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「悪性リンパ腫の主な4つの検査法」はご存知ですか?治療法についても解説!

 公開日:2023/12/08
「悪性リンパ腫の主な4つの検査法」はご存知ですか?治療法についても解説!

悪性リンパ腫とは血液のがんの一つです。白血球の一種のリンパ球という細胞ががん化することで発症します。

悪性リンパ腫は血液に発生する血液腫瘍の中で最も発症頻度の高いがんです。発症年齢のピークは70歳代ですが、どの年代においても発症する可能性があります。

悪性リンパ腫は種類が非常に多く、種類によって悪性度や治療方法が異なります。そのため、様々な検査で悪性リンパ腫の種類をしっかり診断することが適切な治療を行う上で非常に重要です。

今回は悪性リンパ腫の検査方法・原因・症状・治療方法について解説します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

悪性リンパ腫とは?

悪性リンパ腫とは、白血球のうちのリンパ球ががん化することで発症する病気です。白血球は体内に侵入してきた病原菌や異物から体を守る働きがあり、その種類は好中球・好酸球・好塩基球・単球・リンパ球の5つです。このうちのリンパ球ががん化することで発症する病気が悪性リンパ腫という病気で、大きく分けると「ホジキンリンパ腫」「非ホジキンリンパ腫」の2種類に分けられます。
さらに非ホジキンリンパ腫は、リンパ球が分化していく過程のどの段階でがん化したかによって細胞の性質に違いがあるため、「B細胞リンパ腫」・「T細胞リンパ腫」・「NK/T細胞リンパ腫」の3種類に分けられます。悪性リンパ腫の種類は非常に細かく分かれており、その種類は50種類以上です。発症する悪性リンパ腫の割合はホジキンリンパ腫が約10%、非ホジキンリンパ腫が約90%とされてます。悪性リンパ腫の病気の進行度は種類によって異なり、主に3つに分けられます。
症状の進行が年単位と緩やかに進む「低悪性度リンパ腫(インドレントリンパ腫)」・月単位で進行する「中悪性度リンパ腫(アグレッシブリンパ腫)」・週単位で進行する「高悪性度リンパ腫(高アグレッシブリンパ腫)」の3つです。低悪性度リンパ腫では腫瘍の量によっては経過観察も可能ですが、中悪性度リンパ腫・高悪性度リンパ腫と悪性度が高まるほど迅速な治療が必要です。このように同じ悪性リンパ腫でもタイプによって治療方針や治療計画が異なってくるため、種類と病態の正確な診断が予後予測に大きく関係します。
悪性リンパ腫の病期診断には、PET-CTを用いた「Lugano分類」が用いられます。放射性物質を含む薬剤を投与して検査するPET-CTは、CT単独の検査と比べ、ホジキンリンパ腫・非ホジキンリンパ腫の病期診断をより正確に行うことが可能です。
悪性リンパ腫の発生率は年間10万人あたり30人程度と、日本の成人に発生する血液腫瘍の中で最も頻度の高いがんです。早期に発見し適切な治療を施すことで根治できるタイプもあるので、悪性リンパ腫が疑われたらすぐに検査・治療を受けましょう。

悪性リンパ腫の検査方法

悪性リンパ腫の検査方法として病理検査・血液検査・画像診断・骨髄検査などが挙げられます。悪性リンパ腫の診断で最も重要なのが生検した細胞を調べる病理検査です。病理検査でリンパ球の細胞の種類を調べることは、悪性リンパ腫の診断に欠かせません。ここでは悪性リンパ腫の検査方法について説明します。

病理検査

病理検査とは、体から細胞の一部を採取し、その細胞を顕微鏡で観察して良性か悪性か調べる検査方法です。悪性リンパ腫を疑う場合には、腫れたリンパ節から腫瘍細胞の一部を採取して観察します。体から細胞を採取する方法を生検(バイオプシー)といいます。悪性リンパ腫の検査で行われるのはリンパ節生検や腫瘍生検です。
基本的に局所麻酔で行われることが多いですが、場合によっては全身麻酔にて行われる場合もあります。生検によって採取した細胞を病理医が顕微鏡で観察し、細胞の型を調べ良性か悪性かを判断します。病理検査は悪性リンパ腫の確定診断に欠かせない検査です。病理検査にてリンパ球の細胞の種類を特定することが、悪性リンパ腫に対する適切な治療を行う上で非常に重要です。

