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「尿潜血の原因」はご存知ですか?男女別に医師が徹底解説!

 公開日:2024/07/04
「尿潜血の原因」はご存知ですか?男女別に医師が徹底解説!

尿潜血の原因とは?Medical DOC監修医が検査で尿潜血2+や3+等陽性診断された場合の主な原因と対処法・基準値と病気のリスク等を解説します。

伊藤 陽子

監修医師
伊藤 陽子(医師)

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浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。

健康診断・尿検査で尿潜血と診断される原因とは?

健康診断や尿検査の試験紙法検査で尿潜血陽性である場合、血尿の場合と本当は血尿ではない場合があります。血尿かどうかは、沈査という顕微鏡での検査を行ったときに赤血球の有無で区別されます。赤血球が陰性である場合には、ミオグロビン尿やヘモグロビン尿、精子の混入などが挙げられます。赤血球が陽性である場合には、腎臓から膀胱、尿道までの尿が通る経路での出血が考えられます。

尿潜血の原因

尿潜血が陽性で血尿である原因は、複数挙げられます。腎炎、尿路結石、腎がん、膀胱がん、前立腺がん、膀胱炎などが考えられます。

尿潜血のプラスマイナスとは?

尿潜血が±である時、軽度異常であり注意が必要です。正常であっても、脱水などで濃い尿が出ると、潜血が±となることがあります。しかし、腎炎や結石、尿路系のがんの初期症状かもしれませんので、今後の尿検査で異常がある場合には早めに受診をしましょう。一般的には、尿検査を繰り返し、尿沈渣で赤血球の数が5/HPF以下であれば正常範囲と考えられます。

尿検査で尿潜血2+と診断される主な原因

尿潜血が2+以上と診断された場合、何かしらの病気が隠れている可能性が高いです。また、男性と女性では考えられる疾患が異なるため、男性、女性それぞれで考えられる病気について解説します。

男性で尿潜血2+と診断される原因

男性で尿潜血2+と診断された場合、何かしらの異常がある可能性が高いです。蛋白尿も合併している場合には腎炎の可能性があります。また、背中の痛みや移動する腹痛がある場合には結石が疑われます。男性の場合、前立腺肥大症なども血尿の原因の1つです。そのほかには尿路系のがん(腎がん、膀胱がん、前立腺がんなど)も可能性として挙げられます。いずれにしても、重大な疾患は否定できません。早急に内科もしくは泌尿器科を受診してください。

女性で尿潜血2+と診断される原因

女性で潜血2+と診断された場合、まず生理中もしくは生理前後で尿検査をしていないかの確認が必要です。この場合には、再度尿検査をすることをお勧めします。再度の尿検査でも尿潜血2+の場合、女性で一番多いのは膀胱炎です。頻尿、残尿感、排尿時痛などの自覚症状がないか確認すると共に、尿の混濁や細菌が出ていないかを確認します。そのほか、蛋白尿とともに潜血が指摘されているのであれば、腎炎の可能性があり、腎臓内科へ受診しましょう。そのほか、尿路結石は男性と比較して頻度は低いですが女性でも尿路結石ができることもあります。背中の痛みを伴う場合には結石や、背中の痛みとともに発熱がある時には腎盂腎炎を起こしている可能性もあります。腎盂腎炎の場合、重症の感染症であり早急に抗生剤などの治療を開始しなければ、敗血症など命にかかわる合併症を起こす可能性があります。内科もしくは泌尿器科を受診し早急に治療を受けましょう。

尿検査で尿潜血3+と診断される主な原因

尿検査で尿潜血3+を診断された場合、2+と同様に何かしらの病気が隠れている可能性が高いです。早めに病院を受診することをお勧めします。以下に、原因となる可能性がある病気について解説いたします。

男性で尿潜血3+と診断される原因

男性で尿潜血3+の場合、蛋白尿を伴う場合には活動性の高い腎炎の可能性があります。また、蛋白尿がなくとも尿沈査で赤血球の変形や円柱がみられた場合に腎炎が考えられます。いずれにしても、活動性が高い腎炎の可能性が高く、すぐに受診をしましょう。また、潜血のみの場合でも泌尿器科領域での疾患の可能性が高いです。男性の場合、尿路結石や膀胱がんなどの尿路系悪性疾患など重大な病気の可能性も高く、早めに泌尿器科を受診しましょう。

