「中性脂肪を下げる薬」に痩せる効果はない?医師が副作用と市販薬との違いを解説!
公開日:2025/12/11

中性脂肪の薬はどんなものがあるのかご存じですか?メディカルドック監修医が薬の種類や副作用、市販薬やサプリの効果などを解説します。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。
目次 -INDEX-
血液中の中性脂肪が高いとどんな悪影響がある?
中性脂肪が高い状態が続くと、皮下脂肪や内臓脂肪などの体脂肪が蓄積しやすくなります。中性脂肪が高くなる原因の一つが消費エネルギーを摂取エネルギーが上回っている状態です。内臓脂肪が過剰に蓄積した状態は、肥満症やメタボリックシンドローム、生活習慣病などを発症するリスクを高めます。また、動脈硬化が進行しやすくなり、狭心症などの心疾患や脳血管疾患を発症するリスクも高まります。中性脂肪とは?コレステロールとの違い
中性脂肪とは脂質の一種です。体内に存在する脂質の大部分は中性脂肪です。食事に含まれる糖質や脂質、たんぱく質などの栄養素はエネルギー源になります。身体を動かすためにエネルギーが必要です。しかし、使われなかったエネルギーは中性脂肪に変換され体脂肪として蓄えられます。中性脂肪とコレステロールはどちらも脂質ですが、体内での働きが異なります。中性脂肪は身体を動かすエネルギー源になる・脂溶性ビタミンや必須脂肪酸の吸収を助ける・体温を維持するなどです。 コレステロールはエネルギー源にはなりません。コレステロールは細胞膜やホルモンや胆汁酸の材料になります。中性脂肪の数値が高いことによる健康リスクとは?
中性脂肪の数値が高くても自覚症状が現れることは少ないです。自覚症状がなくても中性脂肪が高い状態が続くと、肥満症やメタボリックシンドローム・脂肪肝・動脈硬化などを発症するリスクが高まります。また、中性脂肪が高すぎると急性膵炎を起こす場合があります。薬で中性脂肪を下げると痩せるのか?
薬で血液中の中性脂肪を下げても、体脂肪が減るわけではないため、痩せる効果はあまり期待できないと考えられます。中性脂肪の治療薬に体重減少効果はあるのか?
中性脂肪の治療薬は、血液中の中性脂肪濃度を低下させる作用があります。血液中の中性脂肪の濃度を下げても体脂肪を分解する作用があるわけではありません。中性脂肪の治療薬を服用するだけでは、体重減少効果は期待できないと考えられます。中性脂肪低下と肥満改善は関係あるのか
食べ過ぎは過剰なエネルギー摂取となり、体の中で消費されず余ってしまいます。体の中で使われずに余ったエネルギーは、中性脂肪に変換され、肝臓や体脂肪として体に蓄えられます。過剰なエネルギー摂取の食生活が続くと、体内の脂肪が増え、体重増加につながり肥満になりやすいです。 余分なエネルギーが中性脂肪に変換されると、まず血中の濃度が上昇し、次に体脂肪として蓄えられます。 中性脂肪の高値や肥満の改善には、食事制限や運動習慣の改善が必要です。摂取エネルギーより消費エネルギーが増えると、最初に血液中の中性脂肪が使われ、次に体脂肪が使われます。 体脂肪を1kg減らすには、7000kcal減らす必要があるといわれています。そのため、血液中の中性脂肪が低くなっても、すぐに肥満が改善されることは難しいでしょう。肥満を改善するには、適正な食事量や運動習慣の継続が必要です。中性脂肪を下げる薬の種類
中性脂肪を下げる薬はフィブラート系、EPA・DHA製剤、スタチン系など数種類の薬剤があります。フィブラート系薬
フィブラート系薬の成分は、フェノフィブラート・ベザフィブラート・ペマフィブラートなどがあります。 中性脂肪の合成を抑える働きや中性脂肪の分解を促進させる作用があります。EPA・DHA製剤
魚の脂などに含まれるEPA(イコサペンタエン酸エチル)・DHA(ドコサヘキサエン酸エチル)から作られている薬剤です。 肝臓からの中性脂肪の分泌抑制と、血中の中性脂肪を減らす作用があります。スタチン系薬
