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どれくらい「尿酸値が高いと痛風」を発症しやすくなる?高くなる原因も医師が解説!

 公開日:2025/05/17
どれくらい「尿酸値が高いと痛風」を発症しやすくなる?高くなる原因も医師が解説!

尿酸値と痛風の関連性とは?Medical DOC監修医が尿酸値の基準値や尿酸値が高くなると痛風を発症する原因・低いのに痛風を発症する原因や下げる食べ物や予防法などを解説します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

尿酸値とは?

尿酸値とは、血液中の尿酸濃度を表す数値です。尿酸は肝臓でプリン体が分解される際に生成されます。プリン体とは、食品や体内の細胞に含まれる成分のことです。プリン体は分解されると尿酸が生成されます。通常、尿酸は血液を通じて腎臓に運ばれて、尿として排出されます。
尿酸値は、健康状態やさまざまな病気の指標として重要な検査項目です。特に、痛風や腎臓病などの発症を評価するために使用されます。尿酸値が高い状態が続くと、痛風や尿路結石などの合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

痛風とは?

痛風は、尿酸値が高い状態が続くことで発症する病気で、尿酸結晶が関節に沈着し、激しい炎症を引き起こします。尿酸結晶化とは、血液中に溶けきれなかった尿酸が固まり、針状の結晶となることです。
炎症が生じる部位は、足の親指の付け根が赤く腫れて痛むことが多いです。その他にも、足関節、足の甲、アキレス腱のつけ根、膝関節、手関節などにも痛みを生じる場合があります。
この痛みは「風が吹いても痛い」と形容されるほど強く、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。症状自体は、数日〜1週間程度続き、その後は少しずつ自然と治まることがほとんどです。
痛風は尿酸値が高い状態が続くと発症することが多いため、かつて「ぜいたく病」と呼ばれ、美食や飲酒が原因とされていました。しかし、現代では食生活の乱れやストレス、遺伝的要因など、さまざまな原因が関係していることがわかっており、尿酸値が正常範囲内であっても発症する場合があります。

尿酸値の基準値

尿酸値は、血液検査で簡単に測定でき、尿酸値の基準範囲は2.1〜7.0 mg/dLです。
一般的にこの数値内で調整されますが、生活習慣の乱れなどでバランスが崩れることがあります。尿酸値が7.0 mg/dL以上で高尿酸血症と診断されます。8.0 mg/dL以上で合併症(腎障害、高血圧、糖尿病など)がある場合は、生活指導に加えて薬物療法の適応となります。合併症がなくても、9.0 mg/dL以上となる場合も同様です。

尿酸値が高くなる原因

尿酸値は、さまざまな原因で高くなります。以下に、主な原因を解説します。

食生活の乱れ

プリン体を過剰摂取すると尿酸値が上昇するため、1日の摂取目安は400mg以下とされています。以下は、プリン体を多く含む食品の例です。

・極めて多い(300mg~):鶏レバー、白子、あんこう(肝酒蒸し)など
・多い (200~300mg):豚や牛のレバー、カツオ、マイワシなど
・中程度(100~200mg):肉(豚・牛・鶏)類の多くの部位、魚類(マグロ、スルメイカ)など[3]

また、アルコール(特にビール)や砂糖入りの飲料(ソフトドリンク、フルーツジュース)も尿酸値を上昇させるため、注意が必要です。

肥満

肥満は、尿酸値の上昇と深く関係しています。体重が増加すると、細胞の代謝が活発になり、プリン体の産生が増えるため、尿酸値が上昇します。さらに、肥満の場合、腎臓からの尿酸排泄が低下しやすいため、尿酸値が高くなりやすくなります。

尿酸の排泄低下

尿酸は通常、腎臓から尿として排泄されますが、腎機能の低下や特定の薬剤(利尿剤など)の使用により、尿酸の排泄が妨げられ、尿酸値が上昇する場合があります。

尿酸値が高くなると痛風を発症する原因

尿酸値が高い状態が続くと、痛風を発症する仕組みとその原因について解説します。

尿酸の結晶化

尿酸値が高い状態が続くと、血液中に溶けきれなかった尿酸が結晶化することがあります。この結晶は鋭い針状で、関節に沈着すると激しい炎症を引き起こし、痛風を発症します。特に、足の親指の付け根にたまりやすいです。

関節内での炎症反応

尿酸の結晶が関節内にたまると、体の免疫システムがこれを異物と認識し、攻撃を始めます。免疫システムは、体を異物から守るための防御機構です。この免疫反応により、激しい炎症が起こり、痛みや腫れを伴う痛風が発症します。

遺伝的要因

GLUT9/SLC2A9やABCG2などの遺伝子は、尿酸値に影響を与えることが知られています。GLUT9(SLC2A9)は腎臓での尿酸再吸収に関与し、ABCG2は腸管からの尿酸排泄を促進します。これらの遺伝子に変異があると、尿酸値が上昇しやすくなります。尿酸値の上昇によって、痛風発作のリスクが高まります。

尿酸値が低いのに痛風を発症する原因

尿酸値が正常範囲内または低い場合でも、痛風のような症状が現れることがあります。以下に、その主な原因を解説します。

痛風発作時の尿酸値の変動

痛風の発作中は、炎症を促進するサイトカインが増加し、腎臓からの尿酸排泄が促進されるため、痛風の発作時には尿酸値が低下している場合があります。サイトカインは、免疫反応を調節するタンパク質で、炎症を促進する働きがあります。

