人間ドックは何歳から受けるべき?推奨年齢や検査費用も医師が解説!
人間ドックは何歳から受けるべき?Medical DOC監修医が人間ドックの推奨年齢や検査内容・見つかる可能性のある病気等を徹底解説します。
監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
人間ドックとは?
健康診断は、法律で決められた生活習慣病の早期発見を中心とした目的で行われ、項目が決められています。一方人間ドックは、病気の早期発見を目的とすることは同じですが、法的な義務はなく、自分の意思で受診し項目も選べ、より詳しく体のチェックをすることができます。
人間ドックの検査項目は?
人間ドックでの検査は、健康診断で行う基本的な項目(尿検査、血液検査、心電図、レントゲン検査など10~15項目程度)以外に検査項目は50-100項目と多くなっており、健康診断では見つけづらい病気も見つけ出すことができます。また、オプション項目もあり、自分で行いたい検査を選べます。
人間ドックの費用は?料金は保険適用?自己負担??
人間ドックは保険診療の適応となりません、全額自己負担です。会社で補助がある場合もあるため、会社に確認してみると良いでしょう。(公務員では人間ドックの助成がある場合が多いです。)料金は、基本の項目で4万円以上することが多いです。どんなオプションをつけるかにより、総額の費用は変わります。PET-CTなど高額な検査を行う場合には、費用は20万円以上かかります。
人間ドックは何歳から受けるべき?
人間ドックは何歳から受けるべきでしょうか?
人間ドックは通常20歳以上を対象にしていることが多いです。では、何歳から受けるべきでしょうか?明確な基準はありませんが、30歳以上では徐々に生活習慣病の発症が多くなってくるため、30歳以上となったら人間ドックの受診を検討してみましょう。
20代男性の受けるべき項目は?
20代男性は、社会人となり生活習慣の変化が出るころであると思われます。糖尿病や肝障害など生活習慣病の項目を含めると良いでしょう。また、胃痛などの症状があれば上部消化管内視鏡(胃カメラ)やバリウム検査、便通異常などあれば便潜血検査や大腸内視鏡検査を検討しても良いと思います。
20代女性の受けるべき項目は?
20代女性では、婦人科系健診を受けることをお勧めします。子宮頸がんは20代のころより徐々に増加する傾向があります。早期に発見することが重要です。また、貧血の合併も多く、血液検査で貧血がないかなど調べてみましょう。
30代男性の受けるべき項目は?
30代男性では、生活習慣病が増え始めます。血液検査で脂質異常症、糖尿病、肝障害などがないかをチェックしましょう。また、20代と同様に消化器系検査を行うことも良いでしょう。
30代女性の受けるべき項目は?
30代女性では乳がん、子宮がんの検診は受けるべきでしょう。また、便通異常(便秘や下痢など)などがあれば便潜血検査や大腸内視鏡検査を検討しましょう。また、20代と同様に貧血などの異常がないか血液検査も有用です。
40代男性の受けるべき項目は?
40代男性では、生活習慣病も増加し、各種がんなどの発症が増えてきます。血液検査などとともに肺がん検診、上部内視鏡検査、便潜血や大腸内視鏡検査などのがん検診を行いましょう。また、不整脈なども発症が増える時期です。心電図検査も大切です。
40代女性の受けるべき項目は?
40代女性では、徐々に生活習慣病が増加します。血液検査で脂質異常症、糖尿病などの異常がないかをチェックしましょう。また、乳がん、子宮がんのがん検診はもちろん、大腸がんも増加する時期ですので、便潜血や大腸内視鏡検査、男性と同様に肺がん検診も検討しましょう。
50代男性の受けるべき項目は?
生活習慣病や肺がん、胃・大腸がんなどのがん検診に加えて前立腺がんも徐々に増加する時期です。前立腺がん検診も行いましょう。
50代女性の受けるべき項目は?
