「風呂上がりの血圧」はどうなるかご存知ですか?”ヒートショック含むリスク”も医師が解説!

風呂上がりの血圧はどうなるかご存知ですか?メディカルドック監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
お風呂と血圧の関係性は?
お風呂に入る際の血圧の変動について解説いたします。
入浴で血圧が変動する仕組み
入浴時の血圧などの変動について下に示します。
| 段階 | 血圧の変化 | 変化する理由 |
|---|---|---|
| 1:寒い脱衣所・浴室へ入る | 上がる | 体温を保つために体が血管を収縮させるから |
| 2:湯船につかる | 上がる | ・体が温まる刺激によって、交感神経が活性化するから ・水圧によって血管に圧力がかかるから |
| 3:湯船につかり続ける | 下がる | ・体が持続的に温まり、血管が広がるから ・交感神経のはたらきがゆるやかになるから |
| 4:湯船から出る | 上がる/下がる | ・上がる:温かい湯船から出て気温が大きく下がるから ・下がる:水圧が無くなり、血管が広がるから |
とくに冬は部屋と脱衣室・浴室の温度差が大きいため、血圧の変動も大きくなりがちです。
お湯の温度や入浴時間は血圧に影響を与える?
お湯の温度と入浴時間が、血圧に影響する可能性はあります。
たとえば、熱い湯船(42℃以上が目安)は交感神経を強く刺激して血管を収縮させやすいため、血圧も上がりやすくなります。また、長すぎる入浴時間が心臓に負担をかけ、血圧の変動に影響する可能性もあるでしょう。
年配の方や高血圧のある方は、血圧の変動が起こりやすいため注意が必要です。
風呂上がりに血圧はどのくらい下がる?
風呂上がりの血圧は、一時的に下がるケースが多く見られます。ここでは、具体的な低下の目安や個人差について解説します。
入浴後は一般的にどのくらい血圧が下がる?
入浴後の血圧変動については個人差があり、「一般的にこのくらい下がる」と医学的に断言することは困難です。
入浴後に収縮期血圧(しゅうしゅくきけつあつ:上の血圧)が一時的に15~30mmHgほど下がったという調査報告があります。
この報告のみで血圧の変動を断言することはできません。基本的には年齢や体質によって異なり、個人差があると考えておきましょう。
入浴前後の血圧の変動に体調・年齢による差はある?
基本的に、若い方よりも高齢者のほうが、大きく血圧が変動する傾向があります。高齢者の方が動脈硬化が強く血管の伸展性の低下があり、入浴によって体温が上がった際に血圧のバランスをとる機能も落ちていることが影響している可能性が考えられます。
また、血圧をコントロールする交感神経は、体調によってもバランスが変化します。疲労が溜まっている時や睡眠不足の時は交感神経と副交感神経のバランスが崩れやすいため、通常と血圧の変動に違いが出る可能性は考えられるでしょう。
風呂上がりに血圧が下がりすぎる・低血圧になる場合は?
風呂上がりに低血圧になると、脳への血流が一時的に不足してふらつきや気持ち悪さ、意識の消失などが起こる可能性が考えられます。風呂から上がって直後に収縮期血圧が約30mmHg下がることもあり、これは立ち上がった時に血圧が急激に下がる「起立性低血圧」と似た状態です。
年齢が上がると風呂上がりの血圧変動が大きくなるため、立ち上がった際にふらついて転倒したり、湯船で倒れた際におぼれたりするリスクが高まります。風呂上がりに不調を感じたら、無理に動かずにその場でゆっくりと座って休むようにしましょう。浴室に「呼び出しボタン」があれば、ご家族の助けを呼ぶのもよい方法です。
風呂上がりに血圧が高くなるケースとは?
