「脳ドックの費用」はいくら?助成制度や発見できる病気も医師が解説!

脳ドックの費用とは?メディカルドック監修医が検査内容や費用のほかに、助成制度や検査でわかる病気などを解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
脳ドックとは?
脳ドックは、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血といった脳卒中や、認知症の予防のためのオプションドックのひとつです。1988年に日本で始められ、予防医学において重要な役割を果たしてきました。脳ドックは、中高年の方や脂質異常症、高血圧、糖尿病などの持病がある方、肥満気味の方、喫煙する方に対して勧められています。また、家族に認知症や脳卒中の方がいる場合にも推奨の対象となります。
脳ドックには、頭部MRI検査や頭部MRA(MR angiography、磁気共鳴血管撮影)、頚部血管超音波検査、認知機能検査などの検査項目があります。また、認知機能低下早期予測スコアなども含まれる場合があります。その他、問診や診察、血圧測定、血液・尿・生化学検査、心電図検査なども実施されることがあります。脳ドックは、健診センターや脳神経内科などで受けられます。
脳ドックの検査種類と費用
脳ドックに含まれる検査の種類と費用について解説します。
基本的な脳ドック費用
基本的な脳ドックのメニューとしては、頭部MRI検査、頭部MRA検査、頸動脈超音波検査、問診、診察などが含まれます。費用は30,000から50,000円ほどです。
精密な脳ドックの検査メニューと費用
基本的な脳ドックに加えて、血液検査や尿検査、心電図検査などが付いているプランもあります。また、特に認知症のリスクが高くなる50歳以上の方などに対し、VSRADを用いた画像解析などが加わる場合もあります。VSRAD はVoxel-Based Specific Regional Analysis System for Alzheimer’s Diseaseの略で、早期アルツハイマー型認知症診断支援システムのことです。MRIで撮影した脳の画像情報を元に、記憶を司る海馬傍回(かいばぼうかい)などの脳の萎縮度合いを検査します。料金は50,000円ほどとなりますが、医療機関や健診施設ごとに料金は異なります。
脳ドックに助成制度はあるのか
脳ドック自体は健康保険適用外の自由診療です。そのため、全額自己負担となる場合がほとんどです。ただし、脳ドック検査を受けるにあたって、利用できる助成制度や補助制度は以下のようなものもあります。
国民健康保険加入者対象の助成制度
国民健康保険加入者が対象で、保険料の滞納がない方に対し、脳ドック検診費用を一部助成している自治体もあります。例えば、滋賀県草津市では、草津市国民健康保険に加入している方で、40歳以上の方に対し、人間ドック・組合わせドック(人間ドック+脳ドック)費用助成を行なっています。対象となる脳ドック検査は、頭部MRI検査や頭部MRA検査です。鹿児島市では国保加入者が脳ドックを受ける場合、35歳以上の方に対して上限2万円として費用の半額を補助しています。その他、岡山県備前市や富山県富山市でも国保加入者の方に対して人間ドックや脳ドックの検査費用助成制度があります。また、静岡県浜松市では、市が発行する特定健康診査受診券とがん受診券を利用し人間ドックの費用が安くなる場合があります。特定健康診査受診券は国民健康保険加入者に対して発行されます。まとめると、以下のようになります。
| 地域・団体名 | 対象条件 | 補助内容 |
|---|---|---|
| 滋賀県草津市 | 国保加入・40歳以上 | 人間ドック+脳ドック費用を一部助成 |
| 鹿児島県鹿児島市 | 国保加入・35歳以上 | 上限2万円・費用の半額を補助 |
| 岡山県備前市 | 国保加入者 | 脳ドック等への助成あり(内容は年度で変動) |
| 富山県富山市 | 国保加入者 | 同上(年度ごとに要確認) |
| 静岡県浜松市 | 特定健診受診券利用者 | ドック費用が割引になる場合あり |
| 協会けんぽ | 協会けんぽ加入者 | 脳ドックは対象外・全額自己負担 |
※補助内容や対象条件は年度や自治体により変更される可能性があります。詳細は各自治体・健康保険組合の公式サイトをご確認ください。
医師や歯科医師、建築業の方など、職業によっては職種ごとの国民健康保険組合に加入している場合もあるでしょう。自身が加入している国民健康保険の脳ドックの補助制度について確認してみましょう。
会社員・公務員などが加入する健康保険組合の助成制度
会社員や公務員などが加入する健康保険組合でも、脳ドックの助成制度が設けられている場合があります。例えば、名古屋市職員共済組合では、38歳から53歳までの方に5年ごとに脳ドックの費用が一部補助されます。一般企業の健康保険組合でも、脳ドック費用助成制度が設けられていることがあります。ご自身が会社員または公務員の場合には、加入している健康保険組合の助成制度を確認してみるとよいでしょう。なお、協会けんぽの加入者の方の場合、脳は生活習慣病予防健診の検査項目以外となるため、全額自己負担となります。
生命保険に加入している場合は?
