「血小板が多い」と「どんな症状」が現れるかご存じですか?医師が徹底解説!
公開日:2025/09/16

血小板が多いと現れる症状とは?メディカルドック監修医が血液検査で血小板が増加していると診断された場合・検査の見方・予防方法・発見できる病気などを解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。
目次 -INDEX-
血小板とは?
血小板は、血液中に含まれている成分の一つです。血管が破れ出血した場所に集まり、血管が再生するまでその傷を塞ぎ、出血が止まるように働きかけます。血小板が多すぎると、血管の中で血栓ができてしまうリスクが高まります。その結果、さまざまな症状が現れる場合もあります。今回の記事では、血小板が増加した際に起こりうる症状と、その原因、予防法などについて解説します。血小板が多いと現れる症状
血小板の量が多くなりすぎると、以下のような症状が現れることがあります。これらは本態性血小板血症という血液・骨髄の病気の患者さんによくみられます。慢性的な頭痛やめまい
本態性血小板血症では、血栓が脳や手足に多く発生します。脳の微小な血管にできた血栓によって、慢性的な頭痛やめまいが引き起こされることがあります。たかが頭痛と侮らず、頭痛外来や脳神経内科などを受診するようにしましょう。めまいの場合は、まずは耳鼻咽喉科を受診しましょう。もしも血小板の増加のためにこうした症状が出現していると考えられる際には、血液内科で精密検査を受けることになるでしょう。手足の麻痺や言葉がうまく出なくなる
血栓が脳の太い血管にできると、まれに一過性脳虚血発作(TIA)やさらに重症な場合には脳梗塞が引き起こされることもあります。障害を受ける血管によって症状はさまざまですが、ろれつがまわらなくなる、顔の片方が麻痺する、手足の麻痺が現れるなどがあります。すぐに救急外来を受診しましょう。救急車を呼ぶこともためらわないでください。手足の痛みや腫れ
本態性血小板血症では、手足に痛みや腫れ、発赤が引き起こされる、肢端紅痛症(したんこうつうしょう)が起こる方もいます。原因は本態性血小板血症などの血液や骨髄の病気の他、明らかな基礎疾患がない場合もあります。冷やすことで改善する場合もありますが、まずは内科を受診することが適当かと思われます。胸痛
血栓が心臓の血管にできることで、狭心症や心筋梗塞などの心血管障害が起こることもあります。突然の胸痛や息切れ、冷や汗、呼吸困難感が見られる場合には、すぐに医療機関を受診してください。身体のさまざまな部位からの出血
血管内で血栓が作られ、体内の血小板が使い果たされてしまうと、出血が起こりやすくなることもあります。血管の傷を塞ぐための血小板が血液中に残っていないためです。鼻血やあざ、口や歯茎からの出血、便に血が混じるなどの症状が現れることもあります。さまざまな場所から出血しやすくなったということがあれば、血液内科の受診をおすすめします。血小板が多くなる主な原因
血小板が増加してしまう原因として、血液そのものの問題と、なんらかの原因に伴い血小板が多くなる二次性(反応性)のものがあります。このうち、臨床現場では反応性のものが多くみられます。ここでは、それらについて解説していきましょう。血小板の産生が増える
リウマチなどの慢性炎症性疾患や、悪性腫瘍の方は、造血幹細胞から血小板を作り出すためのサイトカインなどの産生が増えます。また、鉄欠乏性貧血の際にも、エリスロポエチンという成分が増加するため、血小板が増えます。脾臓から血液内に流出する血小板が増える
通常、血小板脾臓に貯蔵されています。その量は、体内の全ての血小板の1/3ほどとも言われています。脾臓を摘出することで、蓄えられていた血小板が血液内に流入するため、血小板が増加します。通常は2ヶ月ほどで正常に戻るとされています。 また、運動後にも、血小板が脾臓から血液に流れ込み、血小板の増加がみられる場合があります。血液の病気
本態性血小板血症という病気は、造血幹細胞レベルで細胞が腫瘍化する骨髄増殖性腫瘍の一つです。血小板の元になる骨髄巨核球という骨髄系細胞が著しく増加します。血液検査で血小板が増えていると診断されたら?
