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健康診断で「尿蛋白」と言われたら何が「原因」かご存知ですか?医師が徹底解説!

 公開日:2025/09/12
健康診断で「尿蛋白」と言われたら何が「原因」かご存知ですか?医師が徹底解説!

尿蛋白の原因はなんなのかご存じですか?身体はどんなサインを発している?メディカルドック監修医が考えられる原因や対処法、検査で分かる病気・指摘された場合何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

伊藤 陽子

監修医師
伊藤 陽子(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

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健康診断で調べる尿蛋白

尿検査は、とても簡単に、体の負担なく行える検査です。そのため、尿検査は、ほぼどの健康診断でも行われます。簡単にできる検査ですが、尿検査だけでさまざまなことが分かります。今回は尿検査で蛋白が陽性となった時にどのような病気が考えられるか解説します。

尿蛋白(タンパク尿)とは?

腎臓にある糸球体というろ過装置で血液をろ過して尿がつくられます。この糸球体が何かの理由で傷つくと、本来ではほとんど尿にこし出されない蛋白が多く漏れ出てしまうようになります。蛋白が一定以上尿に出ていることを尿蛋白と言います。正常でもごく少量の蛋白が尿にみられますが、腎臓に異常があると、尿に出る蛋白量が増加します。 尿定性検査では、尿中の蛋白濃度を調べます。
  - ± + 2+ 3+ 4+
尿蛋白濃度 15mg/dL未満(g/dL) 15mg/dL以上30mg/dL以上 100mg/dL以上300mg/dL以上 1g/dL以上

尿蛋白は健康診断の何の検査で知ることができる?

尿を提出し、試験紙法で尿蛋白濃度を調べます。数分程度で結果が出ることが多いです。簡単な検査ですので、多くの医療機関で行うことができます。特に尿検査を行うことが多い診療科は、内科、泌尿器科や産科などです。検査費用は、通常の尿検査のみで約80円程度(3割負担)です。しかし、この検査費用に加えて初診・再診料、外来迅速検査加算などがかかる場合が多く、医療機関によっても費用が異なります。

健康診断で尿蛋白(タンパク尿)が陽性だとどんな危険性がある?

腎炎や生活習慣病、膀胱炎などで尿蛋白が陽性になりやすいです。尿検査は簡単にできる検査ですので、異常がみられた時に最初に気が付きやすいです。尿蛋白が陽性である場合、腎臓の病気が最も考えられます。早めに内科・腎臓内科を受診しましょう。腎炎や腎臓病は放置することで、腎機能が低下してしまうこともあります。早めに診断・治療につなげることが大切です。

尿蛋白の結果の見方と再検査が必要な尿蛋白の結果

尿検査の結果で、どのような場合に再検査を受けなければならないのでしょうか?

蛋白尿の基準値

尿蛋白の基準値は上の表に示していますが、一般的に尿蛋白濃度が30mg/dL以上で陽性となります。±(プラスマイナス)は尿蛋白濃度が15mg/dL以上です。この濃度は正常である事も多いですが、希釈された薄い尿が出た場合には、本来は異常である可能性もあり、注意が必要です。

尿蛋白陰性・ー(マイナス)

尿蛋白(-)(マイナス)は、蛋白濃度が15mg/dL未満です。通常は正常であることが多いです。

尿蛋白弱陽性・±(プラスマイナス)

尿蛋白(±)(プラスマイナス)は蛋白濃度が15mg/dL以上30mg/dL未満を示します。正常でも±となる事はあります。しかし、希釈された薄い尿の場合には、異常であってもプラスマイナスの判定となる事も少なくありません。このため、定量検査で尿蛋白の濃度と尿中のクレアチニンの濃度の比を用いて一日当たりの尿蛋白量を推算します。この検査で尿蛋白量が0.15g/gCr以下であれば正常です。

尿蛋白陽性・+(プラス)

尿蛋白濃度が30mg/dL以上の場合が、尿蛋白(+)(プラス)です。この判定である場合、腎臓疾患がある可能性が高いため、腎臓内科を受診しましょう。

健康診断後の再検査が必要な尿蛋白の結果

尿蛋白陽性(+)以上の場合には、腎疾患が隠れている可能性が高く、詳しく検査をする必要があります。また、尿蛋白±でも、腎疾患の可能性が否定できないため再検査をすることがすすめられます。 そのため、尿蛋白が±以上の場合には再検査を行いましょう。

