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健康診断の「平均血圧」はどのくらい?測定で分かる病気も医師が解説!

 公開日:2025/09/30
健康診断の「平均血圧」はご存じですか?測定で分かる病気も医師が解説!

血圧の平均値はどのくらいでしょうか?メディカルドック監修医が男女・年代・スポーツ選手の平均値をご説明します。また、異常値の場合の主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

血圧とは?

血圧は、血管内にかかる圧力のことです。血管の拍動によって血液が血管内を循環しているときに発生している圧力を指しています。その値は、手足など末梢の細い血管の抵抗の影響を大きく受けることが知られています。 今回の記事では、血圧とは、その平均値などについても詳しく解説します。

最高血圧

最高血圧は、いわゆる収縮期血圧のことです。上の血圧と呼ばれることもあります。 これは、心臓が最大限に縮まって血液が動脈へ押し出される際、血管の壁にかかる圧力を示します。

最低血圧

最低血圧は、いわゆる拡張期血圧のことです。下の血圧とも呼ばれることもあるでしょう。これは、心臓が最大限に広がって、身体に貯め込まれていた血液が心臓に戻ってくる際、血管壁にかかる圧力のことを指します。

血圧測定の基本的な流れ

血圧測定装置は、精度検定された水銀血圧計、アネロイド血圧計による聴診法が用いられます。精度検定された電子血圧計も可能であり、健康診断などではこちらがメインとなっているかもしれません。 血圧測定をする際には、安静な状態で行うことが大切です。背もたれ付きの椅子に足を組まず、数分間安静にしてからの計測が望ましいでしょう。 1〜2分の間隔を空けて、少なくとも2回測定することが理想的です。 安定した値を示した2回の平均値を、血圧値として登録します。 厚手のシャツや上着の上から血圧を測ることは避けます。また、厚地のシャツをたくしあげて上腕を圧迫することも望ましくありません。

平均血圧の求め方

平均血圧(mean arterial pressure(MAP))は、収縮期と拡張期からなる、一回の心周期における平均血圧です。平均血圧は、最高血圧から最低血圧を引いたものを3で除した数値を、最低血圧に足したものとして簡易的に近似されることが多いです。 式は、以下のようになります。
平均血圧=最低血圧+(最高血圧−最低血圧)/3
なお、健康診断などでは、血圧を二回測定した値を足して、2で除したものを平均値、と慣例的に呼ぶこともあると考えられます。

健康診断など一般的な検査の基準値・正常値となる「平均血圧」

血圧の診断基準は、現時点では年齢によっては変わりません。成人の場合、診察室血圧が140/90mmHg以上、家庭血圧が135/85mmHg以上で高血圧と判定されます。ここでは、年代ごとの平均的な血圧に関して、令和5年の国民健康・栄養調査報告から得られたデータをお示しします。
区分 収縮期血圧(上)(mmHg) 拡張期血圧(下)(mmHg) 平均血圧(MAP)(mmHg) 備考
男性 131.6 77.2 95.3 年齢とともに上昇傾向
女性 126.2 73.6 91.1 閉経後は上昇しやすい
60代 132.1 77.3 95.6 加齢による動脈硬化の影響あり
10代 約100-110 約60-80 81.7 成長期のため変動あり
スポーツ選手 109±11~138±7 57±12~92±10 90.8 筋力トレーニングを行ったアスリートは、持久力トレーニングを行ったアスリートよりも血圧が高い
※平均血圧(MAP)は以下の式で算出しています。
平均血圧=最低血圧+(最高血圧−最低血圧)/3
このように、判定基準は変わらなくても、平均値としては加齢や性別、運動習慣などで違いがみられることがわかります。

最高/最低血圧の差の平均は?

血圧の数値で、上と下の差を計算したものを脈圧と呼びます。 脈圧の平均値は、約40mmHgです。 脈圧が高い場合、つまり差が大きい場合、動脈硬化が進行している、または大動脈弁の狭窄や閉鎖不全の可能性があります。脈圧が50mmHg以上になると、心臓病や不整脈、脳卒中などのリスクが高まります。 通常は収縮期血圧の4分の1以下の脈圧の場合、低脈圧と呼ばれます。これは、心不全や心タンポナーデなど、心臓が十分な血液を送り出せない際に起こります。 このように、血圧の差は大き過ぎても小さ過ぎても、健康上の問題を示唆している可能性があるのです。

再検査が必要な血圧の値

ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

健康診断の血圧の異常値・再検査基準値

一般的に、以下の基準を超えると再検査の対象となります。 診察室血圧:140/90mmHg以上 家庭血圧:135/85mmHg以上 また、健康診断で160/100mmHg以上の場合には、要精密検査となります。無治療の場合は、早めに内科を受診しましょう。

血圧の異常で再検査・精密検査を受ける場合、何科が良いか

まずは内科、特に循環器内科の受診が推奨されます。緊急度が高いと判断される場合(例:180/110mmHg以上や強い頭痛・胸痛を伴う場合)は、できるだけ早めに医療機関を受診してください。 ホルモンの異常や血管の奇形などによる二次性高血圧も、高血圧の方の約1割を占めています。もしも二次性高血圧が疑われる場合には、採血検査や超音波検査、CT検査などが行われます。これらの費用は検査ごとに異なりますが、費用は保険診療が適用されるため、数千円〜1万円程度が目安と考えれば良いでしょう。

