「スキルス胃がんの原因」はご存知ですか?症状や検査法も解説!【医師監修】
スキルス胃がんは、食欲不振・体重減少・上腹部痛・嘔気などの症状に気付くことが重要です。
また「原因は何だろうか」「検査方法にはどのようなものがあるのだろうか」など、スキルス胃がんに対する疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事ではスキルス胃がんの原因や早期発見のポイントについて解説しています。
気になる症状のある方はぜひ参考にしてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
スキルス胃がんの原因
スキルス胃がんの原因は、ピロリ菌感染が関与していると考えられています。
ピロリ菌は胃粘膜に感染し、慢性的な炎症を引き起こすことで鳥肌胃炎と呼ばれる病態を引き起こします。
この鳥肌胃炎が進行すると、がんになるリスクが高まることが特徴です。
鳥肌胃炎とは、胃内の粘膜が炎症を起こし、一部が鳥肌状に変化する状態を指します。
鳥肌胃炎は、胃がんのリスクを高める主要な因子であり、特に未分化癌の発生に関与しています。
また鳥肌胃炎が起こる原因はピロリ菌です。ヘリコバクターピロリは、胃の粘膜に感染する菌であり、胃炎が主な原因です。
またピロリ菌感染はスキルス胃がんのリスクを高めるとされています。
長期間の感染が胃内の炎症を引き起こし、さらなる悪性化の可能性があると考えられています。
スキルス胃がんの症状は?
スキルス胃がんの症状には次の4つが挙げられます。
- 食欲不振
- 体重減少
- 上腹部痛
- 嘔気
食欲不振は、胃の一部ががんによって占拠され、胃壁が厚くなるため食べ物の受容性が低下することが原因です。
体重減少は、がんによって代謝が亢進することや食事摂取が減少することによって起こります。
上腹部痛は、がんが進行して周囲の組織や神経に圧迫を加えることで発生します。
また嘔気は胃がんによる消化不良や胃の運動障害が関与していることが特徴です。
以下でそれぞれの症状について詳しくみていきましょう。
食欲不振
スキルス胃がんの症状には、食欲不振が挙げられます。
食欲不振とは、食べることへの意欲が減退し、食事摂取量が基準より下回ることです。がんの進行によって腫瘍が拡大し、胃の容量が減少することで食欲が低下します。
がんが進行すると、胃の機能が低下し消化不良・吐き気・食べ物への嫌悪感などが現れるため、これらの症状が食欲不振を引き起こす可能性があります。
体重減少
スキルス胃がんにおいて、体重減少は腫瘍が拡大し、食欲不振や消化不良によって栄養摂取が不十分になることで起こります。
また、がんの進行によって代謝が活発化し、体内のエネルギーが消費されることも体重減少の要因です。そのため急な体重減少などの症状には注意が必要です。
上腹部痛
スキルス胃がんでは、上腹部痛が起こることがあります。
上腹部痛が起こる理由には腫瘍の拡大・炎症の発生・消化不良の3つが挙げられます。
まずは腫瘍の拡大により胃の中に存在する腫瘍が拡大し、周囲の組織や神経を圧迫することで、痛みを引き起こすのです。
次に炎症の発生によるものです。スキルス胃がんは炎症や瘢痕組織(はんこんそしき)の形成を引き起こすことがあります。これが上腹部痛を引き起こす場合があります。
最後に消化不良によるものです。スキルス胃がんは、胃の正常な消化機能を妨げることがあります。
これによって食物が胃内で滞留し、消化不良や過剰ガスの発生し上腹部痛を引き起こすことがあります。
嘔気
スキルス胃がんの症状の1つに嘔気が挙げられ、腫瘍の圧迫と消化不良によって起こります。
胃の中に存在する腫瘍が周囲の組織や神経を圧迫し、胃の正常な運動や消化機能が妨げられることがあります。
内容物の胃内滞留が嘔気を引き起こす要因です。
さらに胃の正常な消化機能を妨げることで食物が胃内で滞留し、胃の刺激を引き起こして嘔気を誘発します。
スキルス胃がんの検査方法
スキルス胃がんの検査方法には次の5つの方法があります。
- CT検査
- MRI検査
- バリウム検査
- 上部消化管内視鏡検査
- 腹部エコー検査
以下でそれぞれについて詳しくみていきましょう。
CT検査
CT検査はがんへの血液の流れを観察するために行います。血管内に造影剤を投与することで、複数の画像を撮影する方法です。
胃がんの有無を確認するだけでなく、遠隔転移の有無を調べる際にもこの検査は行われます。
検査前の造影剤の注入時には、一時的に熱感が現れます。
また造影剤を使用するため、検査をする数時間前から食事を摂ることはできません。
造影剤の副作用としては、吐き気・かゆみ・くしゃみ・発疹・血圧低下・呼吸低下などが挙げられます。
造影剤によって副作用が出た方・喘息・アレルギーが出た方などは、検査を受ける前に医師に伝えることが大切です。
MRI検査
MRI検査は磁気共鳴画像検査であり、がんの有無・がんの大きさ・浸潤を調べるための検査です。
MRI検査は強力な磁石と電波を利用した検査であり、磁場が発生するトンネル状の装置の中に入ることで検査を受けられます。
強力な磁石と電波を使用するため、ペースメーカーなどの金属類が体内に入っている方は注意が必要です。
またMRI検査におけるトンネル状の装置は、狭くて圧迫感があるため、閉所恐怖症の方には受けることが難しい場合があります。
検査を受ける前に自分の状態を医師と相談するようにしましょう。
