「卵巣がん検診」は何年に一回の頻度で受診が必要かご存知ですか?費用も医師が解説!
卵巣がん検診の検査方法や痛みは?Medical DOC監修医が卵巣がん検診の内容から検査結果の見方・再検査の内容などを解説します。
監修医師:
阿部 一也(医師)
目次 -INDEX-
卵巣がん検診とは?
卵巣は子宮の両側にひとつずつある親指ほどの大きさの臓器で、骨盤内の深い場所に存在しています。
卵巣がんは、この卵巣にできるがんのことで、この病気を早期発見するために行われるのが「卵巣がん検診」です。
厚生労働省では、がん検診の受診率60%以上とすることを目標に、がん検診を受けることを推奨しています。
指針で定めるがん検診の項目の中には、子宮頸がんや乳がんの検診項目がある一方で、卵巣がんについての項目はありません。
しかし、実際には卵巣がんに罹患し亡くなられる方も多くいるのが現状です。
2019年のデータによりますと、13,388人の方が卵巣がんと診断され、2020年に4,876人の方がお亡くなりになっています。
50代でピークを迎える卵巣がんですが、早期に発見するためにも、事前にがん検診を行うことが大切です。
卵巣がん検診とはどんな検査?
卵巣がん検診では、以下の方法で検査が行われます。
- 腹部の触診や内診
- 超音波(エコー)検査
- 採血による腫瘍マーカーのチェック
腹部の触診や内診:
卵巣の状態を調べるためには、まずは直接触れて異常がないかを確認します。
腹部の触診や、腟から直接指を入る内診などが行われ、異常が感じられる場合は、ほかの臓器にも影響していないか、直腸やその周囲を調べる目的で、おしりから指を入れて診察(直腸診)をすることもあります。
超音波(エコー)検査:
超音波検査とは、画像検査のひとつで、機械をからだの内外からあてることで病変がないかを調べることができます。
卵巣がんの検診では、おなかに直接あてて観察をする腹部超音波検査や、子宮や卵巣をより近くで見られるように、腟の中にエコーの機械を入れて調べる経腟超音波断層法検査を行う場合もあります。
採血による腫瘍マーカーチェック:
血液検査によって、卵巣にがんがないかをチェックする検査です。腫瘍マーカー(CA125)は、卵巣や子宮にがんがあると数値が上昇し、子宮内膜症の場合でも上昇することがあります。この検査は、補助的な役割をもち、数値が上昇しただけでは判断せず、その他の画像診断等と併せて、卵巣がんかどうかを医師が判断することとなります。
卵巣がん検診の費用・保険適用の有無
卵巣がん検診は、厚生労働省が推奨するがん検診には含まれていないため、検診を希望する場合には人間ドックや定期健康診断のオプションとして自分で項目を追加していくことになります。
卵巣がん検診の費用は、それぞれの医療施設によって異なります。おおよその相場は以下となっています。
- 超音波検査:4,000~5,000円程度
- 腫瘍マーカー(CA125):2,000円程度
- 内診や触診:子宮頚がんの細胞診検査(定期健診)などと一緒に受けることで4,000~5,000円程度
卵巣がん検診は保険診療の適用外となります。
しかし、腹部の違和感や、しこりが触れるなどの症状があった場合には再検査となり、保険診療の範囲で診察を受けることができます。
何らかの症状がある場合には、日程を待つことなく、早めに婦人科などを受診し医師の診察を受けましょう。
卵巣がん検診の痛みはあるの?
卵巣がん検診で受けられる初期の検査は、一般的な検診に追加して行うことのできる項目となります。触診や内診、超音波検査や血液検査などが行われます。
触診:医師が腹部を直接手で触り診察を行います。しこりが触れる場合に、少し痛みがあることもありますが、器械などは使用しませんので、強い痛みは感じないでしょう。
内診:内診台で腟から直接指を入れて卵巣に触れる検査です。医療器具などは使用しませんので、痛みは最小限で済みます。
超音波検査:腹部の超音波検査では、おなかの上にゼリーを塗ってエコーの機械を滑らせるようにあてますが、経腟超音波検査の場合、腟に細長い機械を入れて検査を行います。痛みには個人差がありますので、その際は医師に伝えてください。
血液検査:腫瘍マーカーを測定しますが、一般的な血液検査と同様のため、採血操作のときに感じる痛みとなります。
卵巣がん検診は何歳からどれくらいの頻度で受けるべき?
