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「小脳梗塞」を発症するとどんな「後遺症」が残るかご存知ですか?医師が解説!

 公開日:2026/01/26
「小脳梗塞」を発症するとどんな「後遺症」が残るかご存知ですか?医師が解説!

小脳梗塞の後遺症とは?メディカルドック監修医が小脳梗塞の後遺症・術後の後遺症・後遺症が残る原因・リハビリ方法などを解説します。

村上 友太

監修医師
村上 友太(東京予防クリニック)

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医師、医学博士。
2011年福島県立医科大学医学部卒業。2013年福島県立医科大学脳神経外科学入局。星総合病院脳卒中センター長、福島県立医科大学脳神経外科学講座助教、青森新都市病院脳神経外科医長を歴任。2022年より東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医、健康経営エキスパートアドバイザー。

「小脳梗塞」とは?

小脳梗塞とは、脳の奥、後頭部の下側にある小脳に血液を送っている血管が詰まり、血液(酸素や栄養)が行き渡らなくなり、その細胞が死んでしまう(壊死する)病気です。
小脳は、脳全体の約10%の重さしかない小さな臓器ですが、私たちの体の動きをスムーズにコントロールする上で、非常に重要な役割を担っています。
小脳の最も大切な働きは、運動の調節(バランスや協調性)です。
例えば、
・歩くときに体が傾かないように微調整する。
・箸で物をつまむ際に手が震えたり、狙った場所からずれたりしないようにする。
といった、司令塔である大脳からの指令を細かく調整する役割を担っています。また、最近では、単に運動だけでなく、思考や感情の調節にも関わっていることがわかってきています。
小脳梗塞は、他の部位の脳梗塞と比較して、命を落とす危険性(致死率)は低い傾向がありますが、病変の場所や大きさによっては、命に関わる脳幹という重要な部位を圧迫し、緊急手術が必要になることもあります。
発症後、適切な治療を受けて急性期を乗り越えたとしても、残念ながら何らかの機能障害(後遺症)が残ってしまうケースも少なくありません。
本記事では、小脳梗塞によって引き起こされる主な後遺症、その完治の可能性、日々の生活における注意点、そして後遺症を改善するためのリハビリテーションについて、詳しく解説していきます。

小脳梗塞の後遺症

小脳梗塞で最も特徴的かつ頻度の高い後遺症は、運動の調節機能に関わる症状です。これらは「小脳症状」と呼ばれ、日常生活の質(QOL)に大きく影響します。

運動失調(協調運動障害)

運動失調とは、「手足の麻痺はないのに、動作をスムーズに、正確に行えない状態」を指します。体の動きの「調整役」が機能しない状態です。
具体的には、以下の3つの要素が組み合わさって現れます。
・体幹失調: 体の軸が不安定になり、ふらついてまっすぐ歩けない(酔っぱらったような歩き方)状態です。座っている時でも体がグラグラすることがあります。
・四肢失調: 手足の動きが精密でなくなります。例えば、指で鼻を触ろうとすると狙った場所からずれる(測定異常)、物を掴もうとすると手が震える(企図振戦)、字が上手に書けなくなる、などの症状が現れます。
・協調運動障害: 二つの動作を同時に行うことが困難になります。例えば、歩きながら物を取る、電話をしながらメモを取る、といった複雑な動作が難しくなります。

運動失調は、小脳梗塞の代表的な症状であり、改善に最も時間を要する後遺症の一つです。完全に発症前の状態に戻る(完治する)ことは難しい場合もありますが、リハビリテーションによって大幅な改善が見込めます。脳には代償機能(他の部位が失われた機能を補う能力)があるため、訓練を継続することで、日常生活に支障のないレベルまで回復する例も多いです。回復期間は数ヶ月から1年以上かかることもあります。
日常生活の注意点としては、転倒による二次的な怪我を防ぐことが最優先です。歩行時は杖や歩行器などの補助具を積極的に使い、手すりを活用しましょう。また、震え(振戦)がある場合は、食事中に熱いものをこぼさないよう、滑り止めマットや重い食器を使うなどの工夫が必要です。