健康診断の「血圧」の異常で気をつけたい病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「血圧」に関する症状が特徴の病気を紹介します。どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

脳卒中

脳出血や脳梗塞を含む脳卒中は、高血圧が最大の危険因子です。血管が破れる、または詰まることで発症し、片麻痺・言語障害・視覚障害などが急に出現します。発症から時間が勝負となるため、突然の神経症状があれば直ちに救急要請をしましょう。再発予防には降圧薬の継続内服、減塩・禁煙・運動などの生活改善が欠かせません。

心筋梗塞

冠動脈が動脈硬化で閉塞すると、心筋に酸素が届かず壊死に至ります。前胸部の締めつけ感や放散痛、冷汗・呼吸困難が15分以上続く場合は緊急事態です。発症後はカテーテル治療や冠動脈バイパス術が行われ、再発予防として降圧治療・脂質管理・糖尿病コントロールが重要です。循環器内科での長期管理が必要です。

慢性腎臓病

腎臓は血圧調整にも関わる臓器であり、高血圧は腎機能を悪化させる大きな因子です。蛋白尿やむくみで発見されることもあり、進行すると透析に至る場合もあります。治療は血圧の厳格管理(130/80mmHg未満が目標とされることが多い)と減塩などが主となります。ACE阻害薬やARBは腎保護効果を持つため、第一選択として使用されます。腎臓内科での定期的評価が望まれます。

高血圧

診察室血圧140/90mmHg以上(家庭血圧135/85mmHg以上)で診断されます。多くは症状が乏しく「サイレントキラー」と呼ばれますが、脳・心・腎への合併症リスクを確実に高めます。一次予防のためには生活習慣改善(減塩・運動・節酒・禁煙)が基本で、必要に応じて降圧薬を追加します。内科や循環器内科での長期的な管理が推奨されます。

低血圧

収縮期血圧が90/60mmHg未満を指すことが多く、立ちくらみや全身倦怠感、失神を伴う場合は注意が必要です。多くは体質性で問題ありませんが、重度の脱水・内分泌疾患・心不全などが背景にあることもあります。水分・塩分摂取や弾性ストッキングが有効な場合があり、症状が持続する場合は内科で精査が必要です。

「血圧」の数値を指摘された時の正しい対処法・改善法は?

健康診断で血圧の異常を指摘された場合、まずは家庭血圧を1週間以上測定し、朝晩の平均値を確認しましょう。その上で医師に提示すると診断が正確になります。改善策の基本は、減塩(1日6g未満)、体重管理(BMI 25未満)、有酸素運動(週150分程度)、十分な睡眠、ストレスコントロールです。薬物療法は医師の判断に従いましょう。

血圧が平均より高い場合の対処法・改善策

130/80mmHgを超える場合は、動脈硬化の進行リスクが高まるとされます。食事では減塩や野菜・果物の摂取を意識し、アルコールを控えましょう。3か月以上の生活改善で効果が不十分な場合、降圧薬の導入を検討します。

血圧が平均より低い場合の対処法・改善策

症状がなければ大きな問題ではありませんが、めまい・失神がある場合は注意が必要です。水分・塩分補給、起立時にゆっくり立ち上がる工夫が有効です。薬の副作用が疑われる場合は主治医に相談してください。

「平均血圧」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「平均血圧」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

健康診断における血圧測定の平均値はいくつでしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

令和5年の国民健康・栄養調査報告によると、血圧の平均値は全体で128.6/75.1mmHgでした。年齢によって徐々に上昇する傾向があります。

血圧の正常値は年代や性別によって変わりますか?

木村 香菜木村 香菜 医師

成人の場合、血圧の正常値は年代や性別によって変わることはありません。

まとめ 健康診断の「平均血圧」は健康状態を反映する大切な指標!

健康診断で測定される血圧は、診察室140/90mmHg以上、家庭135/85mmHg以上で高血圧と診断され、基準は年齢によって変わりません。一方で統計的な平均値は年代や性別で異なり、加齢とともに収縮期血圧が上昇する傾向がみられます。 高血圧は脳卒中・心筋梗塞・腎臓病など重大な病気のリスク因子であり、低血圧も失神などの症状を伴えば注意が必要です。異常を指摘された場合は、家庭血圧を測定して記録を残し、生活習慣の見直しを行いながら、必要に応じて医師に相談してください。 血圧の異常は「サイレントキラー」とも呼ばれる重要なサインです。早めの対処と継続的な管理が健康寿命を延ばす大きな鍵となります。

「血圧」の異常で考えられる病気

「血圧」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

循環器系の病気

腎臓内科系の病気

内分泌内科系の病気

  • 原発性アルドステロン症

脳神経内科系の病気

高血圧の原因として考えられる病気や、高血圧がリスクとなる病気にはさまざまなものがあります。

「血圧」の異常と関連する症状・関連する症状

「血圧」の異常と関連している、似ている症状は5個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 頭痛
  • 動悸
  • ふらつき
  • 手足の麻痺
  • 失神
血圧の異常がある際、これらのような症状が現れることがあります。しかし、高血圧でも症状がないこともありますので、健康診断などで血圧の異常を指摘された場合は放置しないようにしましょう。

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