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「若年性アルツハイマーの初期症状」はご存知ですか?なりやすい人の特徴も解説!

 公開日:2024/03/18
「若年性アルツハイマーの初期症状」はご存知ですか?なりやすい人の特徴も解説!

若年性アルツハイマーの前兆となる初期症状とは?Medical DOC監修医が若年性アルツハイマーの初期症状・原因・なりやすい人の特徴・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

村上 友太

監修医師
村上 友太(東京予防クリニック)

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医師、医学博士。福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学脳神経外科学講座助教として基礎・臨床研究、教育、臨床業務に従事した経験がある。現在、東京予防クリニック院長として内科疾患や脳神経疾患、予防医療を中心に診療している。
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。

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「若年性アルツハイマー」とは?

若年性アルツハイマー病とは65歳未満で発症するアルツハイマー病のことで、アルツハイマー病全体の5~6%を占めます。アルツハイマー病の多くは物忘れ(記憶障害)を主体とする認知症です。しかし、若年性アルツハイマー病では22~64%で言葉が出てこない、単語をうまく言えないなどの失語症、目で見たものがわからない、見えているのに位置が理解できないなどの視覚認知の異常など、記憶障害以外の症状が目立つことがあり診断に時間がかかってしまうことがあります。また、子育てや仕事などの社会的な面でも問題が生じることが多く、高齢で発症するアルツハイマー病に比べて心理社会的なストレスも大きなものとなります。
現時点ではアルツハイマー病を完治させる方法は確立していませんが、近年では進行を抑えられる可能性のある新規薬剤(レカネマブ)が日本でも保険適応となるなど、治療の選択肢が増えてきており、早期診断の重要性も増しています。今回はどのような症状の時に若年性アルツハイマー病が疑われるかについてご紹介いたします。

若年性アルツハイマーの前兆となる初期症状

アルツハイマー病は物忘れ(記憶障害)が主な症状となることが多いですが、若年性アルツハイマー病では22~64%で物忘れ以外の症状が主体となります。ここでは若年性アルツハイマー病が疑われる症状について説明します。

記憶障害

頼んだことや約束を忘れる、新しい仕事が覚えられなくなる、「あれ」や「これ」などの指示語が増える、同じ話を何度もするようになるなどの症状がある場合にはアルツハイマー病の可能性があります。昔の記憶に比べて直近の記憶が障害されやすく、日付なども間違えやすくなります。軽症であれば貴重品など重要な場所の置く場所を決める、予定はカレンダーなどに記入して記録を残すなどの生活の工夫で大きな支障なく日常生活を送ることは可能です。

進行性の失語症状

文法などは保たれている一方で使用する単語が少なくなったり、単語が部分的に他の文字と置き換わったり、オウム返しなどの文の繰り返しが極端に減ったりと会話での明らかな異常がみられた場合にはアルツハイマー病の可能性があります。単語は理解できるものの、長文では理解が難しくなることもあります。このようなタイプはロゴペニック型進行性失語症と呼ばれます。

視覚認知の異常

目の前のものとの距離を測り間違えたり、目で見るよりも触った方が物の名前がわかったりする場合にはアルツハイマー病の可能性があります。計算ができなくなる、左右がわからなくなる、見えているものを手でつかむことが困難になるなどの症状が出現することもあります。このようなタイプは後部皮質萎縮症と呼ばれます。

無関心になり、同じ行動を繰り返す

周囲のことに無関心になり、毎日同じような行動を繰り返す、非常にわがままになり、堂々と万引きをするなど欲望に忠実な非常識な行動をとるなどの行動変化がある場合にはアルツハイマー病の可能性があります。前頭側頭型認知症という認知症に類似の症状がみられますが、前頭側頭型認知症よりも記憶力の低下が目立つなどの特徴があります。

