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「小児脳腫瘍」の生存率は何%以上?代表的な症状や後遺症も医師が解説!

 公開日:2026/04/08
「小児脳腫瘍」の生存率は何%以上?代表的な症状や後遺症も医師が解説!

小児脳腫瘍とは?メディカルドック監修医が小児脳腫瘍の種類・症状・初期症状・原因・後遺症・検査・治療法などを解説します。

佐々木 弘光

監修医師
佐々木 弘光(医師)

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医師、医学博士。香川大学医学部卒業。奈良県立医科大学脳神経外科に所属し、臨床と研究業務に従事している。現在、市立東大阪医療センターに勤務。脳神経外科学会専門医、日本脳神経血管内治療学会専門医、脳卒中学会専門医、の資格を有する。

「小児脳腫瘍」とは?

国立がん研究センターの統計によると0-14歳の小児における脳腫瘍の発生率は100万人あたり約20人(良性・詳細不明のものも含めると約30人)とされています。そして小児脳腫瘍の種類は非常に多彩であり、かつ発症年齢や性差などによる違いもあり、とても複雑です。そのため小児脳腫瘍の、その全てを本記事で解説することは不可能です。従って、ここでは代表的な小児脳腫瘍とその一般的な症状・治療などについて解説していきます。

小児脳腫瘍の種類

前述のように小児脳腫瘍の種類は非常に多彩です。さらに腫瘍になりやすい細胞や発生しやすい場所まで、成人の脳腫瘍とも大きく異なります。全国脳腫瘍統計によると、小児脳腫瘍の種類ごとの頻度は、最多のものが低悪性度神経膠腫(ロウグレードグリオーマ)で約20%、2番目は胚細胞腫瘍で約14%、続いて髄芽腫が約10%、その後、頭蓋咽頭腫の約8%、高悪性度神経膠腫(ハイグレードグリオーマ)の約8%、上衣腫の約6%、その他、といった割合とされています。ここではこの頻度に基づき、代表的な小児脳腫瘍について解説していきます。尚、本稿以外にも、非常に多くの、その他の小児脳腫瘍の分類があります。従って、詳しくは小児脳神経系の専門を受診されることをお勧めします。

神経膠腫(星細胞腫)

神経膠腫(しんけいこうしゅ:グリオーマとも言います。)とは、脳内のグリア細胞とよばれる種類の細胞から発生する腫瘍のことです。小児脳腫瘍の頻度でいうと、特に多いのは低悪性度神経膠腫、細かな分類では、特に限局性の毛様性星細胞腫(もうようせいせいさいぼうしゅ)と呼ばれるものです。
この毛様性星細胞腫は、WHOグレードでいうと基本的にはグレード1とされ、低悪性度とされる腫瘍です。症状は腫瘍ができる部位によって異なり、腫瘍による圧迫で頭痛や嘔吐を生じたり、脳脊髄液の流れが悪くなって水頭症と呼ばれる状態になると歩行障害や意識障害を生じたりします。また痙攣(てんかん発作)を生じることもあります。脳神経外科にて手術での摘出が基本となります。
一方、びまん性タイプで悪性度が高かった場合はWHOグレード4が多く、脳幹などの生命維持を司る場所にできることが多いため生存率は低いとされます。これらは放射線治療や化学療法など、非常に高い専門性が要求されます。

胚細胞腫瘍

2番目に多い胚細胞腫瘍(はいさいぼうしゅよう)は、胎児の時に身体のいろいろな臓器に変化していく「胚細胞」が、成長過程で腫瘍化してしまったものです。
悪性度はタイプによって異なり、ジャーミノーマは比較的良性で治療効果が得られやすいですが、絨毛癌(じゅうもうがん)や胎児性癌(たいじせいがん)は悪性度が高くなります。この腫瘍は脳下垂体や松果体など脳の深い所に発生することが多く、ホルモン分泌に異常(尿崩症による頻尿など)をきたしたり、成長や発育に影響したりすることがあります。また、視力障害や二重に見える症状、大きくなると水頭症による頭痛や嘔吐も現れます。手術での摘出は難易度が高いため、「生検」で診断をつけた後に放射線治療や化学療法を行うのが一般的です。