血液検査

血液検査は全身状態や悪性リンパ腫の進行度合いを調べるために行われる検査です。白血球・赤血球・血小板などの基本的な数値から全身状態を判断したり、肝臓・腎臓の数値からこれらの機能を調べたりします。また、悪性リンパ腫ではLDH(乳酸脱水素酵素)という酵素の数値が上昇することがあります。
LDHは肝臓をはじめ、心臓・腎臓・赤血球など全身の様々な細胞で作られる酵素です。LDHは何らかの異常で臓器が破壊されることで血中に漏れ出し数値が上がるとされており、悪性リンパ腫などの悪性腫瘍の発生で上昇する場合もあります。このほか、sIL-2R(可溶性インターロイキン2受容体)の上昇が悪性リンパ腫を判断する腫瘍マーカーとして有用であるとされています。
しかし、悪性リンパ腫であってもsIL-2Rが上昇しない場合が多々あるため、腫瘍マーカーだけでなくその他の検査結果も合わせて判断することが重要です。

画像診断

悪性リンパ腫の診断に画像診断は欠かせません。悪性リンパ腫の診断に使われる画像診断には、X線検査・CT検査・MRI検査・超音波検査(エコー検査)・PET-CT検査などがあります。特に重要な検査がCT検査です。CT検査は短時間で胸部から骨盤部までの幅広い範囲を撮影でき、リンパ節および各種臓器の異常の有無を判断できる非常に有用な検査です。悪性リンパ腫診断における中心的な画像診断といえます。
胸部X線検査では縦郭および肺門部のリンパ節の腫れや胸水などの胸部病変の有無が確認できます。MRIは被曝がないというメリットはありますが、胸部や腹部といった体幹部の臓器の描出においてCT検査より劣るため、悪性リンパ腫における基本的な画像診断として用いられることは少ないです。しかし、MRIは脳や骨の描出に力を発揮するため、悪性リンパ腫によるこれらの部位への異常を疑う際に用いられます。超音波検査では腹部の検査を行うことでリンパ節の腫れや肝臓・腎臓の異常の有無を判断できます。
しかしCT検査とは異なり描出範囲が狭いため、全身の精査には不向きです。PET-CT検査は体の中に放射性物質を含む薬剤を注入し、薬剤の細胞への取り込みを撮影する画像診断方法です。悪性リンパ腫の全身への広がりを調べたり、治療効果の確認や再発の有無を確認したりするために行われます。また、PET-CT検査は、悪性リンパ腫の病期診断に用いる「Lugano分類」の評価に欠かせない検査です。

骨髄検査

骨髄検査とは腰の骨などから骨髄液や骨髄組織を採取して検査する方法です。骨髄にまで悪性リンパ腫の細胞が広がっているかを調べるために行われます。骨髄検査では局所麻酔を行い、腰の骨(腸骨)などに針を刺して骨髄液や骨髄組織を採取します。
骨髄液を採取する方法は「骨髄穿刺」、骨髄組織を採取する方法は「骨髄生検」です。採取した細胞を顕微鏡で観察して異常の有無を調べます。その他にも採取した骨髄細胞表面に出ているマーカーを調べたり、染色体検査でリンパ腫細胞の染色体の異常を調べたりする方法があります。
  

悪性リンパ腫の原因

悪性リンパ腫が発生する原因については明らかになっていません。しかし、ウイルスや細菌の感染・免疫不全症・遺伝子の異常などが原因で発症する場合があります。一部の悪性リンパ腫はウイルスや細菌の感染によって引き起こされる場合があることが分かってきました。
成人T細胞白血病リンパ腫はHTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)というウイルスに感染することで発症することがあります。また、胃に発生するMALT(マルト)リンパ腫はピロリ菌感染が原因とされています。この他、加齢や慢性的な炎症などに伴う遺伝子の異常・免疫不全症・免疫抑制薬などが一部の悪性リンパ腫の原因です。しかし発症原因が明らかではない場合が多くあります。