一般的に、風呂上がりは血圧が下がる場合が多いです。ただし、条件次第では逆に高くなる可能性もあります。どのような状況で血圧上昇が起こるのかを見ていきましょう。
急な立ち上がり・脱水・水分不足
入浴前後は血圧や血流の急な変化が起こりやすく、脱水状態ではこの変動がさらに大きくなる可能性があります。一般的には血液の元となる水分が減少するため血圧は下がる傾向にありますが、場合によっては上がる可能性も考えられます。
リスクを下げるため、お風呂の温度はややぬるめ(目安は38~41度)に設定する、水分補給をしっかりするなどを心がけましょう。
寒暖差による血管収縮反応(ヒートショック)
気温の急変に体がついていけず、血圧が乱高下して循環器系に深刻なダメージを与える現象を、ヒートショックといいます。一般的には、風呂に入る前に、暖かい居室から寒い脱衣所や浴室に移動したタイミングで起こるケースが有名です。
ただし、入浴を終えて温かい湯船から寒い脱衣所へ出るときも、入浴前と変わらない程度の温度差が生じる場合があります。そのため、風呂上がりにも血圧が上昇する危険性があるといえるでしょう。
高血圧の方が注意すべき入浴環境
高血圧の方は、健康な方に比べて血管への負担がかかりやすく、血圧変動のリスクが高くなります。とくに、以下の環境に注意しましょう。
- 浴室が温まっておらず、ヒートショックが起こりやすい「一番風呂」
- 血圧を上げやすい「熱すぎるお風呂」
- 心臓の負担が大きい「全身浴」
ご自身が危険な入浴方法を実践していないか、一度確認してみてください。
お風呂上がりに血圧測定しても良い?
「お風呂上がりは数値が良いから」と血圧を測りたくなるかもしれませんが、基本的には入浴直後の測定はあまりおすすめしません。
入浴直後の血圧測定は避け、1時間後以降 10〜30分後が目安
入浴直後の血圧は、入浴で体が温まって血管が拡張し、一時的に低くなっています。この状態で血圧を測ると、通常よりも低い数値が出やすくなります。もちろん、体調が悪いなどの理由がある場合には血圧を測定して記録しておき、主治医に伝えることも大切です。
入浴後に測りたい場合は、衣服を身に着けて水分を補給し、体調を落ち着けてからにしましょう。最低でも1時間以上経ってからにすることをおすすめします。
ただし、通常よりも血圧が低めに出る可能性は高いため、血圧の記録には入浴直後の測定であることを必ず記載するようにしてください。
血圧測定前は安静にして水分補給を行う
正確な血圧を測るには、体調を整えることも欠かせません。
入浴後は、汗をかいて脱水傾向にあるため、まずはコップ1杯の水や麦茶などで水分を補給します。その後、椅子に座って1〜2分間安静にし、呼吸を整えてから血圧を測りましょう。
朝晩の定期測定と入浴後で血圧を比較するメリットは?
それぞれの血圧を比較すると、入浴が自分の体に与える負荷を確認できます。
入浴後の血圧が下がりすぎる場合には、「長湯しすぎている」「お湯が熱すぎる」など、入浴方法の問題点が見えてきます。逆に上がっている場合は、「脱衣所が寒い」「湯冷めしている」など、入浴環境の見直しを検討してみましょう。
入浴と「血圧」の異常で気をつけたい病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、入浴と「血圧」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
起立性低血圧
起立性低血圧(きりつせいていけつあつ)は、横になったもしくは座った状態から急に立ち上がったときに血圧が低下して、脳の血流が不足する状態です。「脳貧血」とも呼ばれますが、体内の鉄分の不足によって起こる貧血とは関係なく、別の問題です。
風呂上がりに湯船から立ち上がるときは、以下2つの理由により起立性低血圧が起こりやすくなっています。
- 体にかかっていた水圧が無くなり、今までお湯に浸かっていた下半身に血液が移動するため
- 入浴によって血管が広がり、血圧が下がっているため
主な症状はめまいや立ちくらみ、気持ち悪さ、意識の消失などです。
めまいを感じたらすぐに低い姿勢をとり、頭を下げて安静にします。浴室で転倒すると硬い床で頭を打ったり、浴槽でおぼれたりする可能性があるため、危険です。
