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「脳卒中の後遺症」となる6つの症状・リハビリ法はご存知ですか?医師が解説!

 更新日:2023/09/14
「脳卒中の後遺症」となる6つの症状・リハビリ法はご存知ですか?医師が解説!

脳卒中の後遺症にはどんな症状がある?Medical DOC監修医が脳卒中の後遺症・リハビリ・仕事や学校に復帰できるまでの期間なども解説します。

中川 龍太郎

監修医師
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)

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奈良県立医科大学卒業。臨床研修を経て、医療法人やわらぎ会、医療法人資生会南川医院に勤務。生活習慣病や肥満治療、予防医学、ヘルスメンテナンスに注力すると同時に、訪問診療にも従事している。日本プライマリ・ケア連合学会、日本在宅医療連合学会、日本旅行医学会の各会員。オンライン診療研修受講。

「脳卒中」とは?

脳卒中は、脳への血流が一時的または恒久的に遮断されることによって脳組織が損傷する病気です。主な原因は二つあり、一つは血管の詰まりによる「脳梗塞」と、もう一つは血管の破裂による「脳出血」です。どちらも突然発症し、片側の麻痺や言葉の障害など、さまざまな症状を引き起こします。
脳卒中の診断は、主に画像検査で行われます。頭部CTやMRI検査によって、脳のどの部分に問題が起きているのか、また、脳梗塞と脳出血のどちらであるのかを特定します。
どちらも緊急性の高い疾患ですが、特に脳梗塞の場合、発症から4.5時間以内に治療を開始すると、再開通(詰まった血管が再び通るようになること)が可能となることがあります。これにより、脳への損傷を最小限に抑え、後遺症を軽減することが期待できます。
疑わしい症状が現れたら、速やかに救急病院を受診することが大切です。専門科は脳神経内科や脳神経外科です。後に説明する後遺症を最低限に抑えるため、治療後できるだけ早くからリハビリテーションを積極的に行うことが多いです。

脳卒中の後遺症

運動麻痺・片麻痺

脳卒中の後遺症として、運動麻痺・片麻痺はよく見られる状態です。運動麻痺とは、文字通り体を動かす動作が麻痺して難しい状態を指します。また片麻痺とは体の半側、つまり左右のどちらかの半身に麻痺がある状態のことを指します。麻痺の程度も、少し力が入りにくい程度から筋肉がピクリとも動かない状態までさまざまです。
完治するかどうかは、脳損傷の程度や損傷を受けた位置、治療をどれだけ早く開始できたか、リハビリテーションの取り組み方によって異なります。一部の患者さんは時間とともに回復することがありますが、完全な回復が難しい場合もあります。発症後は、二次的な合併症や怪我を防ぐため、日常生活の動作や環境の改善が重要です。つまり麻痺ありきでの身体の動きを覚えたり、バリアフリーな生活空間の工夫などが重要になります。

感覚障害

脳卒中の後遺症として、感覚障害もよく見られます。感覚障害とは、皮膚や筋肉からの情報が正しく脳に伝わらない、または脳がそれを正しく解釈しないために生じる症状を指します。例えば、温度や痛み、触覚が感じにくくなることや、逆に痛みやしびれを感じることもあります。
この感覚障害が起こる場所や程度は、脳のどの部分が損傷したかによって異なります。生活の中での影響も、身体のどの部分に感覚障害が現れるかによっても大きく変わります。例えば足の裏に感覚障害があると、歩行時のバランスが取りにくくなることもあります。
完全な回復が難しい場合、感覚の変化に対応するためのリハビリテーションや日常生活の工夫が必要となります。特に、熱いものや鋭利なものに対する感覚が鈍くなると、怪我をしやすくなるため注意が必要です。日常の中で感覚障害に適応する方法や、その状態を改善する方法を学ぶことが、生活の質を維持・向上させる鍵となります。