女性で尿潜血3+と診断される原因

女性で尿潜血3+の場合、生理中の採尿であったかの確認が必要です。生理中の尿検査でない場合には、2+と同様に膀胱炎の頻度が高いです。残尿感、排尿時痛がないかを確認します。また、発熱を伴う時には腎盂腎炎を合併している可能性が高く、早めの治療が必要です。尿蛋白の合併がある場合には、男性の場合と同様に、活動性の高い腎炎の可能性があります。尿潜血、蛋白を多く伴う場合に急速進行性腎炎の可能性もあり放置すると腎機能の障害が起こります。蛋白尿や腎障害も伴う場合には腎臓内科を受診しましょう。血尿のみで症状がない場合、尿路系の悪性腫瘍の可能性があります。特に肉眼的血尿が出た場合には注意が必要です。血尿のみである場合には、泌尿器科を受診し、尿路系の病気がないか精密検査を受けましょう。

健康診断の「尿潜血」の見方と再検査が必要な「尿潜血」に関する数値・結果

ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

健康診断・尿検査の「尿潜血」の基準値(-/+/2+等)

尿検査の基準値に関しては下記のようになっています。

尿潜血 正常 軽度異常 異常
試験紙法 ± 1+ 2+ 3+
10個/μL 20個/μL

(※1+以上はメーカーにより差があり一定の基準がない)
尿検査で潜血1+以上であれば、異常であり再検査をしましょう。
沈査で尿の中の赤血球が5個/HPF(強拡大の視野)以下では正常範囲と考えられます。3回の繰り返した検査でいずれもこの範囲であれば異常なしと考えます。

健康診断・尿検査で「尿潜血」が見つかった場合の再検査基準と内容

健康診断や尿検査で潜血が±以上であった場合には、再検査をお勧めします。再検査としては、日にちを変えて再度尿検査を行い、また運動などで血尿が出やすい可能性がある場合には早朝尿で再検査をします。
糸球体性のものなのかを調べるために、尿沈査で円柱や赤血球の変形を確認します。糸球体性のものであれば腎臓内科へ、そうでない場合には泌尿器科で精査をします。
悪性疾患が疑われる場合には、細胞診で悪性の有無を調べ、腹部エコー、膀胱鏡検査、腹部CT検査などで結石や悪性所見の有無を調べます。
​​潜血以外に蛋白尿もあれば腎臓内科、潜血中心であれば泌尿器科をまず受診するのがお勧めです。
3割負担の場合、検査費用はおおむね以下のようになります。しかし、追加項目などにより費用は異なることもあります。受診した際に確認をしてください。

尿検査・沈査 約160円程度
細胞診 約600円程度
腹部エコー 約2,000円程度
膀胱鏡検査 約3,000円程度
腹部CT検査 約7,000円程度 (造影CT 約10,000円)

健康診断・尿検査の「尿潜血」で気をつけたい病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「尿潜血」に関する病気を紹介します。
どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

尿路結石

尿路結石は腎臓で作られ、腎臓にとどまっている間は痛みがありませんが尿の流れに乗って尿管の中に詰まることで痛みが起こります。また、尿管を下る途中で詰まってしまい動かなくなると、尿の流れが滞り水腎症となります。尿路結石は血尿の原因となり得ます。また、激痛を引き起こし、詰まって水腎症となると腎機能が障害されます。このため、尿路結石が疑われる場合には、早めに泌尿器科を受診しましょう。小さい結石であれば、自然に排石することが多いです。痛みが出たら、痛み止めを使用しながら水分を多く取り、自然に排石を待ちます。しかし、痛みが消えたとしても、詰まってしまい水腎症となっていることもあるため、まずは泌尿器科を受診し、治療することが大切です。尿路結石は男性で7人に1人、女性は15人に1人が発症する頻度の高い病気です。尿路結石が疑われた場合には、早めに泌尿器科を受診しましょう。

膀胱炎

膀胱炎は、外部から大腸菌などの細菌が尿道をさかのぼって逆行性に膀胱内に入り増殖することで引き起こされます。排尿時に痛み、残尿感を感じたり、肉眼的血尿がみられたりします。女性は男性と比較して尿道が短いため膀胱炎が起こりやすいです。残尿感などあり膀胱炎が考えられた場合には、まず水分を多めに取り、細菌を排出するようにしましょう。それでも症状が持続する場合には、抗生剤を使用した治療が必要となります。内科もしくは泌尿器科を受診しましょう。

