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「上部内視鏡検査(胃カメラ)」とは?合併症が起きる確率はどのくらい?医師が解説!

 公開日:2025/10/03
「上部内視鏡検査(胃カメラ)」とは?合併症が起きる確率はどのくらい?医師が解説!

上部内視鏡検査(胃カメラ)とは?メディカルドック監修医が検査前日から当日までの流れと注意点、検査を受けたことによる合併症の可能性、検査で発見できる病気についてご紹介します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

「上部内視鏡検査(胃カメラ)」とは?

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ検査)は、先端に小型のカメラがついた、細長く柔軟性のある管である内視鏡を用いた検査です。口から食道、胃、そして小腸の前半部まで挿入し、その内部を観察します。必要な際には生検といって組織を実際に切り取るといった処置を行ったりすることもできます。

「上部内視鏡検査」は何科で検査できる?

上部消化管内視鏡検査は、消化器内科や健康診断科などで検査できます。

「上部内視鏡検査」の費用は?

上部消化管内視鏡検査の費用について見ていきましょう。 上部消化管内視鏡検査の診療報酬点数は、1,140点です。なお、診療報酬1点は10円に相当します。胃の痛みや吐き気などの症状がある場合や、胃がん検診(バリウム検査)で要精密検査となった場合は、保険適用となります。そのため、例えば3割負担の方では約3,500円の自己負担となると想定されます。生検やピロリ菌検査などが行われた際には、その分の費用も追加されます。鎮静剤を使用した場合にも別途料金が発生します。 人間ドックや胃がん検診の一環として上部消化管内視鏡検査が行われた場合は、原則全額自費負担となります。病院によっても異なりますが、約15,000〜50,000円となります。

上部内視鏡検査の合併症

まれに、上部消化管内視鏡検査の合併症が起こる可能性があります。2019〜21年までの3年間で施行した上部消化管内視鏡検査のうち、0.044%に何らかの合併症が起こったとされています。 ここでは、上部消化管内視鏡検査の合併症について解説します。

鎮静・鎮痛薬による呼吸抑制・低酸素血症

上部消化管内視鏡検査では、痛みや不安感のある方に対して、緊張を和らげる目的などで鎮静剤を注射することがあります。ほとんどの方は特に副作用なく用いることができますが、80歳以上などの高齢者の方では効果が出過ぎてしまい、呼吸がしづらくなったりするケースもみられます。そのため、鎮静剤の投与については高齢者では特に慎重に行うことが勧められています。

裂創

裂創(れっそう)は、上部消化管内視鏡検査でまれに起こる合併症の一つです。食道や胃の壁に傷がついてしまうものです。出血が起こる場合もあり、治療のために入院が必要となることもあります。

穿孔

内視鏡検査の重篤な合併症として、穿孔(せんこう;穴が空いてしまうこと)があります。食道は漿膜という構造がないため、穿孔に対して弱いという特徴があります。万が一食道裂孔が起こった場合には、食道の中身が周囲に漏れ出し、命に関わることもあります。入院の上抗生剤の投与が必要となります。手術の可否について、検討されるケースもあります。

歯牙損傷

口からカメラを入れる場合に、まれに歯が抜けてしまったりかけてしまったりすることがあります。グラグラしている歯があるなどについて、検査を受ける前に看護師や医師などのスタッフに事前に伝えておきましょう。

鼻出血

鼻からの検査の際、起こりうる合併症の一つです。検査後しばらくすれば鼻血は止まります。通りやすい鼻がわかっていれば、あらかじめ医療機関のスタッフに伝えておきましょう。

「上部内視鏡検査」の流れ

上部消化管内視鏡検査の流れについて解説していきます。

上部消化管内視鏡検査前日の注意点

検査の前日は、消化に良いものを食べるようにしましょう。21時までには食事を終えておくよう注意しましょう。 内服薬については、基本的に前日でも通常通りに内服しましょう。脳梗塞や心房細動などの予防のために抗血栓薬という血液をサラサラにする薬を飲んでいる方でも、内視鏡的な観察だけであれば休薬は不要です。しかし、抗血栓薬を内服している場合、生検は避けた方が良い場合もあります。休薬については、主治医にあらかじめ確認しておくことが望ましいでしょう。

上部消化管内視鏡検査当日の流れと注意点

当日は絶食となります。牛乳やジュースも控えましょう。水は検査1時間前くらいまでは飲んでも問題ありません。降圧薬なども朝に飲んでもらっても大丈夫ですが、糖尿病の薬は主治医に確認の上当日朝は内服しないようにしましょう。
流れとしては、以下のようになります。
1.前処置室で、胃の中の泡を消す薬や、胃の中の粘液を分解する薬を飲みます。
2.口からの内視鏡検査の場合には、喉の麻酔を行います。飲み込むタイプの薬と、スプレーのタイプがあります。鼻からの検査の場合には、点鼻薬を用います。
3.十分に麻酔が効いた後、検査を受ける方は専用の台に乗って、体の左側を下にした姿勢で横になります。鎮静剤を注射する方もいます。
4.口からの検査の場合には、マウスピースを装着します。
5.上部消化管内視鏡を口か鼻から挿入し、検査を始めます。力を抜くようにすることを意識すると良いでしょう。食道や胃、十二指腸を観察します。がんなどの病気が疑われる場合、その部分の粘膜を切り取る生検が行われることもあります。
通常、検査は5-10分で終わります。検査後、通常は1時間程度で飲水や食事は可能となります。 鎮静剤を使用した場合には、1時間ほど病院内で安静にすることが必要です。また、当日の車の運転はできないため、お一人で受診する際は特に注意しておきましょう。

なぜ左側臥位で見るのか?

