「神経伝導検査の基準値」はご存じですか?異常のサインや発見できる病気を医師が解説!

神経伝導検査の基準値とは?メディカルドック監修医が、神経伝導検査でわかることや、運動神経・感覚神経の伝導速度、異常から疑われる糖尿病などの病気について分かりやすく解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
末梢神経の機能を調べる神経伝導検査(NCS)とは?
神経伝導検査は、手足の末梢神経に電気刺激を与え、その反応を記録することで神経の働きを評価する検査です。しびれや筋力低下の原因を調べる際に広く用いられています。
神経伝導検査の仕組みと目的
皮膚の上から電気刺激を加え、神経を通って筋肉や感覚神経に伝わる反応を測定します。伝導速度や反応の大きさを数値化することで、神経の障害部位や性質を推定できます。例えば、脱髄(神経の伝わり方の異常)か軸索障害(神経の数の減少)かなどです。この検査は、他の検査とともに神経疾患の診断や重症度評価に用いられます。
運動神経と感覚神経の検査の違い
運動神経検査は筋肉の反応(M波)を記録し、筋力低下の原因を探ります。一方、感覚神経検査は皮膚の感覚に関わる信号(SNAP)を評価します。両者の結果を組み合わせることで、障害の部位や広がりをより正確に判断できます。
神経伝導検査はどんな症状がある時に行う?
手足のしびれ、感覚低下、筋力低下、筋肉のやせなどがある場合に行われます。神経が圧迫されているのか、全身性の神経障害なのかを区別する目的でも有用です。整形外科や脳神経内科で実施されることが多い検査です。
神経伝導検査の流れと結果に影響する注意点
検査は外来で実施でき、特別な準備は不要です。ただし、検査条件によって結果が変わることがあるため、注意点を理解しておくことが大切です。
神経伝導検査の手順と痛みについて
皮膚に電極を貼り、短い電気刺激を与えて反応を記録します。刺激時にピリッとした感覚がありますが、持続する痛みではありません。検査時間は部位数にもよりますが、通常は20〜60分程度で終了します。
年齢や皮膚の温度による神経伝導速度検査の数値への影響
神経伝導速度は年齢とともに低下する傾向があり、高齢者では基準値よりやや低くなることがあります。また、皮膚温が低いと伝導速度が遅く測定されるため、一般に一定の温度条件で評価する必要があります。
神経伝導検査を受けられない人はいる?
多くの人が安全に受けられる検査ですが、ペースメーカー装着者などでは刺激部位に注意が必要です。また、皮膚に強い炎症や外傷がある場合は、その部位での測定が難しいことがあります。事前に医師へ相談しましょう。
神経伝導検査の速度などの基準値と見方
神経伝導検査では、伝導速度・潜時・振幅といった複数の指標を総合的に評価します。単一の数値だけで判断せず、全体像を踏まえることが重要です。以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
手足の神経(腓骨神経など)の基準値の目安
運動神経伝導検査(MCS)、感覚神経伝導検査(SCS)はともに上肢では50〜70m/s、下肢では40〜60m/s程度が目安とされています。評価では伝導速度(NCV)に加え、遠位潜時(刺激から反応までの時間)や振幅(反応の強さ)も確認します。正中神経や尺骨神経では遠位潜時が数ミリ秒以内に収まることが多く、腓骨神経や脛骨神経ではやや長くなります。施設ごとに基準は設定されています。
潜時の延長は脱髄性障害、振幅の低下は軸索障害を示す手がかりとなります。つまり、潜時が長くなる場合は神経の伝わり方に問題がある可能性があり、振幅が低い場合は神経の数が減っていることが考えられます。また、F波は神経の信号が脊髄を往復する反応で、出現率が低い場合は体の奥に近い神経の異常が疑われます。これらの指標を組み合わせて総合的に判断します。
神経伝導検査の異常のサインからわかること
伝導速度の低下は、神経の「カバー」のような部分である髄鞘(ずいしょう)のトラブルが関係します。つまり、神経の信号を伝える働きに異常がある状態を示しています。また、潜時の延長は局所的な圧迫を示唆します。さらに、振幅の低下は神経線維の減少を反映することがあります。これらを組み合わせることで、障害のタイプや重症度を推定できます。
「神経伝導検査」で発見できる病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「神経伝導検査」で見つかる可能性がある病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
糖尿病
糖尿病では長期間の高血糖により末梢神経障害が生じ、足先のしびれや感覚低下がみられることがあります。神経伝導検査では、感覚神経を中心に振幅低下や伝導速度の低下が確認されることがあります。また、早い段階からF波潜時の延長がみられることもあり、神経のより中枢側の異常を評価する手がかりとなります。血糖コントロールが治療の基本であり、症状が進む前に内科での管理が重要です。
