「白血球の働き」はご存知ですか?基準値や結果の見方も医師が徹底解説!
白血球の働きとは?Medical DOC監修医が血液検査項目の見方や基準値・白血球の異常による病気のリスク・多いときや少ないときの対処法や主な原因等を解説。
監修医師:
木下 康平(医師)
防衛医科大学校卒業
聖マリアンナ医科大学病院呼吸器内科にて専門研修
自衛隊病院にて呼吸器内科・一般内科診療に従事
資格:内科認定医、呼吸器内科専門医
目次 -INDEX-
白血球の働きとは?血液中の役割・機能
白血球という言葉を聞いたことはあるでしょうか?生物の授業などでなんとなく聞いたことはあっても、その具体的な役割や機能はあまり知られていないのかもしれません。
ここでは白血球とは何か、またその役割を説明させていただきます。
まず、体全体を回っている血液の中にはさまざまな細胞があり、それぞれに役割があります。白血球もその一つで主に体の免疫を担当しており、体内の環境を外敵から守る役割があります。この外敵は細菌や癌細胞など多岐に渡り、それぞれに対応した白血球の種類があります。
白血球は好中球、リンパ球、好酸球、好塩基球、単球に別れます。
好中球は細菌などを除去するのが特徴で、細菌に感染した部位に集まります。傷口に黄色い膿がついていることがありますが、これらは細菌と好中球の死骸であることが多いです。
リンパ球はウイルスや悪性腫瘍に攻撃することがある細胞です。また直接攻撃するだけでなく、抗体を産生したり他の免疫細胞を活性化させる役割もあります。
好酸球は主に寄生虫に対応した細胞です。過度に好酸球が働くことでアレルギー反応が起こり喘息などのアレルギー疾患の原因となることがあります。
好塩基球は、病原体に対する働き方の詳細が明らかになっていません。ですがアレルギー反応を起こすことは分かっており、アナフィラキシーやアレルギー性鼻炎を引き起こすことは明らかになっています。
単球は他の白血球と比べ大型で、細菌や腫瘍を取り込んだ後にこれらの情報をリンパ球に伝えます。これによりリンパ球が2回目以降に抗体を産生することができるようになります。
白血球が基準値より少ない場合の病気リスクと対策
これまで白血球の種類と役割に関して説明してきました。それでは白血球が低い場合は免疫力が低くなったりするのでしょうか?
ここからは白血球が低い場合はどのようなことが起こるか説明していきます。
白血球が少ないとどうなる?
白血球の値が少なくてもそれだけで問題になることはあまりありません。
白血球の値は個人差があり、かつ体調によって変動することがあります。ただしもともとの値から比較して減少していくときは注意が必要です。白血球が減少することで体内の免疫機能が低下していきます。免疫機能が低下するとさまざまな感染症にかかりやすくなります。
また白血球の総数だけでなく、どの種類の白血球が減少したかによってかかりやすい感染症の種類が決まります。好中球、単球が減少した場合は細菌に、リンパ球が減少することでウイルスなどに感染しやすくなります。好酸球と好塩基球はもともとの総数が少なく、減少することで問題となることはあまりありません。
健康診断で白血球が少ないと言われたら?
健康診断で白血球の値が少ないと指摘された場合、まずは以前の結果も持参して病院に受診しましょう。そのうえで採血を行い減少している白血球の種類を検査してもらいましょう。
白血球を増やすための改善方法は?
個人で白血球を増やす方法はないでしょう。ステロイド剤の内服で白血球の値は増加しますが、無理やりに白血球を上げても何の効果もないこと、ステロイドの副作用があることからやめましょう。
病気の治療中でない限り、白血球の値に一喜一憂する必要はほとんどありません。
白血球が基準値より多い場合の病気リスクと対策
白血球が多いとどうなる?
白血球が多くなる原因には体の炎症反応を引き起こすような感染や怪我などがあります。
また慢性的に炎症を起こすリウマチや炎症性腸疾患などが原因となることがあります。白血球が多いだけで症状が出るというより、白血球が上がる原因による症状が起こります。特に発熱などが起こることが多いです。ただ症状だけで白血球の上昇を見出すことは難しいでしょう。
健康診断で白血球が多いと言われたら?
前年度までの結果を含めて近医に受診しましょう。場合によっては追加で採血を行い白血球が上がる原因の精査を行います。
白血球はストレスなどで簡単に増減するため、健康診断で指摘された時点では過剰に心配する必要はないでしょう。
白血球を減らすための改善方法は?
