「乳がん検診の費用」はどのくらい?検査項目についても医師が解説!

乳がん検診の費用はいくら?Medical DOC監修医が健診の保険適応の有無や会社員・自営業・後期高齢者が受診した場合の相場などを解説します。

監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
乳がん検診の費用はいくらかかるの?
乳がんは、女性にとってはとても重要ながんです。乳がんの患者さんは30代後半から増え始め、40代や50代、60代、70代の方で多く見られます。しかし、乳がん検診で早期発見することで、がんによる死亡リスクを減らすことが可能です。
今回の記事では、乳がん検診の費用の目安について解説します。
乳がん検診の費用
乳がん検診の費用は、受診方法によっても異なります。
こちらに、おおよその目安を示します。
| 受診方法 | 費用 |
|---|---|
| 全額自己負担(個人的な受診、人間ドックなど) | マンモグラフィ検査のみ:5,000円前後 超音波検査のみ:3,500円前後 マンモグラフィ+超音波検査:10,000〜20,000円前後 |
| 自治体制度を利用 | 無料〜1,500円前後 |
| 職場の制度を利用 | 無料〜1,000円前後 |
| 保険診療 | 3割負担の場合、マンモグラフィ+超音波検査:3,500〜5,000円前後 細胞診、組織診などがプラスされるとより多くかかることもある |
ここでは、それぞれについて詳しくみていきましょう。
乳がん検診の費用の目安・保険適用
乳がん検診の費用は、受ける検査の種類や保険適用になるかどうかによっても異なってきます。人間ドックや健康診断の一環として乳がん検診を受ける際には、基本的には全額自費となります。
マンモグラフィ検査のみでは5,000円前後、超音波検査のみでは3,500円前後の場合が多いです。さらに、マンモグラフィ+超音波検査:10,000〜20,000円前後になることが多いと考えられます。
一方、乳房の痛みなどの症状があったり、乳がん検診で精密検査となったりして医療機関を受診した際、医師が必要と判断した場合には保険適用になります。この際は、原則3割負担となります。
40歳以上の自治体補助で受診した乳がん検診の費用の目安
日本では、40歳以上の女性の方には2年に1回乳がん検診を定期的に受けることが推奨されています。
自治体によっては、乳がん検診を含むがん検診に対して補助が出ることがあります。
例えば、愛知県の名古屋市では特定の年齢の方については無料でがん検診が受けられます。
その他の自治体でも1,500円前後で指定の医療機関で乳がん検診を受けられる場合があります。お住まいの自治体の制度を確認してみましょう。
自営業など個人で受診した乳がん検診の費用の目安・保険適用がないと自費?
自営業やフリーランスの方などは、国民健康保険に加入している場合が多いかと考えられます。この際でも、医師が必要と判断した場合のがん検診では保険適用になりますので、3割負担となる場合が多いでしょう。
一方、人間ドックや健康診断の一環で乳がん検診を受けた場合には、原則自費での受診になります。
高齢者が受診した乳がん検診の費用の目安・保険適用で1割負担になる?
高齢者の乳がん検診の費用について説明します。日本の公的医療保険制度では、69歳までの方は3割負担、70歳から74歳までは2割負担、75歳以上の方は1割負担になります。ただし、75歳以上の方でも現役並みの所得がある方は3割負担となります。
医師が必要と判断し、医療機関で乳がん検診を受ける際には保険適用になります。1割負担の場合、マンモグラフィ検査のみでは500円前後、超音波検査のみでは350円前後でしょう。さらに、マンモグラフィ+超音波検査:1,000〜2,000円前後でしょう。
乳がん検診の目的と検査項目
ここでは、乳がん検診の目的と検査項目について説明します。
乳がん検診の目的
乳がん検診の目的は、早期に乳がんを発見し、適切な治療を行うことで生命を守ることです。乳がんは進行するまで自覚症状が少ない場合が多いため、定期的な検診が重要です。また、早期発見は治療成功率を大きく向上させるとともに、治療の負担を軽減する効果もあります。
一方で、乳房のしこりを感じたり、乳房や乳首の皮膚にひきつれや湿疹などの異常があったりする場合には医療機関を受診するようにしましょう。
乳がん検診の検査内容(マンモグラフィー・超音波検査等)
マンモグラフィは、現時点では乳がんによる死亡を減らす効果があると報告されています。
この検査は、乳房を片方ずつ、専用のプラスティックの板で挟んで薄く引き伸ばし、X線撮影を行います。
乳房にある石灰化や腫瘤(しゅりゅう、できもののこと)などを詳しく評価することができます。一方で、少量ではありますが放射線被爆があること、妊娠中や授乳中、豊胸術後にはこの検査ができないことなどのデメリットもあります。
超音波検査は、現時点では乳がん死亡リスクを下げる効果は報告されていません。
しかし、マンモグラフィを受けることができない方や、放射線被爆が問題になるような若い方などにとっては重要な検査です。超音波検査では、専用の端子(プローブ)を体表面から乳腺に当て、検査をしていきます。乳腺にある腫瘤や嚢胞(のうほう、液体を含む風船のような構造)などを明らかにすることができます。放射線被爆がなく、痛みも伴わないというメリットがあります。一方で、石灰化を見つけることは難しいというデメリットもあります。
乳がん検診の検査項目
乳がん検診は、前述したような検査が行われます。そして、具体的には以下のような項目が検査、評価されます。
- しこり(腫瘤)の有無や大きさ:乳房内部にできたしこり(腫瘤)が存在するか、その大きさ、形状、境界の明確さを確認します。
- 石灰化の有無とパターン:乳腺に沈着する微細なカルシウムの粒(石灰化)を検出します。特に、悪性腫瘍では不規則な形状や分布を示すことがあります。
- リンパ節の腫れや異常:乳房周辺のリンパ節(特に腋窩部や鎖骨上部)に腫れや異常があるかを確認します。乳がんが進行すると、リンパ節への転移が見られることがあります。
- 乳腺組織の密度(乳腺濃度):乳腺組織と脂肪組織の比率を評価します。乳腺が高密度の場合、乳がんが見えにくくなるため、超音波検査の併用が推奨されます。
- 乳房の形状や構造の異常:乳房全体の形状や皮膚のへこみ、厚みの変化、引きつれがないかを確認します。こうした変化は乳がんの進行によるものの可能性があります。
これらの検査結果を総合的に判断することで、乳がんの早期発見や他の疾患の診断が可能となります。
乳がん検診でわかる病気・疾患は?
