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「白血病の死亡率」はご存知ですか?症状や治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2023/12/24
「白血病の死亡率」はご存知ですか?症状や治療法も解説!【医師監修】

白血病は知名度の高い病気ですが、死亡率は約0.007%と低く、発症することも珍しい病気です。

しかし、小児がんの38%が白血病となっており、子どもから高齢者まで幅広い年齢層に罹患の可能性があるため注意しましょう。

本記事では、白血病の死亡率・骨髄性白血病の症状・発生率などを解説します。白血病の症状が見られる場合は、すぐに病院を受診しましょう。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

急性骨髄性白血病とは?

急性骨髄性白血病とは、骨髄系幹細胞が非常に未熟な「芽球(がきゅう)」の状態のままがん細胞(白血病細胞)となり、骨髄で無限に増殖する病気です。
血液は、赤血球・白血球・血小板などの血液細胞で成り立っています。血液細胞は骨髄で造血幹細胞が成熟することで生成されますが、急性骨髄性白血病になると骨髄内で未熟な芽球が増え続け、成熟した血液細胞が生成されません。わかりやすくいうと「がん細胞ばかり増えて、正常な血液細胞が生成されない」ということです。
治療方法は抗がん剤や放射線療法でがん細胞をゼロにし、骨髄移植によりドナーの造血幹細胞を移植します。近年は、抗がん剤治療や放射線療法など治療技術が急速に進歩しており、急性骨髄性白血病は「不治の病」ではなくなりました。
発症を機に諦めることなく、治療することが重要です。また、15歳未満の子どもがかかる小児がんでは、白血病の割合が最も高くなっています。ただし、小児の白血病で多い病気は「急性リンパ性白血病」で、急性骨髄性白血病は全体の25%程度です。

急性骨髄性白血病の症状

急性骨髄性白血病の症状は、大きく分けて次の2つが挙げられます。

  • 血球の機能が失われることで起こる症状
  • 白血病細胞が全身に広がることで起こる症状

先述したように、急性骨髄性白血病は血液のがんです。
そのため、血液そのものが正常ではなくなり、それによって貧血・出血・感染などが起きやすくなります。また、がん細胞が含まれた血液は全身をめぐり、骨の痛み・関節痛・肝臓の腫れ・歯肉の腫れなどの症状が起こるでしょう。また、小児の急性骨髄性白血病も貧血・出血・感染・発熱・骨痛など、成人の白血病と似たような症状が現れます。

感染しやすくなる

急性骨髄性白血病に罹患すると、細菌やウィルスなどに感染しやすくなります。血液中の白血球が正常な働きをできなくなり、免疫力が低下するためです。
通常、白血球は体内への異物侵入を防ぐ役割があります。異物が侵入した場合は血液中の白血球が増加し、異物を細胞内に取り込んで無害化することが特徴です。急性骨髄性白血病になると、体内への異物侵入を防げません。
そのため、細菌・ウィルスが体内に入ってしまうリスクが高くなります。また、体内に入った細菌・ウィルスを無害化できず、感染症にかかりやすくなるでしょう。

貧血

急性骨髄性白血病の症状として、貧血が挙げられます。造血幹細胞ががん細胞に侵され、正常な赤血球が造られなくなるためです。
赤血球は、酸素を体内に運ぶ役割があります。赤血球が不足すると、体内に酸素をうまく運べなくなり、息切れ・疲れやすいなどの症状が起こるでしょう。これが貧血です。貧血は酸素不足が原因で起きているため、そのまま放置すると内臓に負担がかかり心臓も影響を受けます。

発熱

急性骨髄性白血病は細菌・ウィルスに感染しやすくなり発熱を起こします。理由は、白血球が正常に造られないためです。
先述したように白血球は、悪い細菌・ウィルスから体内を守る働きがあります。そのため、白血球が減ってしまうと感染リスクが高くなり発熱を起こしやすくなるでしょう。発熱や大量発汗がみられるときは、細菌・ウィルスの感染が疑われます。

骨の痛み

白血病細胞が骨髄で増殖すると、骨の痛みが現れます。がん細胞に侵された血液が全身にめぐるためです。
通常、血液細胞は骨髄で生成されます。急性骨髄性白血病になると、造血幹細胞が未熟なうちにがん細胞になり骨髄で増殖するでしょう。増殖したがん細胞は血液とともに全身をめぐり、骨にも影響が出ます。
全身に行き渡ったがん細胞は、骨だけではなく関節・歯肉・脾臓・肝臓などでも痛みを発するでしょう。