若年性アルツハイマーの主な原因

アルツハイマー病は、アミノ酸数の多い変異型のアミロイドβというたんぱく質が脳に溜まることをきっかけに、タウというたんぱく質が脳に溜まってしまい神経が変性・萎縮することで発症する病気です。発症には遺伝的な要因や頭部外傷、金属への暴露などさまざまな要因が発症に関与するといわれています。これまでに60以上の関連因子が報告されていますが、ここでは比較的関与の大きい因子についていくつかご紹介します。

遺伝的要因

アルツハイマー病に関連する遺伝子変異は、関与が比較的大きいものから関与が疑われるにとどまるものまで多数報告されています。発症への関与が大きい代表的なものにはAPP遺伝子、PSEN1/2遺伝子、APOE遺伝子の変異があります。遺伝子変異がない場合と比較して早期に発症しやすく、若年性アルツハイマー病の原因の一つとなりえます。遺伝子変異を持っていても発症しない人もいるため、特に遺伝子変異のある方では下記に記載する環境要因を避けることが重要です。

頭部外傷

脳挫傷などの外傷性脳損傷のある方はアルツハイマー病の発症頻度が増加するとの報告が多数あります。交通事故などの高エネルギー外傷だけでなく、ボクシングやアメリカンフットボール、レスリングなどの接触スポーツで頭部の打撲を繰り返した場合にも発症頻度が増加すると報告されているため、注意が必要です。

金属の暴露

アルミニウムを豊富に含む粉塵にさらされた鉱山労働者にアルツハイマー病で亡くなった方が多いことが知られています。また、各種の微量金属が細胞の再生や修復などのプロセスに含まれていることから、アルミニウムや亜鉛、水銀、銅、カドニウムなどの金属の暴露がアルツハイマー病に関与することが知られています。鉱山や金属加工業で働く人は注意が必要です。

栄養失調や肥満

栄養失調はビタミンや微量金属などさまざまな栄養素の不足により、アルツハイマー病の発症に関与するとされています。肥満とアルツハイマー病の関連についてのメカニズムは不明ですが、観察研究などから強い関連が報告されています。食事との関連の報告もあり、バランスの取れた食事を心がけましょう。

若年性アルツハイマーになりやすい人の特徴

若年性アルツハイマー病は外傷性脳挫傷との関連が大きく、遺伝的な関与も指摘されています。高血圧や糖尿病などの生活習慣病の関与は高齢発症のアルツハイマー病では多数報告されていますが、若年性アルツハイマー病では生活習慣病の関与は小さいとされています。

頭部外傷歴のある人・接触スポーツのプレーヤー

交通事故などで脳挫傷を発症したことのある人や、ボクシングやアメリカンフットボールなど頭部に強い衝撃を受けやすいスポーツをしている人は、若年性アルツハイマー病の発症リスクが高くなります。ヘッドギアなどの防護具をつけることも重要ですが、十分に衝撃を防ぐことは困難であるため、アルツハイマー病の予防の観点からは頭部に強い衝撃がかかるような行為は避ける方が望ましいでしょう。

血縁者にアルツハイマー病の発症者が多い人

アルツハイマー病全体で遺伝子の関与は5%未満と少ないですが、関連する遺伝子変異のある方は早期に発症しやすいとの報告があります。アルツハイマー病は遺伝的要因と環境要因が合わさって発症するため、遺伝子変異がある場合にはバランスの取れた食事をするなど健康的な生活を心がけましょう。

すぐに病院へ行くべき「若年性アルツハイマーの初期症状」

ここまでは若年性アルツハイマーの初期症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

短期的にできないことが増えた場合は、脳神経内科へ

若年性アルツハイマー病では症状は進行性ですが、数か月~数年かけて症状が悪化するため、急激に症状が進んだ場合には脳梗塞や脳炎などの可能性があります。数分~数日と短い期間でできないことが増える、性格が変わるなどの変化が見られた場合には、すぐに医療機関を受診してください。また突然症状が出現・悪化した場合には、救急要請をしましょう。

