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「喉頭がんの症状」はご存知ですか?原因・検査・治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2023/12/23
「喉頭がんの症状」はご存知ですか?原因・検査・治療法も解説!【医師監修】

喉頭がんはがんができる場所によって症状が異なるため、それぞれどのような症状があるのか知っておくことが重要です。

これからご紹介する症状のうち、少しでも当てはまる症状がある場合は早めに病院を受診し予防・改善に努めましょう。

今回の記事では喉頭がんの部位別の症状を解説します。また喉頭がんの原因・検査方法・診断方法・治療法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

渡邊 雄介

監修医師
渡邊 雄介(医師)

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1990年、神戸大学医学部卒。専門は音声言語医学、音声外科、音声治療、GERD(胃食道逆流症)、歌手の音声障害。耳鼻咽喉科の中でも特に音声言語医学を専門とする。2012年から現職。国際医療福祉大学医学部教授、山形大学医学部臨床教授も務める。

所属
国際医療福祉大学 教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長

喉頭がんとは?

喉頭がんとは気管と咽頭をつなぐ部分である喉頭にがんが発生する病気です。また、脳・目を除く首から上の部分に発生するがんである頭頸部がんの1つです。
喉頭がんは声帯にできる声門がん・声帯より上にできる声門上部がん・声帯より下にできる声門下部がんの3つに分けられ、それぞれ初期症状・症状の進行度・症状の変化・転移するリスク・治療法が異なります。喉頭がんのうち最も発生しやすいがんは声門がんです。
その次に声門上部がん、最後に声門下部がんの順に発生しやすいといわれています。
また声門がんは他の頭頸部がんと比べて転移するリスクが少ないですが、声門上部がん・声門下部がんはリンパ節に転移しやすい傾向にあります。

部位別に見た喉頭がんの症状

喉頭がんはがんが発生する部位によって声門がん・声門上部がん・声門下部がんがあり、それぞれ症状が異なります。どのような症状が引き起こされるのか詳しく解説します。

声門がんの症状

声門がんになると、声を出すために欠かせない声帯に悪影響を及ぼします。初期症状としては嗄声(させい)の症状が現れます。
嗄声とはかすれた声です。風邪を引いたとき・大きな声を出しすぎたときに出てくる症状のように低いがらがらした声・雑音が混ざった声・息が漏れるような弱々しいか細い声などがあります。
がんが進行すると嗄声の症状が悪化するだけではなく、息苦しくなったり痰に血が混ざったりします。喉頭がんのなかでは声門がんは症状が早く現れるため、早期発見しやすいでしょう。

声門上部がんの症状

声門上部がんは喉に異物があるように感じる・飲食物を飲み込んだ際に痛みを感じたりする症状が現れます。さらに進行すると声帯にがんが発生し、声門がんの症状と同じように嗄声を生じたり息苦しくなったりします。
初期症状が出ても風邪だと思い発見が遅くなる可能性があるため、注意が必要です。

声門下部がんの症状

声門下部がんは発症してもすぐに症状が出ることはあまりありません。がんが進行するとはじめて嗄声・息苦しさの症状が現れます。
そのため喉頭がんのなかでは進行するまで発見が遅れやすいがんといえます。

喉頭がんの原因

喉頭がんの原因は喫煙・飲酒です。実際に患者さんのほとんどは喫煙者と知られています。
特に中高年のヘビースモーカーは喉頭がんになるリスクが高いため注意が必要です。また過度な飲酒は声門上部がんを引き起こすとされます。
その他には声帯を酷使するアナウンサー・歌手・教師などの仕事が原因となることも考えられます。

喉頭がんの検査

喉頭がんの検査には次の4つがあります。

  • 喉頭内視鏡検査
  • 生検
  • PET-CT検査
  • エコー・CT・MRIなどの画像検査

以下でそれぞれの検査を詳しく解説しましょう。

喉頭内視鏡検査

喉頭がんでは口・鼻から内視鏡を挿入して検査します。内視鏡検査では腫瘍の大きさ・声帯の動き・空気の通り道となる気道が細く狭くなっていないかなどを確認します。
喉頭がんは胃・食道にもがんが発生している可能性があるため、胃カメラを使った上部消化管内視鏡検査も行うことが望ましいです。また場合によっては声帯の動きをスローモーションで観察する喉頭ストロボスコピーを行います。

