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「異食症」を発症する原因はご存知ですか?医師が監修!

公開日:2022/11/07  更新日:2022/11/15
「異食症」を発症する原因はご存知ですか?医師が監修!

異食症とは、氷・土・毛髪を始めとした「本来食べない物」「栄養がない物」を食べてしまう疾患です。

異食症自体に重篤な症状はないですが、食べてしまった物によっては身体に不調をきたします。そのため、今後のためにも治療が必要な疾患です。

では、異食症はなぜ引き起こされてしまうのでしょうか?どのような人が異食症になってしまうのでしょうか?

今回は、異食症の症状や原因・検査方法・治療方法を解説します。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類 精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。 保有免許・資格 医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

異食症の症状と原因

朝ごはんを食べる1才児

異食症はどのような病気なのか教えてください。

異食症とは、摂食障害の1つです。本来食べることがない物・栄養がない物を継続して口にしてしまう症状のことをいいます。なかでも氷を食べる場合は「氷食症」・土を食べる場合は「土食症」・毛髪を食べる場合は「食毛症」という個別の名前がつけられています。
認知機能が発達していない乳幼児の異食行動や、慣習的に異食がされている場合には異食症と呼ばれません。また、ただジュースに残った氷を食べるだけの場合も氷食症とは呼ばれません。
異食症とはあくまで、1ヶ月以上にわたって能動的な異食行為が持続する場合に診断されます。氷食症の場合は、2ヶ月にわたって製氷皿1つ分以上の氷を毎日摂取している場合に診断されます。

代表的な症状が知りたいです。

基本的には食べ物ではない物を定期的に食べることを異食症と呼びます。突発的ではなく、定期的・継続的であることに注意が必要です。
代表的な物が紙・粘土・土・泥・毛髪です。ただし、2歳未満の幼児の場合は発達上正常な行為とされています。また、妊娠中の妊婦に起こる場合もあります。

子供や妊婦に多いと聞きましたが…。

確かに異食行為は乳幼児期によく起きる行為です。ただし、発達上問題ないとされています。乳幼児期にはまだ認知機能が発達しておらず、好奇心が旺盛なためなんでも口にしてしまいがちです。
そのため、乳幼児期の異食行為は自然に起きる物とされています。現に年齢とともに異食行為を行う確率は低下していくでしょう。2歳以降の子供が異食症の基準に則る物を食べてしまう場合に異食症と診断されるのです。また、妊娠中の女性は妊娠期間中に衝動的に異食行為をしてしまう場合があります。この場合は妊娠期間が過ぎると自然に治っていくことが多いです。

異食症を発症する原因を教えてください。

乳幼児期を過ぎた子供の異食症は、基本的に次の原因が考えられます。

  • 常態化した異食行為が治らなかった
  • ネグレクト等による空腹
  • ストレスの発散のため

また、妊娠中の女性の場合は、母体の鉄・亜鉛などの栄養不足が原因とされています。妊娠中の栄養は優先的に胎児に送られるため、鉄欠乏性貧血が起こりやすいです。そのため、身体が無意識に鉄分を補おうとして氷食症や土食症を引き起こしてしまいます。
また、体温調節がうまくいかなくなったことによる暑さから氷食症になる場合もあります。まれに統合失調症などの疾患と併発する場合もあるため、子供と妊婦のみに発生する症状ではありません。ストレスによる異食症発症の例もあります。また、認知症患者においても異食症を発症してしまう場合があります。そのため認知機能の低下・記憶障害によって、食べ物と食べ物ではない物の区別がつかなくなってしまうのです。

異食症の受診と治療方法

腹痛に苦しむ男性

異食症を疑った際の受診の目安を教えてください。

少なくとも1ヶ月以上もの間に食べ物ではない物を食べてしまうのであれば受診するようにしてください。
もし常態化している場合、隠れて食べているなどが原因で腹痛になる場合があります。異食症自体が身体の不調を引き起こすわけではありません。しかし、土などの食べ物ではない物を食べる場合は、いずれ消化器官系の病気を引き起こす可能性があります。

何科を受診すれば良いですか?

異食症が疑われる場合、幼児・成人問わず心療内科・精神科のどちらかを受診するようにしてください。
ただし、食べてしまった物によって腹痛や下痢など明らかな不調が出ている場合は、まずは内科で治療を受けましょう。その後、心療内科・精神科で原因を改善するように心がけてください。

どのような検査方法がありますか?

