「くも膜下出血の予防法」はご存知ですか?発症のリスクを上げやすい食べ物も解説!
くも膜下出血の予防法とは?Medical DOC監修医がくも膜下出血の予防法・予防する可能性の高い食べ物・発症のリスクを上げやすい食べ物などを解説します。
監修医師:
村上 友太(東京予防クリニック)
脳神経外科専門医、脳卒中専門医、抗加齢医学専門医。日本認知症学会、日本内科学会などの各会員。
目次 -INDEX-
「くも膜下出血」とは?
くも膜下出血には怖いイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。
そのイメージ通りで、発症した人の3分の1は死亡し、3分の1は何らかの後遺症が生じ、残りの3分の1の人が社会復帰できるという、発症してしまうと大変な病気です。
くも膜下出血は脳卒中の一つで、比較的女性に多めで、40歳以降に多く、加齢にともなって発症率は増加します。
大人の発症原因の多くは脳の動脈にできたコブ(脳動脈瘤)の破裂であり、これは予防することが可能なものです。読者の皆様には予防方法について知っていただければと思います。
くも膜下出血の主な原因
くも膜下出血の発症原因は大きく二つに分かれます。
血管異常がもともとあってその血管が破れた場合と、頭を強く打撲した影響で血管が破れた場合です。なお、血管異常については、大人の場合と子供の場合とで、主な原因が異なります。
脳動脈瘤破裂
大人のくも膜下出血の原因の90%近くが脳の動脈にできるコブ(脳動脈瘤)の破裂によるものといわれています。
脳の動脈にコブができる理由は明らかになっていませんが、主に高血圧や喫煙、遺伝が関連していると考えられています。
破裂していない(未破裂)の状態では、くも膜下出血の症状は現れません。ただし、サイズが大きくなって、眼を動かす脳神経(動眼神経)を圧迫すると、目の動きが悪くなりダブってみえたり、まぶたが開かなくなったり、瞳孔が大きくなったりします。
このような眼の症状が見られた場合には、早めに治療しないと眼の後遺症が残ってしまうため、すぐに脳神経外科のある病院を受診する必要があります。
脳動静脈奇形
脳動静脈奇形とは、脳内の異常血管網を形成している病気です。一般的に、心臓から流れてきた血液は動脈→毛細血管→静脈に流れて、心臓に戻っていきます。しかし、脳動静脈奇形では毛細血管がなく直接動脈が静脈につながっているという状態です。通常は、動脈血が毛細血管を通って静脈へ流れるので、血圧は自然にゆっくり下がりますが、脳動静脈奇形の場合では毛細血管が無いために静脈に高い圧力がかかってしまいます。このような血流の異常によって血管壁への負担が大きくなり、血管が破れて出血する(くも膜下出血を起こす)原因になります。
脳動静脈奇形は先天的な要因によるものが多いといわれています。10万人に1人の発症頻度ですが若年者の脳出血の原因に多く見られます。脳動静脈奇形が未破裂の状態は症状がないため、脳出血や痙攣などの症状が現れた際に見つかるか、頭痛などの原因を探るために検査をした際に偶然見つかることがほとんどです。
診断や治療は脳神経外科で行います。治療の選択肢には、経過観察、手術、カテーテル治療、放射線治療などがありますが、脳動静脈奇形の大きさや病変の部位などによって治療方針は異なります。脳神経外科で詳しく説明を聞いてください。
頭部外傷
大人の場合には頭蓋骨がしっかりしているので、転倒して頭を打撲しても頭蓋骨が折れたり、頭蓋内出血が起こったりすることは多くありません。
ただし、子供の場合特に乳幼児は頭の骨が柔らかいことや、体の大きさに対して頭が大きいので転びやすく、頭を強く打ちつけると危険な場合があります。
もちろん、大人でも強く頭部を打撲した場合や、打撲を繰り返して衝撃が重なった場合には、頭蓋骨が折れたり、出血が起こったりします。脳表面に傷がつくと脳挫傷ができ脳内に出血が広がると脳内出血を起こし、脳表面の空間(くも膜下腔)に出血が広がるとくも膜下出血を起こすことがあります。
脳動脈解離
脳の動脈は内膜・中膜・内膜の3層構造からなっていますが、脳動脈解離とは、何らかの誘因で、脳動脈壁のうち内側にある膜が裂けてしまう病気です。脳動脈解離によってくも膜下出血や脳梗塞を発症することがあります。
椎骨動脈解離は比較的多い病気ですが、これは首から脳内に血液を送る椎骨動脈に発症した動脈解離です。椎骨動脈は首の後ろ側に位置するため、後頚部の痛みやめまいを突然生じるのが特徴的です。誘因ない場合もありますが、スポーツで早く首を回した際に発症することもあります。
