「卵巣がん」を発症すると「おりもの」にどのような特徴が現れる?臭いや色の特徴も解説!

卵巣がんを発症するとおりものにどのような特徴が現れる?メディカルドック監修医が臭いや色の特徴・卵巣がんの初期症状などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
阿部 一也(医師)
目次 -INDEX-
「卵巣がん」とは?
卵巣がんは、卵巣に発生する悪性腫瘍の総称です。日本では婦人科がんの中でも死亡率が高いとされ、特に早期発見が難しいことが課題とされています。
進行すると、腹部周りのサイズが大きくなる、お腹にしこりをふれる、食欲がなくなるなどの症状が現れることがあります。しかし、初期には自覚症状がほとんどないため、健診や婦人科受診の機会が少ないと見逃されやすい病気です。
近年は、卵巣がんのリスク要因として、家族歴、遺伝子変異(BRCA1/2)、未経産、排卵回数の多さなどが知られています。
今回の記事では、卵巣がんを発症した場合に、おりものにどのような変化が現れるのかについて解説します。
卵巣がんを発症するとおりものはどんな臭いがする?
卵巣がんそのものによって、おりものが独特の臭いを生じることは少ないと考えられます。最も一般的な上皮性卵巣がんでは、腟分泌物、つまりおりものや出血はほとんど見られません。しかし、胚細胞がんや間質性がんというタイプの卵巣がんでは、おりものの変化や出血がみられることがあります。
腐った肉のような臭い
がん細胞が急速に増えると、酸素不足となり一部の細胞が壊死する場合があります。壊死した組織に細菌などが感染し、悪臭のあるおりものがでる可能性があります。
壊死し、細菌などへの感染が進行すると、例えば「腐った肉」のような臭いとも表現されることがあります。
不快な臭い
卵巣がんが進行し、壊死し感染を伴っている場合、おりものが増え、強く不快な臭いを生じる可能性もあります。
鉄錆のような臭い
性器からの不正出血があると、おりものにも血が混じることも想定されます。すると、血の臭い、すなわち鉄錆のような臭いとして感じられることもあるでしょう。
卵巣がんを発症するとおりものの色はどんな変化が現れる?
正常なおりものは、通常は乳白色あるいはサラサラとした透明な液体です。しかし、卵巣がんによって、以下のような色になる可能性があります。おりものの変化があり、長く続くような場合は注意が必要です。特に閉経後の女性で、不正性器出血や茶色のおりものが出る場合は、放置せずに婦人科を受診しましょう。
白色
卵巣がんが進行し、壊死した組織に細菌などが感染している場合、白く濃厚なおりものが出る場合も考えられます。
ピンク色
卵巣がんから出血があり、おりものに混じると、ピンク色として現れるケースもあるでしょう。ごく少量でも繰り返し出る場合や、閉経後に出血がみられる場合は注意が必要です。ホルモンバランスの変化による出血と区別がつきにくいため、一度婦人科で検査を受けると安心です。出血の時期や量をメモしておくと診断の助けになります。
茶色
出血してから時間が経つと、血液中の鉄分が酸化して茶色〜黒っぽく見えることがあります。月経の終わりかけにもみられる現象ですが、月経周期と関係なく続く場合は、腫瘍性の出血が疑われます。特に閉経後や、下腹部の張り、体重減少を伴う場合は卵巣がんのサインである可能性もあるため、早めに医療機関を受診しましょう。
卵巣がん以外でおりものに変化が生じる原因
おりものに変化が現れる原因としては、卵巣がんだけでなく、炎症や感染、ホルモンの変動などさまざまな要因があります。以下に代表的なものを紹介します。
細菌性腟炎
細菌性腟炎は、腟内の常在菌であるデーデルライン桿菌が減少し、代わりに嫌気性菌が増えることで発症します。
おりものは灰色がかった薄い色で、魚が腐ったような独特の臭いを伴うのが特徴です。かゆみや強い痛みは少ないものの、不快感や性交痛を伴うことがあります。抗菌薬による治療が必要になる場合が多いため、症状が続く際は婦人科を受診することが望ましいです。
放置すると骨盤内感染に進展するリスクもあるため、早めの受診が推奨されます。
トリコモナス腟炎
トリコモナス原虫という寄生虫の感染によって起こります。性交渉でうつる性感染症の一つで、鮮やかな黄緑色のおりものが増え、泡立つような性状や強い悪臭を示すのが特徴です。30〜40代に多く、外陰部のかゆみや灼熱感も伴います。
診断には顕微鏡検査や培養検査が行われ、抗原虫薬による治療が基本です。そのほか、クラミジアや淋菌感染などが原因になることもあります。
