「肝臓がんになりやすい人の原因」はご存知ですか?予防法も医師が解説!
肝臓がんの原因とは?Medical DOC監修医が肝臓がんの原因・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)
目次 -INDEX-
「肝臓がん」とは?
肝臓がんとは、肝臓内の細胞が異常に増殖してできる悪性の腫瘍を指します。長期にわたる肝炎や肝硬変などの肝臓の病気がリスクとされており、早期発見が難しいのが特徴です。
主な症状としては、全身のだるさ、腹部の膨らみ、腹水(お腹に水がたまること)、便通異常(便秘・下痢など)、吐き気、嘔吐、痛みなどが挙げられますが、これらはかなり肝臓がんが進行してしまった段階でみられます。 肝臓がんの診断は、肝臓のエコーや血液検査、CT、MRIなどの画像検査を用いて行います。 受診すべき診療科は消化器外科や消化器内科です。
診断結果を元に、治療の方針が決定されます。早期であれば、手術やラジオ波焼灼療法(穿刺局所療法)での治療が行われることが多いです。一方、病気が進行している場合や手術が難しい場合は、薬物療法や放射線治療が選択されることもあります。
肝臓がんの原因
B型肝炎
肝臓がんの原因としてまず考えられるのはB型肝炎です。B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)によって引き起こされる感染症です。ウイルスは血液や体液を通じて感染するため、不適切な医療器具の使用(注射器の使い回しなど)、母子感染、不特定多数との性的接触などを通じて広がることが一般的です。多くの場合、感染初期には症状が現れないか、あっても非常に軽いものしか現れません。しかし、感染が持続し慢性化すると、肝硬変や肝臓がんのリスクが高まります。
自覚症状が乏しいため、検診などで肝機能障害を指摘されて気づくことが多いです。そのため、まずはかかりつけの医師や内科へ相談し、B型肝炎ウイルスや後に紹介するC型肝炎ウイルスへの感染がないか調べるのが一般的です。もし感染が認められた場合、治療は高度で専門的なものになるため、肝臓専門の診療を行っている病院へ紹介されることも考えられます。緊急性は高くありませんが、放置していて自然に治るものではありません。確実に受診するようにしてください。
C型肝炎
肝臓がんのリスク要因の一つに、C型肝炎が挙げられます。C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)により発症する感染症であり、主に血液を介した接触で感染します。不適切な医療器具の使用や感染者の血液との直接接触などが感染経路として知られています。
感染初期には症状がほとんど現れないか、非常に軽いため、自覚症状が出る前に慢性化してしまうことが多いです。慢性化したC型肝炎は、長期にわたり肝臓にダメージを与え、最終的に肝硬変や肝臓がんを引き起こすリスクが増加します。
感染の有無を知るためには、血液検査が必要です。一度感染が確認された場合、肝臓の専門医である消化器内科や肝臓専門医の在籍する医療機関での診察や治療が推奨されます。
近年、C型肝炎の治療薬が進化しており、完治が期待できるケースが増えています。しかし、放置すると深刻な状態に進行する可能性があるため、早期発見と適切な治療が非常に重要です。
大量飲酒
肝臓がんのリスク要因として、アルコール過剰摂取もあります。アルコールは肝臓で分解・解毒されるため、大量に摂取されると肝機能に過度な負担をかけることになります。この負担が長期間続くと、肝臓の細胞に炎症や変性を起こし、最終的にはアルコール性肝硬変や肝臓がんへと進行する可能性があります。
過剰なアルコール摂取の影響を減少させるためには、当然ですがアルコールの量と頻度を減らす必要があります。一度肝臓にダメージが生じると、その回復は難しいです。そのため、日常の生活習慣を見直し、肝臓に負担をかけないよう心掛けることが、肝臓がんを予防する鍵になります。
日常的な飲酒習慣を持つ方や、過去に肝機能の異常値を指摘されたことがある方は、定期的な健康診断を受けて、肝機能を定期的に調べることをおすすめします。
基本的な肝機能のチェックは一般内科で可能です。緊急性はありませんので日中に受診してください。
脂肪肝
肝臓がんの原因として脂肪肝も候補になります。脂肪肝はその名の通り、肝細胞に脂肪が過剰に蓄積した状態のことを指します。
特に、近年問題となっているのが非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)です。肝臓の病気といえば酒飲みの病気、という認識は過去のもので、アルコールを全然摂取しない方でも肝障害は起こり得ます。