動脈の壁の裂け具合は徐々に裂け続ける場合もあり、脳内への血流が悪化して意識状態が悪化したり突然死してしまうこともあります。放置すると危ない病気の一つですので、突然の痛みを感じる場合には、頭痛ではなく首の痛みだから、と油断せずに脳神経内科や脳神経外科を受診することをお勧めいたします。
くも膜下出血の予防法
未破裂脳動脈瘤の治療
未破裂脳動脈瘤があると破裂する可能性はありますが、大きさや形、脳動脈瘤のある場所によって破裂する確率は異なります。世界的に破裂率や破裂のリスク要因について臨床研究がなされており、日本人で全国的に行われた臨床試験データもあります。
ガイドラインでは、脳動脈瘤の大きさが5-7mm以上である場合、手術の適応があると言われています。ただし、5mm未満でも、まぶたが開かない、ダブって見えるなどの脳神経症状がある場合や、前交通動脈や内頸動脈-後交通動脈分岐部といった場所に脳動脈瘤がある場合、脳動脈瘤の形がいびつである場合などでは、手術適応になる可能性があります。
脳動脈瘤に対する治療は、開頭手術(クリッピング術)あるいはカテーテル治療(コイル塞栓術)です。
クリッピング術とは、頭の骨を開けて、直接動脈瘤の根元にクリップをかけて破裂を予防する手術です。コイル塞栓術とは、カテーテルという細い管を体内の血管に挿入して脳動脈瘤のある血管まで誘導して脳動脈瘤の内部にコイルを詰めて破裂を予防する手術です。
どちらを選択するかは、動脈瘤の大きさや場所などによって異なるので、一概には言えません。1週間程度の入院治療が必要となります。
脳動静脈奇形の治療
脳動脈奇形に対しての治療は、開頭手術(外科的摘出術)とカテーテル治療(血管塞栓術)、放射線治療(ガンマナイフ治療)が一般的に行われます。
未破裂の(一度も破裂したことがない)脳動静脈奇形は、年間2%の破裂率でありそれほど高いわけではないので、経過観察となる場合もあります。ただし、若年者である場合や脳の表面にある場合、周囲の脳機能への影響が少なそうである場合などには手術が考慮されます。このように、どの治療が望ましいかは、動静脈奇形の大きさや病変の部位によって異なります。
脳ドック
脳ドックは、脳の病気を早期に発見することを目的に行われる検診です。
脳MRI検査が中心的な検査ですが、頸動脈超音波検査や血液検査、認知症検査など施設によってさまざまな検査の組み合わせ・オプションを選ぶことができます。
脳動脈瘤の破裂によるくも膜下出血を家族の中で発症した方がいる場合には、他の家族内でも発症する確率が高まることも知られています。そのような家庭環境の方は、症状がなくても定期的に検査を受けておくことをお勧めします。
くも膜下出血を予防する可能性の高い食べ物
くも膜下出血を直接的に予防すると言われている食べ物はありません。くも膜下出血の発症には高血圧が関与するので、高血圧を予防することがくも膜下出血を予防する方法につながります。
高血圧の食事療法では、塩分制限を行うことが治療の基本です。
これは、食塩を多く摂り過ぎると血圧が上がりやすいことが知られているからです。
国民健康・栄養調査報告によると1日の食塩摂取量は平均10.1gですが、厚生労働省が推奨する食塩摂取量は男性8g未満、女性7g未満と言われています。
高血圧症である場合には、1日6g未満を目標することが高血圧症ガイドラインに明記されています。
また、食事では全体的なミネラルや栄養素のバランスが重要で、これさえ取れば良いというものはありません。取りすぎるのも良くないので適量が勧められます。
減塩を意識した食事
高血圧予防には塩分を減らすのがわかりやすい対策です。徐々に薄味に変えてくことや、醤油やソースの量を減らすことなどを心がけていきましょう。
日本高血圧学会では、減塩率が20%以上の食品リストを作成しています。これを参考にするのも良いでしょう(https://www.jpnsh.jp/data/salt_foodlist.pdf)。
カリウムやマグネシウム、カルシウムなど
カリウムはナトリウムを体外へ排出する働きがあるため、血圧を低下させる効果があると言われています。マグネシウムやカルシウムが不足すると血圧が上がってしまうことが知られています。野菜や果物、海藻類、豆類などにはカリウム、マグネシウム、カルシウムが多く含まれているので、意識して摂取するのが良いでしょう。
食物繊維
食物繊維にはLDLコレステロールを下げる働きがあります。食物繊維はコレステロールから合成された胆汁酸にくっついて、胆汁酸の再吸収を抑えたり排出をさせたりします。この作用によって胆汁酸の合成が促されて、血液中のLDL-Cの上昇が抑えられます。LDLコレステロールは動脈硬化と関係がありますが、高血圧を予防するには動脈硬化予防も重要です。野菜や果物、きのこ類、海藻類、大豆製品などには食物繊維が多く含まれます。