生検

生検は内視鏡検査で異常が認められた場合に行います。基本的に体の一部を麻酔して組織を採取しますが、場合によっては全身麻酔した上で行うこともあります。

PET-CT検査

PET-CT検査はPET検査とCT検査が組み合わさった検査のことで、がんの有無・がんの広がり・他の臓器への転移・治療の効果・再発の有無などを調べられます。
PET検査では放射性フッ素を添加したブドウ糖を体内に注射し、がん細胞に取り込まれたブドウ糖の分布を調べます。またCT検査は体にX線を当ててコンピューターで処理することで、体の断面の画像を表示する検査です。
この2つの検査を組み合わせることで1つの検査を行うよりも精度が高まるといわれています。

エコー・CT・MRIなどの画像検査

エコー検査・CT検査・MRI検査はそれぞれ喉頭がんと診断された場合にがんの広がりの深さ・転移の有無などを確認するために行われます。
エコー検査は体の表面に超音波が出る器械をあてて臓器からはね返ってくる反射波を映像化しモニターで確認する検査です。
体への負担が軽いため、妊婦・高齢者でも検査が可能です。CT検査は体内に造影剤という検査薬を注射した上で検査を行うと、より精度が高まります。
またMRI検査はMRI装置による強い磁石と電磁波を使用して、体の断面を画像表示する検査です。X線を使わずに行うため、放射線による被ばくの心配はありません。
ただしペースメーカーなどが体内に入っている人・磁石を使用したインプラントを埋め込んでいる人は検査が難しいケースがあります。また入れ墨・アートメークをしている人は火傷するリスクがあるため注意が必要です。

喉頭がんの治療法

喉頭がんの治療法には次の4つが挙げられます。

  • 手術療法
  • 放射線治療
  • 化学放射線治療
  • 薬物療法

上記の治療法のうち、手術療法・放射線治療・薬物療法はがんの3大治療法です。喉頭がんの治療はがんの進行度・種類に合わせて治療法を選択するのが基本となります。
その上で患者さん本人の希望・生活環境・年齢・体の状態なども考慮した上で担当医師と相談して決定します。それでは喉頭がんの治療法を詳しくみていきましょう。

手術療法

喉頭がんの手術には喉頭温存手術・喉頭全摘出術・頸部郭清術(けいぶかくせいじゅつ)があります。喉頭温存手術では喉頭を部分的に残すため、手術後も声を出すことが可能です。
ただし切除する部分によっては声が出にくくなったり誤嚥しやすくなったりします。喉頭温存手術には経口的切除術・喉頭部分切除術・喉頭亜全摘出術があります。
経口的切除術は口から器具を入れることで切除する方法です。声門がん・声門上部がんのうち表面までしか進行していない場合に行われます。
喉頭部分切除術・喉頭亜全摘出術は首を切開した上でがんを取り除く方法です。喉頭を切除する範囲によって喉頭部分切除術もしくは喉頭亜全摘出術と言い方が変わります。
喉頭全摘出術は喉頭を全て切除する方法です。手術後は声を出すことができなくなるため、新たな発声方法を習得したり発声を補助する器具を使用したりするのが必要となります。
誤嚥するリスクはありませんが、飲み込みにくくなったり食べた物が逆流したりする場合があるため注意が必要です。また、頸部郭清術はリンパ節の周りを切除する方法です。
基本的にリンパ節に転移した場合に行われますが、予防として行うケースもあります。
がんの状態によってリンパ節の周りの血管・神経も切除する場合があるため、首・肩に痛みが生じたり腕が上がりにくくなったりするなどの症状が現れる場合もあります。

放射線治療

放射線治療は、がんのある部分に放射線をあてることでがん細胞を破壊し、がんを消滅させたり小さくしたりする治療法です。
主に初期のがんに対して行われるもので、がんの進行具合によって放射線治療のみもしくは放射線治療と薬物療法の両方で行われる場合があります。放射線治療は喉頭を残せるため、治療前の状態に近い声が残せると考えられています。
しかし治療中・治療後に副作用が現れるため注意が必要です。副作用には治療してすぐに現れるものと治療後半年から数年経過してから現れるものがあります。
治療中・治療後すぐに現れる副作用としては嗄声・口の乾燥・粘膜の炎症・皮膚炎などです。
また治療後半年から数年経過してから現れる副作用は、耳のなかでウイルスが感染して炎症を起こす中耳炎・嚥下障害・味覚の低下・むし歯などが挙げられます。
主に口の中の症状が多いことから、治療後は口の中を清潔に維持することが重要といえるでしょう。