健康診断で尿蛋白と指摘された場合に多い原因と改善方法

腎臓病が原因で尿蛋白と診断された場合の改善方法

尿蛋白陽性の原因が腎臓病と診断された場合、原因により治療は異なります。例えば、糖尿病が原因の腎臓病であれば、糖尿病の治療をする必要があり、腎炎が原因の腎臓病であれば腎生検など詳しい検査をした上で病態に合った治療が必要です。このため、原因に沿った治療が必要であり、自分でできる対処法は限定的です。まずは、腎臓内科を受診して、どのような点に気をつけなければならないか、また必要な食事療法についても確認しましょう。

腎臓以外の病気・疾患が原因で尿蛋白と診断された場合の改善方法

蛋白尿は腎臓病でみられることが多いですが、腎臓病以外の病気でもみられる事もあります。例えば、膀胱炎や尿路感染で炎症が起こっている場合、血尿とともに蛋白尿もみられます。感染症の場合、軽いものであれば水分を多く摂り、洗い流すことで感染症が改善することも多いです。しかし、残尿感や排尿時痛がなかなか取れない場合や発熱がみられる場合には泌尿器科を受診しましょう。

発熱が原因で尿蛋白と診断された場合の改善方法

腎臓病以外で尿蛋白がみられる原因として、発熱が考えられます。高熱が出た時に尿蛋白がみられやすいです。熱が出ているときの尿検査で、尿蛋白を指摘された場合、まず病気を治すことが大切です。体調回復後に、尿蛋白も陰性化すると考えられます。

ストレスが原因で尿蛋白と診断された場合の改善方法

高熱が出るような感染症、激しい運動などは体に強いストレスを与えます。このようなストレスがある場合に、尿蛋白を認めることが多いです。通常は、ストレスがなくなると改善するため、回復後に再検査をしましょう。

脱水が原因で尿蛋白と診断された場合の改善方法

身体に脱水がある場合、濃縮された濃い尿となります。そのため、ごく少量の蛋白でも濃度が濃くなり、定性検査で陽性となることも少なくありません。この場合には、脱水が改善されれば尿蛋白は陰性化します。

激しい運動が原因で尿蛋白と診断された場合の改善方法

運動後は、尿蛋白を認めることが多いです。特に激しい運動では、直後に尿検査を行うと蛋白が陽性となる可能性があります。この場合、運動をしないで検査をすれば尿蛋白が改善します。運動が尿蛋白の原因と疑われる場合、まず運動を休み、再度尿検査をしてみましょう。

プロテインの過剰摂取が原因で尿蛋白と診断された場合の改善方法

プロテインの摂取過剰が原因で尿蛋白が出る可能性があります。高蛋白食により、腎臓の糸球体内圧が亢進、過濾過、糸球体の損傷がひきおこされると考えられます。糸球体が損傷されると、蛋白尿がみられるようになります。腎機能が正常でも、プロテイン過剰が腎機能悪化や蛋白尿の原因となるかに関しては現在のところはっきりとした結論は出ていません。しかし、プロテイン摂取中に尿蛋白を指摘された場合、プロテインの影響を考えて摂取を中止してみましょう。

【女性】健康診断で尿蛋白と指摘された場合に多い原因と改善方法

女性では、生理や妊娠など特有の状態があります。この女性特有の状態の場合も蛋白尿の原因となるでしょうか?

生理前が原因で尿蛋白と診断された場合の改善方法

生理中は潜血とともに尿蛋白が陽性となる事が多いです。また、見た目は経血が混じっていないように見えても潜血や蛋白が陽性となる事もあるため、生理前後、生理中の尿検査はなるべく避けましょう。生理が終わってから3.4日以降での再検査をお勧めします。

妊娠が原因で尿蛋白と診断された場合の改善方法

妊娠中は、循環血液量が増え、胎児の老廃物も処理しなければならないなど、母体の腎臓への負担が増えます。このため、少量の尿蛋白が一時的にみられやすいです。一時的であれば、経過をみても良いでしょう。しかし、妊娠高血圧症候群では持続的に高血圧や蛋白尿がみられるため、症状が持続する場合には主治医に相談をしましょう。