ここではMedical DOC監修医が乳がん検診でわかる病気・疾患について解説します。
乳がん
乳がんは、乳房に発生する悪性腫瘍で、乳腺の細胞ががん化することで起こります。遺伝的要因やホルモンの影響がリスク因子とされています。30代後半から増え始めますが、20代の方でもみられるがんです。
治療方法としては、手術、放射線治療、化学療法、ホルモン療法などがあります。早期発見で治療成功率が高まります。
乳房にしこりを感じる、形状の変化、分泌物がある場合は乳腺外科あるいは外科を受診するようにしましょう。
乳腺症
乳腺症とは、30代や40代の女性によく見られる乳腺の良性の変化を、一括りにした呼び方です。乳房のしこりや硬い部分、乳房痛、乳頭からの分泌物などの症状があります。
乳腺症の原因は、卵巣から分泌されるエストロゲンやプロゲステロンというホルモンが関与しているといわれています。そのため、閉経後にはこうした症状は自然に消えていきます。
症状は、月経周期に連動することが典型的ですが、関連していないような症状がある場合や、ご不安な場合には乳腺外科や外科の受診をするようにしましょう。
乳腺炎
乳腺炎は、乳汁のうっ滞(うったい)や細菌感染が原因となり乳房が炎症を起こしてしまう病気のことです。乳房の腫れや痛み、膿、しこりといった症状が現れます。
特に、授乳期には母乳が乳房に溜まり炎症を起こしてしまう、うっ滞性乳腺炎が起こりやすくなります。また、乳頭から細菌が入ると、化膿性乳腺炎になり、膿が出るようになってしまいます。
乳腺炎は乳がんの発生とは直接的な関係はありません。しかし、痛みがないのに乳腺が腫れる場合、炎症性乳がんという特殊でまれなタイプの乳がんの可能性があります。すぐに乳腺外科を受診するようにしましょう。
「乳がん検診の費用」についてよくある質問
ここまで乳がん検診の費用などを紹介しました。ここでは「乳がん検診の費用」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
会社員の乳がん検診は自費のオプションを付けなければ無料ですか?
木村 香菜 医師
会社員の場合、乳がん検診が健康診断に組み込まれている場合があります。この場合、会社の費用負担で受診できることもあります。一方、乳がん検診がオプションの場合には、その差額を受診者負担になることもあります。ご自身の会社の健診制度を確認してみましょう。
個人事業主の乳がん検診の費用相場はどれくらいが一般的でしょうか?
木村 香菜 医師
個人事業主では健康保険組合の補助がなく、全額自己負担になるケースも多いでしょう。その際の費用の相場は本文をご覧ください。一方で、自治体による乳がん検診を利用すると、費用が低額に抑えられることもあります。
乳がん検診費用を会社が負担する場合、1年に何回受診した方がいいですか?
木村 香菜 医師
乳がん検診は40歳からは2年に1回定期的に受診することが推奨されています。会社が費用を負担している場合も、過剰な頻度で受診する必要はありません。ただし、乳がんリスクが高い方(家族歴がある、乳腺が高密度など)は医師と相談の上、追加検査を受ける場合もあります。
乳がん検診の費用が自己負担になるケースはありますか?
木村 香菜 医師
以下のような場合、乳がん検診の費用が自己負担となります:
・健康診断外の検査: オプションとして追加検査(マンモグラフィー、超音波など)を受けた場合。
・症状がない場合: 健康診断や自治体検診は保険適用外のため、自己負担が基本です。
・補助が適用されないケース: 年齢や収入により自治体の助成対象外の場合。
乳がん検診と人間ドックの費用はどちらも保険適用になりますか?
木村 香菜 医師
どちらも通常は 保険適用外 です。乳がん検診や人間ドックは予防目的の検査とみなされるため、保険診療の対象外です。ただし、症状があり医師が必要と判断した検査(乳房のしこりや異常の診断など)は保険適用され、費用の一部を健康保険でカバーできます。
40代以降は自治体のクーポンで乳がん検診が無料になりますか?
木村 香菜 医師
自治体によっては、40歳以上の女性に対して2年に1回、乳がん検診の無料クーポンを配布しています。このクーポンを利用することで、検診を無料または非常に低額で受けることができます。ただし、クーポン対象外の追加検査(例: 超音波検査)は自己負担となる場合があります。
まとめ 乳がん検診の費用はケースバイケース!
今回の記事では、乳がん検診の費用について解説しました。
乳がん検診の費用は、個人事業主か会社員か、保険適用になるかどうかなどによって変わってきます。40歳以上の女性は2年に1度は定期的に乳がん検診を受けることをおすすめします。また、何らかの症状がある場合には、乳がん検診を待つのではなく、医療機関を受診するようにしましょう。
「乳がん検診」の異常で考えられる病気
「乳がん検診」から医師が考えられる病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
乳がん検診で見つかる異常が必ずしも乳がんであるとは限りません。良性の病変も含まれるため、医師の指示に従い、適切な診断を受けることが大切です。




