「赤血球の働き」はご存知ですか?不足すると発症する病気も医師が解説!
赤血球の働きとは?Medical DOC監修医がヘモグロビンの役割と血液検査項目の見方や基準値・異常による病気のリスク・減少時や増加時の対処法や原因等を解説。
監修医師:
小正 晃裕(医師)
目次 -INDEX-
赤血球の働きとは?血液中の役割・機能
赤血球とはどのようなものかご存知でしょうか?生物の授業で聞いたことはあるかもしれませんが、詳しいことは忘れてしまった方も多いと思います。
赤血球とは血液の中に流れている細胞で、ヘモグロビンという赤い色素を含んでおり、これが血の赤い色のもとになっています。
ヘモグロビンは酸素と結合することが出来るため、血流に乗って体中に酸素を運ぶ役割があります。
赤血球が基準値より少ない場合の病気リスクと対策
赤血球が少ないとどうなる?
赤血球が少なくなることを貧血と言います。この貧血になる原因はさまざまで、赤血球の成分である鉄が減る鉄欠乏性貧血や、消化管などからの出血による出血性貧血があります。また赤血球を作る骨髄に異常があることで貧血になることもあります。
貧血になると体中の酸素が減少することで疲れやすさや頭痛、めまいや失神が起こります。
健康診断で赤血球が少ないと言われたら?
赤血球が低い場合、その原因を調べる必要があります。主な原因は鉄が不足している鉄欠乏性貧血であり、生理がある女性に多いです。また感染症や悪性腫瘍が原因で貧血が起こることもあります。
そのためまずは近くの内科に受診し、貧血の原因を調べるようにしましょう。
赤血球を増やすための改善方法は?
貧血の原因として最も多いものが鉄欠乏性貧血になります。そのため鉄分を多く含む食事が理想的です。鉄分が多い食材はレバーや鶏卵、カツオやほうれん草などです。また鉄分の吸収を助ける栄養素としてビタミンCがあります。このビタミンCを多く含む柑橘類(レモンやオレンジ)やブロッコリーやピーマンなどを一緒に摂るようにしましょう。
また、胃を切除している患者さんはビタミンB12という栄養素が不足しがちです。このビタミンB12を上手く摂取できないことが貧血の原因となりますが、食事で補うことは困難です。この場合は病院で定期的に注射を受けるようにしましょう。
赤血球が基準値より多い場合の病気リスクと対策
赤血球が基準値より少し高いくらいでは特に異常となりません。赤血球の値は個人差が大きく、比較的高い人も存在します。ただ異常に高い場合は疲労感などの症状を起こすことがあります。ただこれは生活習慣などによるものではなく、病気によって赤血球が増えることが原因です。
赤血球が多いとどうなる?
赤血球が過剰に多くなると疲労感などの症状を起こすことがあります。場合によっては息切れなどを起こすことがあり、これらの自覚症状から発覚することがあります。
さらに過剰に赤血球が高い場合、血液の粘稠度が高くなり血液の塊(血栓)ができ、脳梗塞などを起こすことがあります。
健康診断で赤血球が多いと言われたら?
まずは近くの内科に受診しましょう。少し赤血球が高いだけでは問題ないことがほとんどです。医師が必要と判断した場合に追加で検査を行います。
赤血球を減らすための改善方法は?