【男性】健康診断で尿蛋白と指摘された場合に多い原因と改善方法

前立腺炎などの男性特有の疾患で尿蛋白がみられることもあります。また、男女ともに起立性蛋白尿や腎臓病などさまざまな病気が尿蛋白の原因であることも考えられます。

起立性蛋白尿が原因で尿蛋白と診断された場合の改善方法

体位が原因となり、尿蛋白が出る場合があります。立ち上がることで腎静脈が圧迫されてうっ血が起こることが原因となり、蛋白が尿に出やすくなると考えられています。これが起立性蛋白尿です。起立性蛋白尿の予後は良好であるため、通常は経過観察のみとなります。起立性蛋白尿の診断は、排尿直前まで横になっている朝一番の尿(早朝尿)で尿検査を行い、陰性であることで判定されます。

【子供】健康診断で尿蛋白と指摘された場合に多い原因と改善方法

子どもでは、起立性蛋白尿がみられやすいです。そのため、健康診断で尿蛋白が陽性と判定された場合、早朝尿で再度判定をする必要があります。また、大人と同様に、睡眠不足や疲労、感冒などの体調不良時、運動の直後などでは通常では見られない蛋白尿がみられることがあります。これらの原因が考えられた場合には、体調を整え、再度尿検査をしましょう。

健康診断・血液検査の「尿蛋白」の異常で気をつけたい病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「尿蛋白」に関する症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

腎炎・急性糸球体腎炎・慢性糸球体腎炎

腎炎は、腎臓の糸球体に炎症が起こり、壊れていく病気です。腎炎の原因や経過により急性糸球体腎炎、急速進行性腎炎、慢性糸球体腎炎に分けられます。これらの病気を診断するためには腎生検と言って、腎臓に針を刺し一部の組織を採取して顕微鏡で検査して診断します。 急性糸球体腎炎は扁桃腺炎後10日程度で発症する一過性の腎炎です。肉眼的血尿や浮腫、高血圧などがみられます。溶連菌感染症が原因であることが多いです。 急速進行性腎炎は、週から月単位で悪化します。全身倦怠感や発熱を伴い、血液検査で腎機能の悪化、血尿、蛋白尿を伴うことが多いです。さまざまな原因がみられますが、中でも全身の微細な血管炎が原因となる事が最も多いです。 慢性糸球体腎炎はゆっくりとした進行で糸球体に炎症が起こり、尿蛋白や血尿で発見されることが多いです。原因はさまざまです。ネフローゼ症候群を示すこともあれば、腎機能が徐々に悪化することもあるため腎生検の結果により治療の方針を検討します。

ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群は尿中に蛋白が大量に出ることで、血液中の蛋白が減少した結果、むくみが起こる病気です。ネフローゼ症候群の原因はさまざまであり、特定するために、腎生検を行います。 ネフローゼ症候群は、①尿蛋白一日3.5g以上②血液中のアルブミンが3.0g/dL以下が満たされた場合、診断されます。 高度となると、心不全となったり、胸水が溜まったり、血栓症を合併する危険性もあるため注意が必要です。浮腫がみられた場合には、早めに内科・腎臓内科で相談しましょう。

慢性腎臓病(CKD)

慢性腎臓病(CKD)とは、尿蛋白や腎臓の形態異常などの腎臓の障害や腎機能の低下が3か月以上持続した場合に診断されます。日本における慢性腎臓病は成人のおおよそ5人に1人と言われています。年齢が上がるほど罹患率が高く、原因は生活習慣病が多いです。慢性腎臓病が進行すると末期腎不全となり、心血管疾患を合併しやすくなります。また、進行した慢性腎臓病が改善することは難しく、早期に診断、治療をすることが大切です。健康診断などで腎臓病を指摘されたら、早めに内科・腎臓内科を受診しましょう。

高血圧

高血圧は、診察室での血圧が140/90mmHg以上の場合に診断されます。高血圧は、動脈硬化を進行させ、さまざまな病気の原因になり得ます。また、高血圧は腎臓に負担をかけ、蛋白尿が出たり、腎機能が進行する原因となるため気をつけなければなりません。 健康診断などで高血圧を指摘された場合、早めに内科・循環器内科を受診しましょう。

糖尿病性腎症

糖尿病で高血糖が持続すると、腎臓の血管が傷つき、蛋白尿がみられるようになります。この状態が糖尿病性腎症です。さらに高血糖が持続すると、徐々に腎機能の障害も認められるようになります。現在日本において、血液透析導入の原因の疾患の中で糖尿病性腎症による腎不全が最も多いです。糖尿病と診断された場合、高血糖が持続しないようにコントロールし、糖尿病性腎症を合併しないように気をつけましょう。

「尿蛋白」の正しい対処法・改善法は?