脂肪肝自体は初期段階では無症状ですが、放置すると炎症を起こした非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)へと進行することがあり、その後、肝硬変や肝臓がんへと進行するリスクが高まります。
脂肪肝の予防・改善のためには、バランスの良い食生活と適度な運動が必要です。特に、適正体重を維持すること、食事での過剰な糖や脂肪の摂取を控えることが大切です。
健康診断などで肝機能障害と判断された場合は、これまで紹介した肝炎ウイルスやアルコールに加えて、脂肪肝の可能性もあります。いずれにせよ早期発見・早期治療が、肝臓がん予防に繋がりますので、定期的な健康診断と病院受診を心がけてください。
喫煙
肝臓がんの原因として喫煙も考えられます。喫煙が直接、肝臓がんのリスクになるというよりは、「喫煙によって肝臓がんのリスクが上昇している」というのが現状の見解です。タバコの煙には多くの発がん性物質が含まれているため、と考えられています。喫煙という単体の原因でどれだけ肝臓がんリスクが上昇するか、という点はまだはっきりとはしていませんが、少なくとも喫煙によって肝臓がんリスクは上昇する、ということは判明しています。
肝炎ウイルスへの感染やアルコール性肝硬変、脂肪肝が指摘されている喫煙者の方は、肝臓がん予防において、禁煙も重要な対策になります。
肝臓がんの予防法
肝炎ウイルスへの対策
肝臓がんの原因の項目で記載したように、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスの感染、そしてこれらのウイルスによる慢性肝炎は、肝臓がんのリスクになります。予防法としては、肝炎ウイルスのワクチン接種や、不特定多数の人との性的接触を避けることで感染リスクを下げることが重要です。
また感染していた場合は、定期的な医療機関受診のもと、肝臓の状態を継続してみていく必要があります。消化器内科や肝臓専門外来のある医療機関が専門になります。
アルコール摂取量を適切に抑える
先述のようにアルコールの過剰摂取は、肝臓へ大きな負担をかけ、アルコール性肝硬変から肝臓がんへとつながります。頻繁にお酒を飲む習慣がある方は、定期的な血液検査で肝機能をチェックすることをお勧めします。
体重コントロール
肝炎ウイルスへの対策ができており、アルコール摂取が適正量であっても、過度な体重増加や肥満は、脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患)のリスクを高める要因となります。もちろん、肝炎ウイルスなどの方が肝臓がん発生リスクは高いのですが、脂肪肝でも肝臓へのダメージは徐々に蓄積し、肝硬変に至ることもあるため、注意が必要です。
脂肪肝に対しては、適切な運動や食事内容で、体重をコントロールすることが重要です。
「肝臓がんの原因」についてよくある質問
ここまで肝臓がんの原因・予防法などを紹介しました。ここでは「肝臓がんの原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肝臓がんになりやすい人の原因を教えて下さい。
中川 龍太郎(医師)
肝炎ウイルスに感染しており慢性肝炎を患っている方、アルコールを過剰に摂取する方、脂肪肝を放置している方、喫煙者は肝臓がんになりやすいと考えられます。
肝臓がんの原因はストレスも考えられますか?
中川 龍太郎(医師)
ストレスが直接の原因になるわけではありません。
編集部まとめ
今回は肝臓がんの原因とその予防について、解説いたしました。肝機能障害は検査データとして異常値が出ても、自覚症状は出にくいものです。しかし着実に肝臓へのダメージはありますので、健康診断などで指摘された場合は、しっかりと調べて適切な治療をすることをおすすめします。
「肝臓がんの原因」と関連する病気
「肝臓がんの原因」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
病気を発症しても自覚症状がなく、血液検査を調べると肝機能に異常値が出たことで病気が見つかったというパターンが多いため、肝臓の病気は注意が必要です。
「肝臓がんの原因」と関連する症状
「肝臓がんの原因」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 全身がだるい
- 食べているのに体重が減る
- 皮膚や目が黄色くなる
肝臓がんの症状として上記のようなものも挙げられますが、いずれもかなり肝臓がん自体が進行してからみられる症状です。早期発見、早期治療のためには定期的な健康診断や血液検査が重要です。症状が現れる前に、未然に対処しましょう。