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「ロコモティブシンドローム」の自覚症状・原因・予防法はご存知ですか?

 公開日:2023/06/02
「ロコモティブシンドローム」の自覚症状・原因・予防法はご存知ですか?

ロコモティブシンドロームとはロコモとも呼ばれ、近年注目されている疾患の1つです。

立ったり、歩いたりする運動機能が低下している状態を指し、移動に助けが必要なため介護が必要になる場合もあります。

介護と聞くと高齢者のイメージがあると思われますが、実は若いうちから予防行動を取ることが大切といわれています。

腰や膝が痛い、階段よりエスカレーター・エレベーターを選ぶなどに心当たりがある方はロコモ予備軍かもしれません。

この記事では、ロコモの症状・原因・受診・予防法について解説していきます。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

ロコモティブシンドロームの症状と原因

ビジネスマン

ロコモティブシンドロームとはどのような病気でしょうか?

ロコモティブシンドロームは通称、ロコモと呼ばれており運動機能が低下した状態のことです。運動器は骨・筋肉・関節・靭帯・神経などから構成されていますが、病気などにより筋力が低下すると転倒・骨折をしやすくなります。
運動機能が低下すると、立つ・座る・歩くといった移動動作に助けが必要となり、自立した生活が難しくなります。高齢化が進む日本において介護は深刻な問題となっていますが、介護が必要になった原因の1位は高齢による衰弱・骨折や転倒・関節疾患といった運動器の障害です。
つまりロコモは、介護が必要になる危険性が高い状態ともいえます。実際の寿命とは別に、介護を必要とせず自分の力で日常生活を送れる期間を健康寿命といいます。この健康寿命を伸ばすためにロコモの予防が重要です。

どのような症状がみられますか?

ロコモは運動機能が低下してきた状態を指すため、ロコモ度テストを実施して判定します。ロコモ度テストは、ロコモが始まっているロコモ度1・ロコモが進行しているロコモ度2・進行して社会生活に支障が起きているロコモ度3に分類されます。
テストは立ち上がりテスト・2ステップテスト・ロコモ25の3つです。立ち上がりテストは高さ40cmの台に腰かけて反動をつけずに立ち上がれるかどうかを測定します。出来るだけ大股で2歩歩いてその距離を測るのが2ステップテストです。
最後のロコモ25は25の質問に回答して身体や生活の状態を調べるものです。ロコモ度1・2・3のどの段階にも該当しない場合はロコモではありません。心配な方はテストを受けてみてください。

ロコモティブシンドロームは何歳から注意が必要ですか?

ロコモは加齢による運動機能不全だけでなく、疾患によっても起こり得ます。疾患によるロコモとは、膝前十字靭帯損傷・膝半月板損傷・脳の障害や病気などが原因のものです。
疾患によるロコモは何歳でもあり得るため、異常を感じたら出来るだけ早い段階で受診をすることが重要です。加齢によるロコモは40代から注意が必要といわれています。
人間の筋力や骨密度は30歳前後でピークを迎え、その後ゆっくりと低下していくのですが、50歳を過ぎると急激な低下に加えて、怪我・病気が重なるためロコモのリスクが一気にあがります。そのため、40代を迎えたらロコモに注意が必要です。

ロコモティブシンドロームの原因を教えてください。

ロコモは生活習慣と深く関係があり、加齢による筋力の衰えを加速させる原因を作り出しています。具体的には、運動不足・肥満・痩せ過ぎ・身体の痛みや不調の放置・外出機会の低下が挙げられます。
その他には、怪我・障害も原因の1つです。特に骨粗鬆症・変形性関節症・変形性脊椎症などの運動器疾患はロコモのリスクが高くなるため要注意です。

ロコモティブシンドロームの受診の目安と受診する科

カウンセリング

ロコモティブシンドロームに自覚症状はありますか?

ロコモは身体の状態を指す疾患のため、自覚症状が出ている場合はロコモが進行していることが多いです。具体的には、歩くとすぐに疲れる・階段が登りにくい・つまずく・転びやすい・椅子から立ち上がりにくい・重い荷物を持つとすぐに疲れるといったものがあります。
ロコモ度テストは項目が多いため自分自身で確認することが難しい場合は、日本整形外科学会が紹介しているロコモチェックがおすすめです。7つの質問に回答するだけで誰でも簡単にロコモかどうか診断できるので気になる方はチェックしてください。

受診を検討する目安を教えてください。

ロコモ度テストを用いた住民調査では、ロコモと診断できるロコモ度1以上の方が推定4,590万人にのぼるとわかりました。日常生活に支障がなくとも、運動習慣・運動機会が減っている現代においてすでにロコモになっていることは少なくありません。
1度ロコモ度テストを実施してみて、ロコモ度2以上の場合は専門医の受診をおすすめします。ロコモ度1でも、痛みを伴っている場合は受診を検討してください。

ロコモティブシンドロームを疑う場合は何科を受診しますか?