構音障害

脳卒中の後遺症として、構音障害も問題となることがあります。構音障害とは、言葉を正しく、はっきりと発音することが難しくなる症状を指します。言葉の理解や、何を言いたいかは明確なのですが、それを正確に発音することが難しくなるため、話すことが不明瞭になることがあります。
この障害は、脳の発話に関連する部位が損傷された場合に起こります。特に、日常のコミュニケーションに影響を及ぼすため、患者さんやその周囲の人々にとって、大きなストレスや困難を感じることがあります。
構音障害の状態は個人差があり、完全な回復が難しい場合もあれば、リハビリテーションによって改善される場合もあります。リハビリでは、発音の練習や、口の筋肉のトレーニングなどが行われます。また、コミュニケーションの工夫や、周囲の理解とサポートも非常に重要です。適切な指導やトレーニングを受けることで、日常生活の中でのコミュニケーション能力を高めることが目標になります。

嚥下障害

脳卒中の後遺症として、嚥下障害が現れることがあります。嚥下障害とは、食べ物や液体を正しく飲み込むことが難しくなる状態です。本来、ものを飲み込む(嚥下:えんげ)際は、口から食道を通って胃に運ばれますが、この行程がうまくいかず、飲み込めなかったり間違って気管に入ってしまう(誤嚥)状態になります。
この障害の原因は、脳の嚥下中枢や、嚥下に関わる筋肉の動きを制御する部位の損傷です。嚥下障害は、誤嚥性肺炎(誤嚥が原因となって起こる肺炎)のリスクを高めるなど、生命に関わる合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
治療は、嚥下リハビリテーションが中心となります。言語聴覚士といった専門職の評価を経て、食物の固さや粘度の調整、飲み込みの方法や姿勢の指導などが行われます。
日常生活での食事は、人々の社交の場でもあるため、嚥下障害は患者さんの心理的なストレスや孤立感をもたらすことがあります。そのため、周囲の理解とサポート、そして適切なリハビリテーションの受け入れが、生活の質の向上や安全な食事を実現するための鍵となります。

高次脳機能障害(認知症・注意障害など)

脳卒中の後遺症の一つとして、高次脳機能障害があります。高次脳機能障害とは、記憶、注意、判断力、認知、言語などの複雑な脳の機能が障害される状態を指します。具体的には、認知症や注意障害、計画や社会能力の低下などが含まれます。
この障害は、脳の特定の部位、特に前頭葉や側頭葉などが損傷を受けた場合に起こることが多いです。日常生活での影響は、物忘れや、マルチタスクの処理が難しくなる、会話の中での情報の取捨選択が困難になるなど、さまざまです。
治療は、認知リハビリテーションが中心となります。これは、患者さんの現状の能力やニーズに合わせたトレーニングや、日常生活における工夫、支援策を提案するものです。専門職、例えば臨床心理士や作業療法士といった職種が、患者さんやその家族をサポートします。
高次脳機能障害は、外見からは明らかでないことが多く、周囲の人々が理解しづらい場合があります。しかし、これらの障害は患者さんの生活の質に大きな影響を及ぼすため、周囲の理解やサポートが非常に重要です。正確な評価や適切なリハビリテーション、そして周囲のサポートが、生活の質を維持・向上させる鍵となります。

てんかん

脳卒中の後遺症として、てんかん発作が現れることがあります。てんかん発作とは、脳の神経細胞が一時的に異常な興奮をおこすことで生じる症状の総称です。この異常な活動が、脳の一部の領域に起こる場合は、部分発作と呼ばれます。一方、脳全体に広がる場合は、全般発作と呼ばれます。
てんかん発作の具体的な症状はさまざまで、手足のけいれん、意識消失、奇妙な感覚や幻覚、突然の動きがとまる、といったものがあります。発作の原因は、脳の損傷や脳腫瘍、遺伝、代謝異常など複数ありますが、脳卒中の患者さんでは、脳の損傷部位が原因となって発作を引き起こすことが知られています。
治療としては、抗てんかん薬を使用して発作を抑えるアプローチが一般的です。薬物療法や生活習慣の見直しによって、多くの患者さんは発作をコントロールすることができます。日常生活での注意点としては、発作時のけがを防ぐための環境整備や、運転や水辺での活動などのリスクを低減する対策などがあります。

脳卒中の後遺症を軽減するリハビリ

理学療法(PT)