入浴のたびに症状が出る方は、速やかに内科や循環器内科を受診しましょう。
ヒートショック
ヒートショックは、温度が急にかわることで血圧が大きく乱れ、心臓や血管がダメージを受ける現象です。心臓や血管がダメージを受けると心筋梗塞や脳卒中などの重い病気になるリスクが高まるため注意が必要です。
ヒートショックを防ぐには、脱衣所や浴室を事前に温め、温度差をできるだけ減らしていきます。暖房を使う、入浴前にシャワーを出しっぱなしにする、服を脱ぐ前に湯船の蓋をあけておくなどして、温度差の起こりやすい浴室や脱衣所をあらかじめ温めるようにしましょう。
服を脱いだり浴室に入ったりしたときに激しい頭痛や胸痛、意識障害があらわれた場合は、心臓や脳に問題が起きている可能性があります。すぐに救急車を呼び、設備の整った医療機関で処置を受けましょう。
心筋梗塞
心筋梗塞(急性心筋梗塞)は、心臓の筋肉に酸素を送る太い動脈が完全に詰まって酸素や栄養が届かなくなり、心筋が壊死する病気です。代表的な症状は、胸が締め付けられるような激しい痛み、冷や汗、吐き気などです。
心筋梗塞は、血圧の急激な変動があると起こりやすくなります。入浴時は脱衣所や浴室に入った際と湯船に入った直後のタイミングで血圧が急激に上がりやすいため、心筋梗塞が起こりやすいのです。
もし心筋梗塞が起きた場合、一刻も早く血流を回復させる手術をする必要があります。疑わしい症状がある場合は迷わず救急車を呼び、設備の整った医療機関を受診しましょう。
狭心症
狭心症は、動脈硬化によって狭くなった心臓の血管に負担がかかることによって心臓に栄養が足りなくなり、胸の痛みを感じる病気です。部屋とお風呂場の温度差や熱すぎるお風呂などは心臓に負担をかけ、狭心症の発作を起こす要因となります。
安静にしたり、発作を抑える薬を使ったりすると症状は治まりますが、心臓の状態を悪化させないように血圧やコレステロールを適切な数値にコントロールする治療も欠かせません。
初めて胸の痛みが出た、入浴のたびに胸が苦しくなるなどの場合は、循環器内科を受診しましょう。安静にしていても痛みが続く場合は急性心筋梗塞の可能性もあるため、すぐに救急外来を受診してください。
脳出血
脳出血は、脳の中にある血管が破れて出血し、その周りの脳細胞が破壊される病気です。高血圧によって起こるケースが多く、入浴に関係する急な血圧の上昇は、脳出血を起こす原因となり得ます。脳出血が起こると、突然の激しい頭痛や嘔吐、片側の手足の麻痺、言葉が出ないなどの症状があらわれます。出血した場所や出血量によっては、意識を失うこともあります。
医療機関では、血圧管理や脳の腫れの予防、場合によっては脳を圧迫する血腫を取り除く手術などをおこないますが、後遺症が残るケースも少なくありません。気になる症状があらわれたらすぐに救急車を呼び、専門的な治療ができる脳神経外科を受診しましょう。
くも膜下出血
くも膜下出血は、頭蓋骨と脳の間にある「くも膜」という部分に出血が起こる病気です。脳の表面にある動脈瘤(どうみゃくりゅう)というコブの破裂によって起こることが多いです。入浴時の急激な血圧の上習は、脳出血や心筋梗塞などと同様に、くも膜下出血のリスクも上昇させます。
くも膜下出血が起こると、「バットで殴られたような」「今までに経験したことのないような」などと言われる突然の激しい頭痛や嘔吐、意識消失があらわれます。
放置すると出血によって脳細胞が壊死していくため、再破裂を防ぐための緊急手術が必要です。気になる症状が出た場合は、すぐに救急車を呼び、設備の整った脳神経外科を受診しましょう。
腎不全
腎不全は、腎臓の機能が低下して老廃物を排出できなくなり、体内に不要なものや必要以上の水分が溜まる病気です。
脱水は急性腎不全の原因となる事もあるため、注意が必要です。また、慢性腎不全の方では高血圧の合併をしやすく、入浴前後での血圧の変動をきたしやすいため、気をつけなければなりません。
腎不全の代表的な症状は、尿量の減少、むくみ、倦怠感などです。医療機関では、腎不全に至った原因を取り除く治療や、場合によっては不足した腎機能を助けるために「透析」をおこないます。むくみや尿量の変化が見られる場合は、腎臓内科を受診しましょう。
入浴時の血圧変動を抑えるコツとは?