悪性リンパ腫の症状

悪性リンパ腫の発症に伴い最もよく見られる症状が「リンパ節の腫れ」です。この他、症状の進行に伴い発熱・食欲不振・体重減少・激しい寝汗(盗汗)などが見られるようになります。ここでは悪性リンパ腫の症状について説明します。

リンパ腫細胞による腫れ

悪性リンパ腫はリンパ球ががん化することで発症します。がん化して異常に増殖したリンパ球は全身にあるリンパ節やリンパ組織にかたまりを作ります。このかたまりが腫れとして確認されるのです。悪性リンパ腫に伴うリンパ節の腫れは、体の表面から知覚しやすい首・脇の下・足の付け根などで確認されることが多いです。
どこのリンパ節が腫れているのかにより、自覚する症状に違いがあります。体表面に近いリンパ節であればゴムのような硬さの腫れを自覚したり、腹部のリンパ節が腫れていれば腹部膨満感があるなどの症状が現れるのです。悪性リンパ腫によるリンパ節の腫れは痛みを伴うことはなく、時間が経っても消失することはありません。

リンパ腫細胞から出てくる物質により生じる症状

リンパ球はもともと免疫をつかさどる細胞であるため、体を守るために必要な様々な物質を分泌する能力があります。リンパ球ががん化するとこれらの物質を分泌する機能が暴走するため、全身に様々な症状が現れるのです。悪性リンパ腫に伴う全身症状としては、発熱・食欲不振・体重減少・激しい寝汗(盗汗)などが挙げられます。
原因不明の発熱から悪性リンパ腫が発覚する場合も少なくないため、長引く不調は一度検査をして調べたほうが良いでしょう。

悪性リンパ腫の治療

悪性リンパ腫の治療方法は抗がん剤による化学療法・放射線治療が中心です。この他、悪性リンパ腫の種類やステージに合わせて様々な治療方法を組み合わせて用います。ここでは悪性リンパ腫の治療について説明します。

化学療法

悪性リンパ腫治療の中心となるのが抗がん剤を用いて行う化学療法です。悪性リンパ腫治療の代表的な化学療法に「CHOP(チョップ)療法」というものがあります。CHOP療法は3種類の抗がん剤(シクロホスファミド・ドキソルビシン・ビンクリスチン)と副腎皮質ホルモン(プレドニゾロン)を組み合わせた治療方法です。
この他、悪性リンパ腫の種類のうちB細胞由来の腫瘍には、抗体薬のリツキシマブを組み合わせたR-CHOP療法が用いられます。R-CHOP療法は非ホジキンリンパ腫に使用される代表的な化学療法です。ホジキンリンパ腫の治療には、ドキソルビシン・ブレオマイシン・ビンブラスチン・ダカルバジンの4種類の抗がん剤を併用する「ABVD療法」が用いられます。このように、化学療法では患者さんの状態や悪性リンパ腫の種類に合わせた薬剤・療法が選択されます。これらの治療方法は通院にて行われる場合が多いです。

分子標的治療

分子標的療法とはがん細胞をピンポイントに攻撃して治療する方法です。分子標的療法では、がんの発生や増殖に直接作用する「ドライバー遺伝子」や、がん細胞が増殖しやすい環境を整える因子などを標的として治療が行われます。抗がん剤よりもピンポイントでがんを狙えるため効率の良い治療方法とされています。
悪性リンパ腫の分子標的治療では、悪性リンパ腫の型や種類をしっかりと見極めることが非常に重要です。型や種類によって使用する薬剤が異なるので、病理検査などで種類を的確に判断することが適切な分子標的治療を行う上で不可欠です。悪性リンパ腫の治療では分子標的治療を単独で行う場合もありますが、多くの場合は抗がん剤と併用して治療します。

