「乳がんが骨転移した場合の余命」はどれくらいかご存知ですか?治療法も医師が解説!
公開日:2025/10/24


監修医師:
石橋 祐貴(医師)
プロフィールをもっと見る
奈良県立医科大学卒業後、東京大学整形外科教室に入局。東京大学医学部附属病院、都立駒込病院、自治医科大学附属さいたま医療センターに勤務し、主に整形外科の腫瘍領域である骨軟部腫瘍および骨転移の診療に従事。日本整形外科学会整形外科専門医、運動器リハビリテーション医、がん治療認定医、認定骨軟部腫瘍医、緩和ケア研修会修了医。
・診療科目
整形外科全般、がん骨転移、骨軟部腫瘍領域、緩和ケア領域など
・診療科目
整形外科全般、がん骨転移、骨軟部腫瘍領域、緩和ケア領域など
目次 -INDEX-
乳がんの骨転移とは?
乳がんの骨転移とは、乳がんの細胞が血液やリンパの流れに乗って骨に移動し、そこで増殖する状態を指します。
乳がんが骨に転移するメカニズム
乳がん細胞が骨に転移するメカニズムは複雑ですが、主に以下のステップで進行すると考えられています。2.3)- がん細胞の遊離 原発巣である乳房から、がん細胞が剥がれ落ちます。
- 血管・リンパ管への侵入 遊離したがん細胞が、近くの血管やリンパ管に侵入します。
- 血流・リンパ流に乗って移動 がん細胞は血流やリンパ流に乗って全身を巡ります。
- 骨への定着 骨の内部には、がん細胞が定着しやすい微小環境(ニッチ)が存在すると考えられています。特に、骨の代謝に関わる骨芽細胞や破骨細胞が分泌するサイトカインなどが、がん細胞の増殖を助けるといわれています。
- 骨での増殖と骨破壊/形成 骨に定着したがん細胞は増殖し、周囲の骨を破壊したり(溶骨性病変)、異常な骨を形成したり(造骨性病変)、あるいはその両方を引き起こしたりします。
乳がんで骨転移しやすい部位
乳がんが骨転移しやすい部位には特定の傾向があります。主に、血流が豊富な体幹の骨に転移しやすいとされています。- 脊椎(背骨) 頻度が高く、痛みや神経症状の原因となることがあります。
- 骨盤 股関節周辺の痛みなどを引き起こすことがあります。
- 肋骨 呼吸時の痛みや、触れると痛むなどの症状が出ることがあります。
- 大腿骨(太ももの骨) 特に上部(股関節に近い部分)に転移しやすく、病的骨折のリスクが高まります。
- 上腕骨(腕の骨) 肩に近い部分に転移しやすく、腕の痛みや挙上困難などを引き起こすことがあります。
乳がんが骨転移した場合の症状
骨転移の症状は、転移した部位や病変の進行度によって異なりますが、代表的なものには以下のようなものがあります。痛み
一般的な症状です。初期は鈍い痛みや違和感程度ですが、進行すると持続的な強い痛みになることがあります。夜間や安静時に痛みが強くなることも特徴です。病的骨折
骨転移により骨が脆弱になり、転倒や軽い外力でも骨折しやすくなります。これを病的骨折と呼び、強い痛みや機能障害を引き起こします。神経症状
脊椎に転移した場合、脊髄や神経根が圧迫され、手足のしびれ、麻痺、排尿・排便障害などの神経症状が出ることがあります。高カルシウム血症
骨が破壊されることで血液中のカルシウム濃度が上昇し、倦怠感、吐き気、意識障害などの症状が現れることがあります。重症化すると命に関わることもあります。骨髄抑制
骨髄に転移が広がることで、血液を作る機能が低下し、貧血、白血球減少(感染しやすくなる)、血小板減少(出血しやすくなる)などが起こることがあります。骨転移した乳がんのステージと余命
乳がんの骨転移は、がんの進行度を示すステージ分類において、一般的に遠隔転移があるステージIV(ステージ4)に分類されます。
骨転移がある乳がんのステージ
乳がんは、がんの大きさ(T)、リンパ節転移の有無(N)、遠隔転移の有無(M)の組み合わせでステージが決定されます。骨転移は遠隔転移(M1)に該当するため、骨転移が確認された時点でステージIVと診断されます。4)乳がんが骨転移した場合の余命
骨転移がある乳がんの余命は、一概に断定することはできません。患者さん一人ひとりの状態によって大きく異なるためです。余命に影響を与える主な要因としては、以下のようなものが挙げられます。4)- がんのサブタイプ ホルモン受容体陽性、HER2陽性、トリプルネガティブなど、乳がんの性質によって治療への反応性が異なり、予後にも影響します。
- これまでの治療歴と効果 過去にどのような治療を受け、その効果がどうだったかによって、今後の治療選択肢や予後が変わります。