低血圧の人が入浴前後の血圧変動を抑えるコツ
低血圧の方は、入浴で血圧が下がると、起立性低血圧によるふらつきが起こりやすくなる可能性があります。そのため、下のポイントを意識してみましょう。
- 38~41℃と、ややぬるめのお風呂にする
- 水圧による負担を減らすため、半身浴にする
- 浴槽からはゆっくり立ち上がる
これらの対策をおこない、立ちくらみや意識消失のリスクを減らしていきましょう。
高血圧の人が入浴前後の血圧変動を抑えるコツ
高血圧の方の血圧の急激な変化は脳や心臓の負担となり、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞などのリスクを高めます。また、低血圧の方と同様に起立性低血圧が起こるリスクもあるため、血圧の上昇、下降両方を防ぐよう注意が必要です。
注意したいポイントは、以下のとおりです。
- 脱衣所や浴室をあらかじめ温めて、温度差を減らす
- かけ湯をして、温かいお湯に体を慣らしてから入浴する
- 38~41℃と、ややぬるめのお風呂にする
- 水圧による負担を減らすため、半身浴にする
- 浴槽からはゆっくり立ち上がる
大きな温度変化や脱水は避け、脳や心臓への負担を減らすように心がけましょう。
「風呂上がりの血圧」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「風呂上がりの血圧」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
お風呂上がりの血圧は上がりますか?下がりますか?
伊藤 陽子(医師)
お風呂上がりの血圧は、浴室の環境や湯温、入り方によってどちらにも変動する可能性があります。
一般的にはお風呂上がりは体が温まって血管が広がり、血圧は下がるケースが多くみられます。ただし、脱衣所が寒い場合や熱いお湯に入った直後などは、交感神経が刺激されており、通常よりも一時的に上がる可能性もあるでしょう。
いずれにせよ、血圧の急激な変化は、脳や心臓、血管に大きな負担をかける可能性があります。この記事で紹介した方法を心がけ、体に負担の少ない入浴をおこなってみてください。
お風呂上がりに血圧を測定しても大丈夫でしょうか?
伊藤 陽子(医師)
測定すること自体に、害はありません。ただし、入浴後の血圧は下がっているケースが多いため、普段と異なる数値となる可能性があります。
血圧は、毎日同じ条件での測定が望ましいため、日によって入浴前・入浴後の条件が異なると、家庭での正確な血圧を把握できません。
基本的に、夜の血圧は寝る前に1~2分安静にしてから測るのが望ましいです。入浴から時間がたたずに血圧測定・就寝する日は、入浴後すぐであることを血圧の記録にメモしておくとよいでしょう。
入浴後の急激な血圧低下を防ぐにはどんな対策がありますか?
伊藤 陽子(医師)
以下の対策をおこなってみましょう。
・浴槽からはゆっくりと立ち上がる
・湯温は38~41℃と、ややぬるめに設定する
・肩まではお湯に浸からず、半身浴にする
血圧低下によるふらつきが起こりやすい方は、体調悪化時にすぐ対応できるようにご家族に声をかけてから入浴するのも大切です。また、浴室に手すりを設置するのも、転倒を防いで安全性を高める方法のひとつです。
湯あたりは入浴前後の血圧の変動が原因なのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
入浴前後の血圧変動が、湯あたりにつながることもあります。ただし、温泉に含まれる成分が原因で起こる可能性もあるため、すべての湯あたりが血圧変動によるとは限りません。
湯温が高い温泉、長湯などは、湯あたりが起こりやすくなります。とくに血圧に不安のある方は、水分をしっかり摂り、ご自身の体調に注意を払いながら入ることをおすすめします。
まとめ 風呂上がりの血圧は変化を抑えることが大切!
風呂上がりは、入浴によって一時的に血圧が下がるケースが多く見られます。ただし、入浴方法や環境によっては大きく上がることもあり、血管や心臓に大きな負担がかかるケースも少なくありません。
正しい知識を持ち、安全な入浴を心がけましょう。
「風呂上がりの血圧」で考えられる病気と特徴
「血圧」の異常で考えられる病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
入浴によって血圧が急激に変化すると、脳や心臓、血管への負担がかかり、大きな病気を引き起こす可能性もあります。とくに心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などをうたがう症状があらわれた際はすぐに救急車を呼び、設備の整った医療機関での治療を受けましょう。
「風呂上がりの血圧」の関連症状
「血圧」の異常で考えられる症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- めまい
- ふらつき
- 立ちくらみ
- 気持ち悪さ
- 吐き気
- 頭痛
入浴前後は、血圧の急激な変化によって体調悪化が起こりやすいときです。気になる症状があれば、早めに受診しましょう。
参考文献




