「男性乳がんの原因」はご存知ですか?症状や検査法も解説!【医師監修】
乳がんといえば「女性がかかる病気」というイメージがあるかもしれませんが、男性でも乳がんを発症することがあります。
男性の乳がんを早期発見するには、どのような症状に気を付ければよいのでしょうか。また、女性の乳がんと発症率や治療方法は異なるのでしょうか。
今回の記事では、男性の乳がんについて原因・症状・検査・治療方法などを詳しく解説します。
乳がんの治療乳房に気になる症状がある男性の方は、受診にあたって戸惑うこともあるかもしれませんが、ぜひこの記事も参考に早めの受診を心がけましょう。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
男性乳がんとは?
男性乳がんは、名前の通り男性に発症する乳がんです。女性の乳がんは40~60代での発症率が高いですが、男性乳がんは60~70代の方に発症する方が多いとされています。女性の乳がんは8人に1人が発症するといわれているのに対し、男性の乳がん発症率は1000人に1人くらいの割合で、男性乳がんは「希少がん」の1つです。
希少がんとは、厚生労働省において「症例が少ないために診察をする・診察を受ける上での課題が他のがんに比べて多いもの」とされています。患者さんとしては「課題が多いがん」といわれると不安になるかもしれませんが、同じ進行度であれば男性乳がんの治療成績自体は女性の乳がんと大きな違いはありません。
男性乳がんの原因は?
乳がんのリスク要因には下記のようなものがあるとされています。
- 家族歴(遺伝)
- 胸部の放射線治療
- 体内の女性ホルモンが多い
性別にかかわらず、近しい血縁者に乳がん発症者がいる方は、家族歴が無い方と比較すると乳がんの発症リスクが2倍になるといわれています。また、乳腺疾患・乳児期の胸腺肥大・皮膚血管腫に対する放射線照射など胸部の放射線治療を受けることも将来の乳がんのリスクを上昇させる要因です。
加えて、健康状態・別の疾患により体内に女性ホルモンが多い状態になることも男性乳がんのリスク要因と考えられています。ホルモン量に影響する可能性がある病気・異常としては、下記が挙げられます。
- クラインフェルター症候群
- 女性化乳房
- 肝疾患(肝機能障害)
- 精巣異常
- 肥満
男性乳がんの主な症状
次に、実際に男性が乳がんになった場合の主な症状をまとめました。今回紹介する症状は、触る・見るなどの方法でセルフチェックできるため、知っておくことで早期発見・受診に繋がるはずです。
痛みを伴わない腫瘤
女性の場合は乳腺が発達し乳房全体に広がっていますが、男性の乳腺は未発達で乳輪周辺にあります。そのため、男性が乳がんを発症すると乳輪周辺に痛みを伴わない腫瘤(しこり)を触知することが多いでしょう。
乳がんに触れると「弾力が無く硬い」「表面が凸凹していびつな形」と感じる方が多いとされますが、触れた感触だけでは女性化乳房など別の病気との判別は困難です。また、乳頭付近だけでなく腋窩リンパ節が腫れることで、腋にしこりを感じる方もいます。
しこりなど乳房の異常を感じたら、病気の判別のためにも乳腺の病気を専門とする医療機関を受診することをおすすめします。
乳頭の陥没
触れて分かるしこりのほかに、見て確認できる「以前と比べて乳頭が陥没した」という症状も乳がんのサインかもしれません。乳頭近くにできた乳がんが進行すると、乳頭が陥没することがあります。
また、乳房に一部だけ凹み・潰瘍ができている場合も、皮膚の近くに乳がんができている可能性があるため注意が必要です。
男性乳がんの検査法
上記のような症状を自覚して受診した場合、どのような検査を受けるのでしょうか。乳がんの診断までに行われることが多い検査をまとめました。
触診
まず、症状を確認するために問診・触診・視診を行います。触診で確認する内容は、腫瘤の有無や位置などです。
触診と併せて、乳頭分泌物・乳頭陥没・乳房の凹みなどの視診も行うことが多いでしょう。診察の結果、乳がんが疑われる場合はさらに精密な検査を行います。
超音波検査
超音波を使用して乳房の内部を観察します。放射線を使わず被ばくの恐れがない検査のため、特に患者が若年者の場合は他の検査に優先して行われることが多いでしょう。
超音波検査は乳房を強く圧迫することもないため、脂肪の少ない男性でも苦痛なく検査ができるはずです。
マンモグラフィー検査
マンモグラフィーは、乳房のレントゲン検査です。乳房を縦・横に板で挟んで撮影するため、撮影中は圧迫による痛みを感じる方もいるでしょう。
マンモグラフィー検査で乳房を強く挟むことには、下記のような理由があります。
- 動きを抑えて鮮明な像を撮影する
- 組織の重なりを減らして腫瘤を観察しやすくする
- 撮影部位を薄くすることでX線の線量を減らす
マンモグラフィー検査は、超音波検査では発見しにくいタイプの乳がんを見つけるためにも有効です。