平衡機能障害・めまい

小脳は、体のバランスを司る「前庭神経核」という部位と密接に連携しています。この連携が崩れることで、激しいめまいや平衡機能障害が後遺症として残ることがあります。
・めまい: 天井がぐるぐる回るような「回転性めまい」や、体がフワフワするような「浮動性めまい」が生じます。急性期(発症直後)には強いめまいが現れやすいですが、後遺症として残るのは、慢性的なふらつきや浮動感であることが多いです。
・平衡機能障害: 立っている時や歩行時に、体がどちらかに傾いてしまう、不安定感があるといった症状です。

激しい回転性めまいは徐々に治まるのが一般的です。慢性的なふらつきや不安定感は残ることが多いですが、リハビリテーション(特に平衡訓練)を通じて、脳が新しい体の平衡の取り方を学習することで、症状は軽減していきます。日常生活に困らないレベルの安定性を獲得することは十分に可能です。
めまいが強く出た場合は、無理せず座るか横になって安静にするようにしてください。急な頭の動きでめまいが誘発されることがあるため、動作はゆっくり行うことが重要です。入浴や階段の上り下り、夜間の移動には特に注意し、家族のサポート体制を整えましょう。

構音障害(話し方の問題)

小脳は、発声に関わる口や舌、喉の筋肉の動きも調整しています。小脳梗塞により、言葉を話す筋肉の協調性が失われることを小脳性構音障害と呼びます。
症状としては、話し方がゆっくりになり、言葉が途切れ途切れになったり、ろれつが回らなくなったりします。音の強さや高さの調節が難しくなるため、抑揚のない単調な話し方になることも特徴です。これは「筋肉の麻痺」ではなく、「発声のための運動の調整不良」によるものです。

他の小脳症状と同様に、自然回復とリハビリテーション(言語聴覚療法)による改善が期待できます。重度の場合は完治が難しいこともありますが、発声練習や口や舌の運動訓練を続けることで、聴き取りやすい話し方に近づけることは可能です。重要なのは、発症後できるだけ早く専門的なリハビリを開始することです。
コミュニケーションの困難は、患者様の精神的な負担につながりやすいです。話すことに焦りを感じず、ゆっくりと、はっきりと話すことを心がけてください。また、周囲の方は、患者様が話し終えるのを焦らず待つ姿勢が大切です。筆談やコミュニケーションボードなどの代替手段を準備することも有効です。

眼球運動障害・複視(二重に見える)

小脳は、両眼の動きを正確に協調させる機能にも関与しています。この機能が障害されると、以下のような症状が現れます。
・眼振: 意図しない眼球のけいれん(勝手に細かく震えるような動き)が生じます。
・複視: 物が二重に見える状態です。小脳と脳幹の連携が乱れることで、両眼の視線がずれてしまい、複視として認識されます。

眼球運動の障害は、小脳梗塞の病変が脳幹近くにある場合に起こりやすい症状です。多くの場合、時間経過とともに改善しますが、完全に治るまでに数ヶ月かかることがあります。複視が強く残る場合は、プリズム眼鏡(視線を矯正する特殊な眼鏡)の使用や、眼帯で片眼を覆うなどの対症療法が必要になることがあります。
複視や眼振は、めまいや吐き気を悪化させ、バランス感覚をさらに低下させる原因となります。症状が強い場合は、車の運転や危険な作業は避けてください。専門の眼科医やリハビリテーション専門医と連携し、適切な視機能訓練を受けることが重要です。

小脳性認知情動症候群 (CSAS/Schmahmann症候群)

小脳が運動調整だけでなく、思考や感情の「高次脳機能」にも関わるという近年の発見から注目されている後遺症です。特に小脳半球や小脳虫部が障害された場合に生じやすいとされています。
・認知機能障害: 計画を立てる、物事の優先順位を決める、問題解決能力、抽象的思考などの実行機能の低下。また、記憶力や言語流暢性の問題も伴うことがあります。
・情動(感情)障害: 感情の制御が難しくなり、無関心になったり、不適切な行動や感情表現(怒りっぽい、場にそぐわない言動など)が見られることがあります。

CSASは比較的新しい概念であり、まだ研究途上にあります。しかし、適切な神経心理学的リハビリテーションや高次脳機能訓練、時には薬物療法を組み合わせることで、症状の改善を図ることが可能です。特に環境を調整し、認知的な負担を減らすサポートが重要になります。
認知機能や感情の変化は、周囲からは「性格が変わった」と誤解されやすく、人間関係のトラブルにつながりやすいです。患者様ご本人だけでなく、家族や介護者もこの症候群について理解し、過度な期待や批判を避けることが大切です。専門の精神科やリハビリテーション科と連携して対応を進める必要があります。

