「脳卒中の原因」となる可能性の高い食べ物はご存知ですか?医師が解説!
脳卒中の原因とは?Medical DOC監修医が脳卒中の原因・なりやすい人の特徴・原因となる可能性の高い食べ物・予防法などを解説します。
監修医師:
上田 雅道(あたまと内科のうえだクリニック)
福島県立医科大学医学部卒業
名古屋掖済会病院 脳神経内科 医員
豊橋市民病院 脳神経内科 医員
名古屋大学大学院医学系研究科 神経内科学
中部ろうさい病院 神経内科 医長
目次 -INDEX-
「脳卒中」とは?
脳卒中とは、脳の血管がつまったり、破れたりして急に脳の障害が出ることを言います。脳の血管がつまると脳梗塞となり、脳の血管が破れると脳出血となります。
脳卒中の主な原因
脳卒中の原因は高血圧、糖尿病、脂質異常症(コレステロールや中性脂肪の異常)が代表的です。また、心房細動という不整脈は脳梗塞の原因になることがあります。
高血圧
血圧の値のうち、上の血圧が140mmHg以上、または下の血圧が90mmHg以上、あるいはこれら両方を満たす場合に高血圧となります。
高血圧の多くは、塩分の過剰摂取、肥満、体質などが組み合わさって起こります。
高血圧は自覚症状がないことが多いので、自分では高血圧と気がつきにくいです。健康診断や病院で偶然に見つかることが多いのですが、症状がないためそのまま放置してしまう人も少なくありません。しかし、高血圧を治療しないことで動脈硬化が進み、脳卒中になってしまうこともあります。高血圧が見つかったときは、まずかかりつけ医に相談してください。内科、循環器内科への受診がおすすめです。
糖尿病
糖尿病はインスリンが不足したり、働きがわるくなることによって血糖が高い状態が長く続く病気です。インスリンには糖を血液から細胞に運ぶ働きがあり、血糖値を下げてくれます。インスリンの作用が不足することによって血糖が高い状態が続きます。
血糖が高い状態が長く続くと、血管がもろくなり、脳卒中になることがあります。
糖尿病の多くは2型糖尿病と呼ばれ、過食(高脂肪食)、運動不足、肥満、ストレスなどが原因で起こります。
糖尿病は初期や軽度の場合、自覚症状はありません。進行してくると口が渇く、水分を多く飲む、尿が多くなる、体重がへる、疲れやすくなるといった症状が出てきます。健康診断や病院で偶然に見つかることが多く、かかりつけ医や内科、糖尿病内科への受診がおすすめです。
脂質異常症
脂質異常症は、空腹時のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が140mg/dL以上、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が40mg/dL未満、中性脂肪が150mg/dL以上のいずれかを満たす場合のことです。
脂質異常症で自覚症状はありませんが、健康診断や病院で見つかることがあります。LDLコレステロールが高い場合、黄色腫といって、皮膚よりも明るい黄色のできものがあることがあり、まぶたに多く見られます。コレステロールや中性脂肪の異常を指摘されたり、黄色腫がある場合は、かかりつけ医、または内科で相談してみてください。
脳卒中になりやすい人の特徴
加齢、男性、喫煙、肥満もリスクとなります。
加齢、男性
脳卒中は高齢になると発症しやすくなります。厚生労働省の「患者調査」によると、2020年の脳卒中患者のうち、70歳代から80歳代が発症のピークでした。さらに、70歳代までのすべての年代で男性が女性より多く発症していました。
高齢の男性は脳卒中のリスクが高いと言えそうです。
喫煙
喫煙は動脈硬化を進行させ、脳卒中のリスクが高くなります。脳卒中を予防するためにも、喫煙習慣のある人は禁煙をしましょう。
肥満
肥満は高血圧、糖尿病、脂質異常症の原因となり、脳卒中を発症するリスクが高くなります。食べすぎないこと、適度な運動習慣により適切な体重を維持しましょう。
脳卒中の原因となる可能性の高い食べ物・食生活
塩分や脂肪分の多い食事、大量飲酒は脳卒中の原因となる可能性が高くなります。
塩分の摂りすぎ
塩分を摂りすぎることで血圧が高くなり、脳卒中のリスクが高くなります。厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2020年度版)では、高血圧の重症化を防ぐための1日の塩分摂取量は6g未満を目標としています。一般的な日本人の塩分摂取量は男性で11g程度、女性で9g程度とされており、かなり多くなってしまっています。
塩分が多くなりがちな外食を控え、家庭での料理でも減塩の調味料を使うといったことから減塩に取り組むといいでしょう。国民食ともいえるラーメンも塩分が過剰となりやすいです。
脂肪分の摂りすぎ
脂肪分を摂りすぎることで脂質異常症や糖尿病となり、脳卒中のリスクが高くなります。
肉類の脂身、鶏肉の皮、バター、乳脂肪などの動物性脂肪は、血中LDLコレステロールを上げる飽和脂肪酸が多く含まれています。また、脂肪は9kcal/gと炭水化物やタンパク質 (4kcal/g)に比べて高カロリーになっています。
動物性脂肪の摂取をおさえるため、赤身の肉や鶏肉であれば皮をのぞいて食べるようにしましょう。バターの使いすぎにも注意しましょう。
大量飲酒
お酒に含まれるアルコール濃度はビールや日本酒など種類によってさまざまです。アルコールの影響はお酒の量ではなく、摂取したアルコール量によって決まります。