くも膜下出血発症のリスクを上げやすい食べ物
前述と同様で、くも膜下出血を直接的に予防すると言われている食べ物はありません。
くも膜下出血の発症リスクを上げる要素として高血圧は重要です。血圧が高くなりやすい食べ物について説明します。
しょっぱい味の食べ物のほとんどは塩分が多めなので、注意は必要です
これは、食塩を多く摂り過ぎると血圧が上がりやすいことが知られているからです。
食塩の摂取量だけではなく、食べ過ぎ・飲み過ぎ、肥満などにも注意が必要です。
麺類や汁物
麺類や汁物は、1日1杯までとして、出汁や麺つゆは飲まないようにするのが良いでしょう。ラーメンの出汁には塩分が多く含まれています。例えば、ラーメン1人前に塩分は6~7g入っていますが、汁を飲まない場合には、塩分の摂取は1-2gで抑えることができます。
これは味噌汁やスープなども同じであり、具だけを食べて汁を残すことで塩分摂取量は減らすことが可能です。
外食・惣菜・弁当
外食を行う際には、主食と主菜、副菜がそろっている定食を選ぶのが良いでしょう。
前述したように味噌汁は具だけ食べて汁は残す工夫が必要です。
それに加えて、佃煮や漬物は全部食べ切らないこと、干物、練り製品、肉加工品(ハムやソーセージ)などは食べすぎないこと、付け合わせの野菜やサラダにはたっぷりドレッシングをかけるのではなく、主菜の味付けを利用するということを意識してみてください。ドレッシングや醤油、ソースなどは使っても少量にとどめると塩分を抑えられます。
店舗や商品によっては、成分表示されている場合もあるため、おおよそどの程度の塩分やエネルギーがあるのか確認するのも良いでしょう。
大量の飲酒とおつまみ
アルコールの過剰摂取は血圧の上昇に関係します。飲酒する際に一緒に食べるおつまみには塩分やカロリーが過剰となることも多いので、高血圧だけではなく肥満になるリスクもあります。過剰な飲酒によって肝機能も悪化することもあるので、お酒の飲みすぎは避けましょう。
「くも膜下出血の予防」についてよくある質問
ここまでくも膜下出血の予防法などを紹介しました。ここでは「くも膜下出血の予防」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
くも膜下出血を予防するためにはどんな運動がおすすめですか?
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
くも膜下出血の原因となる高血圧症を予防する対策として運動を行うのがおすすめです。
体に大きな負荷をかける激しい運動ではなく、有酸素運動やストレッチなどを週3回以上、30分間程度で定期的に行うことが良いと思います。
くも膜下出血を発症する可能性の高い人の特徴を教えてください。
村上 友太(むらかみ ゆうた)医師
さまざまな疫学研究から未破裂脳動脈瘤が破裂しやすくなる要因が知られています。
血圧が高いこと、年齢が高いこと、女性、日本人、喫煙者、家族内にくも膜下出血を発症した人がいることなどです。
人種や遺伝的な背景、性別、年齢は自分ではコントロールできませんが、血圧を下げることや喫煙しないことについては生活習慣の中で努力可能です。
編集部まとめ
くも膜下出血の原因にはさまざまありますが、成人では脳動脈瘤が、小児では脳動静脈奇形が多い疾患です。これらは先天的な問題や人種など自分ではどうしようもない要因も関与しています。しかし、特に脳動脈瘤では血圧を下げることや禁煙することで破裂率を下げることが可能です。また、定期的な脳ドックを受けることや定期的な運動などの習慣もぜひ実践してほしいです。
くも膜下出血の発症予防として自分自身で取れる対策として高血圧症の予防をあげましたが、食べ物については一部のみの紹介になっています。高血圧に関する他の記事も参考にしていただき、日々の食生活に役立たせていただければ幸いです。
「くも膜下出血の予防」と関連する病気
「くも膜下出血の予防」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
内科の病気
くも膜下出血をはじめ脳血管の病気の多くは高血圧が関与しているので、高血圧症の発症予防や悪化予防を行うことが重要です。脳動脈瘤や脳動静脈奇形などの異常血管は脳ドックなどの検査を受けることで確認できるので、定期的に受けるようにしましょう。
「くも膜下出血の予防」と関連する症状
「くも膜下出血の予防」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの症状が複数あった場合にはくも膜下出血をはじめ、何らかの脳の病気が疑われるのですぐに救急車を呼んで病院を受診するようにしてください。