ロコモチェックやロコモ度テストを行って、ロコモかもしれないと思ったら整形外科を受診してください。病院での診断は問診・身体検査の他、必要に応じて運動器のレントゲン検査を行いより詳しく原因を調べます。
運動器の病気があれば病気の治療を行い、疾患や障害が原因であれば他科の受診が必要です。まずは、整形外科を受診して原因を特定することが大切です。

治療方法を教えてください。

ロコモの治療は進行度や症状によって異なりますが、痛みがあるかないかで大きく分けられます。痛みがある場合はまず痛みを抑えることが最優先です。安静・薬物療法・装具療法を用いて痛みを取り除きます。
これらの保存療法を行っても痛みが継続する場合やすでに日常生活に著しい支障がある場合は手術が適用されることもあります。例えば、変形性膝関節症では半月板や軟骨が損傷されて歩行困難に陥る痛みに達した場合は手術が必要です。
その他腰部脊柱管狭窄症が進行すると下肢の痛み・しびれに加えて下肢筋力低下・知覚鈍麻・膀胱直腸障害が生じるため、手術適用になります。痛みがない場合は、ロコトレと呼ばれる運動療法が有効です。
ロコトレは片足立ちとスクワットの2種類のトレーニングであり、自分のレベルに合わせて安全に行えます。また、筋肉や骨を丈夫にするために食事療法も大切な治療の1つです。

ロコモティブシンドロームの予防と放置するリスク

ストレッチ

ロコモティブシンドロームは治りますか?

ロコモの特徴として回復可能であることが挙げられます。たとえロコモと診断されたとしても、正しい治療を行えば不安なく歩けるようになります。
原因は何かを見極めて、状態に合った対処方法が大切です。そのため治療は、薬物療法・運動療法・食事療法を組み合わせて行われることがほとんどです。
運動療法・食事療法は自身の生活習慣が鍵となるため、ロコモを治すためには生活習慣の見直しが大切といえます。

予防する方法を教えてください。

ロコモの予防には、毎日の運動習慣とバランスの良い食事が1番有効です。毎日の運動習慣といっても、ジョギング・ジム・何種類もの筋トレのようなハードな運動は必要ありません。まずは日常生活の中で意識的に動くことから始めてください。
エレベーターではなく階段を使用する・散歩に出かける・スクワットを3回だけやるなどの小さなことで構いません。日常生活の些細な動作を増やすだけで1日の運動量はあがります。3日坊主にならず毎日続けることが重要であるため、自分に合った運動を行うと良いです。
また、健康は食べ物で決まるといっても過言ではありません。太り過ぎ・痩せ過ぎを防ぐためにもバランスの良い食事をとって、内面からの健康を意識しましょう。

ロコモティブシンドロームを放置するとどうなりますか?

ロコモが進行すると、寝たきりなど介護度が高くなることが予想されます。ロコモと判定された時点で寝たきり予備軍となるため、早めの対処が大切です。腰痛・膝痛・運動器の怪我の発症はロコモの大きな要因になります。
結果として、歩く・動くことが大変になればロコモに該当し、移動の機会が減ることで更に筋力の低下を招きます。悪化すると、動くことに対して転倒するのではないか・痛みが増すのではないかという思いから、精神的な症状も出現するかもしれません。
心身の機能が低下すれば、寝たきりのリスクは上昇します。要介護の1歩手前の段階で速やかに受診・治療を行いましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

現代は家電の発達・公共交通機関の発展・宅配事業の拡大・テレワークの拡大などにより、最低限の移動で生活ができるようになりました。子どものロコモや20代・30代のロコモもじわじわと増えています。
健康寿命を伸ばすために、若いうちから意識的に動く機会を作り出すことが大切です。簡単なロコトレから始めてみてはいかがでしょうか。

編集部まとめ

ジョギングする女性
ロコモティブシンドロームの症状・受診・予防法について解説しました。下半身に痛みを感じたり、動きにくいと思ったりしたら1度ロコモ度テストを行ってみてください。

ロコモ度1に該当した場合は整形外科の受診を検討しましょう。ロコモの予防は、健康寿命を伸ばして、自立した生活を送るためにも、大切なことです。

年をとってから予防するのではなく、若いうちから動く習慣を身につけて、ロコモを予防しましょう。

自分の足で色々な場所に出かける楽しみを続けられるような身体作りを目指してください。

この記事の監修医師