脳卒中の中でも脳出血はアルコール摂取量によって直線的にリスクが高くなります。脳梗塞に関しても男性で44g/日(ビールなら中瓶2本、日本酒なら2合に相当)、女性で22g/日 (ビールなら中瓶1本、日本酒なら1合に相当)以上の飲酒で発症リスクが高くなります。飲酒量は個人差も大きいですが、節酒を心がけましょう。
脳卒中の発症リスクを低下させる可能性の高い食べ物・食生活
脳卒中の原因となりやすい高血圧、脂質異常症、糖尿病を予防するような食べ物、食生活を心がけることが重要です。
野菜、フルーツ
高血圧の予防に有効です。野菜を積極的に食べることでカロリーオーバーを防ぎやすくなります。
ただし、生野菜やフルーツは腎臓の働きが低下している人が過剰に食べると血液中のカリウムが高くなることがあり、危険な不整脈が出てしまう危険性もあります。腎臓が悪い人、透析を受けている人は医師に相談してみましょう。また、フルーツは食べすぎることでカロリーオーバーになりやすいので、糖尿病がある人は食べすぎないように注意しましょう。
魚
アジ、サバ、イワシといった青魚にはn-3系多価不飽和脂肪酸という良質な脂が多く含まれています。n-3系多価不飽和脂肪酸には血管の炎症をおさえたり、中性脂肪ができにくくなる働きがあります。
ただし、n-3系多価不飽和脂肪酸は加熱に弱く、魚の鮮度が落ちると劣化しやすいので新鮮な魚を食べるようにしましょう。
食物繊維
食物繊維を摂取することで満腹感を得られやすくなり、カロリーオーバーを防ぎやすくなります。
脳卒中の予防法
脳卒中の予防には生活習慣の改善が重要です。
具体的には、禁煙、理想的な体重の維持、塩分の制限、動物性脂肪・コレステロールの制限、魚・野菜・フルーツの摂取を増やす、大量飲酒をしない、30分以上の有酸素運動の習慣が有効です。
理想的な体重の維持
目標となる体重は年齢や性別によってちがいはありますが、体重はBMI (体重 (kg) ÷ 身長 (m)2)で22 、身長が160cmなら体重56kg、170cmなら64kgが目安です。
禁煙
喫煙は動脈硬化を悪化させ、脳卒中のリスクが高くなります。喫煙習慣がある人は禁煙をしましょう。1日に吸うタバコの数を減らすだけでなく、ゼロにすることが重要です。
運動習慣
1日30分以上の有酸素運動ができると、筋力や心肺機能の維持に有効です。
ただし、自分の体力や体調を見きわめて無理のない範囲で運動をしましょう。有酸素運動がむつかしい場合は、体操やストレッチも有効です。
「脳卒中の原因」についてよくある質問
ここまで脳卒中の原因などを紹介しました。ここでは「脳卒中の原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ストレスも脳卒中の原因となりますか?
上田 雅道 医師
ストレスによって生活習慣が乱れたり、身体にさまざまな影響が出てきます。適度な運動など自分なりのストレス解消、リラックス方法をみつけて体調を維持しましょう。
脳卒中になりやすい人の性格について教えてください。
上田 雅道 医師
神経質、完璧主義、攻撃的、ストレスを抱えこみやすい人は脳卒中になりやすいといえます。性格を変えるということはむつかしいかも知れませんが、体調が悪くなる前に生活習慣を見直していきましょう。
若い方で脳卒中を発症した場合、どんな原因が考えられますか?
上田 雅道 医師
若くても動脈硬化のリスクはありますが、10代や20代では血管の奇形や血液の異常が原因となることがあります。
動脈解離といって脳の血管の壁がはがれることで血管が詰まり脳梗塞を起こしたり、血管の壁が外側にふくらみ破れることでくも膜下出血を起こすこともあります。動脈解離が起こると強い痛みが生じます。
コーヒーを摂取することで脳卒中のリスクを低下させることはできますか?
上田 雅道 医師
コーヒーを飲むことで脳卒中のリスクを低下させるとの研究がありますが、一方で脳卒中のリスクを低下させることはないとの報告もあります。
コーヒーの効果に関してはまだ結論は出ていませんが、脳卒中の予防効果があるとうれしいですね。
編集部まとめ
脳卒中の原因は加齢や血管の奇形など自分では防ぎようがないものもありますが、高血圧、脂質異常症、糖尿病など生活習慣を見直すことで予防できるものも多くあります。脳卒中を発症すると後遺症が問題となることが多く、予防することが非常に重要です。生活習慣の改善を始めるのは今日が最善です。できることから行動して脳卒中のリスクを避けていきましょう。
「脳卒中の原因」と関連する病気
「脳卒中の原因」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器科の病気
- 高血圧
- 心房細動
- 心房中隔欠損症
高血圧や脂質異常病、糖尿病などの生活習慣病は脳卒中の原因として重要です。生活習慣の見直しによって発症予防や病状の悪化を防ぐことができるため、脳卒中にならないように継続的に実践していただければと思います。
「脳卒中の原因」と関連する症状
「脳卒中の原因」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 話しにくい
- 手足が動きにくい、筋力低下、バランスがわるい
- しびれ
- 意識がわるい
- 頭痛
脳卒中は突然発症する病気です。これらの症状が突然現れた場合には、すぐに医療機関を受診するようにしてください。