上部消化管内視鏡検査は、通常、左を下にした左側臥位で行われます。これは胃の位置や形状に基づいた合理的な理由があります。 胃は、噴門部、穹窿(きゅうりゅう)部、胃体部、胃角部、前庭部、幽門部といった解剖学的構造に分けられており、全体として左に凸の湾曲をしています。胃の右側のカーブは小彎(しょうわん)、左側のカーブは大彎(たいわん)と呼ばれます 。 左側臥位では、内視鏡の先端が重力によって自然と胃の大彎側に下がるため、大彎をはじめとする観察しにくい部位にアクセスしやすくなります。 特に胃体部の大彎から前壁にかけては、送気不足や液体の貯留によって盲点となりやすいため、内視鏡で十分に引き伸ばして観察する必要があります。 このように、左側臥位は胃の構造に即した、観察効率の高い体位として多く用いられています。もちろん、患者さんの状態などに応じ、仰向けなどの体位で行うケースもあります。

上部消化管内視鏡検査に要する時間は?

実際に内視鏡を挿入している時間は、7分前後から10分以内が目安となっています。 口や鼻の麻酔などや、鎮痛薬の投与なども合わせると、30分程度かかると見ておくと良いでしょう。鎮静剤を用いた後は、1時間程度は院内で安静にすることが多いかと考えられます。

上部消化管内視鏡検査の結果

上部消化管内視鏡検査の結果は、以下のような判定となります。
A 異常なし
B 軽度異常(軽い逆流性食道炎など)
C 要経過観察・要再検査・生活指導
D(医療的な処置を要する) D1 要治療(胃潰瘍やがんなど)
D2 要精検
E 治療中
食道がんや胃がん、食道潰瘍などがD判定となります。

「上部内視鏡検査」の異常で気をつけたい病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「上部内視鏡検査」でわかる病気を紹介します。 どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

胃がん

胃がんは、胃の粘膜ががん化したものです。ヘリコバクターピロリ菌の感染などが危険因子となります。早期の段階では無症状ですが、進行すると胃の痛みや不快感、出血による黒色便、体重減少などの症状が現れることもあります。 胃がんは、内視鏡検査では、ポリープのように膨らんだ病変や、えぐれた病変などとして発見されることがあります。 治療として、早期の段階であれば内視鏡的切除術が行われます。進行した段階では手術や抗がん剤治療、放射線治療などを組み合わせるなどの方法があります。

ポリープ

ポリープは、胃の粘膜にできる、周囲から盛り上がったような病変の総称です。 多くのものは良性です。頻度が高いものとしては、以下のようなものがあります。 ・胃底腺ポリープ:ヘリコバクターピロリ菌の感染がない胃粘膜に生じる ・胃過形成ポリープ:ヘリコバクターピロリ菌の感染によって炎症が起こった胃粘膜に生じる 胃底腺ポリープはほぼ良性であり、基本的には治療は不要です。一方、胃過形成ポリープが疑われる場合には、ピロリ菌感染の有無を確認することが望ましいとされています。サイズが大きい(目安として1㎝以上)の場合には、がんが発生する頻度が約2%であり、1年に1回の内視鏡検査がすすめられています。 上部消化管内視鏡検査でポリープと診断された場合には、その後の方針などについて、検査を施行した医師や主治医に確認することが大切です。

逆流性食道炎

逆流性食道炎は、胃酸をはじめとする胃の中のものが食道に逆流することによって、食道に炎症が起こってしまう病気です。食道と胃のつなぎ目には、下部食道括約筋という筋肉があり、食物が通る時以外には締まり、胃の内容物が食道に逆流しないような役割を果たしています。何らかの原因でこの筋肉が緩むと、胃から食道に内容物が逆流するようになります。 加齢、食べ過ぎによる胃の内圧の変化、肥満などによる腹圧の上昇、高脂肪食などが原因となります。 胃の内視鏡検査で逆流性食道炎は、その重症度に応じて軽度異常(B判定)か要経過観察(C判定)に判定されます。 しかし、胸焼けなどの症状が強くみられる場合には、消化器内科を受診しましょう。

「上部内視鏡検査」についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「上部内視鏡検査」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

上部内視鏡検査で何がわかるのでしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

上部消化管内視鏡では、食道や胃、十二指腸の内部の様子がわかります。ポリープやがん、炎症などがないかどうかを詳しく調べることができます。

上部内視鏡検査前日の食事はなにが良いでしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

特に食べてはいけないものはありませんが、お米やうどんなど、消化に良いものがおすすめです。逆に、ごぼうやたけのこ、山菜などは消化が悪い可能性がありますので、食べ過ぎないようにしておくと良いでしょう。

まとめ

今回の記事では、上部消化管内視鏡検査の目的や方法、手順などについて解説しました。胃がんの早期発見や、胃もたれや胃の痛みなどの検査としても、上部消化管内視鏡検査は役立つ検査です。検査を受けた結果、経過観察や治療が必要とされた場合には、きちんと主治医と相談の上、指示に従うようにしましょう。

「上部内視鏡検査」の異常で考えられる病気

「上部内視鏡検査」から医師が考えられる病気は15個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

消化器内科系の病気

上部消化管内視鏡検査では、さまざまな異常を見つけることが可能です。胃もたれや痛みなどの症状があり、なかなか治らない場合には消化器内科の受診をおすすめします。

この記事の監修医師