50歳代より生活習慣病の発症が増えます。血液検査で生活習慣病の発症がないかを検査しましょう。40歳代と同様に乳がん、子宮がん、胃・大腸がん検診、肺がん検診などのがん検診を受けることもお勧めします。また、閉経を迎えると徐々に骨密度が低下します。骨粗しょう症の予防のために、骨密度検査で自分の現在の状態を把握しましょう。
人間ドックでわかる病気・疾患は?
ここではMedical DOC監修医が人間ドックでわかる病気・疾患について解説します。
大腸がん
大腸がんは、大腸に発生するがんのことです。大腸の粘膜に発生した癌は、深く侵入しさらに進行すると腹腔内に散らばったり、肝臓や肺に転移します。初期の症状がほとんどないため、進行してから見つかることも多いです。症状としては、便に血が混ざる、便通異常(便秘や下痢)、便が細くなる、残便感、おなかの張りなどです。なるべく早期で見つけることが大切であり、便潜血検査や大腸カメラなどを利用して早期に異常を見つけましょう。大腸癌と診断された人はすべての癌の中で、男性は前立腺についで2番目に多く、女性では乳がんに次いで2番目に多いです。比較的多い癌であり、癌の死亡数は男性で2位、女性で1位であり、注意が必要です。男女とも40代以降で徐々に増加するため、定期的な健康診断を受けましょう。上記のような症状があった場合、健康診断で異常があった場合には消化器内科を受診しましょう。
前立腺がん
前立腺は男性のみにある臓器です。膀胱の下部にあり、尿道の周りを囲む栗の実のような臓器です。この部位にできるがんを前立腺がんといいます。前立腺がんは早期に発見すれば完治できます。多くの場合、進行はゆっくりです。しかし、進行し、近くのリンパ節や骨、肝臓に転移することもあります。多くの場合には症状はなく、尿が出にくい、頻尿などの前立腺肥大に伴う症状のみの場合もありますが、進行すると、血尿や骨への転移による痛みを訴えることもあります。前立腺がんは日本でも増加しているがんの一つです。50歳を過ぎると前立腺がんの発生が増えるため、50歳を過ぎたら前立腺がん検診を受けましょう。血液検査では前立腺特異抗原(PSA)の測定が有用です。検査で異常が出たり、症状がある場合には泌尿器科を受診しましょう。
不整脈
不整脈とは、心臓の脈拍のリズムが正常とは違ったタイミングで起きるようになった状態です。不整脈の中でも一番頻度が多いのが、心房細動です。心房細動は、自覚症状がないことも多く、健康診断などで初めて指摘されることもあります。しかし、放置すると血栓がつくられ、これが脳に飛んでしまうことで脳梗塞を発症します。心房細動は、心房内に流れる電気刺激の乱れにより、心房が細かく震えて痙攣したようになり血液をうまく全身に送り出せなくなる不整脈です。心房細動は日本人の1~2%に見られ、また年齢が上がるほど頻度が増えます。40~50歳代より徐々に増え、80歳以上では男性での有病率は10%以上です。心房細動など不整脈を指摘されたら、循環器内科を受診しましょう。
糖尿病
糖尿病は、インスリンの作用が十分でないために起こる、慢性の高血糖状態を特徴とする病気です。糖尿病は1型、2型に分類され、さまざまな原因でインスリン量不足が起こる1型とインスリン分泌低下やインスリン抵抗性に食べ過ぎや運動不足、肥満などが加わり発症する2型があります。男性は40歳を過ぎると、女性は50歳を過ぎると糖尿病の人が増え始めます。糖尿病は、早期に治療をして合併症を予防することが非常に大切です。健康診断などで糖尿病が疑われたら早めに病院を受診しましょう。内科(糖尿病内科)を受診すると良いでしょう。
子宮頸がん
子宮頸がんは、子宮頸部にヒトパピローマウイルス(HPV)が感染することが原因となり発症する癌です。比較的若い人に発症し、好発年齢は30歳から40歳代ですが20代から増え始めるため注意が必要です。自覚症状はほとんどないことが多く、性交渉時に出血がみられる程度です。がん検診により早期で見つけることが可能であり、定期的な検診が大切です。出血など異常が認められたら、婦人科を受診しましょう。
乳がん
乳がんとは、乳腺組織にできるがんです。女性だけではなく、男性にも発生することがあります。乳がんの症状は、乳房のしこりです。自分で触って気が付くこともあります。また、乳頭から分泌物が出たり、乳房にくぼみができたりすることで気が付くこともあります。しこりは乳がん以外でも起こることもあり、まず専門医(乳腺外科)に受診して診断してもらうことが大切です。乳がんは女性の癌で最も多く発症します。30代後半より増え始め、40歳代で急激に増加します。早期の乳がんは生存率が非常に高く、早期発見・治療が非常に重要です。30代以降では定期的な乳がん検診を受けましょう。
「人間ドック」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「人間ドック」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
人間ドックは何歳からどれくらいの頻度で受けたほうがいいですか?
