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「前立腺がんの前兆となる3つの初期症状」はご存知ですか?原因も医師が解説!

 更新日:2024/03/19
「前立腺がんの前兆となる3つの初期症状」はご存知ですか?原因も医師が解説!

前立腺がんの初期症状とは?Medical DOC監修医が前立腺がんの初期症状・進行すると現れる症状・原因・検査法・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

石川 智啓

監修医師
石川 智啓(医師)

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2013年名古屋大学医学部卒。初期研修修了後、JCHO中京病院泌尿器科、小牧市民病院泌尿器科を経て、現在名古屋大学医学部附属病院泌尿器科で勤務。日本泌尿器科学会専門医、da Vinci Surgical System コンソールサージャン・サーティフィケートの資格を有する。

「前立腺がん」とは?

前立腺とは、男性のみにあり、膀胱の下に位置しており尿道の周りを取り囲んでいる、栗のような形をしている臓器のことです。
前立腺は、精液の一部に含まれる前立腺液という液体を作る働きをしています。そして前立腺液の中には、PSAというタンパク質が含まれています。PSAのごく一部は血液中にも取り込まれています。
前立腺がんは、前立腺の細胞が無秩序に自己増殖してしまう病気のことです。
前立腺がんは通常、進行が遅いがんであり、早期に発見された場合には治療が可能です。しかし、症状が出る前に進行することもあるため、定期的な検診が勧められています。高齢になるにつれて発症リスクが高まり、家族歴や遺伝的要因、生活習慣も発症に影響を与えることが知られています。治療方法には、手術、放射線療法、ホルモン療法などがあります。
今回の記事では、前立腺がんの初期症状や検査方法、治療法について詳しく解説していきます。

前立腺がんの前兆となる初期症状

前立腺がんの初期症状には以下のようなものがあります。

排尿の問題

頻繁な排尿、夜間に何度も排尿する必要がある(夜間頻尿)、排尿開始の遅れ、尿流が弱い、または尿を止めるのが難しいといった症状がでることがあります。
排尿障害がある場合には、アルコールやカフェインの摂取を控える、夕方以降は水分摂取を減らす、温暖な環境を保つなどの生活スタイルの変更が役立つことがあります。ただし、これらは一時的な対策であり、根本的な原因に対する治療が必要です。
受診すべき病院・科は泌尿器科となります。症状が急に現れたり、血尿があったりする場合は緊急性があるので、速やかに医師の診察を受けるべきです。

尿もれまたは尿失禁

尿意を感じてもトイレに間に合わない、咳やくしゃみで尿が漏れることもあります。
こうした症状がある場合には、排尿スケジュールの作成、骨盤底筋エクササイズなどが助けになることがありますが、こちらも一時的な対処法となります。
受診すべき病院・科は同様に泌尿器科です。しかし尿失禁が突然起こった場合は早めに医師の診察を受けた方が良いでしょう。

尿や精液に血が混じる

尿に血が混じること(血尿)や、射精時に精液に血が混じる(血精液症)ことも前立腺がんの初期症状としてあがります。これらの症状は自己管理できるものではなく、また自然に治ることも期待しにくいものですので、専門医による診断が必要です。
泌尿器科または内科を受診しましょう。血尿は緊急性を要する症状の1つですので、発見次第、迅速に医療機関を受診するべきと考えられます。

前立腺がんが進行すると現れる症状

前立腺がんが進行すると、以下のような症状が現れることがあります。

骨の痛み

特に腰や骨盤、脊椎に痛みが現れることが多いです。これはがん細胞が骨に転移した結果起こります。がん細胞が転移した骨は通常より脆くなりますので、骨折しやすくなるのです。
このような場合には、痛みを和らげるために鎮痛剤が用いられます。さらに、ビスホスホネート製剤やステロイド際、放射線療法が骨転移を管理するのに役立つ場合があります。
受診すべき科としては泌尿器科または腫瘍内科となります。骨の痛みがひどい場合は、がんが骨に転移している可能性があり、緊急性が高いため、速やかな受診が必要です。