スタチン系薬は、コレステロールの合成を抑える治療薬です。しかし、中性脂肪の低下効果も多少あると報告されています。スタチン系薬剤にはアトルバスタチンカルシウム水和物、ロスバスタチンカルシウム、ピタバスタチンカルシウム水和物などがあり、薬剤の種類によって中性脂肪を減少させる効果は異なります。これらの薬剤は、主にLDLコレステロールを低下させる目的で使用するため、中性脂肪を下げるために使用することはあまりありません。中性脂肪の治療薬の副作用と注意点
中性脂肪の治療薬は妊婦・授乳婦・小児や合併症がある場合には使用しないこととされています。 高齢者では副作用が発現しやすいため、投与量などに注意が必要です。 また、副作用というのは内服した方すべてに起こるわけではありません。主治医の判断のもとで、副作用に注意をしながら治療が行われます。フィブラート系薬の副作用
薬の副作用として、肝機能値の上昇や腹痛、嘔気などの症状が現れ、膵炎を発症する場合があります。 また、腎機能低下やスタチン系製剤を併用している場合は、横紋筋融解症を起こすことがあります。現れる症状は筋肉痛や脱力感、筋肉が壊れ、ミオグロビン尿という赤褐色の尿がみられることなどです。 副作用の症状が現れた場合は速やかに主治医に相談しましょう。 薬を使用する注意点として、妊婦・授乳婦・小児には使用しないこととされています。また、胆石の既往・腎機能低下・肝障害がある場合は、胆石の形成や副作用の出現、肝障害を悪化させる可能性があるため、基本的には投与しないこととされています。EPA・DHA製剤の副作用
薬の副作用として、肝機能障害や黄疸、心房細動などが現れる場合があります。 また、腹部膨満感・発疹・悪心・腹痛・頭痛などが現れることがあります。 副作用の症状が現れた場合は速やかに主治医に相談しましょう。 薬を使用する注意点として、妊婦・授乳婦・小児には使用しないこととされています。また、出血している場合(尿路出血や硝子体出血など)は止血が困難になるため使用しないこととされています。スタチン系薬の副作用
薬の副作用として、肝機能障害や黄疸、発疹、嘔気、頭痛、貧血などの症状が現れる場合があります。 腎機能低下やフィブラート系薬剤などを併用している場合は横紋筋融解症を起こすことがあります。 副作用の症状が現れた場合は速やかに主治医に相談しましょう。 薬を使用する注意点として、妊婦・授乳婦・小児には使用しないこととされています。 また、腎機能低下や肝障害がある場合、腎機能や肝障害を悪化させるおそれがあるため、基本的には投与しないこととされています。市販薬やサプリに中性脂肪を減らす効果はある?
中性脂肪を減らす効果があるとされている市販薬やサプリが販売されています。 市販薬やサプリは、決められた用量を守った使用では、比較的安全とされていますが、副作用がないわけではありません。また、自己判断での使用になるため、健康被害を招く可能性もあり、使用する際は注意が必要です。中性脂肪が多い・高い人の処方薬と市販薬との違い
中性脂肪を下げる効果がある、市販薬と処方薬の主な違いは、効果の強さ・使用できる薬の種類などです。処方薬は医師の診断と処方が必要であるのに対して、市販薬は自分の判断で使用することができます。市販薬に比べて、処方薬は効果が強く、使用できる種類も多いです。市販薬は指示されている用量を守った使用では、比較的安全とされています。中性脂肪の数値が基準値よりかなり高い・中性脂肪の高値が続いている・メタボリックシンドロームや糖尿病などの生活習慣病を合併している場合は、動脈硬化の進行と心脳血管疾患発症の高リスクになります。市販薬を使用するのではなく、医療機関を受診しましょう。特定保健用食品・サプリ
