「レビー小体型認知症の前兆となる5つの初期症状」はご存知ですか?医師が解説!
レビー小体型認知症の前兆となる初期症状とは?Medical DOC監修医がレビー小体型認知症の初期症状・原因・なりやすい人の特徴・セルフチェック法・予防法や治療法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
上田 雅道(あたまと内科のうえだクリニック)
福島県立医科大学医学部卒業
名古屋掖済会病院 脳神経内科 医員
豊橋市民病院 脳神経内科 医員
名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科学
中部ろうさい病院 神経内科 医長
目次 -INDEX-
「レビー小体型認知症」とは?
レビー小体型認知症は認知症の中でアルツハイマー型認知症、血管性認知症についで3番目に多い病気です。レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症と同様に高齢者に多くみられますが、その症状には特徴もあり解説していきます。
レビー小体型認知症の前兆となる初期症状
レビー小体型認知症は日常生活に支障が出るような認知機能の障害がみられます。初期には目立たないことがありますが、記憶力、理解力や判断力の低下がみられます。
レビー小体型認知症の特徴のひとつに、認知機能にムラがあることがあげられます。つまり、認知機能が低下していても調子がいいような時もあります。
また、幻視、レム睡眠行動障害、パーキンソン症状、自律神経障害も特徴的です。
認知機能障害
認知機能の低下によって日常生活に支障が出てきます。
記憶力、理解力、判断力の低下がみられるようになります。
ただし、レビー小体型認知症の初期の段階では、記憶力の低下は目立たない傾向にあります。
レビー小体型認知症の特徴のひとつに認知機能の変動があります。
認知機能は低下していますが、同じ日でも時間帯によって、あるいは数日から数週間におよぶ調子の変動がみられます。
調子がいい時は、認知機能が低下しているようにみえないこともあります。
幻視
幻視はレビー小体型認知症で初期からみられやすい症状のひとつです。実際にはいない人、小動物、虫などが見え、高頻度に繰り返されます。このような幻視ははっきりと具体的に見えることが多く、不安や恐怖を引き起こすことにつながります。
レム睡眠行動障害
睡眠障害のひとつで、寝ている時に夢を見て大きな声を出す、あばれるといった問題があります。同居の家族に影響が出てしまうこともあります。
レム睡眠行動障害は認知機能低下より先にみられることもあります。
パーキンソン症状
パーキンソン病でみられるような、体が固くなり動きがゆっくりになる、動きが小さくなる、ふるえるといった症状がみられるようになります。パーキンソン症状より嗅覚の低下、頑固な便秘の症状が出ることがあります。
ただし、レビー小体型認知症の初期や高齢者ではパーキンソン症状が目立たないこともあります。
自律神経障害
自律神経は体のさまざまな機能を調節しており、自律神経が障害を受けると、便秘、尿失禁、立ちくらみなどの症状が出てきます。便秘は認知機能が低下するよりも前にみられることが多いです。
レビー小体型認知症の主な原因
レビー小体型認知症は、脳の神経細胞にレビー小体というタンパク質がたまることが原因と考えられています。しかし、レビー小体が異常に脳の神経細胞にたまる原因は、加齢と一部に遺伝子の影響があるもののまだ全体像が解明されたわけではありません。
レビー小体型認知症の直接の原因となる食べものや生活習慣は、はっきりとはわかっていません。しかし、一般的な認知症の危険性を高めることはレビー小体型認知症にも当てはまる可能性があります。生活習慣病について、糖尿病は認知症の中でもアルツハイマー型認知症のリスクを高めると考えられています。糖尿病によってレビー小体型認知症のリスクが高くなるかどうかはっきりしませんが、糖尿病は予防しておいた方がいいでしょう。
バランスの悪い食事
食生活が乱れてしまうと肥満の原因となったり、糖尿病のリスクが高くなります。野菜を積極的に摂取し、食べすぎないことに注意して、糖尿病にならないように気をつけてください。魚や脂肪分の少ない肉類などもバランスよく食べるとよいでしょう。
運動不足
運動不足は肥満のリスクが高くなり、運動習慣のないまま高齢になると筋肉不足になってしまいます。肥満は糖尿病のリスクが高くなります。運動習慣があり、筋肉量が保たれていると体の代謝がよくなり、糖尿病を予防しやすいです。
適度な運動は脳の刺激にもなり、心身のリラックスにつながります。
他社、社会との繋がりが希薄
家族や友人、社会とのつながりは認知症の予防に重要と考えられています。会話をするだけでも脳の刺激になります。
男性は女性よりも社会から孤立してしまう人が多く、自宅に閉じこもりがちになると認知症のリスクが高くなります。
日頃から会話をしたり、一緒に趣味の活動をできる人がいるといいですね。
レビー小体型認知症になりやすい人の特徴
高齢
レビー小体型認知症は65歳以上の高齢者に多くみられます。高齢になるにつれてレビー小体型認知症のリスクは高くなりますが、65歳未満の年代でも発症することもあります。
男性
レビー小体型認知症は男性に多い傾向があります。アルツハイマー型認知症が女性に多くみられることと比較すると、レビー小体型認知症については男性に多いことは特徴のひとつと言えそうです。
パーキンソン病