検査方法はありません。アメリカ精神医学会が出版した精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5もしくはDSM-10)を基準として診断されます。診断基準は以下のとおりです。DSM-5を基準として記載します。

  • 最低でも1ヶ月間にわたり、栄養がない・食べ物ではない物を継続して食べる
  • 異食行為が標準的な慣習ではない
  • 異食行為が文化的に容認される社会に所属しているわけではない
  • 異食行為が統合失調症などの他の精神疾患や、妊娠などの医学的疾患を背景にしている

成人でこれらの基準を満たしている場合、異食症として診断されます。

治療方法が知りたいです。

異食症の治療方法は確立されていません。ほとんどの行動変容法が改善の助けになります。行動変容法とは、行動理論を用いて望ましい行動ができる・望ましくない行動をやめるように変えていく方法です。
不安軽減法(レスポデント条件付に基づく療法)と行動形成法(オペラント条件づけに基づく療法)に分けられますが、異食症の場合は自発的な行動(オペラント行動)になるため行動形成法がとられます。
ただし、異食行為によって腸閉塞や消化器官系の疾患にかかった場合は先にその症状の治療が必要です。また、子供の場合は周囲の環境を改善することで数カ月後に自然と症状が軽減されることがあります。

手術が必要なこともあるのでしょうか?

異食症の症状だけでは手術は必要ありません。ほとんどの場合心療内科的治療がとられます。薬物治療もありません。
ただし、異食行為によって腸閉塞が起きるか消化器官の病気が引き起こされてしまうと、手術が必要になる場合があります。異食症によって食べた土から感染症を引き起こす可能性もあるため、食べてしまった物によっては注意が必要です。

異食症の受診と治療方法

パソコンの前で手振りで話す医者

ADHDや発達障害との関係を教えてください。

異食症は認知機能の障害によっても引き起こされます。そのため、発達障害による認知機能発育の遅れが、異食症の要因になる場合もあるのです。
ADHDの場合も「やってはいけないことをしたい」という欲求に逆らえず食べてしまう、という行動にあらわれ出る場合があります。どちらの疾患も進行する過程で引き起こす場合が多く、初期症状の段階ではあらわれ出ることはあまりありません。また、同様に認知症においても異食症があらわれ出る場合があります。

異食症を予防する方法はありますか?

妊娠中の異食症予防は、鉄欠乏性貧血の予防が最適です。鉄・亜鉛を補うようにすると、異食症の症状が出にくくなります。子供の場合には、乳幼児期に異食行為をやめさせるようにしましょう。
常態化すると乳幼児期を過ぎても異食行為を続けるようになってしまいます。認知症患者の場合は、空腹の時間帯を減らすことによって異食行為を防止できます。1食の量を減らし、食事回数を増やすことで空腹の時間帯を減らしましょう。

家族はどのようにサポートすれば良いでしょうか?

まず、口の中に物を入れた所を見てしまった場合は決して大声を上げないようにしてください。びっくりさせてしまうと、そのまま飲み込んでしまうことがあります。また、大声を聞くことによるストレスで異食行為がエスカレートする場合があります。
優しく吐き出すように誘導してください。ただし、固形物をもし飲み込んでしまった場合は対処が必要です。紙などの場合は、時間はかかりますがいずれ消化されます。詰まっていなければ様子を見るようにするだけで良いでしょう。
ただし、金属(小銭や電池など)・ガラス・ビニールなどの固形物を飲み込んだ場合や洗剤を飲んでしまった場合は、病院を受診させてください。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

異食症は周囲のサポートが必要な疾患です。異食症そのものは重篤な症状を引き起こしませんが、もし口にした物が有害な物質なら生命に関わることがあるかもしれません。そのため、周囲のサポートで異食行為が和らぐようにしていきたいところです。
子供の場合は発達上自然な行為なため、そこまで焦ることもありません。食べてはいけない物だというのを優しく教えていけば、正常に発達していくケースが多いです。もし周囲の方が異食症と診断された場合は、頭ごなしに否定せず穏やかに接しましょう。

編集部まとめ

おにぎりを食べる子供
異食症は、誰でも起こりうる疾患ではありません。ただし、小さなストレスが積み重なったり、栄養が不足していたりなどの理由から引き起こされることがあります。

だからこそ日々の積み重ねで予防できる疾患ともいえます。乳幼児や認知症患者の場合は異食行為を見かけたら優しくやめさせることが大事です。

もしご自身が異食の欲求に耐えられなくなってきたら、もしかすると栄養が足りていないかもしれません。