1mを何秒で歩けないと「フレイル」?寝たきりを防ぐ”診断基準”を医師が解説!

フレイルの診断基準はご存じですか?メディカルドック監修医が5つの診断基準やセルフチェック・予防法などを解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
フレイルとは?
高齢になると、「最近疲れやすい」「歩くのが遅くなった」「食事量が減った」など、加齢による変化を自覚する方が増えてきます。こうした変化が重なった状態を「フレイル」と呼び、要介護状態へ移行する前段階として近年注目されています。フレイルは早期に気づき、適切に対処することで進行を防ぐことが可能です。
フレイルの定義
フレイルとは、加齢に伴って筋力や活動量、認知機能、社会的つながりなどが低下し、心身の回復力(予備力)が弱くなった状態を指します。病気ではありませんが、放置すると転倒や骨折、入院、要介護につながるリスクが高まるため、早期発見と予防が重要です。
フレイル・サルコペニア・老年症候群の違いは?
フレイルは「心身・社会面を含めた総合的な虚弱状態」を指します。一方、サルコペニアは「筋肉量や筋力の低下」に特化した概念です。老年症候群は、転倒や認知機能低下、尿失禁など、高齢者に多くみられる症状の総称であり、フレイルやサルコペニアはいずれも老年症候群の一部と考えられます。
厚生労働省が定めるフレイルの5つの診断基準(J-CHS基準)
世界的に、フレイルの評価としてはFriedらの評価基準が広く用いられています。
日本では、この指標を日本人高齢者にマッチするようなものに修正し、2020年日本版フレイル基準として改定されています。
以下の基準のうち、3つ以上にあてはまる場合をフレイル、1または2つあてはまる場合をプレフレイルとします。ひとつもあてはまるものがないときは、健常な状態と考えられます。
体重減少
意図しない体重減少がみられる場合、栄養不足や筋肉量低下が疑われます。半年から1年で2~3kg以上の減少は注意が必要です。
疲労感
ここ2週間ほど、「理由もなく疲れやすい」「何をするにも億劫」と感じる状態が続く場合、活動量低下や身体機能の衰えが背景にある可能性があります。
筋力低下(握力)
握力は全身の筋力を反映する指標です。男性28kg未満、女性18kg未満は筋力低下の目安とされます。
歩行速度の低下
歩行速度が遅くなると、転倒リスクや外出頻度の低下につながります。通常歩行で1秒あたり1m未満が目安です。
身体活動量の低下
以下のいずれも、1週間に1回もしていない場合、フレイルの可能性が高まります。
- 軽い運動・体操をしているか?
- 定期的な運動・スポーツをしているか?
運動や外出の機会が減ると、筋力、心肺機能の低下が加速し、フレイルが進行しやすくなります。
フレイルのセルフチェック方法
フレイルは進行すると日常生活機能の低下や転倒リスク増加につながるため、早期に兆候を自覚することが重要です。日常生活で取り組めるセルフチェック方法として、簡単に実施できる評価がいくつかあります。
握力
家庭用の握力計があれば簡単に測定できます。数値の低下はフレイルのサインです。
歩行速度
普段通りに歩いて、決めた距離(例:5m)を何秒で歩けるか測定します。歩行速度が遅い場合、身体機能低下のサインとなります。
ふくらはぎ
ふくらはぎの太さは、サルコペニア(筋肉量・筋力の低下)との関連で広く用いられています。 「指輪っかテスト」は、特別な器具を用いずに行えるチェック方法の一つです。両手の親指と人差し指で輪っか(指輪のような形)をつくります。輪っかにぴったり囲めない(隙間ができる)場合は、ふくらはぎ周囲が小さく、筋肉量が低い可能性があります。フレイルやサルコペニアのリスクが高まっているかもしれません。輪っかがちょうど合う/囲める場合は、基本的な筋肉量は保たれている可能性がありますが、定期的にチェックすることが大切です。輪っかよりふくらはぎが大きい場合、一般的には筋肉量が十分と考えられますが、活動量や疲労感など他の項目も併せて評価しましょう。
セルフチェック
フレイルは身体面だけでなく、精神的・社会的な側面も含まります。以下のような問いに答えてみることも有用です。
- 最近外出の回数が減っていませんか
- 食事を一人で取ることが多くなっていませんか
- 疲労感や活力の低下を感じますか
このようなセルフチェックを通じて、身体・生活機能の低下に本人が早期に気づくことが、フレイル予防の第一歩となります。
「フレイル」で気をつけたい病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「フレイル」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは、骨・関節・筋肉・神経などの運動器の障害により、移動機能が低下した状態を指します。加齢による筋力低下や関節疾患、脊椎の変形などが主な原因で、歩く速度が遅くなる、立ち上がりがつらくなる、つまずきやすくなるといった症状が現れます。ロコモが進行すると活動量が低下し、フレイルや要介護状態へ移行しやすくなります。
対処法としては、下肢筋力を中心とした運動療法や、関節への負担を減らす生活指導が基本です。症状や原因に応じて、痛み止めの使用やリハビリテーションが行われることもあります。歩行が不安定になった、転倒が増えた、階段の昇降が困難になった場合は、早めの受診が望まれます。受診先は整形外科が適しています。
サルコペニア
サルコペニアは、加齢や低栄養、身体活動量の低下などを背景に、筋肉量や筋力が低下した状態です。フレイルの中核をなす要素の一つで、握力低下や歩行速度の低下、疲れやすさなどが特徴です。進行すると転倒や骨折のリスクが高まり、日常生活動作にも支障をきたします。