パーキンソン病は認知症を合併しやすいです。パーキンソン病に合併した認知症とレビー小体型認知症をはっきりと区別することはむずかしく、パーキンソン病とレビー小体型認知症は同一の疾患群にあると考えられています。認知機能の低下がパーキンソン症状より早くみられた場合と、パーキンソン症状が出てから1年以内にみられた場合は、レビー小体型認知症と診断されます。
すぐに病院へ行くべき「レビー小体型認知症の初期症状」
ここまではレビー小体型認知症の初期症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
認知機能が低下したり、寝ている時に大きな声を出したり、体の動きが悪くなったりする場合は、脳神経内科へ
記憶力の低下がみられるようでしたら脳神経内科、精神科を受診してください。
ただしレビー小体型認知症の場合は、初期には記憶障害が目立たないことがあります。
記憶以外の認知機能の低下(理解力、判断力、注意力など)、寝ている時に大きな声を出しす症状(レム睡眠行動異常)、実際にはいない人や動物などが見える(幻視)、震えや体の動きが悪くなったりする症状(パーキンソン症状)、便秘・尿失禁・立ちくらみなどの症状(自律神経障害)があるような場合も病院を受診するようにしてください。
受診・予防の目安となる「レビー小体型認知症」のセルフチェック法
- ・幻視がある場合
- ・パーキンソン症状がある場合
- ・がんこな便秘、嗅覚の低下、立ちくらみがある場合
レビー小体型認知症の治療法
レビー小体型認知症の根本的な治療は残念ながらありません。しかし、レビー小体型認知症は徐々に症状が悪化してしまう病気であるため、できるだけ早期に発見して治療をする必要があります。レビー小体型認知症の進行を止めたり、治すことはできませんが、治療をすることで症状を緩和し本人や家族も生活しやすくなります。
薬物治療
認知症治療薬としてドネペジルという薬を使います。アルツハイマー型認知症でも同様の薬を使います。ドネペジルはアセチルコリンという脳内物質の量を維持することで、記憶に関する機能を保ちやすくなることが期待できます。
ふるえ、体を動かしにくいといったパーキンソン症状が出てくると、日常生活に支障が出てきます。パーキンソン症状を緩和するためにパーキンソン病治療薬を使います。
睡眠中に大きな声を出す、手足をはげしく動かす、あばれるといったレム睡眠行動障害がみられる場合は、薬を使って症状をおさえます。
リハビリテーション
パズルや計算問題などで脳を刺激したり、好きな音楽を聴いて気持ちを落ち着かせることは有効と考えられます。
レビー小体型認知症ではパーキンソン症状により歩くことに支障が出てくることが多いです。ストレッチや歩行訓練を体力に合わせて行うことで、歩行能力を維持することが重要です。
レビー小体型認知症の予防法
レビー小体型認知症を予防する方法はわかっていません。しかし、健康的な生活や家族、友人とのつながり、コミュニケーションは重要といえると思います。
バランスの取れた食事
アルツハイマー型認知症のように、糖尿病がレビー小体型認知症のリスクになるかどうかはまだわかっていません。特定の食べ物がレビー小体型認知症の危険性を高めるということもわかっていませんが、糖尿病を予防し、野菜、肉、魚などバランスの良い食事をとることは重要と考えられます。
適度な運動
運動をする習慣があると筋力を維持したり、気分転換になりストレス解消に役立ちます。精神的にも安定しやすく、ウォーキングなど体力に合わせて体を動かすようにしましょう。
他社とのコミュニケーション
家族、友人と会話をしたり、一緒に活動することで脳が活性化されます。認知機能の維持に他者とのつながりは重要です。
「レビー小体型認知症の初期症状」についてよくある質問
ここまでレビー小体型認知症の初期症状などを紹介しました。ここでは「レビー小体型認知症の初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
レビー小体型認知症の好発年齢について教えてください。
上田 雅道 医師
レビー小体型認知症は高齢者に多い病気です。65歳以上に多くみられますが、65歳未満の比較的若い年齢でも発症することがあります。
編集部まとめ
レビー小体型認知症は認知症の中でアルツハイマー型認知症、血管性認知症についで多い病気です。アルツハイマー型認知症と比べて初期には記憶障害が目立たないことが多く、認知機能にむらがある、幻視、パーキンソン症状、レム睡眠行動障害などが特徴としてあげられます。現時点ではレビー小体型認知症を予防することや根本的に治療をすることはむずかしいですが、治療をすることで症状を緩和し、生活の質を改善することは必要です。気になる症状があれば、脳神経内科や精神科を受診して診察を受けるようにしてください。
「レビー小体型認知症」と関連する病気
「レビー小体型認知症」と関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
脳神経内科の病気
- パーキンソン病
- アルツハイマー型認知症
レビー小体型認知症は、日常生活に支障をきたす認知機能の低下症状がみられますが、その認知機能の状態には変動があり調子が良い時もあります。他の認知症と合併することも多いので、特徴的な症状がないと診断が難しいこともあります。
「レビー小体型認知症」と関連する症状
「レビー小体型認知症」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの特徴的な症状が複数見られた場合には、早めに医療機関で相談することをお勧めします。