「直腸がんの症状」はご存知ですか?ステージ別の治療法も解説!【医師監修】
直腸がんとは、直腸部に発生する大腸がんのひとつです。
「直腸がんの症状にはどのようなものがあるのだろうか」、「病期別に治療方法は異なるのだろうか」など、直腸がんに対する疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では直腸がんの症状をはじめとし、ほかの大腸がんの種類や病期別の治療方法について解説しています。
気になる症状のある方はぜひ参考にしてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
直腸がんの症状は?
直腸がんの症状には、以下のようなものがあります。
1つ目は血便であり、便中に血が混じることがあります。これは直腸がんが出血している可能性があるためです。血便は明るい赤色の場合もあれば、便全体が暗い色調である場合もあります。
2つ目は便秘や下痢です。直腸がんの症状によって、便通に変化が生じることがあります。便秘の症状に悩む方がいる一方で、頻繁な下痢症状に悩む方もいます。
3つ目は腹痛です。直腸がんが進行すると、腸内の圧力や腫瘍の成長によって腸の不快感や痛みが生じることがあります。この痛みは通常は下腹部に集中し、排便後に軽減することがあります。
4つ目は体重減少です。直腸がんでは、食欲不振や消化の問題により体重が減少することがあります。また腫瘍の成長やがん細胞の代謝活動によっても体重が減少する可能性もあります。
5つ目は貧血です。腫瘍が出血している場合や悪液質によって栄養不足が生じると、貧血が進行し、疲れやすさが増すことがあります。
大腸がんの種類について
大腸がんの種類には次のようなものが挙げられます。
- 上行結腸がん・盲腸がん
- 横行結腸がん
- 下行結腸がん
- S状結腸がん
- 直腸がん
- 肛門がん
以下でそれぞれの種類について詳しくみていきましょう。
上行結腸がん・盲腸がん
上行結腸がんは、大腸の一部である右側結腸に発生するがんのことを指します。
大腸がんは一般的に結腸がんや直腸がんに分類されますが、その中でも上行結腸がんは結腸の右側に位置し、半月状結腸から盲腸へと続く部分です。上行結腸がんは、他の大腸がんと比較して初期症状が現れにくいとされています。
また大腸がんの種類には盲腸がんもあり、症状に乏しく虫垂炎をおこして発見されやすいのが特徴です。
横行結腸がん
横行結腸がんは、大腸の一部である左側結腸に発生するがんのことを指します。
横行結腸は結腸の左側に位置し、盲腸から次の下行結腸につながる部分です。上行結腸がんと同様に、横行結腸がんも初期症状が現れにくいため、早期の発見と治療が重要です。
横行結腸がんの診断方法は大腸内視鏡検査・血液検査・画像検査などが挙げられます。
下行結腸がん
下行結腸がんは、大腸の一部である直腸から上行結腸に続く部分に発生するがんのことを指します。下行結腸がんの症状には腹部不快感・腹痛・便秘・下血などが挙げられます。
S状結腸がん
S状結腸は、結腸の直腸と上行結腸をつなぐ部分であり、大腸がんの中で頻度が高い部位です。
S状結腸がんの診断方法には大腸内視鏡検査・血液検査・画像検査などがあり、治療には手術・化学療法・放射線療法などを用います。
直腸がん
直腸がんは、結腸の最後の部分で肛門に近い部位に発生するがんのことを指します。大腸がんの中でも頻度が高いがんです。
直腸がんの診断方法には大腸内視鏡検査・生検・血液検査・MRI・CTなどの画像検査があり、これらの検査結果から腫瘍位置・大きさ・進行度を評価します。
肛門がん
肛門がんは、直腸の終わりで外部に開口する部分である肛門に発生するがんです。肛門がんは発生頻度が低いがんであり、排便時の不快感や便意の感じ方に変化を伴うケースがあります。
またその他の症状は腹部不快感・腹痛・便秘・下血・肛門湿疹・肛門周囲のかゆみなどです。肛門がんは手術によって腫瘍組織を取り除くことが一般的ですが、放射線療法や化学療法が併用されることもあります。
直腸がんの病期別治療方法
直腸がんの病期は0期・I期・II期・III期・IV期に分けられており、病期別に治療方法が異なるのが特徴です。またこれらの病期は、T(腫瘍の拡大)、N(リンパ節転移)、M(遠隔転移)という3つの要素に基づいて決定されます。
以下ではそれぞれの病期別に治療方法を解説します。
0期直腸がん
0期のがん(Tis・N0・M0)は上皮内がんとも呼ばれ、直腸内の粘膜にしか腫瘍が見られず、周囲の組織・リンパ節・遠隔臓器には広がっていない段階です。
0期直腸がんの治療方法は、単純ポリープ切除・局所切除・全切除・腔内照射・外照射が挙げられます。
I期直腸がん
I期直腸がん(T1-2・N0・M0)は、がんが直腸壁の内側の粘膜または筋層に限定され、リンパ節や遠隔臓器への広がりがみられない状態です。
Ⅰ期直腸がんの治療方法は、局所切除・切除・手術前後の放射線療法と化学療法を併用した切除が挙げられます。
II期直腸がん
II期の直腸がん(T3-4・N0・M0)は、がんが直腸壁を超えて周囲の組織に広がっており、リンパ節や遠隔臓器への広がりがない段階です。またII期の直腸がんはIIA期・IIB期・IIC期にさらに分けられます。
IIA期はがんが直腸壁の漿膜(しょうまく)に広がっている状態、IIB期はがんが漿膜を透過して広がっていますが隣接の臓器には広がっていない状態です。IIC期はがんが漿膜を透過しており、かつ隣接の臓器にも広がっている状態です。
II期直腸がんの治療方法は、切除と手術前後の化学療法と放射線療法の併用・手術後の化学療法の併用または非併用の切除・新しい治療法の臨床試験が挙げられます。
