腸がんを患い、ストーマ(人工肛門)を造設した場合の余命はどれくらいでしょうか?

飯田 綾子飯田 綾子 医師

ストーマを造設したからと言って余命に影響があることはありません。また、食事に特別な制限はありません。適度なスポーツや旅行も可能です。ほとんどの患者さんが手術前の職場や学校に復帰されています。ストーマが自然肛門と違うのは,便の出る場所が腹部になることと、ストーマには肛門括約筋がなく、排便や排ガスを自分でコントロールすることができないことです。日常生活をする上で問題があると感じた場合は病院で相談してください。「ストーマ外来」を設けて、医師や専門の看護師が人工肛門に関する管理・教育を行っている病院もあります。

大腸がんがリンパ節や肝臓に転移した場合の余命について教えてください。

飯田 綾子飯田 綾子 医師

大腸がんは、リンパ節転移や肝臓転移した場合でも、手術によって治癒する可能性があります。また、手術ができない場合にも、薬物療法や放射線治療を行います。がんを手術ですべて取り切ることができれば、約40%の人で完治が期待できるとのデータもあります。(ステージ4の5年生存率は33.4%です。)

編集部まとめ

この記事を通して、大腸がんの各ステージごとの余命や生存率、検査・治療ついて理解していただけたでしょうか。大腸がんは早期発見・早期治療が非常に重要です。もし気になる症状がある場合は、遠慮せずに医療機関を受診してください。また、定期的な検査によって症状が出る前に大腸がんを発見できれば治療の選択肢が広がります。

「大腸がんの余命」と関連する病気

「大腸がんの余命」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

潰瘍性大腸炎やクローン病、その他のがんが背景にある方はそのような病気を持っていない人と比べて大腸がんリスクが高いと考えられています。

「大腸がんの余命」と関連する症状

「大腸がんの余命」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

大腸がんは自覚症状がなかなか出ないことがあります。血便など気になることがあれば早めに医療機関を受診しましょう。症状が出る前に大腸がんが見つかるよう定期健診を受けることをお勧めします。

この記事の監修医師