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「女性の中性脂肪の基準値」はご存知ですか?女性で中性脂肪が高くなる原因も解説!

 公開日:2025/02/15

女性の中性脂肪の基準値とは?Medical DOC監修医が中性脂肪が高い原因・年齢別の基準値や再検査が必要な内容・考えられる病気・改善方法などを解説します。

伊藤 陽子

監修医師
伊藤 陽子(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

女性の中性脂肪の基準値

中性脂肪の数値は血液検査で分かり、女性の基準値は空腹時で30~117mg/dLです。ただし、女性は閉経前後で基準値も大きく変わり、閉経前女性は30〜113mg/dL、閉経後女性では37~159mg/dLが基準範囲となります。しかし、動脈硬化性疾患のリスクをふまえ脂質異常症の診断基準として空腹時中性脂肪で150mg/dL以上を高トリグリセライド血症と診断[陽伊3] することより、149mg/dLまでを基準範囲と考えると良いでしょう。
このように、女性はそれぞれの世代によって平均値や対策すべき点が異なります。年代ごとの注意点などについて中心に解説いたします。

中性脂肪とは?

中性脂肪(トリグリセリド:TG)は、体内に存在する脂肪の一種で、食事から摂取されるだけでなく、肝臓でも作られています。
この中性脂肪は、血液によって全身に運ばれて、体が必要とするエネルギー源として機能するだけでなく、ビタミンの吸収や体温の維持、内臓の保護などのように重要な役割を果たしています。
このように、中性脂肪は適切な量であれば健康にとって良い効果がありますが、過剰に摂取すると、皮下脂肪や内臓脂肪として蓄積され、心血管疾患や糖尿病のリスクを高める要因になるなど、健康に悪影響を及ぼす場合があります。

20代~30代女性の中性脂肪の基準値

令和元年国民健康・栄養調査の報告では、20代の女性平均値は109.1±78.1mg/dL、30代女性の平均値は97.3±66.2mg/dLです。
この年代は、基礎代謝が比較的高いため、体内の脂肪が効率よくエネルギーとして消費されやすいのが特徴です。
しかし、カップ麺・スナック菓子などのジャンクフードをよく摂取するなど、炭水化物・糖質の摂り過ぎや運動不足の状態が起こる可能性があります。このように食事のバランスが崩れ生活習慣が乱れていると、中性脂肪が基準値を超えてしまう場合があるため、バランスの取れた食生活と適度な運動を心がけましょう。

40代女性の中性脂肪の基準値

40代女性の平均値は107.6±70.1mg/dLです。
40代になると基礎代謝が低下してくるだけでなく、ホルモンバランスの変化などが影響し、中性脂肪が上昇しやすくなります。
また、仕事や家庭のストレスが多くなるため、中性脂肪に影響を与える場合もあります。健康を保つためには、運動や趣味を取り入れるなどして、ストレスを解消するなどの工夫が効果的です。

50代女性の中性脂肪の基準値

50代女性の平均値は130.2±106.2mg/dLです。
この世代になると、閉経に伴うホルモンバランスの変化により中性脂肪が上がりやすくなります。特に、女性ホルモンのエストロゲンが減少するため、内臓脂肪の増加や中性脂肪の上昇などに影響を与えやすくなります。
食事の内容は今まで以上に糖質の摂りすぎに注意し、運動を習慣として取り入れましょう。

60代女性の中性脂肪の基準値

60代女性の平均値は153.3±112.3mg/dLです。
この時期になると、筋肉量の減少や活動量の低下により、全世代の中でも中性脂肪の値が最も高いです。平均値が高トリグリセライド血症の基準値である150mg/dLを上回ります。
普段からウォーキングなどの軽い運動を行うとともに、糖分や炭水化物を控えた食生活を心がけることが重要です。

70代女性の中性脂肪の基準値

70代女性の平均値は140.1±87.9mg/dLです。
70代の平均値は食事の摂取量の低下から60代よりも低くなる傾向です。この時期には筋肉量がさらに減少し、サルコペニアを起こしやすいです。食事を見直し、炭水化物のみの偏った食事ではなく、たんぱく質をしっかり摂取して筋肉量が減らないようにしましょう。また、無理のない範囲で運動を取り入れましょう。