理学療法(PT)は、主に運動麻痺に対する運動機能の獲得を目的としたリハビリで、療法士が担当します。リハビリの内容は歩行練習、体力強化練習、基本動作練習、日常生活動作練習、といったものがあります。
歩行練習はその名の通り、歩く練習です。麻痺によってうまく動かない部分は装具をつけたり、平行棒で体を支えながら歩いたり、強度はさまざまです。
体力強化練習は自転車を使って心肺機能を高める、筋力トレーニングを行う、といったものがあります。
基本動作練習では、起き上がる、立つ、座るといった生活上で基本的な動作を練習します。
日常生活動作練習では、日常生活に必要な階段の上り下り、トイレ、入浴などを練習します。どのトレーニングを行うかは患者さんごとの麻痺の状況によって合わせて変化します。

言語聴覚療法(ST)

言語聴覚療法(ST)は、嚥下障害や構音障害などに対するトレーニングが中心で、言語聴覚士が担当します。
嚥下障害に対しては、食べる為に必要な筋力(舌・口唇・頬など)トレーニング、誤嚥してしまった時に食べ物を吐き出す練習を行います。
また、口内の衛生環境を整える口腔ケアや、患者さんごとに合わせた食事姿勢や食事形態の調整、さらに実際に食べ物を使って嚥下訓練などを行います。

作業療法(OT)

作業療法は、主に日常生活動作の習得を目指すリハビリで、作業療法士が担当します。
ここでの日常生活動作は、PTの項で説明したものより高度なもので、トイレや入浴に加えて、箸やスプーンを使った食事や、整容(顔を洗う、歯磨きをする、爪を切るなど)・更衣(服を脱ぐ、着る)などになります。これらの動作を習得できるよう、装具などをうまく使いながら訓練していきます。

リハビリの期間・注意点など

このようにリハビリの種類はさまざまなものがありますが、その期間は患者の状態や後遺症の程度により異なります。一般的に数週間から数ヶ月、重度の場合はそれ以上を要することもあります。
リハビリ時の注意点としては、無理をしないこと、自身の体調や症状の変化を専門家と共有することが重要です。仕事や学校への復帰は、リハビリの進行具合や後遺症の回復度によりますが、多くは数ヶ月から1年程度の期間を見るのが一般的です。
家族や周囲の人々のサポートは、患者の心理的サポートや日常生活の補助だけでなく、リハビリテーションのモチベーション維持や、家庭での練習の助けとしても大切です。

「脳卒中の後遺症」についてよくある質問

ここまで脳卒中の後遺症を紹介しました。ここでは「脳卒中の後遺症」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

脳卒中を発症し、後遺症が残る患者さんの割合を教えて下さい。

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

脳卒中の患者さんの約半数に何らかの後遺症が残ると言われています。具体的な割合は、症状の重さや病気の種類によります。

脳卒中の後遺症は完治するのでしょうか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

脳卒中の後遺症は完治することもあれば、一部残ることもあります。患者の状態や受けた治療によります。

脳卒中の後遺症の回復期間を教えて下さい。

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

後遺症の回復期間は症例ごとに異なりますが、発症後3〜6ヶ月以内をゴールデンタイムといい、この期間に積極的なリハビリが効果的です。

脳卒中の後遺症があっても車の運転はできますか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

後遺症の状態や程度によります。運転に支障がないと判断されれば可能ですが、医師の診断や適性試験が必要です。

編集部まとめ

今回は脳卒中の後遺症について解説いたしました。総じて言えることは、できるだけ早く脳卒中治療に取り掛かり、治療後は早くから積極的にリハビリをすることが重要です。そしてそのリハビリを積極的に行うには、周囲の方々のサポートが欠かせません。安全な環境と集中してリハビリに励むことができる状態を作りましょう。

「脳卒中の後遺症」と関連する病気

「脳卒中の後遺症」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

後遺症として紹介していますが、脳卒中の発症初期からこれらの症状は見られることが多いです。異変を感じたら本人・周囲の方問わず救急要請も含めて受診をするようにしてください。

「脳卒中の後遺症」と関連する症状

「脳卒中の後遺症」と関連している、似ている症状は★個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

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