尿蛋白が陽性と指摘された場合、ご自身でできる対処法は限られています。まず、内科・腎臓内科を受診して再検査を行いましょう。特にむくみが強い場合や、だるさや発熱を伴う場合、腎機能低下も指摘された場合には早急に受診をすることをお勧めします。 尿蛋白が陽性である場合、対処法は原因により異なります。そのため、原因を調べることが大切です。原因が分かるまで、ご自身でできることとしては、塩分制限です。減塩は腎臓への負担を軽減できるため、塩分は控えめにして過ごし、早急に腎臓内科を受診しましょう。

「尿蛋白の原因」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「尿蛋白の原因」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

プロテイン等たんぱく質を摂りすぎると尿蛋白になりますか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

プロテインなどの蛋白を摂取しすぎると、尿蛋白が陽性となる可能性があります。正常な腎機能の場合でも、蛋白過剰摂取で尿蛋白が出やすくなるという報告がありますが、現在のところはっきりと結論は出ていません。しかし、少なくとも腎機能が低下した方では、食事の蛋白量が過剰になると尿蛋白量が増加したり、腎機能が低下しやすくなることが分かっています。尿蛋白陽性を指摘された方で、プロテインを摂りすぎている場合は、まずプロテインの摂取をやめ、腎臓内科を受診して相談しましょう。

健康診断の前に水など飲み物をたくさん飲めば尿蛋白は薄まりますか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

水分を多く飲むと希釈された尿が出るため、尿蛋白の濃度が薄くなります。このため、尿蛋白が陽性になりにくい可能性はあります。しかし、尿蛋白が薄くなり、見た目上異常がなかったとしても、本来の腎臓病がなくなったわけではありません。万が一、腎臓病があるにもかかわらず、治療が遅れてしまうと腎機能が低下してしまう可能性も考えられます。健康診断前は、脱水を防ぐ適量での水分摂取としましょう。

健診で尿蛋白が指摘されたら、何科の病院で原因が特定できますか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

健康診断で尿蛋白が認められた場合、まず再検査を行うことが必要です。この再検査や精密検査を行うには、腎臓内科を受診すると良いでしょう。すぐに腎臓内科を受診できない場合には、まず内科を受診し、再検査を行い、再検査でも尿蛋白がみられる場合には腎臓内科を紹介してもらうのが良いでしょう。

まとめ 尿蛋白の原因は腎臓病

尿蛋白がみられる場合、多くは腎臓病による原因が考えられます。腎炎や糖尿病性腎症、生活習慣病による腎臓病などの可能性が高いです。しかし、体調不良や運動直後では尿蛋白が陽性となりやすいです。また、女性の場合には生理の影響や妊娠の影響の可能性も考えられます。また、起立性蛋白尿と言って、病的に問題がないものもあるため、再検査や早朝尿での精密検査を行うことが勧められます。 腎臓病はなかなか症状が出づらい病気です。しかし、進行すると改善しにくいため、早目に治療を開始することが大切です。健康診断で尿蛋白を指摘された場合、早めに腎臓内科を受診しましょう。

「尿蛋白」の異常で考えられる病気

「尿蛋白」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

腎、泌尿器系の病気

内科系の病気

  • 発熱
  • 感染症

循環器系の病気

代謝・内分泌系の病気

産婦人科系の病気

  • 妊娠
尿蛋白がみられる病気は多くあります。多くは腎臓、泌尿器系の病気出すが、感染症などの体調不良時や高血圧、糖尿病などの生活習慣病が原因となる事もあります。尿蛋白はさまざまな病気の初期症状となっていることもあり、重要な体のサインです。このサインを放置することで腎不全など重大な病気へ進行してしまうことも少なくありません。健康診断などの尿検査で尿蛋白を指摘された場合には、必ず再検査をして原因を確認しましょう。

この記事の監修医師