膀胱がん

膀胱がんは、膀胱にできるがんを指します。痛みを伴わない、血尿の症状が起こることが多いです。膀胱癌は男性に多く発症し、60才代以降で多くなります。血尿が持続する場合には、泌尿器科で一度精密検査を受けましょう。また、見た目でわかる血尿(肉眼的血尿)が起こった場合には、膀胱がんを含め何かしらの病気がある可能性が高いです。早めに泌尿器科を受診しましょう。

前立腺がん

前立腺は男性にのみある臓器で、膀胱の下で尿道を囲み、栗のような形をしています。前立腺がんは前立腺の細胞が異常な増殖をすることで発生します。前立腺がんは男性のがんの中で一番多いがんとなっています。早期の前立腺がんは、自覚症状がほとんどないことが多いです。尿が出にくいなどの症状が出ることもありますが、前立腺の良性疾患である前立腺肥大症でも同様の症状が起こり、症状のみでの鑑別は難しいです。症状が気になる時には泌尿器科を受診しましょう。また、市町村によっては前立腺がん検診を行っていることもあります。がん検診を利用することも良いでしょう。

「尿潜血の原因」についてよくある質問

ここまで尿潜血の原因について紹介しました。ここでは「尿潜血の原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

尿検査で尿潜血が陽性、2+の場合病院で治療が必要ですか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

尿検査が陽性となった場合、例えば運動後であったり脱水で尿が濃くなっていたりした場合には異常がなくとも尿潜血陽性となっているのかもしれません。しかし、腎炎や尿路系のがんなどの可能性も否定できません。まずは、再検査を行いましょう。再検査でも陽性であった場合には、精密検査が必要です。
特に2+と潜血量が多い場合は、病気の可能性が高いです。早めに受診しましょう。

血尿の自覚がなくても尿潜血で引っかかることはありますか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

血尿の自覚がなく、見た目に血尿と気が付かなくとも尿に少量の血が混ざり尿潜血となることはあります。原因はさまざまです。腎炎や膀胱がんなど、症状もなく尿潜血が陽性となることも多いです。自覚症状がなくとも、尿検査で尿潜血が引っかかった場合には、内科もしくは泌尿器科を受診しましょう。

健康診断で女性が尿潜血+と診断されることは多いのでしょうか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

​​女性の場合、生理があるためこの前後で 尿潜血が陽性となることが多いです。また、女性の場合、膀胱炎を起こしやすく、これに伴い尿潜血が陽性になり、異常を指摘されることもあります。これらの原因により、女性の方が健康診断で尿潜血での異常の指摘が多いと考えられます。

ストレスが原因で尿潜血になることはありますか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

​​ストレスのみで尿潜血が陽性になることはないです。しかし、激しい運動などに伴い、血尿が起こる事があります。このような心当たりがある場合には、運動をせずに再検査をしてみましょう。

疲れが溜まっていたり疲れやすい人は尿潜血になりやすいですか?

伊藤 陽子医師伊藤 陽子(医師)

疲れがたまっているだけでは、血尿は出ないですが、運動後や脱水を伴う場合には尿潜血が陽性になりやすいです。

まとめ 尿潜血が見つかった人に多い原因を知って改善しよう

尿潜血は色々な病気で陽性となります。女性では生理の前後での尿検査は潜血が陽性となることがあり、正確な判定ができません。気をつけましょう。また、激しい運動をした後には、尿潜血が陽性となることがあります。正確な診断をするためには、尿検査をする前に運動をすることはやめましょう。
これらのことに気を付けて、それでも尿検査で潜血を指摘された場合には、病気の可能性があります。背中の痛みや排尿時痛、残尿感、発熱などの症状がある場合にはそれぞれ尿路結石、膀胱炎、腎盂腎炎が疑われます。しかし、症状がなくとも腎炎や尿路系の悪性腫瘍などの可能性もあり、精密検査が必要です。尿潜血を指摘された場合には、早めに医療機関を受診し再検査をし、それでも異常があれば精密検査を行いましょう。

「尿潜血」の異常で考えられる病気

「尿潜血」から医師が考えられる病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

腎泌尿器系の病気

尿潜血が陽性となった場合には、上記のような病気の可能性があります。しかし、ナッツクラッカー症候群の様に生まれつき尿潜血が出やすい方もいます。病気かどうか確認をするためにも、尿潜血が出た場合には一度は精密検査を受けることをお勧めします。腎臓内科もしくは泌尿器科を受診しましょう。

この記事の監修医師