CT・MRI検査
上記の検査を行った上で、さらに広い範囲のスクリーニングをする場合など、必要に応じてCT・MRIの検査を行うことがあります。CT・MRIでは、乳房だけでなくリンパ節などへの病気の広がりも確認できます。
生検
レントゲン・CTなどの画像診断は、あくまでも「乳がんの可能性が高い」という確定診断の補助的な位置づけです。発見された腫瘤が乳がんであることを確認するためには、針を刺して腫瘤の一部を採取する針生検・穿刺吸引細胞診を行います。
男性乳がんの治療法
ここまで解説してきた画像診断・生検を経て乳がんと診断された場合、治療にはどのような選択肢があるのでしょうか。乳がんの治療として行われることが多い4つの治療法についてまとめました。
外科手術
病気になっている部分を切除することで治癒する可能性が高いと判断された場合は、外科手術を行うことを検討します。早期乳がんなど病気の範囲が狭い場合は、乳房を温存するタイプの手術を選択できる場合があります。
放射線治療
γ線・X線などの放射線をがん細胞に照射することで、がん細胞を損傷・死滅させる治療法です。照射した部分の細胞のみに作用するため、全身に強い副作用が現れることは稀とされています。
主な副作用は、照射部分の皮膚の発赤・かさつき・黒ずみなどです。また、照射後に倦怠感が現れることもあります。
抗がん剤治療
抗がん剤を投与し、がん細胞の増殖を抑制したり死滅させたりする治療法です。放射線療法・抗がん剤治療は、手術の前後に補助療法として行うことが多いでしょう。
また、抗がん剤は血液によって全身に広がるため、転移が起きて手術が難しい症例にも適用される場合があります。
ホルモン療法
乳がんの中には、女性ホルモン(エストロゲン)を栄養源として進行するものがあります。このような「女性ホルモン感受性のある乳がん」に対して、エストロゲンの働きを阻害する薬を使用して乳がんの縮小・再発予防を試みるのがホルモン療法です。
「男性乳がんの原因」についてよくある質問
ここまで男性の乳がんの原因・症状・治療法などを紹介しました。ここでは「男性の乳がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
男性乳がんは遺伝により発症しますか?
甲斐沼 孟(医師)
親や兄弟姉妹など近親者の中に乳がん発症者がいる方は、近親者に乳がんの方が一人もいない方と比べると発症リスクは2倍ほどといわれています。そのため、乳がんの発症には遺伝的要因が関わっていると考えられます。近年では、BRCAという遺伝子の異常が乳がんの発症に関連していることが分かってきました。
男性乳がんの予防方法はありますか?
甲斐沼 孟(医師)
乳がんの発症リスクには遺伝など先天的な要因・乳がん以外の病気など、自分では防げないものが多いです。しかし、肥満・肝機能の低下など生活改善により避けられるリスク因子もあります。こうしたリスク因子に対しては、食生活・運動習慣を見直し、過度のアルコール摂取を控えるなどの対策が有効です。また、喫煙は乳がんに限らずさまざまながんの発症リスクを上昇させるといわれています。そのため、禁煙に努め受動喫煙を避けることも乳がん予防に役立つと考えられます。
編集部まとめ
男性乳がんは、女性の乳がんと比較すると症例数が少ないがんです。
また「女性の病気」というイメージもあり、症状が気になっても受診をためらってしまう方もいるかもしれません。
ですが、男性乳がんは女性の場合と同じく、早期発見・早期治療をすることが非常に大切です。
乳腺の疾患を専門とする乳腺外科の中には、男性の診療も可能であることを明記したり、男性の診察日を設けたりといった医療機関もあります。
また「女性ばかりで行きにくい」という方は、乳腺外科に他の診療科を併設している医療機関を選ぶのも一つの選択肢です。
乳がん予防のための生活改善と併せて定期的にセルフチェックを行い、気になる症状があればぜひ医療機関へ相談してみましょう。
「男性乳がん」と関連する病気
「男性乳がん」と関連する病気は3つあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
女性の乳がんも、発症のリスク因子や治療方法は男性乳がんと大きな違いはありません。男性乳がんについて知りたいときは、女性の乳がんについての情報も参考にしてみてはいかがでしょうか。また、男性乳がんと似た症状が現れる病気として乳腺炎・女性化乳房などが挙げられます。
「男性乳がん」と関連する症状
「男性乳がん」と関連する症状は2つあります。
各症状の原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 胸のしこり
- 乳頭からの分泌物
乳がんの代表的な症状は胸のしこり・乳頭からの分泌物です。ただし、これらの症状は他の病気でもみられることがあります。