治療の基本は、十分なたんぱく質摂取と運動療法の組み合わせです。特に下肢や体幹の筋力トレーニングが重要とされます。体重減少や筋力低下が目立つ場合、また「以前より歩くのが遅くなった」「ペットボトルのふたが開けにくくなった」と感じた場合は、医療機関での評価が勧められます。内科、老年内科、リハビリテーション科などが相談先となります。
認知症
認知症とフレイルは相互に関連しており、フレイル状態にある方は認知機能低下を起こしやすいことが知られています。記憶力や判断力の低下により外出や活動が減ると、身体機能の低下が進み、フレイルが悪化する悪循環に陥ることがあります。
認知症の対処には、原因疾患に応じた薬物療法に加え、生活環境の調整や運動、社会参加の維持が重要です。物忘れが増えた、日常生活でのミスが目立つ、転倒が増えたといった変化がみられる場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。受診科は、もの忘れ外来、脳神経内科、精神科、老年内科などが適しています。
「フレイル」で気をつけたい体調不良・体の不調
食欲不振
食欲不振は低栄養を招き、筋肉量や体力の低下につながる重要なサインです。加齢による味覚の変化や消化機能低下、服薬の影響、抑うつ状態などが原因となることがあります。食事量が減った状態が続くと、サルコペニアやフレイルが進行しやすくなります。
対処としては、食事内容の工夫や食事回数の調整が基本ですが、体重減少を伴う場合や原因がはっきりしない場合は医療機関での評価が必要です。内科や消化器内科が主な相談先となります。
疲労感
「十分休んでも疲れが取れない」「以前より活動後の疲労が強い」といった疲労感も、フレイルの初期症状としてよくみられます。筋力低下や活動量減少、睡眠障害、慢性疾患の影響などが背景にあることがあります。
軽度であっても長期間続く場合は、生活習慣の見直しだけでなく、基礎疾患の有無を確認することが重要です。内科やかかりつけ医への相談が適しています。
握力低下
握力低下は全身の筋力低下を反映する指標で、フレイルやサルコペニアの重要なサインです。日常生活では、物を持ちにくい、家事がつらいといった形で自覚されることがあります。
対処には、筋力トレーニングや栄養改善が有効です。急激な低下や左右差がある場合は、神経疾患などの可能性も考慮し、医療機関での評価が勧められます。内科や整形外科が受診先となります。
「フレイル」を予防するには?
フレイル予防の基本は、運動・栄養・社会参加の3つをバランスよく保つことです。ウォーキングや筋力トレーニングを無理のない範囲で継続し、たんぱく質を意識した食事を心がけましょう。十分な睡眠と、ストレスをため込まない生活も重要です。人との交流や趣味活動を続けることは、身体機能だけでなく認知機能の維持にも役立ちます。
「フレイルの診断基準」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「フレイル」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
フレイルかどうか確認する方法はありますか?
木村 香菜 医師
フレイルはJ-CHS基準などを用いて評価されます。指輪っかテストや握力測定などの簡易チェックも目安になります。
フレイルの5つの評価項目は何でしょうか?
木村 香菜 医師
体重減少、疲労感、筋力低下、歩行速度低下、身体活動量低下の5項目です。
フレイルになりにくいBMIの基準はありますか?
木村 香菜 医師
高齢者ではBMI20~24程度が目安とされ、やせすぎはフレイルのリスクとなります。
親がフレイル予備軍かどうか診断してもらうには何科を受診したら良いですか?
木村 香菜 医師
まずはかかりつけ医や内科、老年内科への相談が適しています。
フレイルで寝たきりにならないためには何歳頃から予防すべきでしょうか?
木村 香菜 医師
50代頃から生活習慣を意識し、運動や栄養管理を行うことが望ましいです。メタボリックシンドローム、高血圧、糖尿病などの生活習慣病の予防と管理を通じて、脳卒中、心臓病、腎臓病のリスクを減らし、または重症化を防ぐことが60歳~65歳以降のフレイルの予防につながります。
まとめ フレイルの診断基準は5項目ある!
フレイルは、「年齢のせい」と見過ごされがちですが、明確な診断基準に基づいて評価できる状態です。日本では、体重減少、疲労感、筋力低下、歩行速度の低下、身体活動量の低下という5項目からなる診断基準(J-CHS基準)が用いられています。
フレイルは放置すると、転倒や要介護、認知機能低下などにつながるリスクがありますが、診断基準を正しく理解し、早い段階で対策を始めることで進行を防ぐことが可能です。体重や活動量、歩行や筋力の変化に注意し、気になる点があれば医療機関へ相談することが、健康寿命を延ばす第一歩となります。
「フレイル」で考えられる病気と特徴
「フレイル」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
整形外科系の病気
- ロコモティブシンドローム
- サルコペニア
脳神経内科系の病気
- 認知症
- 軽度認知障害
内科系の病気
- 低栄養
- 肥満
精神科系の病気
フレイル状態は、上記の病気と密接に関係しています。診断基準ならびにセルフチェックをして、早期発見と対策につとめましょう。
「フレイル」に関連する症状
「フレイル」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
フレイルでは筋力低下や身体機能の衰えが進むため、日常生活の中でさまざまな不調として現れることがあるのが特徴です。