民間の生命保険の中には、人間ドックや脳ドックの優待サービスを設けている場合があります。費用の割引や、ドックを受けられる医療機関の紹介サービスがあります。ご自身が生命保険に加入している、加入しようとしている場合、こういったサービスの有無も確認しておくとよいでしょう。
脳ドックでわかる病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「脳ドック」に関する病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
脳腫瘍
脳の中にできるできものを、脳腫瘍と呼びます。良性のものと悪性のものがあります。
脳ドックで発見されることが多い脳腫瘍には、髄膜腫や下垂体腺腫、神経鞘腫といった良性のものがあります。また、神経膠腫という脳神経細胞由来の腫瘍が発見されることもあります。こちらは、良性から悪性まで、さまざまなタイプがあります。
脳腫瘍の症状は、腫瘍の部位や大きさによって異なりますが、小さいうちは明らかな症状がない場合も多いです。
脳ドックで脳腫瘍が疑われた場合、脳神経内科などで精密検査が望ましい場合があります。さらなる検査としては、頭部CTや脳血管造影などがあります。これらの検査は保険適用となります。
脳血管疾患
脳ドックでは、無症候性脳梗塞や微小出血、脳動脈瘤などが見つかることがあります。脳梗塞は、脳の血管が詰まってしまうことで脳の一部の血流が低下し、脳神経細胞が壊死を起こす病気です。無症候性脳梗塞は、症状が現れていないものの、画像検査では脳梗塞の所見があり、多くはラクナ梗塞と呼ばれる小さな脳梗塞です。高齢の方の1〜2割の方に認められるものの、将来の脳卒中や認知症のリスクを高める可能性があるとされています。
また、微小脳出血の多くは無症状ですが、脳出血や脳梗塞につながる恐れがあり、認知機能障害との関連も疑われています。
脳動脈瘤も低いながら破裂し、くも膜下出血に進展する可能性があります。
脳ドックでこれらの症状が認められた場合、脳神経内科などを受診しましょう。治療が必要かどうか、今後の生活上の注意などはあるのかなどについて相談することが大切です。
認知症
脳ドックには、認知症を早期に発見するための認知機能検査が含まれる場合があります。
例えば、VSRADでは海馬萎縮を調べることができます。海馬の萎縮と認知機能低下には、軽度ながら関連がみられることがあります。
また、現在認知機能をスクリーニングする簡単な検査も普及しつつあります。例えば、タッチパネルで操作可能なiPadを使用したスクリーニング検査(CADi:Cognitive Assessment for Dementia,iPad version)などが開発されています。CADiでは、約5分の短時間で実施可能、さらに対面検査でないことで受診者のプライドを傷つけないというメリットがあります。
「脳ドック」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「脳ドック」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
脳ドックはCTとMRIのどちらを行うのでしょうか?
木村 香菜 医師
脳ドックでは、脳のMRI検査が推奨されています。MRIは、放射線を使わずに脳の内部の構造を詳細に調べることができます。
脳ドックは何科で受診できますか?
木村 香菜 医師
脳ドックは、健康診断科や脳神経内科で受診できます。
まとめ
今回の記事では、脳ドックについて費用に関しても詳細に解説しました。約5万円の価格設定が多いかと考えられますが、ご自身が加入している健康保険などの補助を活用することで、自身の負担を減らすことも可能です。将来の認知症などのリスクを調べるためにも、ぜひ脳ドックを活用してみてはいかがでしょうか。
「脳」の異常で考えられる病気
「脳」から医師が考えられる病気は7個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
脳の病気としてはこれらのものがあります。気になる症状がある場合には、早めに医療機関を受診しましょう。