関節内の尿酸結晶の蓄積

過去に尿酸値が高い状態が続いていた場合、関節内に尿酸結晶が蓄積されている場合があります。一度関節内に蓄積した尿酸結晶は、血清尿酸値が正常化しても残存していることがあります。この結晶が何らかのきっかけで脱落し、痛風の発作が起こる場合があります。

検査前の生活習慣の影響

尿酸値を測る際に摂生を行っていた場合、検査結果が実際の尿酸蓄積状況を正確に反映しないことがあります。検査前にプリン体やアルコールを控えたり、尿酸降下薬を服用したりすると、尿酸値が一時的に低下します。しかし、過去に高尿酸血症が続いていた場合、関節内に尿酸結晶が残っている可能性があり、尿酸値が低くても痛風発作が起こることがあります。

尿酸値の上昇を抑える、予防する食べ物・食生活

尿酸値の上昇を抑えるには、食生活の見直しが重要です。以下に、効果的な食べ物と食生活のポイントを解説します。

水分を十分に摂取する

1日に1.5〜2リットルの水分を摂取することで、尿の生成が促進され、尿酸の排泄を助けます。特に、水やお茶など糖分を含まない飲料を積極的に摂取しましょう。

低プリン食品

低プリン食品とは、プリン体の含有量が少ない食品のことです。以下は、低プリン食品の例です。

・植物性タンパク質:豆腐、納豆、豆乳など
・野菜:キャベツ、レタス、ブロッコリーなど
・乳製品:牛乳、ヨーグルト、チーズなど

これらの食品を意識的に摂取し、プリン体の多い食品を控えることで、尿酸値を下げる効果が期待できます。

乳製品を摂取する

牛乳には、尿酸の排出を促進する効果が期待されています。1日に240ml以上の牛乳を飲むと痛風の発症頻度が減少したという報告があります。低脂肪ヨーグルトも同様に、痛風の発症頻度を減少させる効果が報告されています。

抗炎症作用のある食品

オメガ-3脂肪酸を含む食品(サーモン、くるみなど)や、緑茶などは、炎症を抑える効果があり、痛風の予防に役立ちます。

食物繊維が豊富な食品

食物繊維は、プリン体の吸収を抑制して尿酸値を下げる効果があります。以下は、食物繊維が豊富な食品の例です。

・野菜:ブロッコリー、にんじん、ほうれん草など
・海藻:わかめ、昆布、ひじきなど
・全粒穀物:オートミール、全粒パン、玄米など

尿酸値を下げる予防法

尿酸値を下げて、痛風などを予防するためには、生活習慣全般を見直すことが重要です。以下に、効果的な予防法を解説します。

適度な運動を心がける

適度な運動は肥満を防ぎ、尿酸値の上昇を抑える効果があります。ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などの有酸素運動を週3回、30〜60分程度行うことで、尿酸値の管理に役立ちます。ただし、激しい運動は逆に尿酸値を上げることがあるため、注意が必要です。

ストレスを管理する

ストレスを感じると交感神経が活性化し、心身が緊張状態になります。交感神経は、ストレスや緊張時に活性化する神経で、副交感神経はリラックス時に活性化する神経です。十分な睡眠や半身浴で副交感神経を活性化し、リラックスする時間を作りましょう。

体重を管理する

肥満は尿酸値の上昇と深く関係しています。体重を減らすことで、尿酸値を効果的に下げることができます。適切なカロリー摂取と運動を組み合わせ、健康的な体重を維持しましょう。

アルコールを控える

アルコール、特にビールや甘い酒は尿酸値を上昇させるため、摂取を控えましょう。どうしても飲みたい場合は、以下の適量を守り、水を一緒に摂取することが重要です。

・ビール:500ml以下
・日本酒:1合以下
・ウイスキー:60ml以下
・焼酎(25%):100ml以下

定期的な健康診断を受ける

定期的に健康診断を受けて、尿酸値をチェックすることで、異常があれば早めに対処することができます。必要に応じて、医師と相談し、薬物療法などの開始を検討することも1つの方法です。

「尿酸値と痛風」についてよくある質問

ここまで尿酸値と痛風について紹介しました。ここでは「尿酸値と痛風」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

尿酸値の数値がどれくらいだと痛風になりやすいのでしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

尿酸値が7.0 mg/dLを超えると「高尿酸血症」と診断され、尿酸結晶が関節に沈着しやすくなり、痛風を発症するリスクが高まります。
尿酸値が高くても必ず痛風を発症するわけではなく、個人差があります。尿酸値が高い場合は、生活習慣の見直しや医療機関を受診し、医師に相談しましょう。

尿酸値の数値が8だと体にどんな影響を与えますか?

木村 香菜木村 香菜 医師

尿酸値が8.0 mg/dLが長く続くと、痛風発作や尿路結石、腎機能低下などの合併症が起こる可能性があります。尿酸値が8.0 mg/dLの場合は、生活習慣を見直し、必要に応じて医療機関を受診しましょう。

編集部まとめ

尿酸値は、血液中の尿酸濃度を表す数値で、7.0 mg/dLを超えると痛風などを発症する可能性が高まります。しかし、尿酸値が高くなくても、痛風などを発症する場合もあります。足の親指の付け根に強い痛みや腫れがある場合は、すぐに医療機関を受診し、専門医の診断を受けましょう。

「尿酸値」の異常で考えられる病気

「尿酸値」から医師が考えられる病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

内科の病気

整形外科の病気

  • 痛風関節炎

泌尿器科の病気

尿酸値の異常は、さまざまな疾患と関連しています。病気は早期発見・早期治療が重要なため、気になる症状がある場合はすぐに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師