「肺がんの原因」はご存知ですか?女性の原因やなりやすい人の特徴も医師が解説!
肺がんの原因とは?Medical DOC監修医が肺がんの原因・女性が発症する原因・なりやすい人の特徴・検査法・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。
監修医師:
木下 康平(医師)
防衛医科大学校卒業
聖マリアンナ医科大学病院呼吸器内科にて専門研修
自衛隊病院にて呼吸器内科・一般内科診療に従事
資格:内科認定医、呼吸器内科専門医
目次 -INDEX-
「肺がん」とは?
肺がんと聞いてどんな病気を思い浮かべるでしょうか?肺に出現した悪いできものというイメージはあると思いますが、タバコ以外にもどのような原因があるのか気になりますよね。
まず肺がんとは呼吸を行う臓器である肺の組織の一部が、がん細胞化することで起こります。そしてこの肺がんは大きく分けて肺腺がん、肺扁平上皮がん、肺小細胞がん、肺大細胞がんの4つに別れます。それぞれの肺がんによって原因やできやすい人が異なります。
肺がんの主な原因
肺がんの原因として最も有名なものはタバコがあると思います。しかしタバコ以外にも肺がんの原因となるものは複数あり、なかには予防ができないものもあります。
以下にそれぞれの原因に関して説明していきます。
喫煙
喫煙は肺がんのリスクを高めることが知られています。喫煙者は肺がんになるリスクが男性では約4倍、女性では約3倍になります。またタバコは吸った本数と年数が多いほど、肺がんのリスクが高くなります。肺がんの種類としては肺扁平上皮がんや肺小細胞がんになりやすいです。
そして誤った認識がされていることがありますが、加熱式タバコや電子式タバコも紙巻きタバコと同様に肺がんの原因となります。
加えて肺がんのみならず、喫煙を継続することで慢性閉塞性肺疾患(COPD)という病気にもなり得ます。この慢性閉塞性肺疾患は長期の咳や痰の症状から現れ始め、進行すると運動時の息切れなどに悪化し、ひどい場合には酸素吸入が必要になることもあります。
アスベスト
今は使用されていませんが、古い建物の断熱材に使用されていたアスベスト(石綿)も肺がんの原因となります。工事現場などでアスベストの粉塵を吸入することで数十年後に肺がんや悪性胸膜中皮腫という胸膜(肺を包む膜)の悪性腫瘍を引き起こします。
アスベストは曝露したのが十数年前であることが多く、吸入当初は自覚症状もないため気付かれにくいことが特徴です。
もしアスベストの吸入歴があるようならば、定期的な肺がん検診の受診が必要です。
間質性肺炎
肺の一部分である間質が慢性的な炎症を起こす病気である間質性肺炎も肺がんの原因になり得ます。複雑ですが間質性肺炎にもさまざまな原因があり、特に肺がんのリスクとなりうる間質性肺炎は原因不明です(特発性間質性肺炎と言います)。
間質性肺炎自体も進行すると呼吸困難などの症状を呈することがあるため、定期的な受診が必要です。
女性で肺がんを発症する原因
遺伝子変異
肺がんは男性の方が女性より多いとされていますが、非喫煙者の女性でも肺がんになることがあります。この原因として最も重要なものが遺伝子変異です。
この遺伝子変異は女性、非喫煙者、東洋人で多いとされており、肺腺がんの原因となります。
この遺伝子変異は親から子に遺伝するようなものではなく、またがん細胞にだけ認められるものになります。
肺がんになりやすい人の特徴
喫煙習慣
肺がんは男性に特に多く、50歳以降に急激に発生率が増加します。
肺がんになりやすい生活習慣として第一に喫煙習慣があります。その他の生活習慣は肺がんのリスクではありません。受動喫煙も肺がんのリスクになりうるため、ご家族で喫煙している方がいる場合も肺がんのリスクとなり得ます。また工場や工事現場で粉じんを日常的に吸入している場合、肺がんのリスクとなり得るため適切なマスクによる予防が必要です。
体重による肺がんリスクの変化はありませんが、上述した喫煙による慢性閉塞性肺疾患の患者さんは進行すると痩せることが多いため、喫煙歴があり極度に痩せている場合は注意が必要です。
肺がんの検査法
これまで肺がんの特徴、肺がんの原因に関して説明してきました。それでは肺がんを疑った場合には、どのような検査を行うのでしょうか?