放置すると慢性化し、不妊の原因となる可能性もあるため、早期の治療が重要です。配偶者やパートナーも同時に治療を受けることが推奨されます。
月経前、妊娠中などの生理的な変化
必ずしも病気によらず、ホルモンバランスの変化でおりものが増えたり、性状が変わったりすることもあります。
排卵期には透明で粘りのあるおりものが増え、精子が子宮に到達しやすくなるよう調整されています。妊娠中もエストロゲンの増加によりおりものが増えるのが一般的です。これらは生理的な現象であり、臭いや色に異常がなければ問題ありません。ただし、血が混ざる、悪臭が続く、かゆみを伴う場合は感染やがんの可能性も否定できないため、婦人科で確認することが安心です。
卵巣がんの前兆となる初期症状
卵巣がんは、症状が現れる前に病気が進行する可能性が高い病気です。そのため、早期発見が困難なケースも多いです。以下のような症状は、卵巣がんに関連している可能性があるため、放置せずに婦人科などの医療機関を受診するようにしましょう。
腹痛
下腹部の鈍い痛みや張り感が続くことがあります。
月経痛や胃腸障害と区別がつきにくいため、見逃されやすい点に注意が必要です。
市販薬で一時的に症状が緩和することもありますが、原因不明の腹痛が長く続く場合は早めの受診をおすすめします。
腹部が膨張し硬くなる
卵巣がんと診断される前の症状として、お腹が持続的に膨らみ、硬く膨張するような症状が現れることもあります。
また、卵巣がんが進行すると腹水がたまり、お腹が急に膨らんで硬さを感じることがあります。
体重は減っているのに腹部だけが張ってくる場合は要注意です。短期間での腹部膨満感は消化器疾患(特に肝硬変などの肝疾患)との鑑別が必要であり、消化器内科、あるいは婦人科受診が勧められます。
腹部のしこり
自分で触れてしこりに気づくことがあります。特に片側の卵巣に限局した腫瘍の場合、数cm以上に大きくなると触診で確認できることもあります。
6cm以上になり、放置すると腫瘍の破裂や捻転による緊急手術が必要になるケースもあるため、違和感があれば早急に受診しましょう。
腟からの出血がみられる
卵巣がんでは頻度は高くないものの、不正出血や血の混じったおりものが出ることがあります。特に閉経後の出血は子宮がんや卵巣がんの可能性があり、放置は禁物です。
軽度の出血でも繰り返す場合は早めに婦人科を受診しましょう。
排尿回数の変化
腫瘍や腹水が膀胱を圧迫すると、頻尿や排尿困難が起こります。膀胱炎と誤解されやすい症状ですが、抗菌薬を使っても改善しない場合は精密検査が行われます。
「卵巣がんとおりもの」についてよくある質問
ここまで卵巣がんとおりものなどを紹介しました。ここでは「卵巣がんとおりもの」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
卵巣がんの手遅れとなる症状について教えてください。
阿部 一也 医師
卵巣がんは、早期の段階の場合、5年生存率は90%程度です。一方、脳や骨などの遠隔臓器に転移があるような段階では20%程度となります。
卵巣がんの完治が難しいケースとしては、がんがかなり進行している、あるいは再発した場合などがあると考えられます。そのような場合、例えば腹水の貯留によりお腹が大きく膨れる、強い腹痛が持続する、呼吸困難が出る、体重減少や全身の衰弱が顕著になるといった症状が現れます。この段階では治療が難しくなることも多いため、日常的な体調変化の段階で受診することがとても重要です。
編集部まとめ
おりものの変化は卵巣がんのサインとなる場合もありますが、多くは細菌性腟炎やトリコモナス腟炎などの性感染症、あるいは生理的変化によるものです。しかし「いつもと違う」と感じたときに放置してしまうと、重大な病気を見逃す可能性があります。卵巣がんは早期発見が難しい病気だからこそ、気になる症状があれば早めに婦人科を受診し、必要な検査を受けることが大切です。
「卵巣がん」と関連する病気
「卵巣がん」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
卵巣がんに関連する病気としては、これらのようなものがあります。腹痛や腹部膨満感、おりものの変化など、気になる症状があれば医療機関を受診しましょう。
「卵巣がん」と関連する症状
「卵巣がん」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
卵巣がんは、初期の段階ではほとんど症状がなく、見過ごされやすいものです。症状が長く、お腹の張りや苦しさが続く場合には、早目に婦人科を受診しましょう。




