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「朝の血圧が低い」ときの原因はご存じですか?考えられる病気などを医師が解説!

 公開日:2025/09/11
「朝の血圧が低い」ときの原因はご存じですか?考えられる病気などを医師が解説!

朝の血圧が低いのはどうして?メディカルドック監修医が男女別の原因・症状・考えられる病気・予防法などを解説します。

伊藤 陽子

監修医師
伊藤 陽子(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

血圧とは?

血圧とは、心臓が全身に血液を送り出す時に血管にかかる圧力のことです。心臓が収縮して全身に血液を送り出し、最も血管に強い圧がかかっている時を収縮期血圧、心臓が拡張したときを拡張期血圧と言います。

血圧の数値で体の何がわかる?

正常血圧は診察室での血圧測定で収縮期血圧が120mmHg未満、拡張期血圧が80mmHg未満と定義されています。低血圧のはっきりとした診断基準はありませんが、一般的な成人では収縮期血圧が100mmHg未満を低血圧としています。 低血圧の場合、全身に送り出される血液の圧力が弱いため、臓器に流れる血流が不十分になる可能性があります。例えば、脳への循環が悪く立ちくらみやめまいなどが起こりやすくなったり、体への血流が不十分な場合には動くと動悸がしたり、疲れやすくなる可能性があります。

血圧の測定方法

自宅で血圧測定をする際は、上腕カフ血圧計を用いて測定します。測定する時には、座った状態で、前腕を台などに置いてカフの下端が肘より2-3cm上に巻いてカフの中央が心臓の高さとなるようにして下さい。安静にして原則2回測定し、その平均値をとります。自宅で測定する家庭血圧は、白衣高血圧、朝の高血圧や仮面高血圧の診断や治療の効果を評価する際に非常に有用です。測定条件として、朝起床後1時間以内、排尿後、朝食前に座位で1-2分安静にしてから測定することが勧められます。就寝前にも同様に座位で1-2分安静後に測定します。

【男性】朝の血圧が低い原因

朝の血圧が低い理由として考えられる原因は、自律神経のバランスの乱れや自律神経障害、甲状腺などのホルモンの異常、薬剤性、脱水などのさまざまなものが考えられます。また、原因となる病気が無く、やせ型な方に多い本態性低血圧の可能性も考えられます。男性でも高齢者では、起こりやすいため注意が必要です。

自律神経障害

自律神経は意思と関係なく循環動態を調整している神経です。糖尿病やパーキンソン病などの病気が原因となり、時に自律神経に障害をきたすこともあります。この時に、起き上がろうとしても血圧が保たれず血圧が下がってしまう場合があります。男性のみで起こるわけではありませんが、自律神経障害を起こす病気がある場合には注意をしなければなりません。

脱水

脱水となり、循環血液量が少なくなると血圧が低下することがあります。特に夏場では脱水とならないように気をつけましょう。

薬剤性

高血圧治療中の場合、治療として降圧剤を内服することで、意図するより血圧が低下しすぎてしまうこともあります。また、そのほかの薬剤でも血圧の低下をきたす可能性がある薬剤があります。例えば、利尿薬や抗うつ薬、向精神薬、鎮痛薬、抗パーキンソン薬などです。また、男性では前立腺肥大症に対し使用する治療薬の中に、血圧低下をきたす可能性があるものもあります。このため、服用中の薬剤がある方で血圧低下や立ちくらみなどある場合には、主治医や薬剤師に相談してみましょう。

【女性】朝の血圧が低い原因

若い女性の方で朝の血圧が低い原因として、本態性低血圧が原因となる事が多いです。体質的な場合もありますが、やせ型で虚弱体質の方で起こりやすいと言われています。また、自律神経のバランスが崩れた自律神経失調症の方も良くみられます。そのほかの原因についても可能性があるものを解説していきましょう。

自律神経失調症

自律神経は、意思とは関係なく、体の体温や代謝、心拍数、消化などの調節をしている神経です。自律神経には興奮状態で働く交感神経と、リラックス状態で働く副交感神経の2種類あり、この2つの神経がバランスをとりながら働いています。しかし、ストレスや生活習慣の乱れなどから自律神経失調症となると、このバランスが崩れてしまい血圧が低くなることが少なくありません。朝の低血圧の原因となる事も考えられます。

貧血

女性では貧血がみられることが多いです。医学的に貧血とは、ヘモグロビンが低値となっている状態であり、女性では月経により出血が定期的に起こるため、貧血となりやすいです。貧血の方がすべて低血圧となるわけではありませんが、重度の貧血では血圧が下がることも少なくありません。貧血が進行しないように気をつけましょう。鉄分を多く含む食材を取り入れ、健康診断などで貧血を指摘された場合には、早めに内科を受診することをお勧めします。