バリウム検査
バリウム検査は、胃や食道の内部を詳しく観察するための検査方法です。
バリウムと呼ばれる特殊な液体を摂取し、内部の組織や器官をより明瞭に観察する検査です。
バリウムを摂取した後、X線装置を使用することで、バリウムが胃や食道内に広がった状態での様子を観察できます。
この検査で分かることは、スキルス胃がんの存在・形状・大きさ・位置・他の組織や器官に広がっているかどうかなどです。
バリウムの摂取により、一時的な不快感・腹部の膨満感・便の色の変化などの副作用が起こることがあります。
上部消化管内視鏡検査
上部消化管内視鏡検査とは、食道・胃・十二指腸を直接観察し、がんの有無・形状・位置を評価する検査です。
一般的には鼻や口から内視鏡を挿入し、内視鏡の映像をモニターに表示して医師が観察します。
上部消化管内視鏡検査では内視鏡の先端には照明やカメラがあり、胃壁に存在するがんを確認することができます。
また上部消化管内視鏡検査では必要に応じて生検も行われ、内視鏡を通じて組織のサンプルを取ることで、がんの細胞の病理検査による正確な診断が可能です。
上部消化管内視鏡検査の副作用として不快感や嘔気などが生じる可能性があります。
また内視鏡挿入中の合併症には出血・穿孔・感染などが挙げられます。
腹部エコー検査
腹部エコー検査はがんの位置・がんの形・大きさ・がん周辺の臓器との関係などを把握するために行います。
方法はエコープローブを体の表面に当て、返ってきた反射の状態を高周波音波を使って画像にするというものです。
ほとんどの場合は検査の数時間前から食事を摂ることはできませんが、骨盤内の臓器を見る場合は水分をとり排尿を我慢しておきます。
検査の仕方はベッドへ横になり、超音波が伝わりやすくするためにゼリーを塗って、超音波を当てるというものです。
検査自体に痛み・放射線はなく体の負担が少ないため、妊婦・高齢者でも安心して受けられます。
スキルス胃がんの早期発見のポイントについて
スキルス胃がんの早期発見は重要です。早期発見のポイントは4つあります。
1つ目は症状の変化に注意することです。胃がんの初期段階では症状がわずかですが、次のような症状がある場合は注意が必要です。
- 消化不良や胸焼けの頻度が増している
- 食欲の低下や食後の満腹感がある
- 体重の減少や貧血がみられる
- 吐血や黒色便が発生している
以上のような症状がみられる場合はスキルス胃がんの症状の可能性が高いため、病院の受診をおすすめします。
2つ目はスクリーニング検査の受診です。スキルス胃がんのスクリーニング検査としては、上部消化管内視鏡検査が一般的です。
各自治体等において、一定の年齢やリスク要因を持つ人々を対象にした胃がん検診等を実施している場合があるため、活用すると良いでしょう。
3つ目は病歴や家族歴の確認です。過去に胃がんの既往歴や家族に胃がんの病歴がある場合は、罹患リスクが高まるため、自身の病歴や家族歴を把握しましょう。
4つ目は喫煙や大量の塩分摂取を控えることです。
喫煙や大量の塩分摂取は胃がんのリスク要因とされているため、できる限り摂取を控えることが望ましいでしょう。
「スキルス胃がん」についてよくある質問
ここまでスキルス胃がんの原因・予防法などを紹介しました。ここでは「スキルス胃がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
スキルス胃がんの初期症状について教えてください
中路 幸之助(医師)
スキルス胃がんの初期症状には、お腹の不快感・食欲低下・胸やけなどがありますが、早期の場合には症状がでないことがほとんどです。そのため初期の段階でがんを発見するためには、症状の有無に関わらず、定期的に検査を受けることが大切です。
スキルス胃がんになる確率は?
中路 幸之助(医師)
スキルス胃がんになりやすい要因として、喫煙やピロリ菌感染が挙げられます。そのため、普段から喫煙している人や、ピロリ菌に感染している方はスキルス胃がんとなる確率が上昇します。スキルス胃がんになる確率を下げるためには禁煙やピロリ菌除去が重要です。
編集部まとめ
スキルス胃がんを早期に発見するためには症状の変化に注意することが重要です。
「消化不良や胸焼けの頻度が増し、食欲の低下がみられる」「体重の減少や貧血がみられる」「吐血や黒色便が発生する」などの症状がある場合は注意が必要です。
スキルス胃がんの症状であることを視野に入れ、迷わず病院の受診をおすすめします。
またスキルス胃がんの予防や早期発見には、定期的なスクリーニング検査に加え、バランスの取れた食事や健康的なライフスタイルの維持が重要です。
医師との相談や指導を受けることもおすすめです。
スキルス胃がんと関連する病気
「スキルス胃がん」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
スキルス胃がんはがんの進行が早いケースが多くみられるため、早めに治療することが大切です。
スキルス胃がんと関連する症状
「スキルス胃がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 腹部のはり
- 腹痛
- 貧血症状
- 食欲不振
- 体重減少
初期の場合は症状に気付きにくいケースもあります。少しでも異変に気づくためにも、定期的に検診を受けることが何より重要な対策になります。