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入浴時の突然死に要注意! 約9割は65歳以上の高齢者 12月から2月の冬場に集中

 更新日:2023/10/19
鹿児島大学 入浴時の突然死の約9割は高齢者

鹿児島大学の研究グループは、「入浴時の突然死の検視をおこなった警察の協力を得て調査した結果、入浴時に起きた突然死の約9割が65歳以上の高齢者で、およそ半数が12月から2月の冬場に集中していた」ということがわかりました。この内容について甲斐沼医師に伺いました。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

研究グループが明らかにした内容とは?

鹿児島大学の研究グループが今回明らかにした内容について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

鹿児島大学の研究グループは、2006~2019年までの14年間に、鹿児島県内で入浴時に突然死した2689人についての調査をおこないました。調査は検視をおこなった警察の協力を得て実施しました。

調査の結果、年齢別の特徴を見ると、全体の約9割が65歳以上の高齢者であることが明らかになりました。また、発生しやすい時期について調べると、約半数のケースが12月から2月の冬場に集中していたことや、時間帯は午後4~8時が4割を占めていたことがわかりました。気温が低く1日の気温差が大きいほど突然死が起きやすいことも判明しています。突然死した人の状態別に見てみると、高血圧の既往症のある人が全体の4割以上を占めていました。鹿児島市の場合、入浴時の死亡リスクが高まるのは、最高気温が14.5度未満で最低気温が5度未満、そして1日の気温差が8度を超えたときでした。

研究グループは、高齢化に伴って今後もさらに増えることが予想されるとして、入浴の際は脱衣所と浴室の間の温度差をなくすことや、浴槽に入る前、心臓に遠いところから体に湯をかけることを呼びかけています。また、同居人と声を掛け合うことも訴えています。

入浴時の突然死を防ぐ取り組み例は?

入浴時の突然死を防ぐ取り組み例について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

鹿児島大学の研究グループは、入浴時の突然死を防ぐために、危険度を知らせる警戒情報を出すことも発表しています。11月から2月に、ホームページなどで毎日更新していくとのことです。鹿児島大学によると、毎日の気温をもとに入浴への注意情報を公表するのは全国初の試みです。

危険度は、県内で警察署がある19地域別に赤:警戒、黄:注意、青:油断禁物の3段階で示すことになり、当日と翌日分のアラートを午後4~5時頃に公開する予定です。入浴時の突然死について、鹿児島県では10万人あたりの死亡率が他県と比べて高い傾向にあり、2019年までの14年間に鹿児島県内で入浴時の突然死で亡くなった人は、同じ時期に交通事故で亡くなった960人の3倍近くに上ります。

研究グループは「警戒が必要な日は入浴を控えるほか、脱衣所や浴室の温度差をなくし、掛かり湯をするなど注意して入浴する目安になる。鹿児島で効果があれば、全国に展開できる可能性がある」とコメントしています。

発表内容への受け止めは?

鹿児島大学の研究グループによる発表内容への受け止めを教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

突然死の検視結果を保有する県警の協力を得た今回の鹿児島大学による疫学的調査は、鹿児島県内で起きた浴室内突然死数千件の検視結果を解析した画期的な研究であると考えられます。

日中の最高気温と最低気温の差が大きい日、あるいは脱衣所と浴室、浴槽内の湯温との差などによって、高齢者を中心に突然死が多く発生していることを突き止められました。こうした突然死は、激しい温度差によって血圧が急激に変化し、心筋梗塞など致命的な状態を引き起こす「ヒートショック」が主な原因として考慮されています。

「警戒」の情報が出された日時においては、できるだけ入浴行為自体を回避する重要性が高いとともに、仮に入浴する際には脱衣所と浴室間の温度差をできるだけ少なくして心臓に遠い部分からかかり湯をする、そして同居している人と入浴する合図を掛け合うことなどを心がけてほしいと提唱しています。今回の取り組みは全国で初めてとのことなので、各種警戒情報を出すことで今後の入浴死の発生件数が減るなど、ポジティブな結果が得られることが期待されます。

まとめ

鹿児島大学の研究グループは、入浴時の突然死の検視をおこなった警察の協力を得て調査した結果、入浴時に起きた突然死の約9割が65歳以上の高齢者で、およそ半数が12月から2月の冬場に集中していたことがわかりました。今後も高齢化が進む中で、こうした入浴時の突然死の懸念も増えると考えられることから、こうした研究や取り組みには注目が集まりそうです。

この記事の監修医師