中性脂肪を下げる効果があるとされている、特定保健用食品やサプリが販売されています。それらは、一般的に健康食品と呼ばれています。健康食品は健康の維持や管理のために使用されるものです。健康食品は病気を治すために作られてはいません。健康食品の中でも、特定保健用食品は国が安全性と有効性を認めたものです。サプリは国への届け出などは特に制度化されていません。特定保健用食品の効果については、食事や運動などの生活習慣を改善したうえで、使用すると中性脂肪を下げる可能性があると報告されています。中性脂肪を下げるためには、生活習慣の改善が基本です。特定保健用食品は補助的な役割です。それらを摂取するだけでは数値の改善は難しいと考えられます。「中性脂肪」の異常で気をつけたい病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「中性脂肪」に関する症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。脂質異常症(高脂血症)
脂質異常症とは、脂質の代謝が異常となっている状態です。診断基準は、中性脂肪(空腹時の採血で)150mg/dL以上、LDLコレステロールが140mg/dL以上、HDLコレステロールが40mg/dL未満です。脂質異常症は動脈硬化の進行リスクになります。主な原因は糖質や脂質などが多く、摂取エネルギー過多・アルコール多飲・肥満や運動不足などです。食事療法や運動療法を行い、改善しない場合や合併症の有無などに応じて薬物療法も併用します。健康診断などで中性脂肪・LDLコレステロールが高いと指摘されたら早めに一般内科を受診しましょう。肥満症
肥満症とは、肥満があり肥満が原因の合併症があるか、合併するおそれがある状態です。肥満症の診断基準は、BMIが25以上あり、脂質異常症や脂肪肝、高血圧など11項目の合併症のどれか1つがあてはまるか、内臓脂肪型肥満(腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上)がある場合です。肥満症の発症原因は食べ過ぎや運動不足だけでなく、ストレスや遺伝子などさまざまあると考えられます。肥満症は食事や運動習慣を改善し、減量することが基本的な治療法です。現体重から3%の減量で合併症の改善効果があるといわれています。 肥満があり脂質異常症や脂肪肝、高血圧なども指摘されたら、肥満症の可能性があります。生活習慣の改善に取り組み、早めに医療機関を受診しましょう。動脈硬化
動脈硬化とは、血管が硬くなった状態です。コレステロールが血管壁に沈着して血管が厚くなったり、血管内が狭くなることで起こります。動脈硬化は心疾患・脳血管疾患などの発症リスクを高めます。 動脈硬化の主な原因は、脂質異常症や高血圧、糖尿病などの生活習慣病や加齢、喫煙、飲酒などです。動脈硬化は血管を元に戻すことは難しいです。今より進行しないよう予防しましょう。食事療法や運動療法を行います。脂質異常症や高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を改善し動脈硬化の進行を予防します。健康診断などで中性脂肪の高値や血圧や血糖値の異常、メタボリックシンドローム、動脈硬化を指摘されたら、はやめに一般内科を受診しましょう。メタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪型肥満に加え、脂質代謝異常や高血圧・高血糖を合併している状態です。動脈硬化が進み、心疾患や脳血管疾患を発症するリスクが高くなります。中性脂肪が高い状態が続くと内臓脂肪が過剰に蓄積し、メタボリックシンドロームを発症する原因になります。メタボリックシンドロームを改善するために、摂取エネルギーの制限や運動不足を解消し、内臓脂肪を減らしましょう。健康診断でメタボリックシンドロームや中性脂肪、血圧、血糖値の高値を指摘されたら早めに一般内科を受診しましょう。狭心症
狭心症とは心臓への血液の流れが一時的に悪くなり、血液の供給が不足して起こります。動脈硬化が原因で発症することが多いです。歩行中などに前胸部や肩に痛みや締め付けられる感じが起こり、数分以内でおさまることを繰り返すのが特徴です。 狭心症の治療は主に薬物療法です。状態によっては手術を行います。また、生活習慣の改善や禁煙をするなど、動脈硬化の進行予防も行います。繰り返し起こる胸痛や胸部の圧迫感などの症状があれば早めに循環器科を受診しましょう。「中性脂肪」の正しい対処法・改善法は?