出血しやすくなる

急性骨髄性白血病になると、出血しやすくなります。正常な血小板が少なくなり、働きが弱くなるためです。
血小板は赤血球や白血球とともに骨髄で生成され、出血を止める働きがあります。したがって、血小板が不足すると血が止まりにくくなり、鼻血・歯茎からの出血・脳や腹部の中の出血がみられるでしょう。

あざができやすくなる

急性骨髄性白血病の症状として「あざができやすい」ことがあります。血小板が少なくなり、血が止まりにくくなっているためです。
あざにはいろいろな種類がありますが、ここでは皮膚の内側で出血が起きている「青あざ(うちみ)」を指します。血液は全身に行き渡るため、鼻血や歯茎の出血など外見的にわかる場所だけではなく、皮膚の内側でも起こります。また、内臓でも同じように出血が起こると止められないため、気付かぬうちに貧血を起こす可能性があるでしょう。

白血病の死亡率

白血病の死亡率は、10万人あたり7.3人といわれています。そのうち男性は10万人あたり9.1人、女性は10万人あたり5.5人と、男性が多いことが特徴です。
近年では白血病は治せない病気ではなくなりました。早期に発見し、適切な治療を受けることで治癒が期待できるでしょう。

他のがんと比べるとどのくらいの頻度か

白血病は他のがんと比べても知名度がありますが、がん全体の死亡率で考えると低いほうです。
国立研究開発法人国立がんセンターのデータによると、2020年の白血病による死亡数は男女合わせて8,983人でした。がんで亡くなった方全体の約2.14%になります。男女別は、男性約2.28%・女性約1.96%と男性のほうが多めです。
他のがんの上位は次の通りです。

  • 肺がん:75,585人(全体の約18.0%)
  • 大腸がん:51,788人(全体の約12.3%)
  • 胃がん:42,319人(全体の約10.1%)

上記のように、最も多い「肺がん」と比べると10倍ほどの違いがあります。白血病で亡くなる方は年間に9,000人近くいるため少なく感じませんが、がん全体で考えると少ないほうといえるでしょう。

どの年齢層で多いか

先述した国立研究開発法人国立がんセンターの2020年のデータによると、白血病に罹患して死亡した方で、最も多い年齢層は80歳以上の高齢者です。その割合は10万人に142.4人(約0.14%)になっています。
年齢層別の10万人あたりの割合は次の通りです。

  • 0〜14歳:2.3人(約0.002%)
  • 15〜19歳:0.9人(約0.0009%)
  • 20〜29歳:2.6人(約0.002%)
  • 30〜39歳:2.4人(約0.002%)
  • 40〜49歳:4.9人(約0.004%)
  • 50〜59歳:12.2人(約0.01%)
  • 60〜69歳:31.7人(約0.03%)
  • 70〜79歳:81.6人(約0.08%)
  • 80歳以上:142.4人(約0.14%)

上記のように60歳を超えると急激に増えています。白血病患者全体でみると、高齢者が発症しやすい病気です。また、若年層であればさまざまな治療が受けられ、治る可能性も上がるでしょう。

急性骨髄性白血病の発生率とは?

小児がんの場合、白血病患者における急性骨髄性白血病の割合は約25%といわれています。小児がん全体でみると白血病に罹患する子どもは38%程度とされており、小児がんにおける急性骨髄性白血病の発生率は10%程度といえるでしょう。
また、がん患者全体における白血病罹患者は、先述した国立研究開発法人国立がんセンターの2019年のデータによると、男女合わせて14,318人になります。この数字は、がん患者の約1.24%となり、死亡率と同じように低い数字です。
なお、他のがんで患者数が多いのは大腸がん・肺がん・胃がんになります。

  • 大腸がん:155,625人(全体の約13.5%)
  • 肺がん:126,546人(全体の約11.0%)
  • 胃がん:124,319人(全体の約10.8%)

上記のように、日本で最も発生率が高いのは大腸がんです。白血病と比べると10倍以上の数字になっています。白血病が発生する確率は低いですが、小児をはじめ毎年のように罹患者がいるため、症状がある場合はすぐに受診しましょう。