リンパ節の腫れ

前立腺がんが、近くのリンパ節に転移することがあります。そして、腫れたリンパ節は、通常は身体の表面に近い場所、特に鼠径部に触れることができます。
リンパ節が腫れても痛むことは少なく、直接的な処置はありませんが、リンパ節の腫れががんの転移を示すことがあるため、診断を受けることが重要です。
もしも鼠径部のリンパ節の腫れが見られたら、診断と適切な治療を受けるために泌尿器科または腫瘍内科などを受診することが推奨されます。

排尿障害

頻繁な尿意、痛みを伴う排尿、排尿時の燃えるような感覚、または尿流が弱いことなどの特徴があります。
治療は、尿の流れを改善するために、一時的にカテーテルを使用することです。
排尿に関する問題は、泌尿器科の専門医の診察を必要とします。

足のむくみ

前立腺がんが進行すると、下肢におけるむくみや重だるさが現れることがあります。そして、特に片方の足に顕著な場合があります。
圧迫靴下や足を高くすることで一時的な症状緩和が可能ですが、根本的な原因に対する治療が必要です。
むくみががんの転移によるものである場合、迅速な治療が必要です。泌尿器科や内科を受診するようにしましょう。

体調不良

体重減少、疲労感、食欲不振などの体調不良が起こることがあります。
もちろん前立腺がん以外でもこうした体調不良は起こりますが、排尿障害などの他の症状も伴っている場合には、前立腺がんの可能性があります。
処置としては、栄養摂取の改善、休養、場合によっては補助的な食事療法や栄養補給が推奨されます。
腫瘍内科や一般内科を受診しましょう。これらの症状は、体全体へのがんの影響を示唆している可能性があるため、専門医の診断が必要です。

前立腺がんの主な原因

前立腺がんの主な原因は同定されていませんが、脂肪食の摂取、運動不足、肥満、喫煙などが前立腺がんのリスクを高める可能性があります。前立腺がんは早期発見が重要なので、特にリスクが高いと考えられる場合は定期的なスクリーニングを受けるべきです。症状がなくても、定期的な検査で早期に発見することが可能です。何か異常を感じた際は、緊急性に応じて迅速に医療機関を受診する必要があります。

遺伝的要因

前立腺がんは家族歴がある男性で発生する可能性が高く、特定の遺伝子変異がリスクを高めることが示されています。
家族歴がある場合は、泌尿器科で遺伝的スクリーニングやカウンセリングを受けることができます。予防的な対策として定期的な検査が推奨されることがあります。

年齢

年齢は前立腺がんの最も大きなリスクファクターで、特に50歳以上の男性に多く見られます。
50歳を超えた男性は泌尿器科で定期的な前立腺特異抗原(PSA)検査を受けることが一般的に推奨されます。日本では、50歳以上の方には住民検診で前立腺がん検診受診希望者に対してPSA測定を行っています。

生活環境・環境因子

高脂肪食の摂取、運動不足、肥満、喫煙などが前立腺がんのリスクを高める可能性があります。
これらのリスクを管理するために、一般内科や泌尿器科の医師、または保健師などの医療スタッフに相談することが有益です。生活習慣の改善についてのアドバイスを受けることができるでしょう。

前立腺がんの検査法

前立腺の検査にはいくつかの方法があり、以下はその主なものです。

前立腺特異抗原(PSA)検査

PSA検査は血液検査となります。がん検診や泌尿器科、一般内科で行われます。PSAは前立腺によって産生されるタンパク質で、その血中濃度が高いと前立腺がんのリスクが高いことを示唆します。
前立腺がん検診では、PSAカットオフ値が設けられています。過剰診断を避けつつ治療を要する癌を検出して,前立腺癌死亡率を低下させることを目的として設定されています。
具体的には、PSAカットオフ値は全年齢で0.0~4.0ng/mL、あるいは年齢階層別カットオフ値(50~64歳:0.0~3.0ng/mL、65~69歳:0.0~3.5ng/mL、70歳 以 上:0.0~
4.0ng/mL)が推奨されています。また、PSA 0.0~1.0ng/mLの場合は3年毎、PSA 1.1ng/mL~カットオフ値上限では毎年の検診受診が推奨されています。
PSA検査は外来で行う簡単な血液検査なので、入院は必要ありません。検査自体は数分で完了し、結果が出るまで数日かかる場合があります。