中性脂肪を下げるには、まずは食事や運動習慣の改善を行いましょう。薬に頼らない中性脂肪対策とは
薬に頼らずに中性脂肪を下げるには、まずは食事や運動など、生活習慣を改善しましょう。中性脂肪が高くなる原因は、食べ過ぎや飲み過ぎ、肥満、運動不足などです。食事や飲酒の制限や肥満の解消で中性脂肪を下げる効果が期待できます。コレステロール・中性脂肪を減らす食生活と生活習慣
中性脂肪を減らすには、食生活や生活習慣を改善しましょう。中性脂肪を減らすための食生活と生活習慣は、コレステロール値やメタボリックシンドロームなどの改善にも共通する点が多くあります。●中性脂肪を減らす食生活
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・適正なエネルギー摂取量にして、適正体重を維持する
適正なエネルギー摂取は、コレステロール値やメタボリックシンドロームの改善効果もあるとされています。
BMIが25以上ある場合は、今より摂取エネルギーが少なくなるように食事量や内容を見直しましょう。特に夕食の過剰摂取は過体重につながりやすいため、まずは夕食の改善に取り組むことがおすすめです。
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・糖質の過剰摂取をしない
糖質の過剰摂取は中性脂肪が高くなる原因になります。
ごはん、パン、麺などの主食は糖質を多く含む食品です。他にも菓子やジュースなどは果糖を多く含みます。主食の大盛りや、1食で主食を重ねて食べることは、糖質の過剰摂取になりやすいです。また、水分補給にジュースや糖入りのコーヒーなどを摂取することも、糖質の過剰摂取になるおそれがあります。エネルギーの過剰摂取になる場合もあるため、食べ過ぎや飲み過ぎないようにしましょう。
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・適正な飲酒量にする
アルコールはエネルギーを多く含み、過剰摂取では中性脂肪が高くなる原因になります。健康日本21では、1日の摂取目安は、純アルコール量で20g以下が推奨されています。
純アルコール量およそ20gの目安
種類 度数 量 ビール 5% 500mL 日本酒 15% 約180mL ワイン 14% 約180mL 焼酎 25% 約110mL
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・魚の摂取を増やす
魚にはn-3系脂肪酸という、中性脂肪を下げる効果がある脂肪が多く含まれています。魚の中でも脂肪が多い青魚の摂取がおすすめです。
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・エネルギー摂取を適正量にする
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・飽和脂肪酸、コレステロール、トランス脂肪酸を制限する
飽和脂肪酸は肉や乳製品、加工食品に多く含まれます。コレステロールを多く含む食品は卵や魚卵、レバーなどです。トランス脂肪酸は加工食品などに多く含まれています。
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・食物繊維を積極的に摂取する
食物繊維は野菜、海藻、きのこ、未精製の穀物(玄米や全粒粉など)などに多く含まれています。
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・動物性の脂や脂質の多い肉の摂取を控える
牛脂、ラード、バターなど、動物性の脂やバラ肉など、脂質の多い肉の摂取を控え、大豆や大豆製品を積極的に摂取しましょう。
ウォーキングなどの有酸素運動を習慣化することで、中性脂肪・コレステロールを減らす効果があるという報告があります。
「中性脂肪を下げる薬」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「中性脂肪を下げる薬」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
中性脂肪を下げる薬は何科に行けば処方されますか?
伊藤 陽子(医師)
健康診断などで、中性脂肪が高いと指摘されたら、一般内科を受診しましょう。すぐに薬を処方されることは少ないでしょう。まずは、治療の基本となる食事療法や運動療法など生活習慣の改善を行います。効果が不十分であったり、合併症がある場合に薬物療法を併用する場合があります。
中性脂肪の治療薬は何日服用したら効果が出ますか?
伊藤 陽子(医師)
中性脂肪の治療薬の効果が出る時期については、薬の種類などで異なります。おおむね4週間程度では、治療効果が発揮されていると考えられます。
・フィブラート系は、12週間で43%~48%程度の低下
・EPA・DHA製剤は、8〜52週間で14〜20%程度の低下
・スタチン系は、12週間で12%~19%程度の低下
と報告されています。
まとめ 中性脂肪の薬は食事・運動療法と合わせて使用しましょう
中性脂肪の治療の基本は、食事療法と運動療法です。中性脂肪を下げる薬を使用しても、食べ過ぎや飲み過ぎの生活習慣では薬の効果は十分に発揮されません。薬が開始になっても、食事療法・運動療法も合わせて行いましょう。「中性脂肪」の異常で考えられる病気
「中性脂肪」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。腎臓内科の病気
「中性脂肪」の異常で考えられる症状
「中性脂肪」から医師が考えられる症状は4個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。関連する病気
- 激しい腹痛
- 吐き気
- 発熱
- 低体温