卵巣がんは「沈黙のがん」とも呼ばれ、初期症状がなく経過し、気が付いたときには進行していることもある病気のひとつです。
このため、早期に発見するには定期検診と組み合わせることでチェック漏れを防ぐことができます。
子宮頸がんの検診は、20歳以上の女性が受けるよう推奨されています。
こちらの検診を定期的に受けながら、オプションで腫瘍マーカーや超音波検査などを追加すると、子宮と卵巣の両方をチェックすることができます。
検診の頻度は、子宮頸がん検診が2年に一度と定められていますので、卵巣がん検診も追加する場合には、この間隔で受けることが望ましいと考えます。
卵巣がん検診の結果の見方と要精密検査と言われたら?
卵巣がんの検診をいざ受けても、検査結果が分からないと病気の有無を判断できません。
ここからは、検診の結果から要精密検査といわれた場合、どのようにしたらよいかについて解説します。
卵巣がん検診の検査結果の見方
卵巣がんの検診はいくつかありますが、数字としてあらわすことのできる検査は、腫瘍マーカー検査です。
腫瘍マーカー(CA125)の基準値は、35.0U/mL以下です。
腫瘍マーカー検査は、あくまで卵巣がん診断の補助的な役割をもっているため、値が上昇していたからといって、卵巣がんが確定するわけではありません。特にCA125は閉経していなければ、生理周期でも上昇する場合があるので、検査する場合は自身の生理についてしっかり把握しておくことも重要です。
内診や触診、超音波検査を行った上で疑わしい場合には、次の検査に進んでいきます。
これらの次の検査には、がんの大きさや形を確認するためCTやMRIなどの画像検査が行われ、卵巣がんが疑われる場合には、基本的には手術を行う方針になります。
卵巣がんは手術を行って病理組織検査によって確定診断がなされます。つまり、手術前では疑いにとどまり、がんのステージを診断することができません。
卵巣がん検診で要精密検査と言われたら?
要精密検査と判断された場合には、まず画像診断検査が行われます。
CT検査:リンパ節や卵巣からはなれた場所にがんが転移(遠隔転移)をしていないかを調べるために行われる検査です。
MRI検査:磁石の効果を使用し骨盤内の断面図を画像化する検査で、婦人科疾患では基本となる画像検査です。がんの大きさや形、リンパ節の腫れなどがないかを調べるために有効な検査です。
このように、要精密検査といわれても、確定診断が行われるまでに時間がかかり、さらには、がん以外でも数値や画像に異常を認めることがあります。
このため、要精密検査といわれた場合、早めに次の検査が受けられるよう、検診を受けた医療機関に問合せを行いましょう。
検診で卵巣がんが見つかったときは?治療の流れ
卵巣がん検診で卵巣がんが見つかったときの治療・対処法
卵巣がんが見つかったとき、あるいは卵巣がんが疑われるような病変がある場合、まずは手術が行われます。
突然手術をするのかと驚かれる方もいるかと思いますが、これまでに行った検査(超音波やCT・MRIなどの画像検査)では良性か悪性かを判断することが難しく、実際に手術をして、がんの広がりや転移の有無、今後の治療を決定していく必要があるためです。
がん(病気)の広がりをみるためには、大きく分けて4つの段階が設けられています。
卵巣がん手術進行期分類(日産婦2014)
- Ⅰ期:がんが卵巣だけにとどまっている状態
- Ⅱ期:がんが骨盤の内側に進展した状態(子宮や卵管、直腸や膀胱の表に広がっている状態)
- Ⅲ期:がんがリンパ節に転移している。または骨盤腔をこえて、上腹部の腹膜、大網や小腸に転移している状態
- Ⅳ期:がんが肝臓や肺などにまで転移している状態
また、卵巣がんは、どの場所から発生したのか、その組織による分類は大きく3つに分けられています。
- 上皮性腫瘍
- 胚細胞腫瘍
- 性索間質性腫瘍
卵巣がんの治療では、まずは手術を行い、可能な範囲でがんを取り除きます。その後、手術進行期分類や組織の分類などの結果をもとに、次に行う治療方法を決めていくのです。
卵巣がんの初期症状とは?