女性で中性脂肪が高くなる原因

女性の中性脂肪は、さまざま原因で高くなります。ここでは、中性脂肪が高くなると考えられている主な原因について紹介します。

運動不足

運動不足は、中性脂肪が増える大きな原因の1つです。日常生活において、身体活動が少ないと、中性脂肪がエネルギーとして消費されないため、体内に蓄積されやすくなります。
特にデスクワークの仕事や、車での移動が多い方は運動不足になりやすいため、注意が必要です。
運動は、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動を1日30分以上を目安に行うと効果的です。運動の頻度は、毎日行うことが理想ですが、少なくとも週に3日程度は行うことを意識しましょう。
また、どうしても運動時間の確保が難しい場合は、エレベーターではなく階段を使用する、1駅だけ歩くなど、日常生活の中で継続して取り組めそうな内容を行うだけでも中性脂肪を減らす効果が期待できます。

ホルモンバランスの変化

年齢を重ねると基礎代謝が低下するため、同じ生活を続けても中性脂肪が増えやすい傾向になります。特にエストロゲンが脂質代謝に関係していることが分かっており、閉経することでエストロゲンが急激に低下し、これに伴い血中のLDL-Cや中性脂肪が上昇します。[陽伊1] また、これに伴い、内臓脂肪の増加や肥満なども起こりやすくなるため注意が必要です。
対策としては、加齢に伴う変化を理解して、それに合わせた生活習慣を取り入れましょう。
具体的には、無理のない範囲で筋力を維持するための運動を行い、食事では良質な脂質やタンパク質を適度に摂取することが大切です。
また、定期的に健康診断を受けて自分の状態を把握するようにしましょう。

食習慣の乱れ

炭水化物や糖質が多い食事を続けていると、中性脂肪が増加するため注意が必要です。ご飯やパン、パスタなどの麺類は炭水化物が多く含んでいるため注意が必要です。
また、ジュース、菓子類などの糖質が多い食品を続けている場合も中性脂肪が増加しやすくなるため注意しましょう。

このように、食習慣の乱れがある場合は、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。具体的には、オメガ-3脂肪酸を含む魚や大豆類には、中性脂肪を減らす効果が期待されているため、意識的に摂取しましょう。

ストレス

過剰なストレスが日常的にかかっていると、ホルモンバランスを乱して、中性脂肪の代謝を妨げるだけでなく、ストレスが原因によって、食欲を増進させた結果、暴飲暴食に走り、中性脂肪の上昇を引き起こす場合もあります。
ストレスを感じている場合は、ストレッチやヨガなどのリラクゼーション法を取り入れることで、ストレスで乱れた自律神経を整える効果が期待できます。また、十分な睡眠を取ることも重要です。

アルコールの過剰摂取

アルコールを過剰摂取すると、中性脂肪の増加につながるといわれています。アルコール摂取は、脂質の摂取量が多くなるだけではなく、アルコールにより肝臓で作られすぎた中性脂肪が血液中に漏れ出る事、肝臓に残った中性脂肪が肝臓に蓄積して脂肪肝の原因となる事が問題となります。中性脂肪が高い場合や脂肪肝の方では、なるべくアルコール摂取を中止することが勧められますが、純エタノール量一日20g程度までの適量でのアルコール量に抑えることで改善が期待できます。
(純エタノール量20gとは、日本酒1合、ビール500ml、ワイン240ml程度です。)

健康診断の「中性脂肪」の見方と再検査が必要な「中性脂肪が高い」場合に関する数値・結果

ここまでは中性脂肪が高いと言われた場合について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

「中性脂肪」の基準値

中性脂肪の基準値は、30~149mg/dL となっており、この範囲内であれば、健康な状態と判断されることが多いです。以下のような数値の場合には注意が必要です。

・要注意:150~499mg/dL
200mg/dL以内であれば、生活習慣を見直すことで改善可能な段階ですが、200mg/dL以上となると、動脈硬化や脂質異常症の危険性が高くなるため、医師の指導を受けながら積極的な対策を行う必要があります。

