「がんの血尿」と“それ以外の血尿”の違いを医師が解説 とくに危険な血尿とは?

突然血尿が出たら誰でも焦るもの。そのようなとき、「何科を受診したらよいのだろう?」と悩む人もいるかもしれません。また、どのような病気の可能性があるのか、ドキドキしている人もいるかもしれません。血尿が出たらどうしたらよいのか、かねみつクリニックの金光先生に教えてもらいました。

監修医師:
金光 俊行(かねみつクリニック)
なぜ血尿が出るのか?

編集部
血尿とは何ですか?
金光先生
血尿とは尿に血液が混ざった状態を言います。血尿は大きく2つに分類され、目で見てわかる血尿(肉眼的血尿)と、顕微鏡で検査してみないとわからない血尿(尿潜血)があります。一般的に、血尿は年齢とともに増え、男性よりも女性に多く見られる傾向があります。
編集部
そもそもなぜ、血尿が出るのですか?
金光先生
血尿は、尿を作る腎臓や尿の通り道の重要な病気のサイン。特に肉眼的血尿がある場合、膀胱がんや腎がんなどの可能性もあります。
編集部
がんの可能性もあるのですか。
金光先生
はい。肉眼的血尿は、痛みや頻尿など何らかの症状を伴う「症候性肉眼的血尿」と、何も自覚症状がない「無症候性肉眼的血尿」に分類されます。症候性肉眼的血尿の場合には、腎結石、尿管結石、膀胱結石、出血性膀胱炎、尿道炎、前立腺炎、前立腺肥大症、腎炎などの可能性が考えられます。一方、無症候性肉眼的血尿の場合には、膀胱がんや腎がんなどの悪性腫瘍や、尿路結石、尿路感染症などが考えられます。
編集部
顕微鏡で調べないとわからない血尿の場合には、どのような原因が考えられるのですか?
金光先生
この場合にも膀胱がんなど、がんの可能性が考えられるほか、腎機能に関連する疾患が考えられます。特に、腎臓の糸球体という器官に何らかの異常があると、顕微鏡的血尿が起きることがあります。この場合には尿に血液だけでなく、タンパクが含まれているかが鑑別の鍵になります。
特に危険な血尿とは?

編集部
血尿にもいろいろな原因があるのですね。中でも特に危険な血尿とはどういうものですか?
金光先生
どちらかというと顕微鏡的血尿よりも、肉眼的血尿の方が重度の疾患が見つかることが多いとされています。研究により、膀胱がんの85%は肉眼的血尿を契機として見つかることもわかっています。そのほか、腎がんも肉眼的血尿で見つかることも少なくありません。
編集部
症状がある場合とない場合では、どちらの重症度が高いことが多いのですか?
金光先生
一般的に、頻尿や排尿時の痛みなどの症状を伴う症候性肉眼的血尿の場合には、尿路結石症や尿路感染症が見つかることが多いとされています。一方、無症候性の場合には膀胱がんなど悪性腫瘍が見つかる可能性があるとされています。症状があれば「病院へ行かなければ」と強く感じるかもしれません。しかし、症状がないのに肉眼的血尿が出たという場合には、無症状だからといって放置されることも少なくありません。しかし、がんなどのリスクもあるため、早めに受診するようにしましょう。
編集部
その際には何科を受診すればよいのでしょうか?
金光先生
泌尿器科を受診するようにしましょう。健康診断の結果、血尿を指摘された場合にも早めに泌尿器科を受診しましょう。
血尿が出たらどんな検査をおこなうのか?

編集部
血尿が出た場合、どのような検査をおこなうのですか?
金光先生
一般的には尿検査に加えて、超音波検査をおこないます。これによりがんや尿路結石の有無などを確認します。もし何らかの異常が確認された場合には、CT検査やMRI検査、採血、膀胱鏡など詳細な検査をおこないます。
編集部
膀胱鏡とはどのような検査ですか?
金光先生
やわらかい電子スコープを用いて尿道から膀胱の内部を観察する検査のことをいいます。痛みが少なく、精度も高いため、膀胱がんを診断したり、治療方針を決定したりするのに用いられます。
編集部
どのような治療をおこなうのですか?
金光先生
疾患に応じて異なります。たとえば尿路感染症が原因である場合には抗生物質を投与しますし、尿路結石症の場合には必要に応じて石を砕いたり、除去したりする治療をおこないます。膀胱がんが原因であった場合には、一般的には手術治療をおこないますが、進行しているケースでは手術治療に放射線治療や薬物治療などを組み合わせる集学的治療をおこなうこともあります。いずれにしても原因となる疾患の鑑別が非常に重要なので、「血尿が出たのは一度だけ」「痛みがない」などで受診を先延ばしにせず、早めに専門医の診察を受けるようにしましょう。
編集部
最後に読者へのメッセージをお願いします。
金光先生
症状の有無に関わらず、血尿が出たら一度診察を受けることをお勧めします。健康診断などで尿潜血を指摘された場合、「特に症状がないから」「肉眼ではわからないから」という理由で放置してしまいがちですが、ぜひ一度は泌尿器科を受診して検査を受けるようにしましょう。血尿で気をつけたいのは腎臓がんや膀胱がんなどの尿路悪性腫瘍で、これらは喫煙に大きく関係しています。特に50歳以上で喫煙歴のある人はそうでない人に比べて膀胱がんのリスクが高くなります。膀胱がんが進行すると膀胱を摘出しなければならなくなり、QOLは大きく下がります。早期発見のためにも血尿を放置せず、必ず検査を受けるようにしましょう。
編集部まとめ
血尿が出た人のなかでがんが見つかる確率はそれほど高くないとはいえ、ゼロではありません。万が一のことを考え、血尿が出た場合には量や頻度に関係なく、必ず一度は泌尿器科を受診するようにしましょう。
医院情報
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診療科目 | 泌尿器科、腎臓内科 |