血液検査で血小板が基準値を上回っていると診断され、精密検査が必要とされた場合には放置しないようにしましょう。再検査が必要です。血小板が増加する原因が貧血などの場合は、かかりつけの内科があればそちらでも良いかもしれません。しかし、45万/μL以上の場合には血液の病気の可能性も考慮して、血液内科の受診をおすすめします。血液検査の結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見
ここまでは血小板が減少すると現れる症状について基本的なことを紹介しました。血液検査で再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。血液検査の結果や数値の見方・分類と主な所見
血液検査における血小板の基準値は、14.5-32.9万/μLとされています。血液検査の結果で精密検査が必要な基準と内容
血小板が40.0万/μL以上の場合、健康診断では要精密検査の判定になることが多いでしょう。精密検査として、まずは、再度血液検査が行われます。血小板の他、赤血球や白血球など、他の血球成分も調べられます。もしも血小板が増加したままであれば、さらに血液を顕微鏡で詳しく調べる検査や、骨髄検査、遺伝子検査なども実施されることもあります。また、本態性血小板血症では脾臓が腫れていることもあるので、腹部超音波検査で脾臓のサイズなども調べるケースもあるでしょう。 こうした検査は、主に血液内科が主体となり行われます。「血液検査」で発見できる病気・疾患
ここではメディカルドック監修医が、「血液検査」に関する病気を紹介します。どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。本態性血小板血症
本態性血小板血症(essentila thrombovyhemia:ET)は、骨髄の細胞が無秩序に増えてしまう、増殖性腫瘍の一つです。JAK2やCALR、MPLといった遺伝子変異が多くの方で認められます。一般的に予後は良好とされており、健康な方と同様の寿命が期待できます。ただし、60歳以上あるいは血栓症の既往がある方、初診時の白血球数などから、血栓症のリスク分類がなされます。高齢の方や血栓症になったことがある方、白血球も多かった方は、血栓症のリスクが高まると考えられています。 治療は、リスク分類によって異なります。血栓症低リスク群に対しては、定期的な経過観察をしていきます。血栓症高リスク群に対しては、血栓症予防を目的とした低用量アスピリン投与と細胞減少療法が併用されます。細胞減少療法は、この場合には血小板を減らす目的で、ヒドロキシウレア、アナグレリドといった薬剤が用いられます。鉄欠乏性貧血
体内の鉄が不足することで、赤血球が十分に作られなくなるために起こる貧血です。貧血の中では最多です。日本人女性には多くみられます。血液中のヘモグロビンという成分が減少します。骨髄は貧血に対応するために赤血球を多く作ろうとし、エリスロポエチンという造血因が多く生成されます。すると、反応性に血小板も増加します。鉄剤の内服で改善する場合が多いですが、まずは内科で相談をすることが大切です。慢性炎症性疾患
リウマチ性疾患や膠原病、血管炎や慢性感染(結核など)も血小板の増加の原因となります。造血幹細胞から血小板の元となる巨核球への分化増殖、血小板放出を調節する因子であるトロンボポエチン、インターロイキン(IL)などのサイトカインが増えるためです。 こうした疾患を適切に治療すれば、血小板の数値も正常に戻ります。がん
胃がんや大腸がん、肺がん患者さんの約40%に血小板増加が認められることが報告されています。また、卵巣がんや肺がん、結腸がん、膵臓がんでも血小板増加の頻度が比較的高いとされています。がんの場合にも、さまざまなサイトカインの放出が正常より増加するために起こると考えられています。がんの治療が行われれば、血小板も正常化することが大半です。脾臓摘出後
脾臓には身体の中の多くの血小板が貯蔵されています。外傷や血液の病気、肝硬変などで脾臓が腫れてしまった場合に脾臓が摘出されることがあります。この場合には、脾臓に溜められていた血小板が血液に放出されるので、一時的に血小板数は増加します。しかし、2ヶ月ほどで正常化することが多いです。血小板の数値を戻す食べ物・食生活
生活習慣によって血小板の数値が改善できるものとしては、鉄欠乏性貧血などが考えられます。ここではそのような観点から、血小板の数値を戻すのに役立つ可能性がある食べ物について述べます。鉄分を多く含む食事を心がける
ほうれん草や赤身肉など、鉄分を多く含む食事を心がけましょう。タンパク質を積極的に摂る
タンパク質は、血液成分の元となる栄養素です。こちらも積極的に摂りたいですね。 肉、卵や魚、豆腐食品をまんべんなく食べましょう。食後すぐのカフェインは避ける
カフェインは、鉄分の消化管からの吸収を妨げてしまうことがあります。そのため、食事前後1〜2時間は、カフェインを多く含むコーヒーや緑茶などは避けた方が良いでしょう。血小板の数値を戻す対策・予防法
それでは、血小板数を正常にするための方法についてご紹介します。血小板が高い値のまま放置しない
まずは、健康診断などで血小板高値を指摘された際に放置しないことが大切です。特に症状がなくても、要精密検査の判定となった場合には血液内科などを受診しましょう。血小板が高値となる疾患を治療する
鉄欠乏性貧血などで、血小板が二次的に高値になっていることも多いです。これらの病気をきちんと治療すれば、血小板の数値も正常化することが期待できます。ストレス管理の方法を身につける
強いストレスが血小板増加の原因となりうるとする報告もあります。 長期間にわたり過度なストレスがかかる状況は、自律神経失調症などの他の健康問題の引き金ともなり得ます。軽い運動や瞑想、リラクゼーションなどのストレス管理方法を身につけることが、血小板の数値を正常に保つことにも役立つかもしれません。「血小板が多いと現れる症状」についてよくある質問
ここまで血小板が多いと現れる症状について紹介しました。ここでは「血小板が多いと現れる症状」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
血小板の増加を放置するとどうなりますか?
木村 香菜 医師
本態性血小板血症などの病気によって血小板が増加している方で、特に高齢者・血栓症の既往がある方は注意が必要です。放置しておくと、血栓ができてしまう可能性が高まります。その結果、脳梗塞や心筋梗塞などの心血管障害のリスクが高まってしまうこともあります。血小板の増加は放置せず、きちんと血液内科などの受診をするようにしましょう。
まとめ
今回の記事では、血小板が多い際の症状などについて詳しく解説しました。血小板が多いと健康診断で言われた場合、一時的に増加していることも多いです。しかし中には、貧血などの原因によって血小板が増えていることもあります。さらに、まれではありますが、血液の病気が隠れていることもあります。 健康診断で血小板増加を指摘された際には、必ずは血液内科あるいはかかりつけの内科を受診するようにしましょう。「血小板」の異常で考えられる病気
「血小板」から医師が考えられる病気は12個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。循環器系の病気
- 心筋梗塞
- 深部静脈血栓症(DVT)
脳神経内科系の病気
婦人科の病気
- 月経過多による鉄欠乏性貧血
- 妊娠高血圧症候群(HELLP症候群に伴う血小板減少)
膠原病・免疫系疾患の病気
- 全身性エリテマトーデス(SLE)
- 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)




