運転免許の適性試験で行う「深視力検査」とは?視力検査の違いも医師が徹底解説!

深視力検査とは?Medical DOC監修医が深視力検査と視力検査の違いや結果の見方などを解説します。

監修医師:
栗原 大智(医師)
目次 -INDEX-
深視力検査とは?
深視力検査とは、両目でものを見る力を測る検査です。運転免許の取得・更新時に大型免許などで必要とされる重要な検査項目の一つです。深視力検査では、物体を立体的にとらえる力や遠近感を測定し、両目のバランス良く使えているかを確認します。この記事では深視力検査とは何か、その受け方や通常の視力検査との違い、結果の見方や不合格時の対処方法まで解説します。運転免許の適性試験で不安な方や、深視力検査について詳しく知りたい方は参考にしてください。深視力検査とは?
深視力検査とは、両目でものを立体的に見る能力(遠近感や奥行き感覚)を調べる検査です。片目ずつ測る通常の視力検査とは異なり、両目を同時に使ったときの「ものの距離感を正しくつかむ力」をチェックします。具体的には、三本の棒を用いた三桿法(さんかんほう)という専用の奥行知覚検査装置によって行われます。中央の1本だけが前後に動く3本の棒を2.5メートル先から見て、中央の棒が他の2本と一直線に並んだタイミングでボタンを押します。このときの棒のズレの距離を計測し、3回測定した平均のズレが2cm以内であれば合格となります。深視力検査は、物体の奥行きや立体感を正しく認識できるかどうかを調べるための検査であり、大型車の運転など安全に関わる場面で欠かせない能力の評価に用いられます深視力検査はどこで検査できるの?
深視力検査は運転免許の取得・更新だけでなく、日頃から自分の両眼視機能を確認したい場合にも活用できます。まず代表的なのは、各都道府県の運転免許試験場です。ここでは免許の適性試験として公的な基準で判定されるため、追加費用は不要です。再検査も同じ日に受けられるため、合否をその場で確定させたい人に最適と言えます。 次に、指定自動車教習所(大型・第二種コースなど)でも深視力計を備えている学校が増えており、授業の一環として無料で測定できることがあります。教官から検査のコツも聞けるので、本番前に装置に慣れておきたい人に向いています。 一方、不合格の原因を詳しく調べたい場合は眼科クリニックを受診してください。すべての眼科に装置があるわけではありませんが、導入している医院なら1〜3千円程度の自費で検査でき、そのまま視力や眼位の精密検査、プリズム眼鏡の処方など治療までを受けられます。また、眼鏡店の中には、無料またはワンコインで体験測定を行っている店舗があります。度数確認やメガネの買い替えと合わせてチェックでき、気軽に試せる点が魅力です。 受診前のポイントとしては、- 電話予約時に深視力計の有無を必ず確認する
- 大型免許更新なのか矯正度数の確認なのか目的を伝える
- 度数が合った眼鏡・コンタクトを持参する
深視力検査で目の何がわかる?
深視力検査が測定しているのは、目そのものの視力ではなく、左右の目と脳が連携してどれだけ正確に奥行きを把握できているかという両眼視機能です。両眼視機能は大きく3段階に分けられます。同時視:左右の網膜に映る2枚の映像を同時に認識する力
融像視:2枚の映像を脳内で重ね合わせ、1枚の立体的映像にまとめる力
立体視:重ね合わせた映像から微細な奥行き差を感じ取り、距離感を判断する力
深視力検査は主に3段階目の立体視を数値化し、棒のズレ幅(誤差)で評価します。ズレが小さいほど、脳が左右の像を高精度に統合できている証拠です。逆に誤差が大きい場合は、片目の視力低下、斜視・斜位(視線がずれる状態)、不同視(左右の度数差)、さらには外眼筋や視神経の異常など、さまざまな両眼視の障害が疑われます。 両眼視機能が低下すると、車庫入れや高速道路での車間距離の判断、階段の上り下り、球技スポーツなど距離感が命となる場面でミスや危険が増えます。特に大型車や二輪の運転では深視力が安全運転に直結するため、免許基準でも厳しくチェックされています。深視力検査により距離感の誤差が数値化されることで、生活上のリスクを事前に把握し、必要な矯正やトレーニングにつなげることができます。
深視力検査の費用は?