伊藤 陽子(医師)
30歳以降では成人病や癌などの頻度が徐々に増加していきます。30歳以降で1年に1回程度の受診がお勧めです。
35歳以上の人間ドックにかかる費用は保険適用になりますか?
伊藤 陽子(医師)
人間ドックは保険診療の適応にはなりません。自費での受診となりますが、会社によっては補助が出ることもあります。職場で確認してみましょう。
人間ドックと健康診断の違いは何ですか?
伊藤 陽子(医師)
健康診断は法律で決められた項目を中心に行うものです。このため、項目が限られています。人間ドックは自費で行い、希望すればさまざまな検査を追加で受けることができます。このため、人間ドックの方がより詳しい検査といえるでしょう。
人間ドックと脳ドックは検査内容が違うのですか?
伊藤 陽子(医師)
人間ドックは全身の詳しい検査を行います。検査機関によっては、追加項目で脳のMRIやCTなど詳しい検査を追加することもでき、これを脳ドックと言っています。脳ドック単独で受けることも可能です。
毎年人間ドックを受ければどんな癌でも早期発見できますか?
伊藤 陽子(医師)
人間ドックの項目によってもどこまでの癌が発見できるかは変わります。毎年人間ドックを受けていても、すべての癌を見つけ出せるとは言えません。しかし、さまざまな検査項目を追加していけば、よりがんの早期発見につながると考えられます。
年齢が若い10代20代は人間ドックを受けないほうがいいのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
10代20代ではがんの発症率や生活習慣病の発症も少ないため検査をしても異常が出ないことが多いと思われます。受けない方が良いとは言えませんが、30代以降の方と比較すると人間ドックを受診する意義が少ないかもしれません。
まとめ 人間ドックで病気や健康リスクを早期発見
人間ドックは健康診断と比較してより詳しく体の検査をすることができます。30歳以降では生活習慣病やさまざまながんの発症がふえ、人間ドックを受診することで早期発見につながると考えられます。人間ドックを受診した際には、結果をしっかり読み異常値が出た場合には早めに医療機関を受診することが大切です。早期に発見し、治療することが健康寿命をのばす秘訣です。くれぐれも受けっぱなしで結果を放置せず、自身の健康について関心を持ちましょう。
「人間ドック」の異常で考えられる病気
「人間ドック」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器系の病気
血液系の病気
呼吸器系の病気
消化器系の病気
- 胃がん
- 大腸がん
- 肝炎
腎・泌尿器系の病気
- 前立腺がん
- 腎臓病
婦人科の病気
- 子宮がん(頸がん、体がん)
- 卵巣がん
自覚症状が出にくい病気でも、人間ドックで早期に発見することができます。異常が出た場合には、早めに医療機関を受診しましょう。