前立腺生検

PSA検査や直腸診、経直腸エコーで異常が見つかった場合、泌尿器科でより詳細な検査として生検が行われることがあります。これには、超音波機器を使用して前立腺の画像を取得し、小さな針を用いて組織のサンプルを採取します。最初の生検では、10から12箇所からサンプルを採取します。
直腸側から針を刺す経直腸(けいちょくちょう)と、会陰部から針を刺す経会陰(けいえいん)の2種類があります。この2つでは、前立腺がんの検出力は同じくらいと言われていますが、合併症としての感染症のリスクは経直腸生検の方が高いと言われています。しかし、経直腸生検の方が簡便に行えるため選択されることが多いです。サンプルを病理学的に調べ、がんがあるかどうかを調べます。
前立腺生検は通常、局所麻酔を用いた外来手術として行われます。検査後は短時間の経過観察のために病院に留まることが求められることがありますが、多くの場合は同日中に退院できます。

MRIやCTなどの画像診断

前立腺がんが疑われる場合には、前立腺がんのステージを決めていくことが必要となります。そのために、MRI(磁気共鳴画像法)やCTスキャン、骨シンチグラフィなどが行われます。
MRI検査は前立腺がんが前立腺にとどまっているかどうかを調べるために信頼性の高い画像診断方法となります。出血の影響を防ぐために、生検前に行うことが望ましいですが、生検後であれば3週間以上の間隔を空けることが望ましいとされます。
CT検査では前立腺がんが骨や肺など、他の臓器に転移していないかを調べるのに有効です。骨シンチグラフィでは、骨に転移があるかどうかを調べることが可能です。いずれも、泌尿器科が主体となり検査を進めていくことが多いでしょう。検査はすべて外来診療で行うことができます。

前立腺がんの治療法

前立腺がんの治療は、がんのステージング(がんの大きさや広がりを評価するプロセス)とリスク分類(再発の可能性を評価するプロセス)に基づいて決定されます。
ステージングは通常、T (腫瘍の大きさ)、N (近くのリンパ節への拡散)、M (遠隔転移の有無) のカテゴリーを用いて行われ、リスク分類はPSAの値や、グリーソンスコア(がん組織の顕微鏡的な外観を基にしたスコアで、前立腺がんの悪性度を表す病理学上の分類)、Tステージに基づいて低リスク、中リスク、高リスクに分けられます。
がんが前立腺内にとどまっており、リスクが低い場合は慎重に経過をみる監視療法が行われます。3〜6カ月毎の直腸診とPSA検査、そして1〜3年毎の前立腺生検が行われ、がんの進行がないかどうかをチェックします。その他、以下に前立腺がんの一般的な治療法をお示しします。

手術

手術は、泌尿器科で行われます。手術後の回復状態にもよりますが、通常は1週間から2週間程度の入院が必要になる場合が多いです。
手術後には、尿漏れや勃起不全などの合併症に対するリハビリが必要になることがあります。これには骨盤底筋トレーニングなどが含まれます。

放射線治療

放射線治療は放射線治療科を持つ病院で行われます。前立腺がんに対する放射線治療には、外部から放射線を当てる外部放射線治療と、体内に放射性物質を埋め込む小線源療法、つまりブラキセラピーがあります。外部放射線治療としては、強度変調放射線治療(IMRT)や陽子線治療を用いて直腸や膀胱、尿道など正常臓器への影響を低減させることができるようになっています。
外部放射線治療の場合、通常は入院の必要はありません。前立腺ブラキセラピーでは短期間の入院が必要な場合があります。
放射線治療後に特定のリハビリが必要な場合は少ないですが、治療による副作用である尿もれや尿失禁などに対処するためのサポートが必要になることがあります。