小脳梗塞の術後の後遺症

小脳梗塞は、梗塞の範囲が広がり、脳幹(生命維持に必須の機能が集中している部位)を圧迫するリスクがある場合や、梗塞により脳のむくみ(脳浮腫)が高度になる場合に、緊急で手術(開頭術による減圧術など)が行われることがあります。手術は命を救うために不可欠ですが、手術特有の後遺症やリスクも伴います。

脳浮腫・水頭症による症状(頭痛、意識障害)

小脳梗塞による脳のむくみが、手術後も続くことがあります。また、手術によって脳の中の脳脊髄液(脳と脊髄を循環する液)の流れが妨げられ、脳室に液が溜まる水頭症になることがあります。
症状としては、慢性の頭痛、吐き気、意識レベルの低下、認知機能の低下、歩行障害(すり足など)が後遺症として残ることがあります。
脳浮腫は時間とともに徐々に軽減しますが、水頭症が残った場合は自然治癒は難しく、シャント術(脳室からお腹などにチューブを通して脳脊髄液を流す手術)という追加の手術が必要になることがあります。シャント術によって症状は劇的に改善することが多いです。

血腫による症状

手術後に、手術部位やその周辺で出血が起こり、血の塊(血腫)ができることがあります。
症状として、血腫が脳を圧迫することで、手足の麻痺、失語症、新たな小脳症状(めまい、運動失調など)といった、もともとの梗塞症状とは異なる、あるいは悪化した後遺症を引き起こす可能性があります。
対処法: 脳を圧迫している場合は、再び血腫を取り除く手術が必要になることがあります。術後、急激な症状の悪化(意識の低下、麻痺の出現など)は緊急事態です。すぐに救急車を呼ぶか、手術を受けた病院に連絡してください。

傷の痛み・感染症

開頭手術を行った場合、手術の切開部やその周囲の頭皮、神経に痛みが残り、後遺症となることがあります。また、稀ではありますが、術後に傷口や手術部位に細菌が感染し、重篤な合併症を引き起こすことがあります。
対処法: 慢性的な術後の傷の痛みは、内服薬やブロック注射などでコントロールできることが多いです。感染症は、抗生物質による治療が必要であり、早期の治療で完治が可能です。退院後、傷口が赤くなったり、熱を持ったり、液が出てきたりした場合は、自己判断せずにすぐに病院に連絡してください。

嚥下機能の低下(特に脳幹圧迫後)

小脳梗塞自体が直接的な重度の嚥下障害を引き起こすことは少ないですが、梗塞による脳浮腫が脳幹を圧迫した場合、飲み込みの機能に重大な障害が残ることがあります。
症状としては、食べ物や唾液が飲み込みにくくなる(嚥下困難)、食事中にむせる、食べたものが気管に入ってしまう(誤嚥)といった症状です。誤嚥は肺炎(誤嚥性肺炎)を引き起こす危険性があるため、命に関わります。
対処法: 嚥下訓練を継続することで、口から食事ができるようになるケースは多いです。嚥下障害がある場合は、専門家(言語聴覚士)の評価と指導なしに、自己判断で食事の形態を変えてはいけません。

小脳梗塞で後遺症が残る原因

小脳梗塞の後遺症が残る主な原因と、その対策、受診すべき病院について解説します。

梗塞の大きさや部位

後遺症の程度は、「どれだけ多くの脳細胞が壊死したか」、そして「どの部分の細胞がやられたか」に大きく左右されます。
・梗塞の大きさ: 梗塞範囲が広ければ広いほど、後遺症が重くなる傾向があります。
・梗塞の部位: 小脳の中心部や脳幹に近い部分が詰まると、症状が重篤化しやすいです。
・治療までの時間(Time is Brain): 脳梗塞は時間との勝負です。発症から治療開始までの時間が遅れると、壊死する細胞が増えてしまい、後遺症が残りやすくなります。

小脳梗塞の症状(急なめまい、ふらつき、ろれつが回らないなど)を自覚した場合、一刻も早く救急車を呼び、脳卒中センターや脳神経外科のある総合病院を受診してください。特に発症から4.5時間以内であれば、血栓を溶かす治療(t-PA静注療法)や、カテーテルによる血栓回収療法が適用できる可能性があります。