胸部レントゲン・胸部CT
肺がんが疑われる際には、健康診断などの胸部レントゲンで異常な影が見つかることがきっかけになりやすいです。
胸部レントゲンは三次元のものを二次元に移している影絵の様なものなので、早期の肺がんの場合では見落とされることがあり得ます。
肺がんを疑う胸部レントゲン画像を認めた場合、胸部CTでさらに詳しい検査を行います。
この胸部CT画像で肺がんが疑われる病変の大きさや形を確認し、またその経過で増大傾向にあるかを判断します。
専門科である呼吸器内科や呼吸器外科で検査を受けることが多いです。
腫瘍マーカー
肺がんを疑う画像所見の場合、血液検査で腫瘍マーカーを測定することがあります。
この腫瘍マーカーが異常高値であった場合には、肺がんの可能性が高まります。
注意点として腫瘍マーカーは肺がん以外の要素でも上昇することがあり(偽陽性と言います)、腫瘍マーカーだけで肺がんの診断はできません。
腫瘍マーカーは何種類かあり、肺がんの種類によって上がりやすい腫瘍マーカーが異なります。
喀痰細胞診
血痰(痰に赤い血が混じったもの)が症状としてある場合には喀痰細胞診が有効なことがあります。
これは喀痰(口から出した痰)の中にあるがん細胞を検出する検査で、患者さんの体への負担がなく、気軽に行える検査になります。ただ検出率が高くないこと、追加での検査が必要になることがあり、喀痰細胞診のみで肺がんの確定診断を行うことは決して多くありません。
気管支鏡検査
胸部レントゲンや胸部CTで肺がんを疑う陰影を認めても、それだけでは肺がんの診断にはなりません。肺がんの確定診断には肺がんの組織を顕微鏡で検査する病理検査が不可欠です。
肺がんは肺の中にあることから、気管支鏡という細長いカメラを気管に入れて組織を直接採取する必要があります。
この気管支鏡検査は2泊3日程度の呼吸器内科への入院で行います。取ってきた検体は2週間程度で病理検査が終了し、肺がんの有無とその種類が明らかになります。
肺がんの治療法
肺がんの治療は多岐に渡り、またその治療方針が適応されるケースもさまざまです。
それぞれの治療法と適応に関して説明していきます。
外科的手術
早期の肺がんであれば外科的に手術を行い、肺がんを取り除くことができます。
手術は胸に3つの穴を開けて、カメラ越しに行う胸腔鏡手術が主流です。
外科的に切除することで完治が望めますが、肺がんが大きいと切除する肺組織も大きくなり術後の息切れなどが起こる可能性もあります。また高齢者であったり、他に患っている病気があると手術に耐えられないこともあり、その場合は早期肺がんでも手術は行わないことがあります。
リハビリテーションはほとんど必要ありませんが、切除部位が広範囲である場合に呼吸器リハビリテーションを行うこともあります。
放射線治療
手術ができない高齢者などの早期肺がんでは放射線治療単体を行うことがあります。
放射線を当てる範囲によっては外来で治療を行うこともあります。
また、骨転移や脳転移がある場合には、症状を緩和するために放射線治療を行うことがあります。ただし、間質性肺炎が併発している場合には、放射線治療は行うことができません。
抗がん剤治療
手術ができない肺がんでは抗がん剤による化学療法を行います。病期(病気の進行度合いを表したもの;ステージ)によっては放射線治療と組み合わせることもあります。
抗がん剤の種類は非常に多く、またそれぞれの抗がん剤の適応と効果・副作用はさまざまです。
点滴による抗がん剤と内服の抗がん剤がありますが、基本的に最初の投与の際は入院で経過を見ながら行うことが多いです。
その後は外来で定期的に抗がん剤治療を行っていきます。
「肺がんの原因」についてよくある質問
ここまで肺がんの原因を紹介しました。ここでは「肺がんの原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
エアコンのカビは肺がんを発症するリスクを高めるのでしょうか?
木下 康平 医師
エアコンのカビが直接的に肺がんを発症する可能性はほぼありません。しかしながらカビによる病気(肺真菌症)を発症することがあるため、注意が必要です。
喫煙以外で肺がんを発症する原因はどんなことが考えられますか?
木下 康平 医師
アスベストや粉じん吸入がリスクとなり得ます。また電子タバコや水タバコも肺がんのリスクとなりうると報告されています。
ストレスが原因で肺がんは発症しますか?
木下 康平 医師
精神的なストレスと肺がんの発症には因果関係は証明されていません。
編集部まとめ
肺がんに関して解説いたしましたが、いかがだったでしょうか?
最も有名なのは喫煙ですが、それ以外にもさまざまな原因があることがお分かりいただけたかと思います。
肺がんは早期発見・早期治療が最も重要であるため、定期的な健康診断の受診を心がけるようにしましょう。
「肺がんの原因」と関連する病気
「肺がんの原因」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
呼吸器科の病気
- 慢性閉塞性肺疾患
- 間質性肺炎
- 悪性胸膜中皮腫
これらの病気は肺がんに合併することがあります。これらの病気を持っている患者さんは定期的に胸部レントゲン画像を受けることをお勧めいたします。
「肺がんの原因」と関連する症状
「肺がんの原因」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 血痰
- 咳嗽(せき)
- 呼吸困難
これらの症状は風邪などでも出ることがありますが、肺がんの場合は長期間継続します。少なくとも1ヶ月以上、上記症状が改善しないようであれば受診を検討してください。
参考文献