個人でできる対策はありません。病的に白血球が高い場合は、その原因に対する治療を行う必要があります。食事なども特定のものを摂取する・摂取しないなどはせず、バランスの良い食事を心がけましょう。
健康診断の「白血球」の見方と再検査が必要な「白血球」に関する数値・結果
ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
健康診断・血液検査の「白血球」の基準値(μL)
以下に白血球の正常値の基準値を記載しました。個人差による多少の変動は問題ありません。また好中球〜好塩基球はその割合が重要になるため、基準となる割合を記載しています。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
白血球 | 3900-9800(/μL) | 3500-9100(/μL) |
好中球 | 40.0-74.0(%) | |
リンパ球 | 18.0-59.0(%) | |
単球 | 0.0-8.0(%) | |
好酸球 | 0.0-6.0(%) | |
好塩基球 | 0.0-2.0(%) |
男女ともに白血球の総数が3000/μLを下回るようであれば、感染症にかかりやすい状態であるため早めの受診が必要でしょう。
健康診断・血液検査の「白血球」の異常値・再検査基準と内容
まずは採血を行い、白血球の種類別の割合を確認します。また異常な白血球が出現しているかどうかを検査します。この異常な白血球が出現している場合は白血病などの可能性があります。白血病を疑う場合は血液内科に入院し骨髄検査なども行う必要があります。
また好酸球が高い場合、好酸球性疾患の可能性も否定できません。その場合は好酸球が異常に増加することで肺炎や腸炎をきたしている可能性があることから全身のCT撮影などをおこないます。
また関節リウマチなどの自己免疫疾患の可能性もあります。
好中球が高い場合は細菌感染などを起こしている可能性があるため、感染がどこで起こっているか全身精査を行います。造影CTや内視鏡検査も行う場合もあるでしょう。
健康診断・血液検査の「白血球」の異常を診断されたら気をつけたい病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「白血球」の異常に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
白血病
白血病は血液を作る骨髄という臓器の異常によって起こる病気です。早期発見・早期治療が必要であるため、健康診断で白血球値の異常を認めた場合は数日以内の受診をおすすめします。血液内科での検査が必要ですが、血液内科のみのクリニックはほとんどないため総合病院へ受診するようにしましょう。
好中球減少症
好中球減少症は骨髄の機能が低下することで好中球が低下する病気です。骨髄の機能が低下する抗がん剤の使用後などに起こることが多いです。そのため抗がん剤治療中に倦怠感や発熱を認めた場合には、すぐに受診する必要があります。免疫が低下していることから普通では感染しない感染症に感染するリスクが非常に高いです。
抗がん剤治療をしている場合はかかりつけ医に電話して、すぐに受診しましょう。
白血球増加症
白血球が異常に上昇している場合、白血球を上昇させる二次的な原因があることが多いです。その原因として悪性腫瘍の骨髄転移や重症細菌感染症(結核や敗血症など)、骨髄線維症などがあります。
発熱や倦怠感などの自覚症状があることが多いため、症状が持続する場合は内科受診をおすすめします。
「白血球」が少ない時の正しい対処法・改善法は?
白血球が少ない場合に白血球を増やす生活習慣などはありません。白血球が少なく感染しやすい状態である中で、以下に感染を避けるかが重要です。
感染対策として外出後の手洗いやうがい、またマスク着用をするようにしましょう。また外出を控える必要はありませんが、風邪やインフルエンザの流行期には人混みを避ける工夫が必要です。
白血球が低いからといって運動をせずに自宅に籠ることは体力低下となるためお勧めしません。人混みを避けつつ運動することが大事ですが、激しい運動は必要なく散歩などで十分でしょう。
食事も感染を予防するものが重要です。具体的には生ものは細菌・ウイルス感染を起こすことがあるため控えるようにしましょう。また賞味期限が切れた食事なども感染の可能性が高いために控えましょう。
「白血球」が多い時の正しい対処法・改善法は?
白血球が高いからといって過剰に心配する必要はありません。ただし睡眠不足や疲労のストレスにより白血球が上昇することはあり得ます。このような生活習慣が続いた場合は白血球の値に関係なく、不眠やうつ病などに繋がる可能性があります。
白血球の数値と関係なく、規則正しい生活習慣を心がけましょう。
「白血球」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「白血球」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
白血球の主な働きを教えてください。
木下 康平 医師
体内に侵入してきた病原体を排除することが主な役割です。
ストレスが原因で血液検査で白血球に異常が出ることはありますか?
木下 康平 医師
白血球の値が増えることはあります。
ただそれだけで病的な異常と判断することはありません。
疲れやすいのは白血球が多いからですか?
木下 康平 医師
白血球の値が多少高いからといって、疲れやすいなどの症状が出ることはありません。
ですが白血病などの病的に白血球の値が高くなる疾患では、疲労感などの症状が出ることがあります。
免疫力が低下すると白血球の働きは悪くなるのでしょうか?
木下 康平 医師
白血球の働きが低下することで免疫力が低下することがあります。
感染症対策で白血球の働きを高めるためにできる対策はありますか?
木下 康平 医師
ご自身でできる対策はほとんどないと考えます。
むしろ基本的な感染対策として手洗いやうがい、マスクの着用などをお勧めします。
定期的なワクチン接種(肺炎球菌やインフルエンザなど)も効果的です。
編集部まとめ
健康診断などで白血球の異常値を指摘された場合は、まずは内科に受診するようにしましょう。その上で白血球の値に異常をきたす基礎疾患を類推し、血液内科や腫瘍内科などの適切な科に紹介受診するようにしましょう。
「白血球」の異常で考えられる病気
「白血球」の異常から医師が考えられる病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
リウマチ科の病気
呼吸器の病気は白血球の上昇で指摘されるよりは、胸部レントゲン画像などの異常で発見されることが多いです。関節リウマチでは自己免疫が自身の体を攻撃してしまう疾患で、慢性的に白血球が高いことがあります。起床時の関節痛などで受診した際に診断されることが多いです。