放射線治療

進行が緩やかな悪性リンパ腫で、なおかつ病巣部が限られた狭い範囲の場合に放射線治療が用いられます。正常なリンパ球は薬剤や放射線に弱い性質があります。このためリンパ球から発生したがんも薬剤や放射線に弱い傾向があるため、悪性リンパ腫の種類や進行度によっては放射線治療にて根治が目指せるでしょう。
放射線治療に用いられるのは高エネルギーのX線を照射できる「リニアック」という装置です。腫瘍の位置に合わせて皮膚表面にマーキングを施し、腫瘍めがけて高エネルギーX線を照射して治療します。放射線治療は週に4〜5日の頻度で行い、3〜5週程続けて行います。放射線治療の副作用は照射する部位によって異なりますが、どの部位に照射する場合においても軽い皮膚炎・白血球減少・血小板減少といった副作用が発生するでしょう。治療目的の他に、造血幹細胞移植の前に放射線治療を行う場合もあります。

造血幹細胞移植

造血幹細胞移植は、白血球・赤血球・血小板などの血液細胞のおおもとである造血幹細胞を移植する治療方法です。抗がん剤などの化学療法や放射線療法だけでは根治が難しい場合に選択されます。造血幹細胞移植には患者さん自身の造血幹細胞を使用する「自家移植」と、ドナーから提供してもらう「同種移植」があり、悪性リンパ腫の治療においては自家造血幹細胞移植が主な移植方法です。
造血幹細胞移植前の処置として、非常に強力な抗がん剤による治療や全身放射線照射によって、患者さんの体内の悪性リンパ腫細胞の多くを死滅させます。その後、点滴にて造血幹細胞を体内に戻し生着させるのです。抗がん剤や放射線の影響で免疫機能が大きく下がっているため、移植した造血幹細胞が拒絶される恐れが少なく、生着が可能となります。

悪性リンパ腫についてよくある質問

ここまで悪性リンパ腫の検査方法について紹介してきました。ここでは「悪性リンパ腫の検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

悪性リンパ腫は何科で検査しますか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

悪性リンパ腫の検査は、主に「血液内科」で行います。なお、悪性リンパ腫は発症した部位や症状の進行度合いによって様々な症状が現れるため、血液内科以外で診断される場合もあります。

どのような症状が出たら検査するべきですか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

足の付け根・首・脇の下などに、痛みのないしこりが現れ徐々に大きくなる場合や、発熱・寝汗・体重減少といった全身症状が出たときは一度検査した方が良いでしょう。

編集部まとめ

悪性リンパ腫の発症頻度は年間10万人あたり30人程度と、日本の成人に発生する血液腫瘍の中では最も頻度が高いがんです。

悪性リンパ腫の症状として最も多く自覚するのがリンパ節の腫れです。痛みがなくゴムのような硬いしこりが知覚できます。このしこりは時間が経っても消失することはありません。

悪性リンパ腫は細胞の型により種類が豊富に分かれており、種類によって病気の進行度合いや治療補法が異なります。

高悪性度リンパ腫では、症状が週単位で進行するため迅速な治療が必要です。

そのため、悪性リンパ腫を疑う症状が認められたらすぐに医療機関を受診して検査を受けることが非常に重要です。

悪性リンパ腫と関連する病気と関連する病気

「悪性リンパ腫」と関連する病気は11個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

悪性リンパ腫と関連している、あるいは同じような症状が現れる疾患として上記のようなものがあります。悪性リンパ腫の特徴であるリンパ節の腫れはウイルスや細菌感染によっても引き起こされるため、詳しい検査が必要です。

「悪性リンパ腫と関連する症状

「悪性リンパ腫」と関連している、似ている症状は13個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 首や足の付け根にしこりがある
  • 発熱が続く
  • 喉の違和感
  • 鼻詰まり
  • 食事中よくむせる
  • 寝汗をかきやすくなった
  • 食欲が減退した
  • 理由なく体重が減った
  • お腹の張り
  • 下痢

リンパ節の個数は個人差がありますが、平均して600個ほどのリンパ節が全身にあるとされています。悪性リンパ腫の症状は腫れたリンパ節の場所・大きさ・症状の進行度で大きく異なるため、様々な症状が現れます。上記のような症状が現れたら医療機関を受診して検査を受けてください。

この記事の監修医師