腓骨神経麻痺
膝の外側で腓骨神経が圧迫されることで、足首が上がりにくくなる状態です。長時間の正座や脚組みなどが原因となることがあります。神経伝導検査では、腓骨神経の伝導速度低下や伝導ブロックが確認されることがあります。原因の除去とともに、必要に応じて装具療法が行われます。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)
筋肉を動かす神経が徐々に障害される病気で、手足の力が入りにくくなったり、筋肉がやせたりするのが特徴です。神経伝導検査では、神経の伝わる速さは保たれることが多い一方で、反応の強さ(振幅)が低下することがあります。これは神経の数が減っている状態を反映しており、ほかの検査とあわせて神経内科で診断されます。
ギラン・バレー症候群
感染後などに発症する急性の末梢神経障害で、手足の脱力やしびれが進行します。神経伝導検査では伝導速度の低下や遠位潜時の延長など、脱髄性障害を示す所見がみられることがあります。早期診断と入院での治療が重要となるため、症状が急速に進む場合は速やかな受診が必要です。
「神経伝導検査」を受けるときのポイントは?
皮膚の温度を下げないような服装を選ぶ
神経伝導検査では、皮膚の温度が低いと神経の伝わる速さが実際より遅く測定されることがあります。そのため、検査当日は手足を冷やさない服装を選ぶことが大切です。特に冬場は手袋や靴下を着用するなど、体を温かく保つ工夫をすると、より正確な検査結果につながります。
自己判断せず専門医の総合的な診断を仰ぐ
神経伝導検査の数値が基準から外れていても、それだけで病気が確定するわけではありません。症状の経過や他の検査結果とあわせて評価されます。結果に不安がある場合は自己判断せず、神経内科や整形外科などの専門医に相談し、総合的な診断を受けることが重要です。
「神経伝導検査の基準値」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「神経伝導検査の基準値」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
神経伝導検査の伝導速度が正常値から外れている場合、何の病気が考えられますか?
木村 香菜 医師
伝導速度が低下している場合は、神経の被膜に異常がある状態や、神経が圧迫されている可能性が考えられます。一方で、反応の強さが低下している場合は、神経そのものの数が減っていることが示唆されます。糖尿病による神経障害や圧迫性神経障害などが代表的で、複数の所見を組み合わせて判断されます。
神経伝導検査で運動神経(MCS)と感覚神経(SCS)の結果が違う場合、どのような要因があるのでしょうか?
木村 香菜 医師
神経の障害は、運動神経だけ、あるいは感覚神経だけに現れることがあります。そのため、検査結果に差が出ることは珍しくありません。障害の部位や原因によってパターンが異なるため、結果の違いは診断の手がかりとなります。
神経伝導速度検査の基準値は手(尺骨神経など)と足(腓骨神経など)で変わるのでしょうか?
木村 香菜 医師
手と足では神経の長さや構造が異なるため、基準値も異なります。一般に手の神経の方が伝導速度は速く、足ではやや遅い値が基準とされます。評価の際には、それぞれの部位に応じた基準値を用いることが重要です。
まとめ
神経伝導検査では、伝導速度だけでなく、潜時や振幅など複数の指標をもとに神経の状態を評価します。基準値は部位や年齢、体温などによっても変化するため、数値のみで判断することはできません。しびれや筋力低下などの症状がある場合は、検査結果をもとに専門医が総合的に判断し、適切な対応につなげることが大切です。
「神経伝導検査」の異常で考えられる病気
「神経伝導検査」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。
各病気の詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
神経・筋肉の病気
整形外科系の病気
整形外科系
- 頸椎症
- 椎間板ヘルニア
神経伝導検査は、しびれや筋力低下の原因を調べる手がかりとなる検査であり、結果をもとに適切な診断や治療につなげることが重要です。
「神経伝導検査」に関連する症状
「神経伝導検査」に関連する症状は5個ほどあります。
各症状の詳細についてはリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 手足のしびれ
- 感覚が鈍い
- 筋力低下
- 足が上がりにくい
- ピリピリ・ジンジンする痛み
これらの症状が続く場合は、末梢神経のトラブルが隠れている可能性があるため、早めに医療機関での評価を受けることが大切です。
参考文献




