「ソマトスタチン」ってどんなホルモン?働きや分泌される効果も医師が徹底解説!

ソマトスタチンとは?メディカルドック監修医がソマトスタチンの働き・どこから分泌されるのか・効果などを解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
「ソマトスタチン」とは?

ソマトスタチンは、体内で分泌されるペプチドホルモンです。主な役割は、ほかのホルモン分泌を抑えることにあります。体の機能を促進するホルモンに対してブレーキをかけることで、内分泌や消化機能のバランスを整えています。
ソマトスタチンは、1970年代に成長ホルモン分泌を抑える因子として発見されました。その後、視床下部だけでなく、膵臓や消化管など多くの臓器で分泌されることが分かりました。現在では、全身の調整役として重要なホルモンと考えられています。
ソマトスタチンはどこから分泌されるの?

ソマトスタチンは一か所だけでなく、複数の臓器から分泌されます。分泌される部位によって働きが異なり、それぞれの臓器で局所的な調整を行っています。
視床下部では下垂体ホルモンの分泌を抑えます。膵臓のランゲルハンス島D細胞では、インスリンやグルカゴンの分泌調整に関わります。さらに、胃や小腸などの消化管粘膜にも存在し、消化機能の調整に関与します。
ソマトスタチンの働き(役割)

ソマトスタチンは、体内で分泌される抑制系ホルモンです。多くのホルモンや消化機能にブレーキをかけることで、体のバランスを保つ役割を担っています。単一の臓器だけでなく、内分泌系・消化器系・神経系に広く関与している点が特徴です。体の働きを促すホルモンがある一方で、それを“抑える”仕組みも存在し、その代表的な存在がソマトスタチンです。体内環境を一定に保つ恒常性の維持に重要な役割を果たしています。
成長ホルモンの分泌を抑える
視床下部から分泌されたソマトスタチンは、下垂体前葉に作用して成長ホルモンの分泌を抑制します。成長ホルモンは骨や筋肉の発育、糖・脂質代謝の調整に関与する重要なホルモンです。しかし、必要以上に分泌されると体への負担が生じるため、ソマトスタチンが分泌量を調整し、過剰な刺激を防いでいます。この調整機能があることで、成長や代謝が過度に亢進することを防ぎ、体の発育やエネルギーバランスが適切に保たれます。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌を調整する
ソマトスタチンは甲状腺刺激ホルモンの分泌にも抑制的に働きます。TSHは甲状腺ホルモンの産生を促し、体の代謝を高める作用があります。その分泌が過度になると動悸や体重減少などの症状につながることがあります。ソマトスタチンはこの流れを制御し、代謝機能の安定に関与しています。代謝は体温維持やエネルギー消費に深く関わるため、その調整は全身の健康維持にとって重要です。
インスリンとグルカゴンの分泌をコントロールする
膵臓のランゲルハンス島D細胞から分泌されるソマトスタチンは、インスリンとグルカゴンの両方に作用します。血糖値を下げるホルモンと上げるホルモンの双方を抑えることで、急激な血糖変動を防ぐ働きがあります。これにより体内のエネルギー代謝が安定します。血糖値は脳や筋肉の働きに直結するため、そのバランスが保たれることは日常生活の活動維持にもつながります。
消化管ホルモンの分泌を抑制する
ソマトスタチンはガストリンやセクレチンなどの消化管ホルモンの分泌を抑えます。これらのホルモンは胃酸や消化液の分泌を促進するため、過度な分泌は胃や腸に負担をかけることがあります。ソマトスタチンは消化活動にブレーキをかけ、消化器の働きを整えます。食後の消化活動を穏やかに保つことで、胃粘膜や腸管への過度な刺激を防ぐ役割も担っています。
神経伝達物質として働く
中枢神経系では神経伝達物質のひとつとしても機能します。神経細胞間の情報伝達に関与し、内分泌調節と神経系の働きをつなぐ役割を担っています。ホルモン調節だけでなく、脳内の機能調整にも関与している点が特徴です。神経系と内分泌系は密接に連携しているため、ソマトスタチンはその橋渡し役として全身の調整機構を支えています。
ソマトスタチンが分泌されるとどんな効果がある?