受診・予防の目安となる「若年性アルツハイマーの初期症状」のセルフチェック法

  • ・物忘れが目立つ場合
  • ・新しい事柄や仕事などを覚えることが難しくなった場合
  • ・話し方がおかしくなった場合
  • ・眼で物がわからなくなった、眼で距離をうまく測れなくなった場合

若年性アルツハイマーを予防する方法

頭部打撲を避ける

ボクシングやアメリカンフットボールなどの頭部に強い衝撃がかかるスポーツを避け、バイクや自転車に乗るときにはヘルメットを装着し、安全運転をするなど、交通事故にも注意しましょう。

過度なダイエットを避け、適度な運動をする

若年性アルツハイマー病では高齢発症のアルツハイマー病と比べて、生活習慣病の関与は少ないとされていますが、発症に関与しうる要因の一つです。過度なダイエットは避け、バランスの取れた食事を心がけましょう。また適度な運動をして肥満とならないように注意しましょう。

金属暴露を避ける

鉱山や金属加工業で仕事をしている、空気汚染の強い地域で生活している場合には防塵マスクを装着するなどの金属暴露を避けることも望ましいと考えられます。

「若年性アルツハイマーの初期症状」についてよくある質問

ここまで若年性アルツハイマーの初期症状などを紹介しました。ここでは「若年性アルツハイマーの初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

若年性アルツハイマーと高齢者が発症するアルツハイマーに違いはありますか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

若年性アルツハイマー病では22~64%で、アルツハイマー病としてよく知られている認知機能低下以外の症状が主体となると報告されています。また、子育てや仕事をしている年齢で発症するため、社会的な面での問題も大きく、うつ病などの精神疾患を併発する頻度も高くなります。

若年性アルツハイマーの初期症状にめまいや頭痛はありますか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

めまいや頭痛が初期症状となることはなく、それらの症状が目立つ場合には脳出血など別の疾患を疑います。

若年性アルツハイマーを発症すると嗅覚障害を引き起こすのでしょうか?

村上 友太(むらかみ ゆうた)医師村上 友太(むらかみ ゆうた)医師

アルツハイマー病の方の半数以上で嗅覚障害がみられるため、若年性アルツハイマー病の方で嗅覚障害となりやすい可能性はあります。しかし、若年性アルツハイマー病で嗅覚障害が多いかどうかはわかっておりません。

編集部まとめ

アルツハイマー病はまだ完治させる方法の確立していない病気であり、若年性アルツハイマー病の診断を受けること自体が本人にとって負担となることもあります。一方で、治療薬の研究は世界中で行われ、現在でも様々な治験が行われています。本邦でも近年、新規薬剤(レカネマブ)が保険適応となるなど、治療の選択肢が増えています。診断を受けることで利用できる社会サービスも多く、早期の診断で得られる利点も多いことから、若年性アルツハイマー病を疑った場合には、早めに脳神経内科を受診するのが望ましいと思われます。

「若年性アルツハイマーの初期症状」と関連する病気

「若年性アルツハイマーの初期症状」と関連する病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

脳神経内科・脳神経外科の病気

  • レビー小体型認知症
  • 前頭側頭型認知症
  • 血管性認知症
  • 辺縁系脳炎
  • 正常圧水頭症

まずは認知機能低下の原因を探ることが重要です。初期症状かもしれないと思った場合は早めに医療機関を受診しましょう。

「若年性アルツハイマーの初期症状」と関連する症状

「若年性アルツハイマーの初期症状」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • うまく話せない
  • 単語が思い出せない
  • 眼で見たものの名前がわからない
  • 眼でみて距離が測れず、ものがうまくつかめない
  • 新しいことができない

一時的なものであればストレスや疲れなども原因として考えられるかもしれませんが、それを軽減させても改善しない場合には早めに治療介入をすることをお勧めいたします。

この記事の監修医師