- 全身状態(パフォーマンスステータス) 患者さんの体力、活動能力、合併症の有無なども、治療の選択肢や予後に影響します。
- 治療への反応性 治療が奏功し、がんの進行が抑えられている期間が長いほど、予後は良好となる傾向があります。
乳がん骨転移の治療法
乳がんの骨転移の治療は、大きく分けて乳がんそのものに対する治療(全身療法)と、骨病変に対する治療(局所療法)の2本柱で行われます。これらを組み合わせることで、がんの進行を抑え、骨関連事象(SRE:病的骨折、脊髄圧迫、高カルシウム血症など)を予防し、痛みを緩和してQOLを維持することを目指します。5)
乳がんの治療
骨転移がある場合、乳がん細胞は全身に広がっている可能性があるため、全身に作用する治療が中心となります。4)ホルモン療法
ホルモン受容体陽性の乳がんの場合に選択されます。がん細胞の増殖を促すホルモンの働きを抑える薬を使用します。ほかの治療と比較すると副作用が少なく、長期にわたって使用できることが多いです。化学療法(抗がん剤治療)
ホルモン療法が効かない場合や、進行が速い場合などに選択されます。がん細胞を直接攻撃する薬を使用します。分子標的治療
特定のがん細胞の増殖に関わる分子を標的とする薬です。HER2陽性乳がんや、特定の遺伝子変異を持つ乳がんなどで効果が期待されます。免疫療法
免疫チェックポイント阻害薬など、患者さん自身の免疫力を高めてがんを攻撃させる治療法です。一部の乳がんで効果が期待されています。 これらの全身療法は、がん細胞の増殖を抑え、骨転移の進行を遅らせることを目的とします。骨に対する治療
骨転移による痛みや骨折のリスクを軽減し、QOLを改善するために、骨病変に直接作用する治療が行われます。5)放射線治療
骨転移による痛みの緩和に大変効果的です。また、骨折のリスクが高い部位に対して、骨を強化する目的で行われることもあります。手術
病的骨折が起こった場合や、骨折のリスクが高い場合、脊髄圧迫による神経症状がある場合などに、骨の安定化や神経圧迫の解除を目的として行われます。骨修飾薬(骨吸収抑制薬)
骨の破壊を抑える薬で、ビスホスホネート製剤やデノスマブなどが用いられます。骨関連事象(SRE)の発生を抑制し、痛みを軽減する効果があります。定期的な点滴や注射で投与されます。鎮痛薬
痛みの程度に応じて、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、医療用麻薬など、さまざまな種類の鎮痛薬が用いられます。 これらの治療法は、患者さんの状態、がんのサブタイプ、転移の状況、これまでの治療歴などを総合的に判断し、主治医と相談しながら決定されます。乳がんが骨転移した場合の注意点
乳がんの骨転移と診断された場合、日常生活でいくつかの注意点があります。
痛みの管理
痛みを我慢せず、主治医や緩和ケアチームに積極的に相談し、適切な鎮痛薬を使用しましょう。痛みはQOLを著しく低下させます。転倒予防
骨が脆くなっているため、転倒による病的骨折のリスクが高まります。室内環境の整備(段差解消、手すり設置など)や、適切な靴の選択、必要に応じて杖や歩行器の使用を検討しましょう。乳がんについてよくある質問
ここまで乳がんを紹介しました。ここでは「乳がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
骨転移した乳がんが完治することはありますか?
現在の医療では、骨転移した乳がん(ステージIV)の完治は難しいとされています。しかし、これは治療法がないという意味ではありません。治療の目的は、がんの進行を抑制し、病状を長期にわたってコントロールすること、そして患者さんのQOLを維持・向上させることです。
乳がん骨転移の初期症状を教えてください。
乳がん骨転移の最も一般的な初期症状は痛みです。特に、安静時や夜間に痛みが強くなる、特定の動作で痛みが生じる、といった特徴があります。また、骨折しやすい、手足のしびれ、麻痺、倦怠感、吐き気などの症状も現れることがあります。
まとめ
乳がんの骨転移は、患者さんの生活に大きな影響を与える可能性がありますが、治療法の進歩により、がんと共存しながら良好なQOLを維持できる期間が延びています。主治医や医療チームと密に連携し、ご自身にとって適切な治療とケアを選択していくことが、充実した日々を送るための鍵となります。
関連する病気
- 多発性骨髄腫
- 前立腺がん
- 肺がん
関連する症状
- 持続する骨の痛み
- 原因不明の骨折
- 手足のしびれや麻痺