脳浮腫による二次的な脳幹圧迫

小脳梗塞が起こると、時間の経過とともに梗塞部位がむくみ(脳浮腫)、体積が増大します。小脳がある場所は狭く、むくみが大きくなると、生命維持に必須な脳幹を圧迫してしまいます。
・脳幹は、呼吸、心拍、意識レベルなど、生命の根幹に関わる機能を司っています。
・脳幹が圧迫されると、もともとの小脳症状に加えて、意識障害、呼吸の停止、四肢麻痺といった重篤な症状が出現し、命に関わります。この二次的な損傷が、回復を難しくし、重い後遺症の原因となります。

症状が急激に悪化し、頭痛や嘔吐が激しくなり、呼びかけへの反応が鈍くなる(意識レベルの低下)、呼吸が浅くなるなどの症状が出たら、躊躇なく救急車を要請し、一刻も早く脳神経外科のある病院へ搬送してもらう必要があります。

基礎疾患(高血圧、糖尿病、心房細動など)の管理状況

脳梗塞の原因の多くは、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動といった持病(生活習慣病)に起因しています。
・動脈硬化の進行: 高血圧や糖尿病があると、脳の血管の動脈硬化(血管が硬くなり、狭くなること)が進行しやすく、これが詰まりの原因となります。
・再発リスク: 持病の管理が不十分だと、小脳梗塞が治った後も、別の場所や同じ場所に再発するリスクが格段に高まります。再発によって後遺症が重なり、より重篤な状態になることが、後遺症が残る最大の原因の一つです。
・心房細動: 心臓の不整脈(心房細動)があると、心臓内で血の塊(血栓)ができ、それが脳に飛んで小脳の血管を詰まらせることがあります(心原性脳塞栓症)。これは再発リスクが非常に高い梗塞です。

脳梗塞の治療後も、持病をコントロールすることが極めて重要です。退院後、かかりつけの医師(内科医)と連携し、血圧や血糖値を厳密に管理してください。心房細動がある場合は、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)の服用を絶対に中断しないでください。

小脳梗塞のリハビリ方法

小脳梗塞の後遺症は、リハビリテーション(リハビリ)によって大きく改善が見込めます。ここでは、具体的なリハビリの内容と、家族ができるサポートについて解説します。

理学療法 (PT)

理学療法(PT)は、主に基本的な動作能力の回復を目指します。小脳梗塞では「運動失調」と「平衡機能障害」の改善が中心となります。
・平衡訓練: バランスボールなどを使った訓練や、片足立ち訓練、重心移動訓練などを行い、体の軸を保つ能力を養います。
・協調運動訓練: 目的の場所に正確に手を動かす訓練、手足の動きをリズムに合わせて行う訓練などを繰り返し行い、動きの正確性を高めます。
・歩行訓練: 平行棒やトレッドミル(ランニングマシン)を使い、歩行時のふらつきを軽減し、より安定した歩行を再獲得します。

急性期を過ぎた後、回復期リハビリテーション病院で集中的にリハビリを行うのが一般的です。特に小脳症状は改善に時間を要する傾向があります。
自宅では、安全な生活環境を整える(手すりの設置、滑りやすい床へのマット敷きなど)ことが、リハビリ効果を持続させる上で最も大切です。無理な訓練は転倒につながるため、専門の理学療法士の指導のもと、安全な環境で行うことが重要です。

作業療法 (OT)

作業療法(OT)は、応用的な動作、つまり日常生活動作(ADL)の改善を目指します。食事、着替え、入浴、調理などの訓練を通じて、生活の自立度を高めます。
小脳梗塞では、特に手の震えや不器用さ(四肢失調)を補うための自助具(スプーンの柄を太くするなど)の選定や使用訓練が行われます。
家族の方は、患者本人が自助具(例えば、マジックテープ式の衣類など)を使いこなせるよう、根気強く見守り、成功体験を増やしてあげるのが良いと思います。訓練を単なる作業で終わらせず、患者本人が生活に必要な動作と認識し、主体的に取り組む意欲を支えることが大切です。

言語聴覚療法 (ST)

