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H2ブロッカーって何? どうして即効性があるの?

 更新日:2023/03/27
H2ブロッカーって何? どうして即効性があるの?

胃痛は耐え難い症状の1つです。そんな胃痛を抑える胃薬の中に「H2ブロッカー」というものがあるのをご存知でしょうか。聞き慣れない名前なので、効果をイメージしづらかったり服用することに不安を感じたりする方もいるのではないでしょうか。そこで、今回はH2ブロッカーについて、薬剤師の本多さんに詳しく話を聞きました。

本多 修平さん

監修
本多 修平(薬剤師)

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九州保健福祉大学薬学部を卒業後、総合病院で経験を積み、現在は精神科の門前薬局に勤務。薬についての正しい情報を発信するため、地域住民の啓蒙活動に力を入れている。2022年1月〜ライターとしても活動中。

H2ブロッカーは胃酸の過剰分泌を抑える

H2ブロッカーは胃酸の過剰分泌を抑える

編集部編集部

はじめに、H2ブロッカーという薬について教えてください。

本多 修平さん本多さん

ヒスタミンH2受容体(以下、H2受容体)を遮断することで、胃酸分泌を抑える胃薬です。胃酸の分泌には3つの物質が関わっています。そのうちの1つが「ヒスタミン」です。通常、ヒスタミンが胃壁細胞にある「H2受容体」に結合することで、胃酸の分泌が促進されるのですが、ここにH2ブロッカーが入るとH2受容体が遮断されるので、ヒスタミンがH2受容体に結合できなくなります。その結果、胃酸の分泌が抑えられるのです。

編集部編集部

胃薬ということは、胃痛の時に服用するのですよね。

本多 修平さん本多さん

はい。ストレスや食べすぎ、飲みすぎによる胃痛に加え、胸やけなどの際にも使われます。通常、胃酸で胃が傷つかないように、胃の内側表面を胃粘膜が保護しています。ストレスや食べすぎで胃酸が増えると、胃粘膜による保護が追いつかず、胃が傷ついて胃痛を起こします。また、胃酸が食道へ逆流した結果、胸やけが起こります。これらの症状は、胃酸の過剰分泌を抑えることで改善します。処方せん医薬品のH2ブロッカーには、胃・十二指腸潰瘍の適応もあります。

編集部編集部

薬局やドラッグストアでも購入できますか?

本多 修平さん本多さん

購入できます。「ガスター10®︎」という商品名を聞いたことがあるのではないでしょうか。この「ガスター10®︎」に含まれる成分が「ファモチジン」というH2ブロッカーです。もともと、ファモチジンは処方せんが必要な薬でしたが、1997年に市販薬として登録されました。

編集部編集部

ほかの胃薬との違いを教えてください。

本多 修平さん本多さん

H2ブロッカーは胃酸分泌抑制薬で、胃潰瘍治療薬に分類されます。胃潰瘍治療薬には、ほかに中和薬、防御因子増強薬があります。中和薬は、胃内の酸性度を下げることで、胃が傷つくのを防ぎます。即効性がある一方で持続性がないため、1日に数回の服用が必要で、主に一時的な症状の緩和に用いられます。防御因子増強薬は、胃酸から胃を守る胃粘膜の防御力を上げる薬です。即効性はなく、穏やかに作用するのが特徴です。治療においては補助的に使われることが多く、主に痛み止めによる胃潰瘍予防に使用されている印象です。胃酸分泌抑制薬の中にも数種類ありますが、医療の現場で広く用いられているのは、H2ブロッカーとPPIだけです。

編集部編集部

ちなみに、PPIとは何ですか?

本多 修平さん本多さん

H2ブロッカーよりも強力に、胃酸の分泌を抑える薬です。PPIは、胃酸を分泌する「プロトンポンプ」と呼ばれる機構の働きを直接妨げます。PPIは処方せん医薬品のみの取り扱いとなっています。

H2ブロッカーは速やかに症状を改善する

H2ブロッカーは速やかに症状を改善する

編集部編集部

服用してからどのくらいで効きますか?

本多 修平さん本多さん

服用後30〜60分程で効いてきます。遅くとも2時間後には、胃痛などの症状は改善しているでしょう。持続性もあり、効果の持続時間は10〜12時間です。

編集部編集部

どうして即効性があるのですか?

本多 修平さん本多さん

服用後すぐに吸収され、胃酸の分泌を抑えるからです。通常、胃内のpHは約1.5付近ですが、H2ブロッカーを服用した60分後には、pHは4〜5まで上昇するというデータもあり、短時間で胃酸の分泌が抑えられていることが分かります。

編集部編集部

効果的な服用タイミングを教えてください。

本多 修平さん本多さん

胃痛や胸やけの症状を自覚したタイミングで飲んでください。食事の有無に関わらず服用できます。朝起きた時から症状がある方は、寝る前に飲むと効果的です。胃酸の基礎分泌は夜間に亢進するので、H2ブロッカーが寝ている間の胃酸分泌をコントロールして、朝の胃症状を予防できます。

H2ブロッカーの注意点

H2ブロッカーの注意点

編集部編集部

副作用にはどのようなものがありますか?

本多 修平さん本多さん

一般的な副作用では、便秘や下痢、口の渇き、食欲低下があります。注意が必要な副作用に発熱、ダルさ、喉の痛み、脱力感、青あざ、呼吸困難感などがあり、これらの症状が現れた場合はすぐに受診してください。65歳以上の高齢者では、錯乱状態になったり、認知症のような症状が出たりすることがありますが、服用をやめると速やかに改善します。

編集部編集部

長期間飲み続けても大丈夫ですか?

本多 修平さん本多さん

市販のH2ブロッカーを自己判断で飲み続けるのは危険です。胃がんなどの重要な病気の発見が遅れる可能性があるからです。3日間続けても症状が治まらない場合や、短期間に何度も使う必要がある場合は受診をおすすめします。また、高齢者や腎臓の悪い方では、長期服用によって副作用が出やすくなる可能性があります。

編集部編集部

耐性ができることはありますか?

本多 修平さん本多さん

耐性については様々な報告がありますが、継続服用による耐性が問題となった報告は見つかりません。いずれにしても、医師の監督のもと服用を続けるのであれば問題ないでしょう。

編集部編集部

飲み合わせが悪い薬はありますか?

本多 修平さん本多さん

一部の抗真菌薬、抗パーキンソン病薬、抗がん剤、抗てんかん薬、抗HIV薬など、多くの薬物と相互作用を起こす可能性があります。市販のH2ブロッカーを使いたい場合は、医師または薬剤師に相談してみましょう。

編集部まとめ

H2ブロッカーは胃酸の分泌を抑える胃薬で、即効性と持続性を兼ね備えていることが分かりました。正しく使えば心強い薬である一方、重要な病気の発見が遅れる可能性や飲み合わせの問題など、使用前には注意すべきポイントをきちんと理解する必要がありそうです。

この記事の監修薬剤師