運転免許試験場での深視力検査は手数料内に含まれており追加の費用はかかりません。一方、眼科や眼鏡店で検査のみ受ける場合は有料(数百円~数千円)となることが多いです。いずれにせよ、事前に費用を確認しておくと安心です。深視力検査前日や当日の注意点
深視力検査は正しく検査することが重要です。検査前日や当日の注意点は下記の通りです。・十分な休息を取る: 検査前日は夜更かしせず十分に睡眠をとり、当日もスマホやパソコンの長時間使用は避けて目を休ませておきましょう。
・眼鏡・コンタクトの準備: 視力矯正が必要な人は度数の合った眼鏡・コンタクトを使用し、乱視などがきちんと矯正されていることを確認しておきます。
・落ち着いて検査に臨む: 緊張するとタイミングが取りにくくなるため、深呼吸してリラックスし、集中力を保ちましょう。アルコールや強い眠気を誘う薬も検査前は控えてください。
この3つのポイントに注意することで、検査を正確に行うことができます。
深視力検査と視力検査検査の違い
深視力検査と視力検査を混同している方もいらっしゃいますが、違いは下記の通りです。・測定する機能の違い: 視力検査はランドルト環などを用いて静止した対象の視力(識別能力)を片目ずつ測ります。一方、深視力検査は専用装置で動く棒の遠近感覚を両眼で測定します。
・検査方法の違い: 視力検査では視力表や測定器を使い、それぞれの目の視力を測定します。深視力検査では三桿法と呼ばれる装置を使い、3本の棒の中央の棒が両端の棒と一直線に並ぶタイミングを当てるという動的な奥行き知覚の検査を行います。
・判定基準の違い: 視力検査は「視力○以上」という値で判定しますが、深視力検査は平均誤差が2cm以内かどうかで合否を判定します。例えば大型免許では両眼視力0.8以上かつ片眼0.5以上に加え、深視力誤差2cm以内の条件を満たす必要があります。
このようにいくつかの違いがあり、視力が良くても深視力が悪い場合があるので注意が必要です。逆に片眼ずつの視力が基準ギリギリでも、両目で立体視できれば深視力検査に合格できることもあります。
深視力検査の結果の見方と再検査が必要な診断結果・所見
ここまでは視力検査について基本的なことを紹介しました。再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。深視力検査の結果の見方・分類と主な所見
深視力検査の結果は、3回検査した平均のズレ幅(誤差)で示されます。平均誤差が2cm以内なら合格(正常範囲)、2cmを超えると不合格となります。2cmという基準は、検査距離2.5mにおける許容ズレ幅を意味します。合格の場合は遠近感覚が正常範囲内と判断されます。不合格だった場合は、遠近感覚に何らかの異常が疑われるため再検査や精密検査が必要になります。深視力検査の結果で精密検査が必要な基準と内容
深視力検査で不合格となった場合は、期間内に再検査を受けて合格する必要があります。必要に応じて眼科で視力や眼位などの精密検査を行い、原因に応じた適切な矯正・治療を実施します。例えば矯正不足ならメガネの度数調整、斜視や斜位があればプリズム眼鏡による補正で深視力が改善する場合があります。幼少期から立体視が得られていないようなケースでは改善が難しく、大型免許の取得を断念せざるをえないこともあります。また、検査に不慣れなだけの場合は事前に測定器で練習することで検査のコツが掴め、合格率が高まります。「深視力検査」についてよくある質問
ここまで深視力検査について紹介しました。ここでは「深視力検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
深視力検査に受からない理由について教えてください。
栗原 大智 医師
深視力検査に不合格となる原因としては、片目の視力低下や斜視による両眼視の障害、左右の視力差や眼鏡度数の不適合による両眼視バランスの不良、検査に不慣れといったことが考えられます。
深視力検査は何回まで受けることができますか?
栗原 大智 医師
深視力検査には明確な受検回数の制限はありません。運転免許の適性検査では、不合格だった場合に同じ日に時間をあけて再検査を受けることや、後日あらためて再検査を受けることが認められています。つまり、合格するまで何度でも挑戦できます。ただし、免許の新規取得や更新には有効期限内に合格しなければいけない決まりがあるため、期限に注意して早めに再検査を受ける必要があります。なお、再検査に追加の手数料はかかりません。焦らず目のコンディションを整え、しっかり対策して再チャレンジしましょう。
まとめ 深視力検査で異常があれば眼科で精密検査を
深視力検査は、両目で正しく距離感をつかめているかを調べる重要な検査です。特に大型車を運転する方には欠かせない適性項目で、異常が疑われたら早めに眼科専門医に相談することをおすすめします。適切な矯正や訓練によって深視力が改善し、再検査に合格できるケースも多く報告されています。安全運転のためにも、自分の両眼視機能を把握し、違和感を覚えたら早期に受診して対処しましょう。「深視力検査」の異常で考えられる病気
「深視力検査」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。眼科の病気
- 斜視
- 弱視
- 不同視
- 外眼筋麻痺