言語聴覚療法(ST)は、構音障害(話し方の問題)や嚥下障害(飲み込みの問題)の改善を目指します。
・発声訓練: 正確な発音をするための口や舌の運動訓練、声の強弱をコントロールする訓練。
・嚥下訓練: 安全に飲み込むための訓練。嚥下障害の重症度によっては比較的早い段階で集中的に行われます。
嚥下訓練で指示された食事形態(きざみ食、とろみなど)は、家族も徹底して守る必要があります。

ロボット・AIを活用した最新のリハビリ

近年、小脳梗塞後の運動失調に対する新しいアプローチとして、ロボット技術やAIを活用したリハビリが研究・導入されつつあります。
・歩行アシストロボット: 装着型のロボットが、正しい歩行パターンを誘導し、安定した歩行を反復練習します。
・VR(バーチャルリアリティ)リハビリ: VRゴーグルを装着し、ゲーム感覚でバランス訓練や協調運動訓練を行います。楽しみながら反復練習ができるため、訓練のモチベーション維持に役立ちます。
最新機器によるリハビリは、まだ導入している施設が限られています。利用を検討する場合は、その技術が患者本人の状態に合っているか、専門医やセラピストと十分に相談し、科学的根拠に基づいた治療法を選ぶことが大切です。

「小脳梗塞の後遺症」についてよくある質問

ここまで小脳梗塞の後遺症などを紹介しました。ここでは「小脳梗塞の後遺症」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

小脳梗塞の生存率はどれくらいなのでしょうか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

小脳梗塞の生存率については、病変の大きさや場所によって大きく変わってくるため、一概にお答えするのは難しいですが、一般的に、小脳梗塞単独の場合の致死率は、他の部位の脳梗塞と比較して低い傾向にあります。
しかし、注意すべきは、小脳梗塞が重症化するパターンです。小脳梗塞が広範囲に及ぶと、梗塞部位の強いむくみ(脳浮腫)が生じ、これが命の根幹を司る脳幹を圧迫します。この状態を回避するために、緊急の減圧手術が行われるのです。
[Image showing cerebellar infarction causing brain swelling (edema) and dangerous pressure on the brainstem]
つまり、小脳梗塞の予後(生存率)は、「どれだけ早く正確な診断を受け、脳幹圧迫の危険を回避する治療(内科的治療や外科的手術)を受けられたか」によって大きく左右されます。早期治療こそが、生存率を高め、また後遺症を最小限に抑えるための最良の手段です。

まとめ

小脳梗塞は、命に関わる重篤な病態から、ふらつきやめまいだけの比較的軽症な病態まで、多様な形で現れます。しかし、どのケースにおいても、その後に残る運動失調やバランス障害といった後遺症は、日常生活の質(QOL)を大きく低下させる要因となります。
小脳梗塞の治療において、「命を救うこと」と並行して「生活の質を守ること」が重視されています。後遺症を改善するためには、発症後の急性期治療だけでなく、その後のリハビリテーションを諦めずに継続することが極めて重要です。脳の代償機能や可塑性という力は、患者本人の「治りたい」という強い意志と、専門的な訓練によって最大限に引き出されます。
小脳梗塞の後遺症は、運動失調、めまい、構音障害、小脳性認知情動症候群(CSAS)など多岐にわたります。それぞれの後遺症に対して、理学療法(PT)、作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)といった専門的なリハビリを組み合わせ、さらにロボットやAIといった最新技術の活用も進んでいます。焦らず、希望を持ってリハビリに取り組んでいただきたいと願っております。

「小脳梗塞」と関連する病気

「小脳梗塞」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

内科の病気

脳神経系

小脳梗塞は、主に心臓の不整脈や動脈硬化などが原因で発症します。生活習慣病を発症しない予防策をとることや、不整脈があれば見つかった時点で医療機関を受診して精査を行うことが重要です。

「小脳梗塞」と関連する症状

「小脳梗塞」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • ぐるぐる回るような激しいめまい
  • ふらつき
  • 急に吐く
  • 吐き気が強い
  • 頭痛(特に後頭部や首の痛み)
  • ろれつが回らない
  • 眼球が勝手に動く(眼振)
  • 難聴、耳鳴り

上記のような症状が急に出現した場合には、脳卒中の疑いがあります。すぐに医療機関を受診してください。

参考文献

この記事の監修医師