III期直腸がん
Ⅲ期の直腸がん(任意のTN1-2・M0)はがんが直腸壁を超えて周囲の組織に広がり、リンパ節にも広がっているが、遠隔転移への広がりがない状態です。また、III期の直腸がんはIIIA期・IIIB期・IIIC期に分けられます。
IIIA期はがんが直腸壁の粘膜を透過して粘膜下層まで広がっている状態であり、IIIB期はがんが直腸壁の筋膜を透過して漿膜へも広がっていますが、隣接の臓器には広がっていない状態です。
IIIC期はがんが直腸壁の漿膜を透過して広がっており、隣接の臓器まで広がっている状態です。III期直腸がんの治療方法は、切除と手術前後の化学療法と放射線療法の併用・手術後の化学療法の併用または非併用の切除・新しい治療法の臨床試験が挙げられます。
IV期直腸がん
IV期の直腸がん(任意のT・任意のNM1)は、がんが直腸の周囲の組織に広がり、リンパ節・遠隔臓器へも広がっている状態です。IV期直腸がんはIVA期・IVB期に分けられます。
いずれも悪性腫瘍が直腸壁を透過して隣接の臓器やリンパ節に広がっている可能性があり、直腸の近くにない臓器や遠隔リンパ節にも広がっている状態です。IV期直腸がんの治療方法は以下の通りです。
- 手術前の放射線療法と化学療法を併用した切除
- 症状を楽にすることを目的とした、生活の質を改善する緩和療法としての切除
- 胎盤内容物切除
- 緩和療法を目的とした放射線療法や化学療法
- 悪性腫瘍の増殖をコントロールするための化学療法
- ベバシズマブのようなモノクローナル抗体療法を併用した全身化学療法
- 新たな抗がん剤の使用
また、この治療方法は再発した直腸がんにも適用されます。
直腸がんの手術方法
直腸がんの手術方法には、肛門温存手術やマイルズ手術があります。
肛門温存手術は、直腸がんが下部に位置している場合に選択される手術方法です。この手術では、直腸の一部を切除し、残存する健康な直腸と肛門をつなぎ合わせます。肛門や直腸の短い一部が切除されるため、排便機能を維持しながら、がんを取り除くことができます。
肛門温存手術の適用は、肛門の近くにあるがんや、がんが早期段階である場合です。そのため、がんが進行している場合や肛門周囲に広がっている場合には、肛門温存が困難な場合があります。
一方でマイルズ手術は、直腸がんが肛門周囲に広がっているか、直腸中部以上に位置している場合に行われる手術方法です。この手術では、直腸の全体を切除し、さらに周囲のリンパ節や組織も取り除きます。
マイルズ手術の適用は、がんの進行がみられる場合や肛門周囲に腫瘍が広がっている場合です。切除後は人工肛門を作成して、大腸の一端を腹壁につなぎます。そのため直腸の一部を失うことになり、手術後に人工肛門を介して便が排泄されます。
直腸がんの予防・対策
直腸がんの予防と対策方法には、定期的な検診と大腸内視鏡検査が挙げられ、直腸がんの早期発見を目的とした定期的な検診は、予防と治療の成功に非常に重要です。
検診により、がんの初期段階や前がん病変を早期に発見し、早期治療を受けることができます。一般的に50歳以上の方は毎年検便検査や便中の免疫学的検査を受けることが推奨されており、この検査で便中に血液が混じっているかを確認できます。
大腸内視鏡検査は、大腸の内部を観察するために使用される検査方法です。この検査では内視鏡を直腸から挿入し、大腸全体を観察します。異常な組織やポリープを直接確認し、必要に応じて組織を採取して病理学的な検査を行えます。
大腸内視鏡検査は、直腸がんの早期発見やポリープの摘出に非常に有効です。また予防と対策のためには、定期的な検診やファイバー検査を受けるだけでなく、健康な生活習慣を維持することも重要です。
バランスの取れた食事・適度な運動・禁煙・アルコールの適量摂取は、直腸がんのリスクを低減することに役立ちます。
直腸がんについてよくある質問
ここまで直腸がんの症状や病期別の治療方法についてご紹介しました。ここでは「直腸がんの症状」についてよくある質問にMedical DOC監修医がお答えします。
手術後は必ず人工肛門が作られますか?
直腸がんの手術では腸一部もしくは全体が切除されます。それに伴い、人工肛門が作成される場合がありますが、必ずしも全ての患者さんに対して作られる訳ではありません。人工肛門は、便を体外に排出する方法として機能します。しかし手術で切除した腸の残りの部分が肛門部につながる場合などでは人工肛門が不要な場合もあります。このように人工肛門の有無はがんの進行度や手術内容によって異なるのが特徴です。
直腸がんは再発しますか?
直腸がんは治療後に再発する可能性があります。再発のリスクは、がんのステージ・グレード・治療の効果・患者さんの健康状態によって異なります。再発防止や再発の早期発見のためには、定期的な診察や検査が重要です。万が一、再発が見つかった場合は追加の治療・手術・化学療法・放射線療法などを行います
編集部まとめ
直腸がんは肛門に近い部分での結腸に発生するがんであり、主な症状は腹痛・便秘・下血・体重減少・貧血などです。
直腸がんの早期発見と治療は生存率の向上のために重要なため、定期的な健康チェックや健康的な生活習慣の維持が必要です。
気になる症状がある場合には迷わず病院受診することをおすすめします。
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各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
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直腸がんによって引き起こされる症状には排便などのお腹に関する症状が多いです。