・異常:500mg/dL以上
中性脂肪が 500mg/dL を超える場合は、急性膵炎や重篤な心血管疾患の前兆である危険性もあるため、すぐに医療機関での精密検査と治療が必要です。

「中性脂肪が高い」ときの再検査内容

健康診断などで中性脂肪が基準値を超えたら、再検査や精密検査が必要になる場合があります。
以下のような検査を行います。

・血液検査:
中性脂肪以外にも、LDL(悪玉コレステロール)やHDL(善玉コレステロール)の値など、血液中の脂質の状態をさらに詳しく調べます。

・肝機能検査:
中性脂肪が増加する原因として、肝臓の異常が疑われる場合があるため、肝酵素の値を測定して、脂肪肝や肝疾患の可能性を調べます。

・超音波検査:
腹部超音波検査では、脂肪肝の有無を確認するために行う場合があります。検査を行うことで、脂肪がどの程度肝臓に蓄積しているかを評価できます。
頸動脈超音波検査では、頸動脈の血管壁の厚さを測定することで、動脈硬化の程度を評価することができます。

中性脂肪の数値が気になる場合は、かかりつけ医や一般的な医療機関でも要な検査を受けることができます。
特に中性脂肪が500mg/dLを超える場合は、できるだけ早急に再検査を受けましょう。この数値に達している場合、膵炎などの重篤な疾患を発症する危険性が高いため、すぐに医療機関を受診しましょう。特に1000mg/dLを超えた場合には、膵炎の危険性が高く危険です。
150~499mg/dLの場合では、まず食事などを改善した上で数か月以内には再検査を受け、食事や運動などの生活習慣の改善で中性脂肪が改善しているかを確認しましょう。また、動脈硬化の評価などを行った上で治療を開始すべきか主治医と相談をしましょう。
再検査の結果によっては、食事療法や運動習慣などの生活習慣の改善指導や薬物療法が検討されます。

「中性脂肪が高い」と発症する可能性のある病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「中性脂肪が高い」に関する病気を紹介します。
どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

動脈硬化

動脈硬化は、動脈の内壁にコレステロールなどが蓄積して、血管が細くなっている状態です。このような状態が続くと、心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を引き起こす危険性が高くなります。
動脈硬化を引き起こしている原因を評価し、この原因に沿った改善方法を検討しましょう。脂質異常症や高血圧などの生活習慣病が原因となっている可能性が高いため、食事療法や運動療法などご自身の病気に沿った改善策を考える必要があります。動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞、動脈解離など命にかかわる重症な病気となる事もあります。早めの改善策が大切です。

糖尿病

糖尿病は、体内でインスリンの分泌や作用が不十分で、血糖値が高くなる病気で、健康的な食事、定期的な運動、体重管理などが基本的な対処法ですが、インスリンや経口血糖降下薬を使用する薬物療法を行う場合もあります。
主な症状には、体重減少、頻尿、喉の渇き、疲労感、視力の低下などがありますが、初期では症状がないことがほとんどです。健康診断で血糖値が高めと言われた場合には、症状がなくとも早めに内科を受診しましょう。

脂質異常症

脂質異常症は、血液中のコレステロールや中性脂肪の濃度が異常に高い状態で、この状態が続くと動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが高まります。
対処法としては、バランスの取れた食事、定期的な運動、体重管理が重要です。また、コレステロールを下げる薬物療法や食生活の改善指導も行われる場合があります。
脂質異常症は、多くの場合自覚症状や初期症状がないため、健康診断などの血液検査でLDLコレステロールやHDLコレステロール、中性脂肪の数値に異常があった場合は、内科を受診しましょう。

心筋梗塞

心筋梗塞は、心臓の筋肉に十分な酸素が供給されないことによって生じ、多くは、冠動脈が血栓で詰まることによって発症します。心筋梗塞は、早急の医療処置が必要で、血栓を溶かす薬物療法や冠動脈バイパス手術などが行われます。
主な症状には、胸の激しい痛み、息切れ、発汗、吐き気などがあるため、これらの兆候が見られる場合は、循環器内科を直ちに受診しましょう。