急性骨髄性白血病の治療

急性骨髄性白血病の治療は、次の3つが基本です。

  • 化学療法
  • 放射線療法
  • 骨髄移植

急性骨髄性白血病は血液のがんにあたるため、大腸がんや胃がんのようにメスで切除できません。
化学療法を繰り返し行い、血液中のがん細胞を撃退する治療が基本です。また化学療法だけでは治療が難しい場合は、化学療法・放射線療法を用いた支持療法によりがん細胞を減らし、正常の造血幹細胞を移植する「骨髄移植」を行います。

化学療法

化学療法とは抗がん剤を用いた治療で、急性骨髄性白血病治療の中心となる方法です。
メスを使って切除できない血液の病気のため、抗がん剤を使用して血液中のがん細胞をゼロに近づけます。化学療法を開始した当日から数ヶ月にわたって、骨髄抑制・吐き気・嘔吐・下痢・脱毛・発熱などの副作用が起こります。貧血や血小板減少も起こりうるため、輸血を行うこともあるでしょう。

放射線療法

放射線療法とは、放射線を使用して体の外側からがん細胞を死滅させる治療です。
放射線は殺菌効果が高く、がん細胞を根絶することに適しています。しかし、放射線だけでは十分ではないため化学療法と併用することが基本です。化学療法と放射線療法でがん細胞を根絶したら、新しい造血幹細胞を移植します。

骨髄移植

骨髄移植は、正常な造血幹細胞を骨髄に移植する手術です。骨髄移植には、事前に採取した自分の造血幹細胞を移植する「自家移植」と、ドナーから提供された造血幹細胞を移植する「同種移植」があります。
自家移植の場合は、事前に造血幹細胞を移植する際にがん細胞が混入している可能性があるため再発のリスクは否めません。同種移植は、兄弟・姉妹・親子など血縁者の中に白血球の型が合う方が見つからない場合はドナーから採取した造血幹細胞を使用します。

白血病についてよくある質問

ここまで白血病の症状や死亡率などを紹介しました。ここでは「白血病」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

白血病は治りますか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

白血病は治療により、治癒できる可能性があります。ただし、治癒は「完治」ではないため、病気の症状により治る確率が変わるでしょう。また、小児の白血病は、急性骨髄性白血病よりも急性リンパ性白血病のほうが多いです。白血病の種類や治療法によっても治癒の可能性が変わるため、医師と相談のうえ治療を進めましょう。

治療による副作用にはどのようなものがありますか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

白血病の治療では抗がん剤による化学療法が基本のため、抗がん剤を使用した際の副作用が考えられます。症状は、吐き気・脱毛・口内炎・消化器系症状・肝機能障害・心筋障害などです。抗がん剤を使用しなければ回復が難しいため、医師と相談のうえ適切な抗がん剤を使用しましょう。

編集部まとめ

白血病の死亡率は「10万人あたり7.3人」と約0.007%の確率です。

死亡率は低いように感じますが、小児がんの白血病の割合は38%となっており、小児から高齢者まで発症する怖い病気といえるでしょう。

血液中にがん細胞が増殖し、赤血球・白血球・血小板が激減するため、貧血・出血・発熱・骨の痛みなどの症状があります。

治療方法は抗がん剤を使用する化学療法を基本に、放射線療法・骨髄移植が行われ、現在では治癒が期待できるため「不治の病」ではありません

白血病の症状がある場合はすぐに病院を受診し、適切な治療を受けましょう。

白血病と関連する病気

「白血病」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

内科(感染症)

循環器

白血病は血液の病気で、正常な白血球が減少するため免疫力が低下します。血液系の病気や感染症にかかる可能性が高いため注意が必要です。免疫力が下がると、思わぬ病気にかかる可能性があるため適切な治療を受けましょう。

白血病と関連する症状

「白血病」と関連する症状は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 貧血による疲れやすさ
  • 息切れ
  • 頭痛
  • 骨痛
  • あざができやすい

白血病の症状は、貧血や発熱など普段から経験のある症状が現れます。
「いつもの症状だ」と軽視していると重篤な状態になりかねないため、症状がある場合はすぐに病院を受診してください。

この記事の監修医師