ホルモン療法

ホルモン療法は、泌尿器科やがん治療センターで行われます。ホルモン療法は、がんの成長に必要な男性ホルモン(テストステロン)の作用を抑える治療です。
通常、ホルモン療法自体での入院は必要ありません。薬物を定期的に投与する形で行われます。
ホルモン療法によるリハビリの必要性は一般的には低いですが、ホルモン療法による副作用(例:筋力の低下、骨密度の減少)に対する管理や対策が必要になることがあります。

すぐに病院へ行くべき「前立腺がんの初期症状」

ここまでは前立腺がんの初期症状などを紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

排尿障害などの症状がある場合は、泌尿器科へ

前立腺がんの初期症状については、特に自覚症状がないことが多いとされています。しかし、尿が出にくくなる、排尿の回数が多くなるなどの排尿障害があらわれることもあります。これらの症状は前立腺肥大症など他の病気による可能性もあるため、前立腺がん特有の症状とは限りませんが、念の為泌尿器科を受診するようにしましょう。

受診・予防の目安となる「前立腺がん」のセルフチェック法

  • ・特に夜間に頻繁な尿がしたくなる症状がある場合
  • ・血尿がでる症状がある場合
  • ・排尿時に痛みや不快感といった症状がある場合

「前立腺がんの初期症状」についてよくある質問

ここまで前立腺がんの初期症状などを紹介しました。ここでは「前立腺がんの初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

前立腺がんを発症する可能性の高い人の特徴を教えてください。

石川 智啓石川 智啓 医師

父親や兄弟が前立腺がんの場合、ご本人も前立腺がんのリスクが高まる可能性があります。その他、高脂肪食による肥満や、飽和脂肪酸の摂りすぎは前立腺がんを発症するリスクを高めてしまうと考えられています。

前立腺がんを発症した場合、控えた方がよい食べ物や飲み物はありますか?

石川 智啓石川 智啓 医師

前立腺がんを発症した場合、高脂肪食品や砂糖・精製された炭水化物、加工食品は避けた方がよいでしょう。また過度なアルコールも控えた方が良いと考えられます。

射精回数が多い人は前立腺がんになりにくいのでしょうか?

石川 智啓石川 智啓 医師

射精回数と前立腺がんのなりやすさについては、さまざまな研究があります。
その中でも、2022年に発表された報告では、週に平均4.6〜7回射精する男性は、週に平均2.3回未満射精する男性に比べて、70歳までに前立腺がんと診断される可能性が36%低かったという結果がでました。

編集部まとめ

今回の記事では、前立腺がんの初期症状について解説しました。
前立腺がんの症状には、前立腺肥大によるものと似ているものがあります。しかしながら、排尿時の症状で気になることがあれば、泌尿器科を受診するようにしましょう。

「前立腺がんの初期症状」と関連する病気

「前立腺がんの初期症状」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

前立腺がんになりやすい高齢男性では、前立腺肥大もみられることが多いです。緊急性は低い場合が多いですが、前立腺炎や尿路感染症、また、膀胱がんなども関連します。排尿トラブルがある場合には泌尿器科などを受診することをお勧めします。

「前立腺がんの初期症状」と関連する症状

「前立腺がんの初期症状」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 尿が出にくい
  • 排尿に時間がかかる
  • 頻尿、夜間頻尿
  • 尿の勢いが弱い、尿の線が細い
  • 尿もれ
  • 尿道からの出血や精液中の血液
  • 排尿時や射精時の痛み

前立腺がんの初期症状と関連する症状としては、排尿に関するトラブルが多く見られます。気になった際には早めに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師