赤血球が少し高いだけで生活習慣を変える必要はほとんどありません。病的な赤血球の過多(多血症と言います)である場合は、定期的に血を抜くという治療を行うことがあります。
健康診断の「赤血球」の見方と再検査が必要な「赤血球」に関する数値・結果
ここまでは診断されたときの原因と対処法を紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。
健康診断・血液検査の「赤血球」の基準値(μL)
以下に赤血球とヘモグロビンの正常値の基準値を記載しました。個人差や性差があり、多少の変動は問題ありません。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
赤血球数 | 427-570×10⁴(/μL) | 376-500×10⁴(/μL) |
ヘモグロビン | 13.5-17.6(g/dL) | 11.3-15.2(g/dL) |
特に重要な値はヘモグロビンの値です。このヘモグロビンの値で貧血などの診断を行います。ヘモグロビンの値が高すぎる場合は多血症を、低すぎる場合は貧血を疑います。
ただ一回の値だけでなく、その経過も診断には重要です。
健康診断・血液検査の「赤血球」の異常値・再検査基準と内容
まず貧血の場合は以前のヘモグロビンの値と比較して確認します。急速にヘモグロビンが減っている場合は消化管などからの出血の可能性があるためです。以前から低く、さらに徐々に減っている場合は鉄欠乏性貧血や感染症などに伴う貧血の可能性があります。
健康診断でヘモグロビンの異常を指摘された場合、まずは内科に受診するようにしましょう。
健康診断・血液検査の「赤血球」の異常を診断されたら気をつけたい病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「赤血球」の異常に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
真性多血症
真性多血症は遺伝子異常により赤血球の値が著明に増加する病気です。遺伝子変異が原因ですが遺伝することはありません。
症状が出現するよりも健康診断などで発見されることがほとんどです。赤血球が増加することで血液が固まりやすくなり、血の塊(血栓と言います)ができることがあります。この血栓が大きくなり、他の臓器に詰まることで脳梗塞などの症状を起こすことがあります。
治療法は、赤血球を減らすために血を抜くこと(瀉血:しゃけつ)であり、これを定期的に行います。
健康診断で赤血球の増加を指摘されたら、まずは内科へ受診するようにしましょう。
貧血
ヘモグロビンの値が低くなると貧血の診断となります。貧血の症状には疲れやすさ、息切れやふらつきがあります。症状が進行すると失神を起こすこともあります。
貧血の原因として一番多いものが鉄欠乏性貧血で、生理のある女性によくみられます。鉄欠乏性貧血では内服の鉄剤で治療します。
また比較的高齢者に多い貧血に出血性貧血があります。これは消化管に悪性腫瘍などがあると、そこからじわじわと出血し貧血になる病態です。これは便の中に血が混じっているか検査を行い、必要があれば内視鏡検査を追加で行います。
また消化管以外の悪性腫瘍や結核などの感染症があると、炎症によりヘモグロビンが低下し貧血になることがあります。
これらの貧血は、まずは採血で貧血の原因を推測したのちに、原因精査の検査を追加します。
健康診断で貧血を指摘された場合は、まずは内科に受診するようにしましょう。
「赤血球」が少ない時の正しい対処法・改善法は?
赤血球が少ない場合、ご自宅でできる生活習慣として鉄分とビタミンCを多く含む食事を摂るようにしましょう。
運動で赤血球を増やすことは困難ですが、運動が原因で貧血になることはあります。
ランニングを多くしている場合、着地の衝撃で足裏を通る血管内の赤血球が破壊されることが原因です。ランニング以外の運動(散歩などは可)を取り入れることがお勧めです。
「赤血球」が多い時の正しい対処法・改善法は?
赤血球が多い原因として上述した真性多血症などは治療を行う必要があります。ただし体の水分が足りずに相対的に赤血球が多くなっていることはあります。そのような場合は血栓のリスクが高まるため、こまめに水分をとることが必要です。また脱水になりうる下痢などがある場合は、刺激物の摂取は控えるようにしましょう。
「赤血球」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「赤血球」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
赤血球の主な働きを教えてください。
小正 晃裕 医師
赤血球は血液中を走るトラックのような働きで肺から全身に酸素を運ぶ役割があります。
赤血球と白血球はどんな関係がありますか?
小正 晃裕 医師
直接的に相互作用はありませんが、どちらも骨髄という臓器で作られています。そのため骨髄に異常があると赤血球と白血球のどちらも異常値を示すことがあります。
赤血球に異常があると健康寿命に影響しますか?
小正 晃裕 医師
基準値内から大きく離れていなければ問題ありません。ただし貧血が持続した場合は心臓に負担がかかることで心不全(心機能が低下する病態)などになることがあります。
そのため異常を指摘された場合は早めに検査・治療を行う様にしましょう。
血液中の赤血球の働きが悪いと貧血になるのでしょうか?
小正 晃裕 医師
赤血球の値が低いと貧血になりますが、赤血球自体の異常で貧血を起こすことがあります。
この場合はヘモグロビンの値だけを見ても判断はできません。
軽症であれば自覚症状もありませんが、中等症以上では倦怠感などの貧血様の症状が出現します。ふらつき、立ちくらみ、疲れやすさなどあれば内科に受診し検査を受けることをお勧めいたします。採血を行い、赤血球の形を顕微鏡で調べることで診断が可能です。
まとめ 「赤血球」の異常が気になるときは内科で相談!
赤血球の値、ヘモグロビンの値が低いと言われた場合は、まずは一般内科に受診しましょう。そこで精査を行い、必要であれば血液内科へ紹介受診するようにしましょう。
「赤血球」の異常で考えられる病気
「赤血球」の異常から医師が考えられる病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器系疾患の病気
婦人科系疾患の病気
- 過多月経
- 子宮筋腫
消化器系疾患の病気
- 胃十二指腸潰瘍
- 大腸癌
貧血が持続することで心臓の機能が低下する心不全を起こすことがあります。
婦人科系疾患により生理の際の出血が多くなったり、消化管から出血を起こしたりすることで貧血を発症することがあります。