化学放射線療法

化学放射線療法は放射線治療・薬物療法を併用して行う治療法です。放射線治療のみよりもがんの進行を抑えたり喉頭を残せたりする可能性があると考えられています。
しかし嗄声・嚥下障害・皮膚炎などの副作用が強く現れるため、がんの進行状況・体の状態を考慮して選択する必要があるでしょう。

薬物療法

抗がん剤などを服用して治療する薬物療法には化学放射線療法・導入化学療法・術後化学放射線療法があります。導入化学療法は放射線治療・化学放射線療法の前に行う薬物療法です。
また術後化学放射線療法は術後に再発のリスクが高いと考えられる場合に行う薬物療法とされます。これらはがんを治療したり喉頭などの機能を温存させたりする目的で行われる治療法です。
その他にも再発・転移の場合に症状を緩和させたり生活の質を維持・向上させたりするために行う方法があります。

喉頭がんについてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは喉頭がんについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

喉頭がんの生存率はどれくらいですか?

渡邊 雄介医師渡邊 雄介(医師)

喉頭がんと診断された人のうち、5年後に生存している割合は7割程度とされています。
ただしがんのステージによって生存率は変わり、早期のがんの方は生存率が高いと考えられます。

喉頭全摘出術を受けたら二度と声が出せなくなってしまうのでしょうか?

渡邊 雄介医師渡邊 雄介(医師)

喉頭を全て切除するため治療前のように声は出せなくなりますが、食道発声・電気式人口喉頭・シャント発声などの方法で声を出せます。
食道発声は食道を振動させて発声する方法です。習得に時間を要しますが、器具を使用しないため両手を使えるメリットがあります。
電気式人口喉頭は電気で振動する器械を喉にあてることで発声する方法です。手での操作が必要になりますが習得しやすいとされています。
また、シャント発声は手術によって気管と食道をつなぐ細い管(シャント)を作り、肺から食道へ空気を送ることで発声する方法です。
この方法は食道発声よりは早く習得できるといわれています。ご紹介した3つの方法はそれぞれメリット・デメリットがあるため、患者さん本人の状況・希望に合った方法を選ぶと良いでしょう。

編集部まとめ

喉頭がんは発生部位によって3つに分けられ、それぞれ症状・進行パターンが異なります。

発生部位によって発見が遅れてしまう場合があるため、少しでも当てはまる症状があれば病院を受診することが重要です。

検査・治療法はさまざまな方法があるため、体の状態・生活環境などを考慮しつつ担当医師と相談して行うようにしましょう。

また喉頭がんは食道がん・胃がんなど他のがんを併発している可能性があります。

そのため喉頭がんと診断された場合は他の病気の可能性も疑うことが必要です。

喉頭がんを発症していなくても過度な飲酒・喫煙は喉頭がんの原因となるため、当てはまる生活習慣のある人は早めに改善しましょう。

喉頭がんと関連する病気

喉頭がんと関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

耳鼻咽喉科の病気

呼吸器科の病気

消化器科の病気

喉頭がんと同じように嗄声の症状がある病気は急性喉頭炎・副鼻腔炎・声帯結節・声帯ポリープです。また喉頭がんの原因である飲酒・喫煙は肺がん・食道がん・胃がんを引き起こす原因にもなります。
喉頭がんを発症すると同じ時期もしくは異なる時期に上記のがんも発症することが多いとされます。喉頭がんの疑いがある場合は、上記の病気も発症していないか確認することが必要でしょう。

喉頭がんと関連する症状

喉頭がんと関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 嗄声
  • 喉の異物感
  • 飲み込みにくさ
  • 嚥下痛
  • 血痰
  • 息苦しさ

喉頭がんの初期症状は風邪の症状と似ているため、喉頭がんと気づきにくい傾向にあります。発見が遅くなると、喉頭を全て切除して自然な声を出すことが難しくなる場合があります。
少しでも気になる症状があったりなかなか改善しなかったりする場合は、耳鼻咽喉科を受診してください。

この記事の監修医師