卵巣がんの場合、初期症状がない状態で進行していくことも多く、検診を行うことが大切です。痛みがなくても、症状として現れるものがあります。
卵巣がんの初期症状 | 腹部の違和感 |
服のウエストがきつくなる | |
下腹部にしこりが触れる | |
腫瘍が大きくなると出てくる症状 | 腹水 |
腹部の膨満感が増す、食欲不振 | |
がんが進行すると出てくる症状 | 腹水・胸水がたまり、息が苦しくなる |
「卵巣がん検診」についてよくある質問
ここまで卵巣がん検診について紹介しました。ここでは「卵巣がん検診」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
卵巣がん検診を受けるには婦人科を受診したら良いですか?
阿部 一也医師
婦人科以外に、検診センターなどでも卵巣がん検診を行っている場所がありますので、各医療機関・検診センターのホームページなどをご確認下さい。
女性の卵巣がん検診は何年に一回の頻度で必要でしょうか?
阿部 一也医師
卵巣がんは定期検診には含まれていませんので、個人での申し込みが必要です。
2年に一度子宮頸がん検診を受ける際に、あわせて卵巣がんの検診を受けると、忘れずに受けることができるでしょう。
卵巣がん検診を受ける人は何歳が多いですか?
阿部 一也医師
卵巣がんは30代頃から急激に増え、ピークは50代となっています。
ただし、家族に遺伝性の乳がん卵巣がん症候群(HBOC)や卵巣がんの方がいる場合には、遺伝的な要素で卵巣がんに罹患する場合を考慮して、発症のピークを迎える年齢よりも5~10歳早い段階での検診を受けることが提示されています。
このため、発症のリスクが上がる30代頃から検診を受けることが大切です。
卵巣がんは内診でわかりますか?
阿部 一也医師
内診でわかるのは、直接卵巣に触れることで大きさなどはわかりますが、卵巣の中がどのように変化しているのかはわかりません。このため、他にも複数の検査(採血や画像検査など)を複合的に行うことで、卵巣がんか否かが判断されます。
卵巣がんは超音波・エコー検査でわかりますか?
阿部 一也医師
前述の内診で卵巣がんか否かを判断できるかという質問同様、複数の検査の結果をもとに判断されるため、超音波検査のみでは、卵巣がんか否かはわかりません。
まとめ 定期的な卵巣がん検診で早期発見・早期治療
卵巣がんは「沈黙のがん」とも呼ばれ、発症しても、しばらく気が付かないことのある病気です。
早期に卵巣がんを発見するためには、定期的な検診を行うと共に、気になる症状があった場合は、検診を待たず医療機関に相談することが大切です。
また、がんが見つかった時点では、どの程度のものかは判断できませんので、広がり具合などを知ることで、その後の治療にも影響してきます。
婦人科検診は、恥ずかしくて敷居が高いと感じている方も、女性だけの検診センターなどもありますので、まずは相談のしやすい環境を見つけていくといったことから一歩ふみだしてみてはいかがでしょうか。
「卵巣がん検診」の異常で考えられる病気
「卵巣がん検診」から医師が考えられる病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器の病気
腹痛の症状は卵巣がんだけではなく、上記の病気でも見られる症状です。また、卵巣がんでは胸水や腹水が溜まる事例もありますが、こちらも肝臓や心臓の疾患でも同様の症状がみられる場合があります。