髄芽腫

髄芽腫(ずいがしゅ)は小児脳腫瘍の中で3番目の頻度です。この腫瘍はWHOグレード4に相当し、高悪性度に分類されます。小脳に発生しやすく、ふらつきや歩行障害、頭痛・嘔吐などの症状で発見される場合があります。急激な進行によって脳脊髄液の流れが悪くなり、水頭症になって意識障害を生じたり、最悪の場合、致命的な状態になったりすることもあります。治療は脳神経外科での手術に加え、放射線・化学療法など集学的な治療が必要となります。

頭蓋咽頭腫

頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)は、脳下垂体と呼ばれる部位から発生する腫瘍です。子供の場合は10歳前後で見られることが多いです。下垂体はホルモンを分泌している臓器のため、腫瘍ができることで尿崩症(多飲多尿)などの様々なホルモン障害が出ます。その他、視力障害や眼球運動障害、水頭症による歩行障害などがみられることもあります。治療は手術による摘出になりますが、経鼻内視鏡といって鼻からアプローチする方法が一般的です。ただし腫瘍が大きい場合は開頭手術が必要になることもあります。

上衣腫

上衣腫(じょういしゅ)は、脳の中にある「脳室」と呼ばれる空間にある上衣細胞から発生する腫瘍です。小児の場合は「第四脳室」から発生しやすく、小脳を圧迫してふらつきや歩行障害、頭痛・嘔吐、水頭症による意識障害などの症状が出て重症化することもあります。WHOグレード2-3に相当しますが、遺伝子型などで悪性度が細かく異なり、予後を一概に言うのは難しいです。基本的に、開頭手術による全摘出と、その後の放射線治療が勧められます。完全摘出を目指して複数回の手術を行う場合もあります。

小児脳腫瘍の代表的な症状や特徴

小児脳腫瘍の症状は、成人と異なりわかりにくい場合が多いです。また乳幼児なのか、学童児以降なのかによっても、自分で症状を伝えられるかどうかが異なり、発見が遅れることもあります。

不機嫌、哺乳力の低下、頭囲拡大(乳幼児期)

新生児や乳児期の場合は、例えば不機嫌であったり、ぼんやりとして哺乳力が低下していたり、成長・発達が遅かったりといった症状が挙げられます。また頭蓋骨がまだ完全にくっついていないため、水頭症で脳脊髄液がたまると頭囲拡大といって頭が大きくなることがあります。乳幼児健診で指摘されることもありますが、不安があれば小児科や脳神経外科で相談しましょう。

頭痛、吐き気、歩行障害(幼児期・学童期以降)

ある程度の年齢になると、頭痛の訴えや吐き気・嘔吐のほか、ふらつき・歩行障害などで気づかれることが多いです。多飲多尿(尿崩症)や成長障害、あるいは発育が早すぎる(思春期早発)といったホルモン異常に伴う症状が出ることもあります。その他、視力障害や二重に見える症状、重症では意識障害や痙攣を生じることもあり、その場合は直ちに救急車を要請しましょう。初期症状としての「慢性的な強い頭痛」や「以前できていた運動ができなくなった」という変化は、早期受診の重要な目安となります。

小児脳腫瘍の後遺症や予後

身体的・機能的な後遺症

腫瘍の種類や場所、治療(放射線・化学療法)の影響によりますが、麻痺による歩行障害や摂食嚥下の障害、視野障害などが残る可能性があります。これらは完治が難しい場合もあり、リハビリテーション科での訓練や長期的な社会福祉支援が不可欠となります。発症後は定期的なフォローアップが必要です。

ホルモン異常やてんかん

腫瘍によってホルモン分泌に障害が残った場合は、内服による補充療法を生涯続ける必要がある場合もあります。また、てんかんが後遺症となった場合は、抗痙攣薬の内服が必要です。これらは小児科や脳神経外科の外来で管理していきます。

生命予後(生存率)

小児脳腫瘍は種類が非常に多く分類も複雑なため、一括りに論じることは難しいです。米国の統計を参考にすると、毛様性細胞腫の5年生存率は96.9%と高いですが、上衣腫(グレード2-3相当)では73.7%、髄芽腫などの胎児性腫瘍(グレード4相当)では62.3%と低めに報告されています。個々の予後は専門医による診断のもとで判断されます。

小児脳腫瘍の検査法

画像検査(CT・MRI)

頭部CTや頭部MRIが重要になります。特にMRIは詳細な情報を得られますが、時間がかかりじっとしていなければならないため、小さなお子さんには鎮静剤(眠り薬)を使用して検査することもあります。副作用の管理のために入院して検査を行う場合もあります。また、腫瘍を詳しく診るために造影剤を使用することもあります。耳鼻咽喉科や眼科での検査を併用することもあります。