睡眠不足など生活習慣の乱れ

睡眠不足や生活習慣の乱れは、自律神経失調症が起こりやすいと考えられています。生活習慣を整えることが大切です。また、このほかにも男性でもあげられた低血圧の原因も男女ともに起こる場合があります。低血圧の症状が持続する場合には早めに内科を受診して相談しましょう。

朝の血圧が低いと現れる症状

朝に血圧が低いと、朝の寝起きが悪かったリ、頭痛やめまいなどの症状がみられることがあります。朝の血圧が低いと出現しやすい症状を解説します。

寝起きが悪い

血圧が低い状態では、体のだるさや疲労感が出やすいです。そのため、朝からだるさが出ていると、起き上がりづらく寝起きが悪くなることも少なくありません。

頭痛・めまい

低血圧となると、脳への血流が少なくなるため頭痛やめまい、立ちくらみなどがみられやすいです。

動悸・息切れ

低血圧の場合、全身への血液の循環が悪くなりやすいです。このため急に活動を始めようとすると動悸や息切れなどの症状がみられることもあります。

食欲低下

朝の血圧が低いと、起き上がっただけでも血圧がさらに低くなりやすく、だるくなりやすいです。このため、調子が悪くなり、朝食が食べられず欠食することも少なくありません。しかし、朝食をとらないことが続くと、一日の活動のためのエネルギー補給ができず、さらに血圧低下をきたし、不調の悪循環になりかねません。不調のため食欲低下が続く場合には、早めに内科を受診して相談しましょう。

朝の血圧が低くなりやすい人の特徴

朝の血圧が低くなりやすい人は、いくつか特徴があります。この特徴について解説をいたします。

持病がある

糖尿病に伴う自律神経障害や、心不全、甲状腺機能低下症、副腎機能低下症などさまざまな病気で低血圧になりやすいです。また、高血圧があり降圧剤を飲んでいることで薬剤性の低血圧となる事もあります。このほかにも、現在飲んでいる薬剤が血圧低下を招いている可能性も考えられ、注意が必要です。朝の血圧が低すぎる場合、低血圧により日常に支障が出ている場合には主治医にまず相談をしてみましょう。

運動量が少ない

運動量が少ないと、全身の筋肉量が少なくなりやすいです。筋肉量が少なくなると、血圧は低くなりやすいと言われています。筋肉は全身から心臓に血液を戻すポンプの役割を担っており、筋肉量が少なくなると、血液循環が滞りやすく、低血圧やむくむ原因となります。また、本態性低血圧や起立性低血圧を起こしやすいです。低血圧が認められる場合には、無理のない範囲で筋力トレーニングや有酸素運動を行うと良いでしょう。

脱水症

脱水となり、循環血液量が減ると血圧は下がりやすくなります。夏場で汗をかいても、十分な水分補給がされていないと脱水になりやすいです。夜間にも汗をかくので、適切な水分補給がなされていないと朝に血圧が下がりやすくなるため注意をしましょう。

生活習慣が乱れている

食事の摂取量が少なかったリ、バランスが悪い、生活リズムが乱れている方では血圧が低くなることがあります。だるさやめまい、立ちくらみなどを起こしやすく、日常生活にも支障が出ます。心当たりがある場合には、まず生活習慣を整え、それでも立ちくらみなどが持続する場合には、まず内科を受診しましょう。

「血圧の下が低い」状態の特徴的な病気・疾患

ここではメディカルドック監修医が、「血圧の下が低い」に関する病気を紹介します。どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

低血圧

はっきりとした診断基準があるわけではありませんが、一般的に低血圧は収縮期血圧が100mmHg未満であるものをいいます。低血圧の原因としては、特にはっきりとした原因となる病気が無い本態性低血圧や、自律神経障害による低血圧、脱水や薬剤性による低血圧などがあります。低血圧が続く場合、まずは原因を調べることが大切です。原因により、治療法が異なるため、まず内科を受診して相談をしましょう。