脳梗塞

脳梗塞は、脳の血流が遮断されて、脳への酸素供給が不足し、脳組織にダメージを受ける疾患となっており、主な原因としては、動脈硬化や血栓があります。
脳梗塞の治療法は、血栓溶解療法や内服治療などがありますが、緊急時は手術が必要となる場合もあります。
主な症状としては、突然の顔や手足への麻痺、ろれつが回らない、言葉が出てこないなどがあります。これらの症状が少しでも出た場合は、神経内科や脳神経外科を受診しましょう。

「中性脂肪が高い」ときの正しい対処法・改善法は?

定期的な運動を行う

運動不足は中性脂肪が増加する主な原因の1つになるため、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動を日常生活に取り入れましょう。

積極的に摂取した方がいい食べ物

青魚・サケ・マグロなどのEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)を多く含んでいる食品を積極的に摂取することで中性脂肪の改善が期待できます。
その他にも、野菜や海藻類の食物繊維は腸内で中性脂肪やコレステロールが吸収されるのを妨げる働きがあり、豆腐・納豆・味噌などの植物性タンパク質も血液中の中性脂肪を減らす働きがあるため、意識的に摂取しましょう。

控えた方がよい食べ物

糖質が多く含まれる白米や菓子パンなどの炭水化物は食べ過ぎると、余った糖質が中性脂肪として体内に蓄積されるため注意しましょう。
その他、ジュースや糖質を多く含む菓子類、アルコールは中性脂肪を上昇させやすいです。また、丼ものや麺類などの炭水化物に偏った食事もなるべく控えましょう。

「女性の中性脂肪の基準値」についてよくある質問

ここまで女性の中性脂肪の基準値について紹介しました。ここでは「女性の中性脂肪の基準値」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

中性脂肪の危険な数値について教えてください。

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

中性脂肪は150mg/dL以上で高トリグリセライド血症と診断されます。高い状態が長く持続することで動脈硬化を進行させ、これにより心筋梗塞などのリスクが高くなるため危険です。なるべく早期に改善して、動脈硬化を進行させないようにすることが大切です。
中性脂肪が1000mg/dL以上となると急性膵炎などの重篤な病気が起こる可能性が高く危険です。早めに内科を受診して、改善するようにしましょう。

太っていないのに中性脂肪が高い原因はどんなことが考えられますか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

太っていないのに中性脂肪が高い原因として、ホルモンバランスの乱れや、食生活の乱れ、運動不足、ストレスなどのようにさまざまな原因が考えられます。また、ご家族でも同じように中性脂肪が高い場合には、遺伝性の病気の可能性もあります。その他にも、糖尿病や肝疾患なども中性脂肪値に影響を与える可能性があるため、一度専門医に相談しましょう。

編集部まとめ 女性の中性脂肪の基準値は30~117mg/dL!

中性脂肪の基準値は、30~117mg/dLですが、閉経前後で基準値は異なります。
また、各年代によって、女性の中性脂肪における平均値は異なります。動脈硬化のリスクを考えた高トリグリセライド血症の診断基準が空腹時採血で150mg/dL以上であるため、女性であっても30~149mg/dLであれば問題はないでしょう。
中性脂肪が上がる原因としては、生活習慣の乱れや、運動不足が主な原因ですが、女性の場合にはこれに加えて、女性ホルモンの変化が影響します。
中性脂肪の高値が持続することで、動脈硬化を進行させます。また、脂肪肝や糖尿病などの病気が隠れている可能性もあります。健康診断の結果などで中性脂肪が高い場合は、症状が無くとも一度医療機関を受診して、早期に対策を行うことが重要です。

「中性脂肪」の異常で考えられる病気

「中性脂肪」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

消化器科の病気

中性脂肪が高い場合には生活習慣病の合併も考えられます。また、中性脂肪が高めが持続すると動脈硬化による病気や脂肪肝、膵炎などが引き起こされる可能性があります。中性脂肪の数値が気になる場合は、一度医療機関を受診して、専門医へ相談しましょう。

この記事の監修医師