血液検査・髄液検査

画像で腫瘍が疑われた場合、ホルモンの値を調べる採血や、腰から針を刺して脳脊髄液を採取する「髄液検査」を行うことがあります。これらは腫瘍の種類を特定し、治療方針を決定するための重要な補助材料となります。

病理検査・遺伝子解析

手術で摘出または生検した組織を顕微鏡で調べたり(病理検査)、遺伝子の解析を行ったりすることで確定診断を行います。これにより細かな分類を特定し、最終的な個別化治療の方針を決定します。通常、これらの一連の精査には数日から2週間程度の入院期間を要します。

小児脳腫瘍の主な治療法

治療戦略は腫瘍の種類によって大きく異なりますが、一般的には「手術」「放射線治療」「化学療法」を組み合わせます。

  • 手術:脳神経外科にて摘出を行います。診断のための「生検術」のみ行う場合や、水頭症改善のための「脳室ドレナージ術」を併用することもあります。
  • 放射線・化学療法:悪性度の高い腫瘍や、手術が困難な場所(脳幹など)にある腫瘍に対して行われます。効果が得られやすい種類では、術後に必須となることもあります。
  • 対症療法:痙攣を抑える抗痙攣薬や、ホルモン補充薬の内服などを行います。

治療期間は数ヶ月から年単位に及ぶこともあり、大学病院等の専門医療機関での長期入院や、退院後の継続的な外来通院が必要となります。

「小児脳腫瘍」についてよくある質問

ここまで小児脳腫瘍などを紹介しました。ここでは「小児脳腫瘍」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

小児脳腫瘍の生存率はどれくらいでしょうか?

佐々木 弘光医師佐々木 弘光医師

小児脳腫瘍は非常に種類が多く、近年の研究によってその分類もさらに変化してきているため、過去の統計のみで一概にその生存率を述べることは難しいです。しかし、あくまで参考までに、一般的な良性に近いものであれば、5年生存率が9割程度ありますが、悪性に近いものだと6−7割程度となる場合もあります。

小児脳腫瘍で最も多い種類の脳腫瘍について教えてください。

佐々木 弘光医師佐々木 弘光医師

最も頻度の高い小児脳腫瘍は、脳腫瘍の中でも星細胞系腫瘍と言われ、特に毛様体星細胞腫という腫瘍になります。この腫瘍はWHOグレードで、グレード1とされ、比較的低悪性度となります。手術による摘出で治療が可能ですが、発生する部位によっては治療が難しくなる場合もあります。

まとめ

小児脳腫瘍の種類は非常に多彩であり、本校で紹介した以外にもさらに多くの種類があります。また、発生部位や発症年齢も様々で、治療方針も多岐に渡ります。そして早期発見のためにはお子さんの症状が重要になります。乳児の場合は哺乳力の低下や機嫌の悪さ、頭囲拡大など、幼児以降になると頭痛の訴えや吐き気・嘔吐といった症状のほかに、ふらつき・歩行障害といった症状も見られる場合もあります。お子さんの様子で、何か心配な場合はかかりつけの小児科の先生に尋ねてみましょう。そして必要な時は、小児脳神経系の専門医へ紹介される場合もあります。

「小児脳腫瘍」に関連する病気

「小児脳腫瘍」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

小児に多い脳腫瘍

  • 星細胞腫
  • 胚細胞腫瘍
  • 髄芽腫
  • 頭蓋咽頭腫
  • 上衣腫

脳腫瘍にはとても多くの種類がありますが、小児で比較的多い腫瘍を列挙しました。

「小児脳腫瘍」に関連する症状

「小児脳腫瘍」と関連している、似ている症状は13個ほどあります。
各症状の詳細についてはリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

成人と異なり、子供の場合には病気の症状はわかりにくい場合が多いです。年齢や腫瘍のできる部位、腫瘍の種類などで異なるため、症状は非常に多岐に渡り症状だけでは判断は難しい面があります。

参考文献

  • 小児脳腫瘍全国脳腫瘍統計
  • 米国脳腫瘍統計(Quinn T Ostrom, Haley Gittleman, Peter Liao, et al. CBTRUS Statistical Report: Primary brain and other central nervous system tumors diagnosed in the United States in 2010–2014: Neuro Oncol. 2017 Nov; 19(Suppl 5): v1–v88.)
  • 脳腫瘍診療ガイドライン
  • 小児脳腫瘍編(2022年版) 脳神経外科学

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