起立性低血圧

仰向きに横たわった状態もしくは座位から立ち上がったときに、3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上低下するか、収縮期血圧の絶対値が90mmHg未満に低下、または拡張期血圧が10mmHg以上低下したときに起立性低血圧と診断します。 原因は、脱水や薬剤性のものが多いですが、自律神経障害に伴い起立性低血圧がみられることもあります。立位となった時に血圧が低下し、失神をきたすこともあるため注意が必要です。 この起立性低血圧は、脱水や食べ過ぎ、運動後に悪化することが多いため注意し、なるべく避けるようにしましょう。また、降圧剤や硝酸薬、利尿剤などの原因となる薬剤が無いか確認も必要です。予防としては、急に立ち上がらない様にし、ゆっくりと物につかまりながら立つようにしましょう。それでも、起立性低血圧の症状が続く場合には循環器内科の受診をお勧めします。

食事性低血圧

食事性低血圧は、食事後に血圧が異常に低下する現象です。健常者では、食後の血圧は一過性に収縮期血圧が上昇するか、拡張期血圧がわずかに低下する程度の変化です。しかし、自律神経障害がある方では食後に異常に低下します。また、高血圧や糖尿病、高齢者でも食後の低血圧が起こることがあるため、注意が必要です。食後に血圧が低下することで、失神や転倒することもあります。食後に意識がぼーっとする、立ちくらみが強くなるような症状がある時には、過食をしないように気を付け、症状が続く場合には内科を受診しましょう。

甲状腺機能低下症

甲状腺とは、のどぼとけの下に位置する臓器です。甲状腺では、甲状腺ホルモンという、体の新陳代謝を盛んにするなどの役割をもつホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、代謝が落ちてしまい、だるさ、無気力、寒がり、むくみ、浮腫などの症状がみられることが多いです。時に低血圧がみられることもあります。 甲状腺機能低下症の中で最も多い病気は慢性甲状腺炎(橋本病)です。橋本病は自己免疫疾患の一つであり、甲状腺全体が腫れていることが特徴です。甲状腺機能低下症と診断された場合、甲状腺ホルモンを服用して治療を行います。

心不全

心臓の病気により心臓のポンプ機能が低下する、いわゆる心不全となると、十分に血液を送り出すことができなくなり低血圧となる事もあります。心筋梗塞や心筋症、不整脈、弁膜症などさまざまな心臓の病気により心不全をきたす可能性があります。 むくみや息切れ、体重増加などとともに労作時に息切れや息苦しさを感じる場合、心不全が考えられ、循環器内科を受診して相談をしましょう。

朝の血圧が低くならないための予防法

規則正しい生活を送る

自律神経のバランスが崩れることで血圧が低下することがあります。自律神経のバランスが崩れることを自律神経失調症と言いますが、ストレスや生活リズムが崩れることで起こりやすいと考えられています。このため、自律神経失調症からの血圧低下を防ぐためにも規則正しい生活を心がけましょう。

バランスの良い食事を摂る

食事の摂取が少なく、栄養状態が悪い場合には自律神経のバランスを崩したり、血圧が低い傾向となる事もあります。なるべくバランスの良い食事を摂るようにしましょう。

脱水とならないようにする

脱水となり、循環血液量が減ることは血圧低下の原因となります。水分摂取をこまめにし、脱水とならないようにしましょう。

「血圧の下が低い」についてよくある質問

ここまで血圧の下が高いことについて紹介しました。ここでは「血圧の下が高い」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

朝、起きるのが辛いのは低血圧が原因でしょうか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

朝に起きるのがつらい場合、低血圧が原因となっていることも少なくありません。血圧が低いことで、脳への循環が悪くなり、ふらつきがおこったり、頭痛がみられたりすることもあります。朝が弱いと感じ、起きられない時、血圧を測ってみましょう。収縮期血圧100mmHg未満が持続し、症状がある場合には内科で相談をしてみましょう。

まとめ 朝の低血圧の原因はさまざま。原因を見つけるために内科受診を!

朝の血圧が低い場合、さまざまな原因が考えられます。何かしらの病気から自律神経障害をきたしていたり、薬剤性、脱水、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、自律神経失調症などの可能性が考えられます。また、原因がないにも関わらず、体質的に低血圧が起こる本態性低血圧という場合も少なくありません。原因により対処法は異なります。低血圧が持続する場合には内科で相談をしてみましょう。

「血圧」の異常で考えられる病気

「血圧」から医師が考えられる病気は9個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

循環器系の病気

内分泌代謝系の病気

神経系の病気

  • パーキンソン病

内科系の病気

低血圧症がみられる病気の一部をあげました。これらの病気以外にもさまざまな病気の可能性があります。低血圧症を改善するためにはまず原因を調べることが大切です。血圧が低く、ふらつきなどの症状が続く場合には内科・循環器内科を受診して相談をしましょう。

この記事の監修医師