ソマトスタチンの分泌は、体のさまざまな機能に具体的な影響を与えます。ホルモン分泌の抑制を通じて、血糖値の安定や消化機能の調整などが行われます。ここでは、体内でみられる代表的な効果を解説します。
血糖値の安定化
ソマトスタチンはインスリンとグルカゴンの分泌を抑えることで、血糖値の急激な上昇や低下を防ぎます。食後や空腹時など血糖値が変動しやすい場面でも、分泌バランスを整えることで体内環境を一定に保つ働きがあります。血糖値は体のエネルギー源を左右する重要な指標であり、その変動を穏やかにすることは全身の代謝安定につながります。
胃酸分泌の抑制
ガストリンの分泌が抑えられることで、胃酸の産生が減少します。胃酸は消化に必要ですが、過剰になると胃粘膜を傷つける原因になります。ソマトスタチンはその分泌を調整し、消化管への負担を軽減します。とくに胃潰瘍や消化管出血の場面では、この抑制作用が治療上の重要なポイントとなります。
消化酵素分泌の低下
膵液などの消化酵素分泌も抑制されます。消化活動が強くなりすぎることを防ぎ、膵臓や消化管の働きを穏やかに保ちます。この作用は急性膵炎などの治療にも応用されています。消化酵素の分泌が抑えられることで、膵臓への刺激が軽減され、炎症の悪化を防ぐ目的で用いられることがあります。
内臓血流の減少
内臓血管に作用し、門脈血流を減少させる働きがあります。これにより消化管出血の止血を補助する効果が期待されます。臨床ではこの作用を利用して治療に用いられることがあります。とくに食道静脈瘤出血などでは、門脈圧を下げることが重要であり、この血流調整作用が活用されています。
ホルモン過剰症状の緩和
成長ホルモンや消化管ホルモンが過剰に分泌される疾患では、ソマトスタチン作用が症状の改善につながります。ソマトスタチンそのものは体内で速やかに分解されるため、医療現場では作用時間を延ばした「ソマトスタチンアナログ製剤」が使用されています。代表的なものにオクトレオチドやランレオチドがあります。これらは成長ホルモンの過剰分泌による先端巨大症や、神経内分泌腫瘍に伴うホルモン過剰症状のコントロールに用いられています。また、消化管出血の止血補助として使われることもあります。
「ソマトスタチン」についてよくある質問

ここまでソマトスタチンについて紹介しました。ここでは「ソマトスタチン」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
ソマトスタチンの別名について教えてください。
木村 香菜(医師)
ソマトスタチンの主な別名は成長ホルモン放出抑制因子です。英語では Growth Hormone Release Inhibiting Factor(GH-RIF)や Somatotropin Release Inhibiting Factor(SRIF)と呼ばれます。また、体内に存在する分子の長さの違いによって「Somatostatin-14」や「Somatostatin-28」と区別されることもあります。これらはいずれも基本的に同じ働きを持ち、ホルモン分泌を抑える役割を担っています。
ソマトスタチンが抑制するホルモンについて教えてください。
木村 香菜(医師)
成長ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、インスリン、グルカゴン、ガストリンなど複数のホルモンを抑制します。これらはいずれも体の成長や代謝、血糖調整、消化機能に関わる重要なホルモンです。ソマトスタチンはこれらの分泌量を調整することで、ホルモンバランスの安定を保ち、体内環境の恒常性維持に貢献しています。
まとめ
ソマトスタチンは、体内のホルモン分泌を抑える調整役です。成長ホルモンや消化管ホルモン、膵ホルモンなど多くの分泌を制御しています。
この「抑える働き」があるからこそ、体は安定した状態を保つことができます。また、作用時間を延ばしたソマトスタチンアナログは、内分泌疾患や消化管出血の治療にも応用されています。
ソマトスタチンの働きを理解することは、ホルモンバランスや消化機能の仕組みを理解する第一歩といえるでしょう。
「ソマトスタチン」と関連する病気
「ソマトスタチン」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
内分泌系
- 先端巨大症
- 下垂体腫瘍
消化器系
- 神経内分泌腫瘍
- 食道静脈瘤
ソマトスタチンはホルモン分泌や消化機能に関わるため、内分泌疾患や消化器疾患との関連が深いことが特徴です。
「ソマトスタチン」と関連する症状
「ソマトスタチン」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
ソマトスタチンは複数のホルモンを調整しているため、その分泌異常は代謝や消化機能に関わる症状として現れることがあります。
参考文献


